脅威2

 その日を皮切りにこの国では異常事態が起こり始めた

 モンスターパニックに加えて帝国から送り込まれたと思われる人間を素体とした魔物の流入

 一体どこから送り出しているのか分からないけど、なぜか国の中心部でいつも発見される

 それはこの前みたいなマジュラのこともあれば、ゾンビやグールと言ったアンデッドのこともあった

 帝国は一体なぜここまで悪逆非道なことができるんだろう

 公爵が言うには帝国は他の国を支配するためなら手段を択ばないというし、この国の豊かな資源を狙って侵攻してるんだろうって話だ

 一気に進行してこないのはやっぱり人間素体の魔物を作り出し、その実験データを取ってるからみたいだ

 てことはだよ。この国にそれを手引きしているスパイがいるかもしれない

 だっておかしいじゃない。国の中心でいきなり帝国印の魔物が湧くんだもん

 これは私が調べてみる必要があるかもしれない

 そのことを公爵に言ってみるとあっさりオッケーが出た

 学園のことがあるけど、幸いにも私は成績も上位の方な上、魔法の先生としての実績もあるから、特別に学園を少しの間休学しても大丈夫らしい

「すまない、また君に頼るようになってしまうが」

「んにゃ、そんなこと気にしにゃいで欲しいにゃ。あたしがやりたいんだから」

 そう言うと公爵は微笑んだ。この人改めてしっかり見ると彫りが深くてかなりかっこいいな

 まぁそんなことは置いておいてすぐにでも調査に向かうことにしよう

 まずはマジュラが出た街道ね


 街道まで来るとマジュラのいた痕跡がそこかしこに残ってる

 それに手を当てるとリーディングを使って過去を読み始めた

 むむむ、帝国でマジュラにされた彼らはひとまず亜空間に放り込まれたのか

 亜空間を生み出す技術はここ数年で出てきた技術らしくて、作り出したのはマキナ族という聞いたことがない種族

 その技術を悪用してるってわけか

 そしてその亜空間をこちらで開いてマジュラを放ったのね。放ったのはフードをかぶった男・・・。

 間接的にかかわってるだけだからなのか、男の正体にまでたどり着くことはできなかった

 次にアンデッドが現れたエピソン村という村に来てみたんだけど、この辺りにはアンデッドが湧くような条件のある場所が全くと言っていいほどない

 一応お墓もあるけど、浄化されてるから湧くわけがない

 アンデッドが湧く条件って言うのが、戦場跡地とか魔力だまりとか瘴気がある場所なんだけど、この辺りにそんな場所は皆無

 つまりアンデッドは人為的に生み出されたってわけ

 それでアンデッドの痕跡を調べてみたけど、アンデッドたちはやっぱり亜空間から放たれていた

 でもその放っていたのはさっきのフードの男と違って、商人の恰好をした男だった

 こいつは顔が見える。どこに行ったかまでは分からないけど、映像の最後はその商人が東の方へ去って行くのが見えた

「んにゃぁ、これは骨が折れそうだにゃ」

 何せ魔物を放ってるやつら自体の痕跡が皆無だから、リーディングでも読み取りようがないんだよね

 手づまりってやつだ

「どうしたもんかにゃぁ」

 ひとまず私はどこかで魔物の被害が出てるって聞いたらそこに駆け付けて倒すことにした


 翌日から早速行動を開始したけど、思ったより魔物が大胆に活動してない

 モンスターパニックも起こってる様子がないし、初日は何事もなく終わった

 ちなみに帝国からのスパイを見つけ出すまでは野宿するつもり

 一応公爵から身分の証明になるような書状やお金ももらってるけど、猫だから野宿でも大丈夫

 それに猫に優しいこの国でくいっぱぐれることなんてないのですよ

 次の日はどこかへ向かう冒険者の一団を見かけたのでついて行ってみた

 ついて来る私に気づいた女性冒険者が私を拾い上げて一緒に馬車に乗せてくれたんだけど

 彼女、どこかで見たことがあるような・・・

「ミーニャちゃん、久しぶりね」

「んにゃ! 思い出したにゃ! シアさん!」

「え、ミーニャちゃん喋れたの・・・?」

 そっか、この人は私が喋れるようになったこと知らないんだった

 それから私はシアさんにこれまでのいきさつを話した

「す、すごいわねミーニャちゃん。でもミナモちゃんも元気そうでよかったわ」

 シアさんはミナモちゃんの故郷の冒険者で、私があそこにいたころ街を襲ったモンスターパニック討伐に参加していた冒険者さんだ

 クリーミアさんって言う凄腕の冒険者に弟子入りして彼女に付いて行ったはずだけど戻って来たのかな?

「私ね、師匠から課題を受けたの。Bランク以上の依頼を受けて攻略することって言われて」

「にゃるほど、クリーミアしゃんは元気かにゃ?」

「ええそれはもう元気すぎるくらいかしら。毎日しごかれてるもの」

 シアさんは大変だけど楽しいって言ってる。いい師匠に恵まれたんだね

 それに素人目の私から見ても彼女は実力がある

 いずれ世界に名をとどろかせそうだ

 そんな彼女の膝上で眠っていると今回の目的地に着いた

 彼女の話だと二日ほど前からここで人間素体と思われる魔物が目撃されたらしい

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