学園生活9

 エンディ先生とフェイちゃんが家族になってから数週間が経った

 相変わらずフェイちゃんはお硬いけど、先生は本当の娘に接するようにしてるみたい

 そうそう、フェイちゃんなんだけど、見た目の歳は私らと近そうってことで生徒として一緒に授業も受けてるよ

 表向きは身寄りのなくなった獣人の子を先生が娘として引き取ったってことにしてる

 ただこの子魔法もさることながら、戦闘技術が異常なほど高いみたいなので、将来騎士とか兵士を目指してる子供達が入る戦術科に入った

 ここでは同時に魔法も教えるから、魔法の先生であるエンディ先生にも会えるね

「ふぅ、ねぇ今日の放課後はどうする? 僕はちょっと図書館に行こうと思ってるんだけど」

 放課後そう言ったのはエヴァンス君。彼は読書が趣味らしくて、将来は図書館司書を目指してるみたいね

 イケメン司書との図書館デート・・・。いえ何でもないです

「私はちょっと買いたいものがあるから文具屋さんに行こうと思ってるの。ミーニャはどうする?」

「んにゃぁそうだにゃぁ、調べたいことがあるからエヴァンス君と図書館にいくにゃ」

「そっか、じゃあまた後で家でね」

「うにゅ、行って来るにゃ」

 エヴァンス君の肩に乗って私達は一緒に図書館に向かった

 図書館は王宮近くにあって、この世界で一番の蔵書数を誇るらしい

 私が調べたいのは魔王のことなんだよね

 モンスターパニックのこともそうだけど、ここ数十年で魔王復活の兆しと言われ続けてるモンスターパニックは、回数こそ多いもののそれだけ

 数十年前から増えても減ってもない

 本来なら魔王が復活する日が近くなるにつれてモンスターパニックも増えて、街や村が消滅なんてのも珍しくなくなるのに、ずっと一定なのはおかしい

 過去に魔王が出た時と比べると明らかに違う

 世間だって気づいてるけど、魔王が出ないに越したことはないってことでそこまで詳しい調査はされてないみたいだし

 楽観的というかなんというか

 あ、一応この国だけは調査してるみたいね。まあ何の成果も上がってないけど

 でも気になるのは魔人となったガララドと、奴が言っていたあの方

 魔人は魔王軍の幹部となるために生まれるんだけど、過去の話には魔物が進化して人型になった魔人ばかりだった

 それが今回は人が魔人になってる

 やっぱり何かがおかしい

 私は図書館で魔王や魔物に関する本を片っ端から読み漁った

 時間がかかるかと思ったけど、この時また頭にスキルが浮かんで、それを使ったら一瞬で一冊読めちゃったのよね

 その名も“速読”と“超記憶”!

 これは本当に本を読むのに便利すぎる

 何せページをぺらぺらめくるだけで覚えれるし、読むスピードも半端じゃない

 はたから見れば猫がイタズラでページをペシペシしてるように見えるから、何度か図書館に来てる人達に止められたけど、どうやら話ができる猫である私のことは広まってるみたいでちゃんと話すと謝ってくれた

 さて魔王のことなんだけど、過去に出た魔王は皆魔物から魔人、魔王へと進化していったものばかり

 人間から魔人になったって文献は見当たらないなぁ

 それにモンスターパニックにしても同じことしか書かれていない

 要は魔王復活の兆しで、数ヵ月かけて増えて行って魔王復活!ってパターンばかりだった

 本当に今代の魔王は全然出てこないね

 それがただの気まぐれなのか、それとも何か準備をしているのか分からないけど、もし出てきたら世界は変なことになるんじゃないかな?

 うう、そうなったとき私はやっぱり戦いにむかうのだろうか? それともミナモちゃんたちと逃げるのか・・・

 そういえば今気づいたけど、勇者ってどうなってるんだろう?

 魔王復活後は多分に漏れず勇者が魔王を討伐してる

 その勇者が今代はいない、もしくはまだ生まれてない

 生まれてないなら待てばいいだけだから何とかなるだろうけど、もしいなかったら?

 いなかったら勝てない。魔王には誰も勝てない

 文献によると魔王を倒せる力を持っているのは勇者だけらしいのよね

 これって結構ヤバい気がする

 モンスターパニックが起こってからすでに三十年以上が経過してるっていうのに、いまだに勇者がいないってのは今までなかったことだよ?

 何を持って勇者認定されるのかは書かれてなかったから知らないけど、今までの魔王との戦いで勇者がいなかったことなんてない

 うわわわわ、いやなことを知っちゃったんだけど

 え、なんで誰も疑問に思ってないの? もしかして疑問には思ってるけど現実から目を背けちゃってる系?

 確かにモンスターパニックは冒険者で充分に防げてるけど、魔王が出てきたらどうするって言うのさ?

 うーん、これはちょっと公爵に話を聞いてみる必要があるかもね

 魔王なんて出てきた日には私の悠々自適猫生活が脅かされること間違いなし

 私は読み漁った本を元の場所に戻すと、エヴァンス君に断ってから図書館を出た

 度々すまない公爵さんよ。でも結構重要なことだから遠慮はしないのさ

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