黒の国12

 ベリウスさんは優しそうな人で、腰まである長い白髪に引き締まった体つき、目は細くていつも笑っているみたいだ

「お待たせしました私がベリウスです。早速なのですが、闇・・・。いえ闇人と言うのでしたね。彼らの行方については我々にもわかりかねます」

 そうなんだ・・・。手づまりかぁ、やっぱり相手の出方をうかがうしかないのかな?

 でもそうなるとまた被害を受けかねないし、どうすればいいんだろう

「しかしです、我々は長年闇と共に過ごしてきました。不本意なことですが・・・。 彼らの気配はよくわかっています。私達が住むこの空間は今この世界とは断絶されていますが、外に出ればその気配を追えると思います」

「本当ですか!?」

「えぇ、あの時以来外との関係を一切断って来ましたが、我々もそろそろ飛び出す時期が来たのかもしれません」

「ではベリウス様、ようやく・・・。」

「はい、外界へ行きましょう。闇人を討ち、散って行った同胞の無念を、そしてルーナさんへの恩返しをするのです」

 またルーナって人の名前が出た。誰なんだろう?

 いや、わかってる、たぶんサニアさんのことなんだと思う

 なんで名前が違うのかは知らないけど、それはこの際いいか

 黒族の人達の協力も得れることになったし、これで闇人の居場所もわかるはずだ

「では、先だってはマルゼルラとエリゼラを連れて行ってください。この二人ならきっと見つけてくれるでしょう」

 マルゼルラさんはマリルリナさんの弟らしい

 それとエリゼラさんはその従姉だって。確かに似てる

「やぁ、僕はマルゼルラ。マルとでも呼んでよ」

「私はエリゼラです。ルーナさん、お久しぶりです。いつか恩返しをしたいと思っていましたのでお役に立てるなら何でも致しますよ」

「ありがとうございますエリゼラさん、でも危険なことはしないでくださいね」

 なるほど、エリゼラさんも知り合いだったのか

 なんでも彼女も闇に囚われてたところをすくってもらい、さらに行方不明だった妹を探し出してもらったんだとか

 サニア様がまだ神様じゃなかった時代かぁ、ちょっと聞いてみたいけどそれはまたの機会にしよう

「それではこれからすぐにでも参りましょう。私もついて行きますのでよろしくお願いしますね」

 ベリウスさんも来てくれるみたいだ

 三人を連れて黒族の国がある空間から抜け出る

 うっそうとしたジャングルが広がる元の世界に戻った

 「外の空気も久しぶりですね。ほらマル、きょろきょろしてないで探知を始めますよ」

「ごめんエリゼラ姉さん。久しぶりだったからつい」

 エリゼラさんに叱られて少ししょぼんとしてる。なんだか可愛いな

「では始めましょう」

 ベリウスさんに続き、二人は目を閉じた

 彼らの中から黒い光が漏れ出る

 闇人達が纏ってたものと似てるけど、冷たい雰囲気の闇人のものと違ってこっちはなんだか温かみがある

 段々と広がる黒い光は三人を完全に覆った

 そしてそれは一気に広がり、僕たちすら覆ってどんどんと広がっていった

 しばらくすると「見つけました」、そうベリウスさんがつぶやいた

「場所はここより南西、私達と同じように断絶された空間に隠れているようですね。周囲に人間の反応が多数。これは・・・。人族の国、でしょうか?」

 僕たちはその探知の状況をサニア様に見せてもらった

 サニア様の力の一つ、監視

 今ベリウスさんたちが見ている光景がサニア様にも見えるらしい

 これを僕たちの視界に同期させてくれたんだ

「ここは、そんな・・・」

 そして、わかった

 そこは、僕たちの作った街、メローだった

「大変だ!カスミ達が危ない! すぐ戻らないと」

 いてもたってもいられずに飛び出そうとする僕をルニア様が止めた

「待ちなさい、今はまだ闇人も動いてないみたいだけど、うかつに行けば被害が増えるだけよ」

「でも、じゃぁどうすればいいんですか! またあのときみたいに、大切なみんなが・・・」

「ま、そこは私たちに任せなさいっての。だてに女神やってるってわけじゃないんだから」

 ルニア様はウィンクして僕を安心させるかのように抱きしめてくれた

 それで僕は少し冷静になれた

「私たちが気配を消して様子を見てきます。場合によってはその場で街の人達を一気に避難させます」

「任せておきなさいリディエラ。ちょちょいっとやってきちゃうから」

 すごく頼もしい

 そして僕らはその場で待機、向かったのはサニア様とルニア様、そしてベリウスさんだ

(どうか、みんな無事でいて・・・)

 そう願いながら僕は二柱と一人を見送った

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