学園生活25

 なんてことなんだ! こんなことになるんだったら来るんじゃなかった

 水晶は確かにきれいだけど、これは聞いてない

 まさかあんなものがここに住み着いているなんて


 今から二時間ほど前

 晶穴に入った私達はその美しさに言葉を失って見入っていた

 内部はところどころに松明が灯っていて、中から常に風が吹いてる

 この洞窟の先には出口があって海に繋がってるらしい

 それで潮の香りが混じってたのね

「この水晶、とってもいいのかな?」

「大きいのもいっぱいあるにゃ・・・。んにゃ、そこの看板に好きなものを一つ取っていいって書いてあるにゃ」

「じゃあもう少し奥に行ったらもっと大きいのもあるかも」

 確かに奥に行くほど水晶が大きくなっていってる気がする

 多分大抵の人は入り口辺りのを取って満足して帰っちゃうからだと思う

 まぁそれは仕方ない。だってここ結構寒いんだもん

 外が温暖な気候だけあって、洞窟内は震えるほど寒い

 私猫だから寒いの苦手なのよね

 それを知ってか知らずか、お母さんが私達に体を温める魔法をかけてくれてる

 そのおかげで全く支障なく動けるのだ!

「あ、コウモリの魔物がいるにゃ。あたしに任せるにゃ」

 飛んできたブラッドバッドとかいう魔物を爪の一撃で倒すとそこからワラワラと同じ魔物が出てきた

 まぁこのくらいの数なら私の敵じゃない

 次から次へと飛び出て来るコウモリを斬って噛んで叩き落して、たまにお母さんとミナモちゃんの援護魔法で落としてって感じで簡単に攻略しちゃった

 ま、一番弱い魔物だから一般人でも倒せるし、攻撃されたとしても噛み傷くらいかな

 元の世界だと狂犬病とか危ないけど、この世界にそんなものはない

 まぁ魔力を吸われるってリスクはあるけどそれも微々たるものだしね

 安全に倒せる魔物、それがこのブラッドバッドだ

「ふぅ、もう出てこにゃいみたいだにゃ」

「うん、それにしてもいっぱいきたからちょっとびっくりしちゃった」

「二人とも! 今すぐこっちに来なさい!」

 突然お母さんがミナモちゃんの手と私の尻尾を引っ張って抱き寄せた

「んにゃん!」

 ちょっと痛くて声が出ちゃったけど、抱き寄せられた理由の元を見てそんな痛みも吹き飛んだ

 なんてことだろう、それはここには絶対いないはずの魔物

「オーガ・・・。なんてことなの!」

 オーガというのは鬼のような魔物だ

 のようなっていうのは、この世界には鬼人という種族がいる

 鬼人は魔物ではなく亜人種で、このオーガと同じく額から角が生えている種族ね

 彼らは勇敢な種族で、そのうち会ってみたい種族でもある

 って今はそんなことを考えてる余裕はない

 逃げるが勝ちというか、こんな狭いとこで戦ったら洞窟が崩れて生き埋めになっちゃう

 それにあのオーガ、なぜか私だけを狙ってずっと見てる気がするんだよね

 だからまず二人を逃がして、私がおとりになって洞窟内を逃げ回った

 幸いにも入り口はそこまで遠くないし、私の体の小ささなら隙間を縫って走れる

 二人はもう出口にいる。あとはオーガを外まで誘い出して一気に叩く

 光が見えて、外に飛び出した

「この! 何でこんにゃとこにいるか知らないけど、他の人が被害に遭う前でよかったにゃ!」

「ミーニャ、大丈夫!?」

「んにゃ! 大丈夫にゃ、ミニャモちゃんは下がってにゃ」

 私を捕まえようと腕を伸ばしたオーガに向かって魔法を放つ

「フレアニャンス!」

 あれ? フレアランスっていう炎の槍を出す初級魔法を放ったはずなのに、炎の猫がたくさん出てきてオーガにとびかかって行った

 しかも引っ掻いたり噛みついたりするたびにその傷口が燃え上がって、オーガはゆっくりとあぶられて死んでしまった

「にゃ、にゃんにゃこれ」

 変な魔法が出たことで驚いたけど、とにかくオーガは倒せたんだしよしとしよう

 はぁ、ちょっと疲れたかも。なんて座り込んでいたら洞窟内からオーガの恐ろしい声が聞こえてきた

「にゃ!まだいるのかにゃ!?」

 その声を皮切りにオーガがワラワラと飛び出してきた

 洞窟に入ろうとしていた人たちもそれに驚いて逃げ出し始める

 あ、何人か腰を抜かして逃げ遅れちゃった

 でもそんな人たちに目もくれず、奴らは全員が私だけを見て走って来ていた

「ここは危にゃいにゃ、おかあしゃんはミニャモちゃんを連れて逃げるにゃ」

「駄目よミーニャ、一緒に逃げるの!」

「いいから行くにゃ! こいつらの狙いはあたしだにゃ!」

 二人を説得したけど頑として動こうとしてくれない

「ミーニャだけを危険な目に合わせない! 今度は私がまもるんだもん!」

 ミナモちゃんが決意した瞬間、ミナモちゃんの中で何かが光るのが見えた

「行くよ! マガツフレア!」

 私とお母さんが驚く中、ミナモちゃんは巨大な炎の塊をいくつも作り出し、隕石のようにオーガたちに叩き落とした

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