学園生活8

「なるほどね。それでその子には危険はないのかね?」

「はいにゃ、それはもう間違いにゃいにゃよ。あたしが目を光らせてるし、この子自体はすごーーくいい子だにゃ」

「はぁ・・・。まあミーニャくんが見てくれるというのなら大丈夫だろう。私は全面的に君を信頼しているからね」

「それはちょっと過剰評価じゃにゃいかにゃ?」

「いやいや、数々の功績をあげているんだ。それにかつて人々を苦しめた、おっと失礼、君を攻めているわけではないんだ」

「いえ仕方のないことです。もし気になるのなら私を処刑してくれて構いません。死ぬ覚悟はとっくにできておりますので」

「またそういうことを言うにゃ。やっと自由ににゃったんだから今後どういう風に過ごしたいかを考えとくにゃよ」

「しかしミーニャ様、人間からしてみれば私は憎むべき対象でありまして・・・」

「いや、それはもう終わったことで三百年以上も前の話しだ。確かに憎む者もいただろうがそれは過去の話。今この時代において恐れる者はいるだろうが、ミーニャくんのお墨付きのある君を憎む者はほぼいないだろう。まあ念のためこの事実は隠すとして、君としてはどうなんだい? 私達人間を傷つける気はあるのかな?」

「そんな! 魔王に操られる前の私は神獣です。世界を守るのが女神バステト様から与えられた使命! この命に代えても今後は皆を守る盾となることを誓います!」

「それなら私は特に何もする気はない。この事は全てミーニャ君に一任するとしよう」

「んにゃ、任せるにゃ」

 乗り掛かった舟だし、この子だって無理矢理従わされていただけでそんなことはしたくなかったんだ

 もしこの子の正体が世間に知れて迫害されるとなったら、私は全力で彼女を守ろう


 さて公爵にも話せたことだし、先生の様子を見に行こうかにゃ?

 私はフェイを連れて先生のいる治療院へと向かった

 さすが狼だけあってフェイも走るのが早い。私のスピードについてこれてるね

「あの、ミーニャ様」

「にゃにかにゃ?」

「なぜミーニャ様は人化しないのですか?」

「んにゃ? 確かにあたしの変化スキルにゃら化けれるにゃ」

「それなら人化した方がこういった場所では暮らしやすいのではないですか?」

「うにゅ、そうだろうにゃ。でもあたしは人に成る気はにゃいにゃ」

「どうしてですか?」

「せっかく大好きにゃ猫ににゃれたにょににゃんでまた人間ににゃらにゃいといけにゃいにゃ? あたしはこの体に満足してるんだにゃ」

「な、なるほどです。ではもし人の手が必要な場合は私をお使いください。貴方様の手足となり働きま」

「硬すぎるにゃ! もっと砕けてフランクににゃ。あたしに仕えるとかそんにゃんじゃにゃくて、友達として傍にいて欲しいにゃ」

「と、友達、ですか」

 確かに長い間神獣で、魔王によって操られ封印されていた彼女にとって、友達という響きは初めてのものなんだと思う

 でも私はそうありたい。それに犬と猫の友達ってなんかよくない? 正確には狼と猫だけど、素敵にゃん?

 そんなこんなで治療院にあっという間に到着、先生は既に目覚めてるみたいだから会えるってさ

 病室に案内されて先生の顔を見ると、血色も良くて思った以上に元気そう

 私は窓から外を見ていた先生の膝に飛び乗った

「ミーニャちゃん!?」

「んにゃ、先生無事でにゃによりにゃ」

「ありがとうミーニャちゃん、あなたが私を助けてくれたのね」

「んにゃにゃ、先生を助けるくらいどうってことにゃいにゃ。どんとこいにゃ」

「ふふ、ありがとう。でも私はもう、死ぬ気でいたの」

「にゃ! それはどういう・・・」

 先生は語ってくれた

 娘さんと旦那さんを失ってから教師になったとこまでは聞いたけど、それと同時にモンスターパニックが起こった原因をずっと調査していたみたい

 なぜ魔物の少なかったはずの先生のいた集落付近でモンスターパニックが起こったのか?

 まるでその村だけを狙ったかのような魔物の動き

 先生はそこに不信感を持っていたみたいで、調査の結果それが魔王の手によって起こされたものだという情報を得たらしい

 それがつい最近のことで、今思えば情報に踊らされておびき出されているようだったって先生は言ってる

「そして私はついに魔王がいるという場所にやってきたのです」

 そう、そこがフェイの封印されていた祠だったというわけだ

 そこにいたのはもちろんガララドで、魔人となった彼に拘束されて、封印を解かれたフェイちゃんと融合させられた

 その融合させられた二人が今顔を突き合わせている

 先生はどうやらフェイが自分と引っ付いてた存在だと分かったようで、フェイ自身もすごく苦しんでいたことを融合して知ったから、彼女を許した

「ねえフェイちゃん、もし行くところが無いならうちにこない? 私はこの通り娘を守れなかったけど・・・。もしよかったら私と、いえ、ごめんなさいこんなことを言って」

「それはいい考えだにゃ!」

「「え?」」

 二人が声を揃えて驚いたけどそのまま続ける

「二人で一緒に住むことをお勧めするにゃ」

「し、しかしミーニャ様、私はあなたに仕えると決め」

「いいから一緒に住むにゃ。きっといい家族になれるにゃ」

「家族、ですか? 私のような者が・・・」

「フェイちゃんさえよかったらでいいの。私は、あなたと家族になりたいわ」

「・・・。でも私は、かつて多くの人をこの牙で・・・」

「それはあなたであってあなたじゃないのでしょう? 本当のあなたはほら、こんなにも優しいわ」

 先生がフェイの手を握ると、フェイの目からポロポロと涙が零れ落ちた

 あとは二人にして、私は先に家に帰ることにしたよ

 あの様子なら心配なさそうだしね。まあ一応先生と一緒に住むことは公爵に言っておかないと。ほうれんそうこと報告連絡相談は大事だからね

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