脅威8

 子供達を助けた後ふと気になってガララドの死体を見てみた

 特に何のこともない。考えすぎだったか

 死体は動くことなくその場に転がっている

 少し安心して私は別の戦場へと走った。分かってる。確実に心臓を切り裂いたんだから起きあがってくることなんてない

 でもなぜか少し引っかかるんだよね

「クリーミアさん、次はこっちにゃ!」

「ええミーニャ!」

 クリミーアさんは槍で帝国兵を突きながら進み、私はその後ろを走った

 お母さんは一旦下がって怪我人の治療を始めてる

 そっちには強い人たちが付いてるから大丈夫だと思うけど、念のため私に直ぐ連絡できるようマジックアイテムも持ってる

 とにかく今は苦戦してる人たちを動ける私達が助けないとね

 それに人を素体とした魔物は子供達を使ったキメラだけじゃない

 失敗作と呼ばれるものや、すでに死んでいるけど魔物の方の心臓が動いてるため暴れるもの、ゾンビやレイスといったアンデッドまでいるからね

 まぁアンデッドの方は多少光魔法や神聖魔法が使えるなら大したことがない

 問題はキメラとは違い人間の体そのものを変質させた強力な魔物の方だ

 こっちはどうやらランクの高い人でもなかなか倒せないみたいで、殺されてる人もいる

 まずい、こいつらは早急に片づけないと

 キメラと違って変質が激しいから分離もできないし、元に戻せない

 それなら苦しんで暴れさせるよりも死なせてあげる方がいいだろう

 悔しいけど、それが私の今の限界なんだ

「く、もともと人間だったと考えると攻撃しずらいわね」

「駄目にゃクリーミアさん。ためらってたらやられちゃうにゃ」

「そうよね。彼らだってなりたくてなったわけじゃないんだから苦しい。けど、やらなくちゃ」

 クリーミアさんが槍によるスキルを発動した

「一の槍、八相突き!!」

 目に見えないほどの速さで八連の突きが魔物に向かって突き出されると、あっという間に数体を倒してしまった

「す、すごいにゃ」

「ミーニャ!危ないわよ!」

 私の後ろに帝国兵が迫ていたらしく、それをクリーミアさんが突きで倒してくれた

「ありがとにゃ。油断、駄目、絶対」

 そこからまた数体の魔物を倒しつつ、襲ってくる帝国兵を引っ掻きながら進んでいく

 目標は皇帝がいる敵陣の真っただ中

 ただそこまでは強力な帝国兵もいるし、冒険者で言うSランクに匹敵する強さを持った猛者もいるみたい

 クリーミアさんでも危険な存在だろう

 それにもしかしたら、魔人はあのガララドだけじゃないかもしれない

 そう、旅行中に出会ったレギオンとかいう魔人のことだ

 あいつももしかしたら帝国にいるかもしれない

「クリーミアさん、あなたは右舷の方を手伝ってくださいにゃ」

「え!? 分かれるってこと? ミーニャはどこへ行くの?」

「あたしは中心で引きこもってる皇帝を叩くにゃ。ボッコボコにしてあたしの大切な国に戦争をした責任を取らせるにゃ」

「でもあなた一匹じゃ危ないわ! 私も行く!」

「駄目にゃ! クリーミアさんはもうすぐゼンさんとの結婚をひかえてるんにゃ? だったら生きて帰ることを優先するのにゃ」

「それは・・・」

 クリーミアさんのパートナーであるゼンさんは今回の戦いに参戦していない

 この戦いに参加していない同盟国に救援を要請しに行ってるからだ

 そのゼンさんが言ってた。「今度クリーミアと結婚するんだ。そしたら一年後を目安に冒険者を引退して店でも開くさ」

 彼女には死ねない理由がある

「ミーニャ、決して無理はしないで。あっちの助けがすんだら必ず私も仲間を連れて駆け付けるわ」

「んにゃ! 無理はしにゃいにゃ。でもあたしは猫だから隙間を縫って皇帝に喰らいつけそうにゃ。いける気がするにゃ」

 クリーミアさんと別れて私は速度を上げて走り出した

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最強の猫になってしまいました 香草(かおりぐさ) @kaorigusa

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