脅威1
旅行から帰ってきて学園での生活がまた始まった
新学期は学術科や武術科、武器術科の生徒たちとも合同で受ける授業がいくつかあるみたい
そのためか、公爵令嬢で友人のシュシュアちゃんと待ち合わせをして教室移動なんかもしてる
学術科の彼女は私達魔術科の学科棟から離れた棟にいるんだけど、二つの棟の丁度間にある中庭辺りで待ち合わせするから距離は問題ない
この学園って結構広いから移動も大変なのよね
そんな平和な日々が続き、私達も二年生へと上がった
私はもはや普通の生徒として学園でも知れ渡っているどころか、別学科の生徒に魔法を教える先生もやってる
まぁエンディ先生だけじゃ人手は足りないしね
本当ならもう一人魔法の先生がいたんだけど、高齢だから少し前に退職しちゃったのよねぇ
でもまあ私も教えるの楽しいから全然大丈夫
ある程度のんびりとは暮らせてるからね
そして二年生になってから一か月が経った頃のことだった
この街近辺で危険な魔物の目撃が相次ぐ事件が発生した
その魔物はマジュラディラと呼ばれる魔物で、かつて人間だった者が怨念によって魔物化したものらしい
しかもそんな魔物が数体この街周辺で暴れだしたとのこと
このままじゃ物流も止まるし、何より旅人たちに危険が及ぶということで冒険者による討伐隊が組織された
この魔物は呪いを使って来るから、その呪いを解除できる呪術師や魔術師を中心に組織されたようで、エンディ先生もその中に入った
全員で二十人くらいかな
「はう~、私魔物と戦うの苦手~なのに~」
「しぇんしぇい、あたしがついてるから心配にゃいにゃ」
そう、この作戦私も参加してるんだよね
私は戦力として数えられてるばかりか、呪いを解除する聖魔法も使えるってことでの大抜擢ですよ
というわけで討伐隊は街の外で活動を開始
「確か西門から一キロほど離れた街道辺りで確認されたと言ってたね。では冒険者の皆さん、よろしくお願いします」
そう開始の合図を出したのはアルヴァレート公爵
王様は公務で忙しいから弟の彼が指揮を取ることになったらしい
本当は王様が真っ先に出ようとしてたから、彼が慌てて止めたんだとか
ここの王様は責任感が強すぎて、率先して危険なところに立とうとするから困ると公爵も言ってたっけ
さてと、まずはマジュラディラがどこにいるかを探知するかな
「お、ミーニャ、早速だね」
「ちょっと黙ってて欲しいにゃ。集中できにゃいにゃ」
「ごめん」
公爵、もう少し威厳を持ってください
無礼者!と怒鳴りつけろとは言わないけど、たしなめるくらいはしてほしいかな
まあそう言う気さくなところが民に好かれてる理由でもあるらしいけどね
「む、見つけたにゃ。近いにゃよ」
「よし、すぐ討伐するぞ」
マジュラディラはすぐ見つかった
何せ街道をのしのしと普通に歩いてたからね
それも十体もだよ! 一体どっからこんなに湧いたんだろう
もともと人間だからその素体となった人がいるはずだけど、街や周辺の村なんかから人が消えたって話はない
こいつら一体どっから来たの?
とりあえずは全部浄化してこの辺りの安全を確保しなくちゃね
呪いの言葉、呪言というスキルで攻撃してくるマジュラ。その攻撃を避けつつ私達は一斉に浄化魔法を放った
何人か呪言を受けてしまったけど、すぐに浄化したから大丈夫
あっという間にマジュラの討伐は終了した
「ふぅ、なんでこんなところに? 他国から来たのか? しかし国境付近ならまだしもなぜこんな国の中心部にいたんだ?」
公爵の疑問も最もだね
この国に行方不明者はいない。ということは他国出身で恨みを持って死んだ人ってことになる
でもマジュラは群れることなんてない。そもそも恨みを持って死ぬ人が少ないからね
それが十体も群れていたのは明らかにおかしい
もしかして・・・
私はマジュラから恨みが抜け、ただの人間の死体となった人達を調べてみた
皆何も持ってなかったから身元の確認ができない
「うーにゅ、これはどうしたもんかねぇ。あたしの鼻をもってしても彼らがどこから来たのか分からにゃいにゃ・・・」
そんな独り言のせいか、頭にまたスキルが浮かんだ
なになに、リーディング? なんだそりゃ
説明によると、触れたものの過去が分かる? すごいじゃん! これ今の状況にぴったりですよ
「んにゅにゅにゅ、にゃるほど、この人たちは帝国から来たのかにゃ」
「何か分かったのかいミーニャ」
「はいにゃ。この人たちはドゥラウセント帝国の平民たちですにゃ。それもかなり困窮してる人たちだにゃ」
ドゥラウセント帝国は人間至上主義を掲げた独裁的な国で、周辺諸国を取り込んで領地を拡大している大国
しかも亜人差別がかなり激しくて、他種族を奴隷として扱ったり村ごと壊滅させたりと酷いことをしているとも聞く
この国も当然の如く狙われているけれど、ニャフテスやバステト様の加護があって容易には侵略できない
だからこんな回りくどい手を使ったのかも
でもそれにしては数が少ないことから恐らく実験段階
恐らくというかリーディングでこの人たちの過去を見たから間違いないんだけどね
この人達は生活に困って身売りをした人たちだ。それを人体実験に使われ殺されたんだろう
全く、人の弱みに付け込むとか許せないな
「なるほど帝国か・・・。この事は王に報告せねばならないな。ミーニャ、私はすぐ戻るからこの場の指揮を頼む」
「んにゃ! あたしにどうしろというにゃ!」
「なに簡単なことだ。ちょちょっと冒険者たちに彼らを運んでもらって街に戻るだけだ」
死体運びを頼むわけね。それなら特に難しくもない
彼らは私がしゃべれる猫だって知ってるしね
馬を走らせ急いで帰って行く公爵を見送って、私は冒険者たちに事後処理を頼んだ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます