学園生活11

 それから一か月ほどが経ったある日のこと

 ついに始まるのだ! 夏休みが!

 長期休暇制度はこの世界の学校にもあるみたいで、夏の熱い間は前世と同じように学校が休みになるのよね

 休みを利用して遊びに行く生徒や帰省する生徒、さらに精進しようと勉強や魔法の修行に明け暮れる生徒などそれぞれの楽しみ方がある

 ちなみにちょうどお母さんが退院する時期と重なるから、お母さんが帰ってきたら一緒に旅行に行くことになってるんだよね

 せっかくお母さんも普通に生活できるようになったんだもん、やっぱりまずは家族水入らずの旅行だよ

 行き先はもう決まってて、副都サスパーダというかなり大きな都市に行くことが決まってる

 副都というだけあってこの王都に次いで大きな街で、周囲にはいろんな観光名所もあるうえにツアーも組まれてるらしい

 正直旅行なんて前世も今世も縁遠いものだと思ってたけど、今世でこんなにも早く達成できるなんてなんと幸せにゃのだろう

 それに前世は猫ばかりに構ってたせいで友人と呼べる人もいなかった、というよりはぶられてた

 うぅ、思い出すと泣けてくるぜ

 でも今世は違う! 友達だってできたし、家族は優しいし

 ともかくだよ。私は夏休みが楽しみで仕方ないんだ

「それでは~、みなさんくれぐれも羽目を外しすぎないよう~気を付けて~、次の学期であいましょうね~」

 先生のあいさつで締めくくられて夏休みが始まった

 最初の一週間ほどはまだお母さんも退院してないから、ゆっくりと過ごした

 宿題? そんなものはないよ

 しいて言うなら魔法の訓練を少ししましょうって言われたくらいだね

 まあ言われなくても勤勉なミナモちゃんは毎日魔力制御や感知を練習してるけどね

 偉大な魔法使いになるため頑張ってるんだよ

「ねぇミーニャ、お母さんが帰ってきたら私、治癒魔法を教えてもらうんだ」

「おおそれはいいにゃ! お母さんは元癒術のスペシャリストだったって言ってたにゃ。きっと色々教えてくれるはずだにゃ」

「うん!楽しみだね!」

 治癒魔法に関しても私はいろいろと使えるけど、ミナモちゃんはまだ一つも覚えてない

 実は普通の攻撃魔法なんかよりも治癒魔法の方が習得が難しいらしくて、初級治癒魔法でも中級魔法より上なんだよね

 だからその道のスペシャリストだったお母さんに習うのが一番いいと思うんだ


 そしてお母さんの退院の日があっという間にやってきた

 すっかり魔力も安定したみたいで、もうあんなふうに弱ったりってことはないみたい

「ああ、また一緒に暮らせるなんて夢みたいだわ」

「ふふ、お母さんくすぐったいよぉ」

 今ミナモちゃんに抱き着くお母さんを見て思ったけど、お母さんすごい美人

 今までは弱ってやせ細ってて血色も悪かったから気づかなかったけど、こりゃモデルですって世に出ても大人気になれそうなほどの美人だよ

 あと胸ね

 凄い大きくて包容力がすっごい

 ミナモちゃんも将来はきっとお母さんみたく美人になるだろうね

 まあ今でも十分美少女なんだけどね

 クラスの男子なんてちらちらミナモちゃんを見てるしね

「ああミーニャ、ずっとミナモの傍についててくれたのね。いい子いい子」

「んにゃ! あたしはいつでもミニャモちゃんといっしょだにゃ」

「ふふ、頼りにしてるわ」

 そして家に戻る私達

 お母さんは初めてこの家に入るんだよね

「まあ! なんて素晴らしい家なの!? 公爵様には感謝してもしきれないわね」

「うんうん」

 公爵の好意には確かにすごく感謝してる

 貴族って平民を馬鹿にしてるイメージがあったけど、ここの公爵は本当にいい人だから好き

 娘のシュシュアちゃんもいい子だし、この夏休み中遊ぶ約束もしてるからもっと親交を深めようっと


 そんなこんなでいよいよ旅行へ行く日になった

 副都までは馬車で約三日の場所にあって、道中ところどころに村や町があるからそこで休めるみたい

 でも心配事が一つあるのよね

 それは道中襲ってくるかもしれない魔物や盗賊のことだ

 魔物ならまだいいよ。そんじょそこらの魔物に負けることなんてないからね私

 でも盗賊はなあ・・・。人なんだよね。襲ってくるとなると当然こっちも応戦するわけで、そうなると殺す気で来る相手をこっちも殺す気で向かい撃たなきゃならない

 ためらえばこっちがやられるだろうし・・・

 でもその殺すって言うのが問題なわけですよ

 猫の姿とはいえ心は人間の私が人を殺す

 この世界ではやるかやられるかって考えの人が多いけど、前世のような平和な国にいた私には殺し殺されるって考えが薄い

 ああもう考えてても仕方ない! なるようになると考えよう

 もしお母さんやミナモちゃんが襲われるようなことがあれば、私が守らないと

 それがたとえ相手を殺してしまうような攻撃になったとしてもだ

 命を奪うということの意味を再度頭に刻みながら私達は馬車に乗り込んだ

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