学園生活12

 馬車が出発してから半日ほどが経った

 私はミナモちゃんの膝の上にいるけど、他の人は硬い椅子でなんだかお尻が痛そう

 しきりにお尻をあげたり体勢を変えたりしてるね

「うう、ミーニャ、お尻痛いよう」

「うにゅ、あたしの上に座るかにゃ?」

「そんなことしたらミーニャが潰れちゃうでしょ」

「うにゃ、ミニャモちゃんくらいにゃら軽いから問題にゃいにゃ」

「そういう問題じゃないよぉ」

 そんな冗談も交えつついろんな話をして到着を待ち望んだ

 でもやっぱり出たよ。魔物がね

「ちょっくら倒して来るにゃ」

「気を付けてねミーニャ」

 私は護衛の冒険者と一緒に魔物をあっさりと討伐。そんなに強い魔物じゃなかったのは良かったよ

 ちなみに一緒に乗り合わせてる人もこの冒険者たちも王都の人だから、王都で有名になっている私のことは知っていてしゃべってても驚かないよ

「いやぁ強いってのは聞いてたけどここまでとは。ミーニャちゃんすごいねぇ」

 そういうのは四人いる冒険者の一人で唯一の女性のカナリさん

 猫好きらしくて私をモフりたくて仕方ないって顔してる

「んにゃ、触りたいなら遠慮なくどうぞにゃ。耳の後ろ辺りをお願いするにゃ」

「ほんと!?やったー!」

 カナリさんに撫でられながら私達は馬車にまた乗り込んだ

 ミナモちゃんの膝上もいいけど、こうやって猫好きな人にヨシヨシされながら眠るのもわるくにゃいにゃ~

 今度はカナリさんの膝上で寝てると馬車が大きく揺れた

 また魔物かと冒険者たちと馬車を降りると、そこには三十人ほどの盗賊がいてすでに馬車を取り囲んでいた

「オラ! 全員とっとと降りろ! 言う通りにすれば命だけは助けてやるよ!」

 そいつらは粗暴に私達を馬車から降ろすと、持っていた剣をこちらに向けながら近づいてきた

 まずい、ミナモちゃんを狙ってる?

「おいみろよこっち! この親子かなりの上玉だぜ。今日は楽しめそうだな!」

 は?私の家族に向かって何言ってるのこいつ

 その男は震えるミナモちゃんに手を伸ばすけど、お母さんがその手を掴んで投げ飛ばした

「冒険者をやめ、病に臥せっていたとはいえ、これでもまだ腕に覚えはあります」

 うわ、お母さん強い。剣で斬りかかってくる男たちをいともたやすく杖でのしていってる

 それに続くように冒険者たちも盗賊たちと戦闘を始めた

 おお、冒険者の人達も強い強い。私が出るまでもなさそう

「くぅ! 思ったよりもやりやがる! レギオンの旦那!お願いしやすぜ!」

 レギオンの旦那? 用心棒でも雇ってるのこいつら?

 盗賊たちの後ろからはなんだか異様な気配のする男がゆらりと出てきた

 なに、これ、凄く危険な感じが

 パシュッという音がしたかと思うと、冒険者の一人が上下に分断されてあっけなく死んでしまった

「え? ライト?」

 一瞬すぎて見えなかった

 冒険者四人組のリーダーだったライトさんは地面に転がりもう目を覚ますことはない

 カナリさんは彼に縋り付いて泣いているけど、そこにレギオンが剣を振り下ろすのが見えた

 間に合え!

 私はその剣を何とか爪ではじき返した

 鉄よりも硬い私の爪でレギオンの剣は少し刃こぼれしたみたいで、やつはかなり驚いた顔をしている

「なんだ?魔獣かこれは。俺の魔鉱製の剣が欠けるとは・・・。子猫のようだが何なんだこれは」

「そいつも高く売れるかもしれねぇ。だんな、捕まえてくだせぇ、礼金ははずむぜ!」

 あ、標的が私に移った。でもそのおかげでお母さんとミナモちゃんへのヘイトが減った

 よし、これなら

「お前たちは人を殺したにゃ。その意味をよーく理解しているのかにゃ?」

「な!こいつ喋ったぞ! ますます高値が付きそうだ!」

 あ、全員のヘイトがこっちに

「上級闇魔法、ナラク」

 この魔法はヘイトがこっちに集まっていればこっちを狙う者を飲み込む闇の穴を開くことができる

 それらに一気に飲まれる盗賊たち。もう二度とその闇から逃れることはできないだろう

 でも問題があった

 レギオンはあっさりとナラクを回避してすでに私に斬りかかっていた

「くにゃ! お前、この強さでにゃんで盗賊の用心棒なんてやってるにゃ!」

「ふん、決まっているだろう。人を斬るのが楽しいからだ! ハハハハ!魔人となった俺はより色濃くその欲望が表に出た! あの男様様だな!」

「にゃ! お前も、魔人・・・」

「何だ知っていたのか。そうだ。魔人は俺だけじゃない。ガララドとかいう小物の男だったが、あいつは魔人を増やしている。俺もそれに乗った。いずれ世界は魔人で覆いつくされるだろうよ。そして魔人になれなかった弱いやつらは、俺らの玩具になるって寸法だ」

 魔人が、増えてる?

 あの時ガララドを逃がしたせいで・・・

「そんなことはさせにゃいにゃ。お前も、あたしが止める!」

 剣を爪で折ると私はレギオンの胸にそのまま爪を振り抜いた

「ぐおっ! つ、強いなぁ! 気に入ったぞお前! 今殺すには惜しい。次までもっと強くなっておけ!」

 レギオンは地面からわらわらと出てきた亡者の群れのようなものに飲み込まれて消えていった

 助かった?

 あいつ剣を使ってたけど恐らく剣使いじゃない。むしろ最後に見たあの亡者が攻撃手段なんだと思う

 とっさにした鑑定スキルに死霊術師って書いてあったし

 く、私は守れなかった・・・。亡くなったライトさんの死体を袋に詰める冒険者たち

 カナリさんはずっと泣いてたけど、今は涙をぬぐって気丈にふるまってる

 それからの道中は皆無言だった

 こんなので旅行なんて楽しめるのかなって思ったけど、冒険者たちは皆楽しんできてと言ってくれた

 彼らの中で死は身近なもの。現に三人供誰かしら大切な人を失ってるらしくて、死になれてるって言い方は悪いけど、それなりに体験してきたらしい

 かくいう殺されたライトさんだって自分が死んだことで悲しまれるのは嫌だと生前言ってたみたい

 そっか、そういう考え方もあるんだ・・・

 私達は切り替えて死んでしまった人の分も生きなきゃいけないんだ

 忘れるなんてことはしないけど、私達は今を精いっぱい生きて、この旅行を楽しもうと思うんだ

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