白黒 鬼姉妹の冒険5
私の能力が分かってから数日後、自分の仕事を他の天狐族の先生に任せてきたテンセン先生
そのテンセン先生との修行がもう間もなく始まります
お姉ちゃんの様子からその壮絶さが伝わってきているのです
あぁ、無事に私たちは生きて帰れるのでしょうか・・・
ちなみにアカネたちは白狐族の教頭先生、コヅチ先生と妖術を使いこなす修行を始めているらしい
そっちもなかなかに熾烈を極めているらしくて、一度アカネが逃げてきた
「助けてくださいっすハクラ様! あのおっさん頭おかしいっすよ!」
涙目で訴えてくるから思わず匿ったんだけど、コヅチ先生は何でも見通す千里眼と言う妖術ですぐに見つけてしまった
首根っこをつかまれ、そのまま引きずられて行っちゃった
「お騒がせしてますな。ほれアカネ殿、まだまだ修行は始まったばかりなんですな」
コヅチ先生はすごく優しそうな笑顔とは裏腹に激しい人だ
「さてぇ、そろそろ始めるぅわぁよぉ」
テンセン先生が自分の身長の二倍もある何かを持っている
布にくるまれててよく分からないけど、あれ絶対刀だよ~
それも凄く長い
先生専用なのかな?
「そうですよぉ。私ぃ専用ですぅ」
ニコニコと笑顔を浮かべてる
それがさらに怖い
「じゃぁ、裏の広場にぃ、来てくださぁいねぇ。今日はぁ、私たちぃのぉ貸し切りぃですよぉ。喜んでもぉ、いいのぉよぉ」
ゆっくりおっとりとそう告げたとき、お姉ちゃんの表情がズーンと暗くなるのが分かった
どれほど怖いのでしょう・・・
裏の広場には棒が何本か建っていた
これは一体何なんだろう?
「これはぁですねぇ・・・」
先生はひょいっと棒のてっぺんへ飛び上がった
うわぁ凄く身軽
「こうしてぇ、私のぉ。戦いの場になるんですよ」
急に先生の雰囲気が変わった
それにあの眼つき、まるで猛獣のような・・・
「うぐぅ!」
急にお姉ちゃんが広場の奥へ飛んでいった
「え?」
その直後に背中に走る激痛
「あうっ!」
息が詰まるほどの衝撃に悶える
痛い、それに何が起こったかわからなくて怖い
「ほら、立ちなさい。私の攻撃をどんな手を使ってでも防ぎ切りなさい。ひとまず、十撃受けきれれば終わりとします」
「始まった。先生の修行が。これは相当きついから覚悟しなさいハクラ」
既に傷だらけのお姉ちゃんはゆっくりと立ちあがった
私も倒れてはいられない。ってもう迫ってきてるし!
「危ない!」
お姉ちゃんが私を突き飛ばしてくれたおかげで直撃は免れた
「あなたたちも武器を抜きなさい。その武器は飾りですか?」
そうだ。素手であれを受けるなんて無茶だもんね
私は“散雪”を、お姉ちゃんは“クロアゲハ“を抜く
そして、それぞれ刀に宿る能力を発動させた
散雪の能力は形状変化
どんな武器にも形を変えることができる
幼いころから手にし、様々な武器の使い方を習ってきたもの。今こそその成果を試すとき!
私は右手に幅広の太刀を、左手に小太刀を逆手で握る
向かってくる先生の長刀を両手の刃で何とか受け止めた
そこで気づいたんだけど、先生の刀は長い竹だった
どおりで斬られた感触がしないわけだけど、それでも当たればものすごく痛い
「余計なことは考えない!」
また背中に激痛が走る
「ハクラ、集中! こうなった先生は修行が終わるまで止まらないの!」
そう、これは修行・・・
私は刀の力をさらに解放した
神力解放
散雪の真骨頂はここからだ
「舞え! 雪花鳥!」
氷で出来た鳥が辺りを舞い始める
まるで踊りを踊るかのように優雅に
「ふむ、神刀ですか。でもいくら刀が優れていても、使い手がこの程度では十分に力を発揮できないようですね」
先生は竹を振り回した
それも、不安定な棒の上を飛び跳ねながら
飛び回る鳥たちはみるみる撃ち落とされて砕け散った
「くっ! 豪雪狼!」
体にくるくると舞う氷の刃を纏った狼が数体召喚された
それが一斉に先生に向かっていく
それすら先生はあっさりと砕いた
この狼たちは一匹一匹が巨岩を砕くほどの力を持っているのにもかかわらず
「まだまだですね。あくびが出ちゃいますよ」
竹による攻撃は止まず、私とお姉ちゃんの背中を叩く
今や服は破け、背中の皮も裂けて真っ赤な血が滴ってる
激痛に意識を失いそうになるけど、それでも私とお姉ちゃんは何度倒されても立ち上がった
強くなるために、皆を守れる力を手に入れるために
そしてその頃アカネたちは
「おっさん! そんなもん投げたらあぶないっすよ!」
「ほっほっほ、たかが鉄の塊ですな。当たっても痛いくらいですな」
「いや、普通に死にますよそれ」
コヅチ先生はまた鉄の砲丸を振りかぶって、投げた
大砲の弾のように豪速で飛んで来る弾はかすっただけでも大ダメージを受けてしまう
「ひぃ~、ハクラちゃん~、助けて~」
「姫呼んでもどうしようもないっすよ! とにかく逃げ回るっす!」
「反撃しないと修行終わらないわよ?」
「じゃぁキキが攻撃するっすよ!」
「何言ってるのよ。私はあなたみたいにパワー馬鹿じゃないんです! あなたが行きなさいな!」
「もう~、喧嘩してる場合じゃない~よ~」
三人はコヅチの攻撃をずっと逃げ回っていた
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