学園生活16

 定食屋だけあってお得なセットがたくさんあるみたい

 私は猫まんまことご飯にお汁ブッカケターノを頼んで、ミナモちゃんはから揚げの定食、お母さんは野菜たっぷりの野菜炒めの定食か

 なんか前世の定食屋と似たようなメニューがいっぱいなんだけど・・・

 私は猫まんまを食べつつ定食屋内をキョロキョロと見渡してみた

 すると見覚えのある置物に目が行った

「んにゃ、あれは、招き猫だにゃ・・・」

 招き猫は前世の、日本の置物だ。間違いない、あれは元の世界のものだ

 厨房を見てみたいけど、うーん

 食べ終わった私はこっそり気配を消して厨房に入ってみた

 するといきなり包丁が私の目の前に飛んできて床に突き刺さった

「ぴゃえ!? にゃ、にゃんでばれたにゃ」

「おや? 猫が入って来たと思ったから脅したが、話せるのか君は?」

「んにゅ、あたしはミーニャ。世にも珍しい話しをする猫さね」

「ああ、そうか、君も・・・。いやいささか長い話になる。どうだい?出立は明日なのだろう?後で少し話さないかな?」

「んにゃ、デートのお誘いかにゃ? 女性として受けるべきかは悩むところにゃ」

「はは、そうか、女の子なんだね」

「んにゃ、じゃあ後で会おうにゃ」

 そのお兄さんは名前は言わなかったけど、なんだか懐かしいような気配がする


 そして夕方、お母さんたちを宿に残して私は待ち合わせ場所の定食屋に向かった

 定食屋の前にはすでにあのお兄さんが立っていて私を見て手を振ってる

「やぁミーニャちゃん。少し歩こうか」

 彼に言われるがまま私は彼の横を歩いた

 うん、彼顔はかっこいいからなんだか絵になるかもって思ったけど、私猫だから猫と散歩をしてる人にしか見えないわ

「あ、名乗っていなかったね。僕は田中四郎。大家族の四男でね、兄弟は十人いた。そして君と同じく世界を渡った者だ」

 やっぱりそうだったんだ

 この人は私と同じく異世界から来たってことか

「ああ、君のように猫に転生、というのは無かったけど、僕は気づいたらこちらにいた。存外この世界には異世界人と言うものは多いらしい。もちろん僕らと同じ故郷の者もいればそうでない者もいる」

「にゃるほど、じゃあ転生者もいるのかにゃ?」

「うーん、いるとは思うけど、僕は会ったことがないな。でも多分いるだろうね」

 面白い話が聞けた

 彼以外にも異世界人やら転生者がいるんだ。もしかしたら会えるかもね

「じゃあまた顔でも出してよ。久しぶりに同じ日本から来た人と話せてうれしかったよ」

「あ、最後にいいかにゃ?」

「なんだい?」

「どうして私が、異世界からの転生者だってわかったんだにゃ?」

「ああそれは、そういうものだと分かってほしいかな? 僕の力は戦闘向きじゃなかった。でも見抜くことができる。それが僕の力さ。君も力は持っているだろう?」

「にゃるほど、そういうことにゃのか」

「うん、そういうこと」

 彼と別れると私は宿に戻った

 ミナモちゃんは心配してたみたいだけど、料理がおいしかったって伝えに行っただけだって言ったら納得してくれた

「確かに美味しかったね! 今まで食べたことの無い料理だったよ」

「そうなの? 私もミナモと同じ料理にしておけばよかったわ」

 残念そうなお母さん。まあまたどこかで食べれるんじゃないかな? 異世界人いるんだし


 三日目、早朝に出発した馬車に揺られて私はまだ寝ぼけながらお母さんの膝上にいた

 そのお母さんの右隣にミナモちゃんと、左隣になんと昨日お母さんの胸をガン見していた男が座ってる

 こいつ狙ったかのようにお母さんについてきたな

 そしてお母さんの胸をガン見。とりあえず私はそっと男に触れて眠らせておいた

「ミナモちゃん、今日はおトイレは大丈夫?」

「う、うん、お母さん声大きいよ」

 そう笑い合って他愛のない話をしつつ馬車は進む

 ゆったりとした時間が流れてようやくエサラの回廊が見えてきた

 その周囲には村のような物が出来上がっていて、お土産まで売ってる

「あ、あそこが回廊みたいだよ」

「こらミナモちゃん、走っちゃだめよ。あっ!ミーニャちゃんもよ!」

 お母さんの腕からすり抜けてミナモちゃんに付いて走ろうとしたらお母さんに怒られちゃった

 私とミナモちゃんは立ち止まってお母さんを待つと一緒に歩き始めた

「いい香り。これがエサラの花」

 ミナモちゃんも初めて見るみたいで、目がらんらんと輝いてる

 でもこのエサラの花、サクラの木に似てる

 ピンク色で五つの花びらから木の形までそっくり。それに香りも同じだ

「綺麗だね~。こんなにすごい花があるんだね」

「ええ、そう言えばミナモちゃんはまだ見たことがなかったわね。ごめんなさいね。私が病に倒れなきゃいくらでも連れて行ってあげれていたのに」

「んーん、今こうしてお母さんと一緒にいられるんだもん、それだけで幸せだよ」

 ああ、いい、いいですよ家族愛

 私はほのぼのしながらエサラをその脳裏に焼き付けた

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