学園生活17

 エサラの回廊からまた半日かけて中継地点の村まで戻って一泊、その後また馬車で副都まで戻った

 次に行く場所はもう決まってて、副都の東にある獣人たちの集落に行こうと思うんだ

 獣人族と人間族は昔は中が悪かったらしいけど、魔王との戦いを経て一つになったらしい

 だから人間族の国に獣人がいるし、獣人族の国にも人間がいる

 お互いに行き来が盛んなんだってさ

 それでその獣人たちの集落なんだけど、この国が神獣猫のニャフテスを信仰しているだけあって猫型獣人が驚くほど多いみたい

 獣人はこの世界に転生してからまだ数人の行商人に会ったくらい

 それにまだ猫型獣人には会ったことないんだよね

 ちなみにお母さんは冒険者の頃いろんなところを旅してたから、当然獣人の国にも行ったことがあるらしい

 彼らは皆サバサバとした気の良い性格の人ばかりで、身軽な人が多いんだとか

 それにしても猫獣人か。猫好き兼猫である私にとって天国な場所に違いない


 五日目

 猫獣人たちの集落に向かうための馬車に乗り込む私達

 観光客が多いから大き目の馬車が三台、一時間ごとに出る

「わ、クッションがある!」

「これならお尻も痛くなさそうね」

 私は膝の上だから問題ないけど、人間達は硬い木の椅子だとやっぱりお尻が痛くなっちゃう

 そんな中このクッションはありがたいだろうね

 馬車に揺られながらゆったりと猫獣人集落へ

 途中も何の問題もなく進んで、二時間ほどでついた

「ここが、猫獣人の集落・・・」

 私は駆けだしたくなる気持ちを抑えつつお母さんとミナモちゃんが降りて来るのを待った

「うわぁ、猫獣人さんがいっぱい」

「ここは久しぶりだわ。アニャは元気かしら」

「アニャ?」

「あ、えっとね、私のお友達で、昔少しの間一緒に冒険者をしていたのよ」

 そのアニャさんはまだミナモちゃんが生まれていない頃、お母さんとお父さん、それとアニャさんともう一人でパーティを組んでいたんだとか

 数年しか活動しなかったけどいい仲間だったんだって

 ちなみにもう一人はクロンさんと言って、アニャさんと結婚したらしい

 ということは今は夫婦でここに暮らしてるのかな? まぁ会ってみれば分かるか


 集落は思った以上に大きく広く、集落というより街みたいだ

 しかも猫獣人だけじゃなくて、犬獣人や熊獣人などと言った獣人もいるっぽいね

 熊獣人の女性、大きいしグラマラス!

 まぁでも相対的に見ると猫獣人の方が多いね

 その街に入った瞬間私はいきなり取り囲まれた

 何事かと身構えたけど、その取り囲んだ人たちはどうやらみんな猫好きらしい

「可愛い! 凄く毛並みもいいわぁ!」

「それにこの目、なんてキラキラと輝くのでしょう。まるで宝石のようですわ」

「あら、尻尾のふさふさ感も最高よ」

「この子の飼い主の方はどちらに?」

 キョロキョロと私の飼い主を探す猫獣人のお姉さんは心配そうに見つめるミナモちゃんを見つけた

「クンクン、この匂い、あなたがこの子の飼い主ですね?」

「いえ、ミーニャは私の家族でペットなんかじゃないです!」

 それを聞いて猫獣人の人達は顔を見合わせて拍手をし始めた

「なんと素晴らしい。これほどまでに素晴らしい猫の家族の方はやはり素晴らしい方だった」

 彼らはミナモちゃんとお母さんの手を取るといい場所に案内すると言って連れて行った

 まぁ連れて行くと言っても無理強いはされてないよ。猫が集まる集会所のような場所があるから、そこで話がしたいと言われただけだからね


 集会所につくとその猫の多さに圧倒された

 数十、いや数百匹入るであろう猫たちは、みんな手入れが行き届いていて健康状態も良好

 この街の人達に愛されているのが分かる

 それに皆人懐っこい

 で、私はそんな猫たちの中心に歩いて行ってみた

 そのとたん猫たちは急に私に頭を垂れ始め、一番大きな黒猫が私の前に歩いてきてドシリとひれ伏した

「え、なんにゃこれ」

「なんと、この子は猫の王女でしたか」

「はえ? どういうことにゃ?」

「話せるということはやはりそうなのでしょう。いやはや生きているうちにお目にかかれるとはありがたやありがたや」

 言ってることが滅裂すぎてよくわからないから、詳しい説明を求めた

 それによると数千年前のこと、神獣ニャフテスが生まれるよりも前、猫の王が生まれた

 彼は人語を操り、数多の猫や猫魔物、猫神獣を率いて大きな敵を討ち果たしたらしい

 そしてそんな彼の子孫が神獣ニャフテスなんだそうだ

 つまりその彼も神獣ってことかな?

 いやでも私ただのちょっと喋れる可愛い猫だよ?

 神獣なんて恐れ多いよ

 でも町の人達はそう信じて疑わないみたいだし、うーんどうしたもんかね

 別に敬ってほしいわけじゃないし、私がニャフテスの子孫だなんて噂が立てば普通に生活できなくなるかも

 だから私は彼らには口外しないよう頼んだ

「もし誰かに話したら恐ろしい呪いが降りかかることになるにゃ」

「ハ、ハハー!」

 ちょっと脅すような感じだけど平和な生活が脅かされるとこちらとしても困る

 まぁ呪いとは言ってもその日一日の運が少しだけ悪くなる程度にしておいたし、大丈夫だと思う

 ここの人達本当に私が困ることは絶対にしなさそうだしね

 とりあえず今は大丈夫そうだから、私達が滞在している間は接触はしないことで落ち着いたよ

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