黒の国11

 翌日、魔の樹林の前に僕たちは立っていた

 危険な魔力をビリビリと肌で感じる

「うん、気配がありますね。黒族の居場所はここで間違いないでしょう」

「お姉ちゃんがそう言うんなら間違いないわ」

 サニア様とルニア様はそのまま危険な森へとずんずん入っていった

 はたから見ると危険を理解できていない子供が興味本位で入っていってるみたいだ

「ほら、ボーっとしてないで行くわよ」

 ルニア様の方が少し性格がきついな

 現在森を探索しているのは僕を含め四大精霊、それに二柱の女神様、あとはクノエちゃんとカンナさんだ

 クノエちゃんも戦えるらしいけど、もし危険が及びそうなら僕たちで守らないと

 この森はこの辺りでも群を抜いて危険で、危険度Sランクの魔物がそこら中にはびこっている

 現に入ってすぐに猛毒を持ったベルデスコーピオンと言う保護色で見えなくなっている魔物と遭遇した

 見えないのになぜわかったのかと言うと、サニア様がいきなり何もない空間を殴ったからだ

 殴ったと同時にベルデスコーピオンの体が見え、はじけ飛んで絶命するのが見えた

「Sランクを、一撃?ですか?」

 テュネが口を開けて驚いている

「そりゃそうよ。お姉ちゃんああ見えてこの世界くらいなら一撃で消滅させれるもの」

 この星だけならともかく、世界を丸々一つ消せるって・・・

 途轍もない神様をよこしてくれたものだ

 でも今は心強い

 それにむやみやたらに世界を消すのは神様のルールではあってはならないことらしい

 過度な干渉はしちゃだめなんだとか

 今回手伝ってくれてるのも、闇という神様たちと因縁のある相手だからだ

「う~ん、もうちょっと東かな」

 サニア様は森を進み、時折探知しては方向を変えて歩いていた

 道なんてないから自分たちの手で切り開いていくしかない

 そのためか、十メートル進むのにも時間がかかる

「あ、痕跡がありましたよ」

 二時間ほど歩いてサニア様は地面に何かを見つけた

 靴でついたような足跡だ。それもまだ新しい

「これをたどれば黒族の元へたどり着けそうですね」

 足跡は点々と奥に続いてて、まるで僕たちを案内しているみたいだった

 それから三十分ほど経ち、開けた場所へとたどり着いた

「何もないみたいですね」

 僕は周りを見渡してそう言った

 本当に何もない、だだっ広い広場

 足跡はそこで途切れてた

「あ、いますね。ちょっと待ってくださいね」

 サニア様は目をつむり、手を何もない空間に当てるようにしてかざすと、そこに力を流し込んだ

 すると周囲の景色が一変して、いきなり大きな街が現れた

 僕たちはその入口に立っている

「ここが黒族の国みたいですね」

 さっきとは全然違う景色に僕を含めてあっけに取られていた

 すると、街の中から褐色の人が数人走って来た

「何者ですか!ここは我らの楽園! 早々に立ち去りなさい!」

 先頭にいた女性は手から真っ黒なオーラを出してこちらに戦闘姿勢をとっている

 今にも僕たちを攻撃しそうだ

 でも、何かに気づいてすぐにそのオーラを治めてくれた

「あなたは・・・。ルーナ、ちゃん?」

 その女性が見つめていたのはサニアさんだ

 でも呼んでる名前が違う

「お久しぶりですね、マリルリナさん」

 え!? 知り合いなの!?

 あ、でも黒族の人達って神様の反存在だって言ってたっけ?

 知ってても不思議じゃないのかな

「どうしてここへ? あ、立ち話も何ですからどうぞ、国へ入ってください。歓迎しますよ。お供の方たちもさぁ」

 さっきとは打って変わって穏やかな表情のマリルリナさん

 これが本来の彼女なんだろうね

「今はこの平和な世界で弟や友人たちと楽しく暮らしていますよ。それもこれもルーナちゃんが私たちを救ってくれたおかげです」

 そういえばサニア様は闇やそれを操っていた何かと戦ってたって聞いた

 黒族の人達は闇に囚われてたらしいし

 あ、そうか、それもあってアマテラス様はサニア様を降臨させてくれたのか

「ここです。ここは私達姉弟の家なのですが、存分にくつろいでくださいね」

 またしても僕たちは驚いた

 案内された家は相当大きくて、部屋もたくさんある石造りの建物だった

 いや、この家だけじゃなくて、周りにある家はどれもこれも大きい

 それに街もかなり発展してて、黒族の人達はみんな幸せそうな笑顔を浮かべてた

 それから僕たちはこれまでのいきさつを語り、マリルリナ様の表情が曇った

「そう、ですか、では私たちをまとめ上げるベリウスに会ってもらいましょう。彼ならきっと何かわかるはずです。それと私たちも何か手伝えることがあるなら言ってください。もう二度とあのような悲劇を繰り返してはならないのです」

 悲しそうな顔をするマリルリナさん

 それから僕たちは、ベリウスさんという黒族のリーダーに会うことになった

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