白黒 童子姉妹の冒険13

 カイトさんのいるゲートと呼ばれる場所。ここはなぜか神話級や異世界からの侵入者が多く来る

 カイトさんは次元の扉と言っていたけど私にはよく分かんないな

 お姉ちゃんもキョトンとしてるからわかってないんだよね~

「ちょっと用事が出来た。すぐ戻るからくつろいで待っててよ。さっき神話級が来たばかりだからしばらく来ないだろうし」

 ああ、それでここはこんなに荒れてたのね

 あそこに転がってる残骸、あれが神話級の死体なのかな? でも生き物のような感じがしない

「あれはましーんというものらしいぞ。我もよくは分からぬが、このましーんとやらは我らの世界よりはるかに進んだ技術のものらしい」

 うん、わかんないや。私は聞きながらも聞き流してカイトさんの帰りを待った

 転がっているましーんの残骸をつついたり持って眺めたりしていると、お姉ちゃんとアンミツ姫も興味を持ったみたい

 近づいてきて一緒に残骸に触り始めた

「これは、何なのでしょう? 金属、このような金属は見たことがありませんね。それに中のカラクリのようなもの。歯車やばねもあるみたいですが、こっちの板はどういうものなのでしょうか? 変なものもついてますし」

「ふむ、我にもわからぬことばかりじゃ。お、こっちは何か光っておるの。魔法か? いや、魔力を感じぬから違うか」

 色々と拾っては観察し、中にある金属を取り出したりして思い思いに楽しんでいると、急に大きな塊がビービーとなり始めた

「な、なに!?」

 びっくりしていると、大きな塊の真ん中あたりがパカリと開いて、5メートルほどの蜘蛛みたいな化け物が出てきた

 目が赤く光っててなんだか嫌な感じがする

「まずいのぉ。カイトがまだ戻ってきていないと言うのに、神話級が再び動き出してしまったようじゃ」

「ちょ、待ってくださいアンミツ姫! それって」

「うむ、大ピンチと言うやつじゃな。正直我もお前たちもまだ神話級に勝てるほど力はついておらん。そんなことよりほれ、動き出したぞ」

 蜘蛛は私たちを見て変な音を発しながらこっちに向かってきた

 その背中から刃物のついた腕を伸ばして振り回している。さらに体の周りには結界のような膜、胴体部からは丸い穴の開いた変なものがシャキンシャキンと伸びてきた

「お姉ちゃん危ない!」

 その穴から魔法のような光が放たれてお姉ちゃんのいた場所を焦がした

 地面が焦げてドロドロに溶けてる

 当たったらひとたまりもない

「うおっと!」

 アンミツ姫には刃物が振り下ろされた。それを間一髪で避けるアンミツ姫

 振り下ろしは早すぎて目で追えない

 感覚を研ぎ澄まさないと避けることなんて不可能だよ

「ハクラ! クロハ! さっさと戦闘態勢!」

「「はい!」」

 刀を抜いて構える私達。アンミツ姫も体の一部を龍化して構えた

「仙闘術! 白亜の牙!」

 刀に仙力を流して硬さと鋭さを増す突き技。その一撃が胴体にあたるけど弾かれてしまった

 その弾かれた勢いを利用して回転する

「童子の力はここからよ! 奥義、白絶しろたえ!」

 揺らめく回転によって幾度となく全く同じ場所に切れ込みを入れていく

 硬すぎるけど、少しずつその胴体に傷が刻まれていき、切り裂いてその中身を露出させた

 やっぱりと言うか、敵の体の中からは残骸同じようなものが覗いている

「いいぞハクラ。どれ、我も行こう。龍神流格闘術、流し抜き手!」

 魔力、気力、神力を一斉に込めてからの抜き手による一撃は、蜘蛛の腕を破壊し、頭部に突き刺さった

 アンミツ姫はすぐに手を抜いて後ろに下がる。刃物が背に迫っていたからだ

「奥義、劫黒ごうこく!」

 今度はお姉ちゃんの童子の力が炸裂した

 素早く走って蜘蛛の脚を切りつけている。その一撃一撃がダメージを着実に蓄積させて、脚の二本を切り落とした

「ハクラ! 合わせて!」

「うん!」

 二人で刀の切っ先を合わせて力を籠める

仙気方撃せんきほうげき! 一の型、いびつ!」

 歪曲した空間を撃ちだして動きを止め、二人の刀で蜘蛛の頭から尻までを真っ二つに切り裂いた

 これほどに硬い体を切り裂いても私たちの刀は刃こぼれ一つしていない。さすが代々受け継がれる家宝だね

「油断するでない! 何かおかしいぞ!」

 アンミツ姫に言われて私たちは蜘蛛の方を見た

 ピーピーと言う不快音を発している。それとなんだか変な力の流れが見える

 まるで周囲の力を体にため込んで暴走しようとしてるかのような

「自爆!? これって特定の魔物が最後にする悪あがきに似てるんだけど!」

「ええ、まずいわね。ハクラ、アンミツ姫様! 走りましょう!」

 今までにないくらいの速度で走ってその場から一気に駆け抜けた。その直後に聞こえる爆発音と、走り抜ける衝撃が私たちを吹き飛ばした

「う、いたたたた。お姉ちゃん、お尻が」

「あ、ごめんねハクラ」

 お姉ちゃんのお尻が私の顔を思いっきり潰してた

 アンミツ姫はと言うと、あられもない姿でお尻を露出しながらひっくり返っていた

 アンミツ姫、履いてないのね。私と一緒で

「すごい爆発じゃったのぉ。巨大な穴が開いておるわ」

 今の爆発で地面にはぽっかりと大きな穴が開いていた

 もし巻き込まれていたら、死んでいたかも

 まだカイトさんの修行は始まっていないと言うのに私たちはアンミツ姫も含めて疲れ果てていた

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