学園生活7

 涎をだらだら垂らしてこちらを餌としか見ていないかのようなこの魔物

 鑑定の結果こいつはリトルフェンリルという魔物らしいことが分かった

 このリトルフェンリルと言うのはフェンリルという古代の神獣の子供、という位置付けみたい

 それだけにかなりというかマジでもう滅茶苦茶に強いとのこと

 この魔物、世界で一番強いと言われた冒険者に、並ぶものなしと言われた聖女、さらに賢者や魔術王などと言った世界最強の一角たちを集めてようやく封印までこぎつけたというような化け物

 魔王よりは弱いにしてもそれでも勇者が相手するような魔物らしい

 それをただの子猫である私が・・・。あれ?襲ってこない?

 それどころか私を見て震えてる? え?これどういうことなの?

「にゃ、や、やろうってのかにゃ? あ、相手ににゃってやるにゃ。かかってこいにゃ!」

「いえ、いえニャフテス様、そのようなことはございません・・・。」

「にゃ、私はニャフテスじゃにゃいにゃ。ミーニャだにゃ。それよりお前喋れるのかにゃ?」

「はい、魔王によって意思を奪われておりましたが、先ほどあなたの力によって元のように意思を取り戻しました。しかし私はかつて、意思を奪われていたとはいえ多くの人々を食い殺してしまいました。神獣だった私はもはやただの魔物です。どうかあなたの手で私を討っていただきたいのです」

 彼、または彼女なのかもしれないけど、狼は私をニャフテス神だと信じ切っているようね。でもそんなこと頼まれてもこの狼さん、凄くいい狼なんだよ

 言葉遣いも丁寧だし、全然敵意が無いんだもん

「あの、私を滅してはくれないのですか? そのためにここに来たのでは?」

「もし人に危害を加えるようならそうするつもりだったにゃ。でも君は、とてもじゃないけどそうは見えにゃいにゃ。だからあたしは殺さにゃいにゃ」

「そんな、私は罪を償うために」

「それは駄目にゃ。本当に罪を償いたいにゃら一緒に来るにゃ」

「一緒にですか?」

「うにゅ、あ、でもその姿だと目立つかにゃ?」

「そこはお任せください! こう見えて私人型に変化する力を持っておりますので」

 狼さんはそういうと魔力を自分の体に込めて人型に変わった

 まあまあなんということなのでしょう。どんだけってくらいに別嬪さんじゃありませんか

 銀色の髪と犬耳に可愛らしいふさふさの尻尾。裸なのは頂けないのでどこかで服を手にいれないと

「あ、服ですか? それでしたらかつて私が自由だったころに使っていた服が確か、この、えっと、この収納亜空間の中に・・・。ありました!」

 狼ちゃんは何もない所からポンと服を取り出した

 かなりボロボロの、臭いが、うう、とんでもない臭いがしてる

 ダメダメダメだよ! 女の子ならこんな服着せられない!

 でも今服はこれ以外にないしなぁ。仕方ないから今の内だけこれを着てもらって街に戻って買うことにした

「ところで狼ちゃんの名前はにゃんにゃのにゃ?」

「えっと、私に名前はないのです。ただフェンリルや狼魔物とだけ呼ばれていた気がします。まあこれから滅びるべき私に名前など必要ありません」

「それは駄目だにゃ。あたしがつけたげるにゃ」

「なんと! ニャフテス様自ら私に名前を!? そんな恐れ多い!」

「いいからいいから。フェンリルだからフェイちゃんでどうにゃ?」

「フェイ、フェイですね! ありがとうございますニャフテス様!」

「それとあたしはニャフテスじゃんやいにゃ。あたしはミーニャ。しがない子猫ちゃんだにゃ」

「ミーニャ、様、分かりました! この不肖フェイ! 命を賭してミーニャ様に仕えると約束いたします! 魔王の洗脳より解き放っていただいた恩もこの体全てでお返しさせていただきます!」

 な、なんとまあ真面目な子なんだろう

 ひとまずまだ起きない先生を彼女に運んでもらって一緒に街まで戻った

 彼女は道中で出会って仲良くなった獣人のお友達としておく

 まあまずは公爵に報告しないとね

 先生は騙されて攫われたと正直に話して、そこからは先生にも詳しい話を聞かないとね

 でもその前にだよ。先生をしっかりと休ませてあげないとね

 先生を治療院に預けてから私とフェイちゃんは一緒に公爵の元へと行った

「あの、私のような者がお供して大丈夫なのでしょうか? 臭いが・・・」

「あああ! 忘れてたね! ちょっと寄り道しよう、可愛い服を買ってあげるから」

「可愛い服ですか? 私はボロでもいいのですが? その辺りに捨ててあるものなら今着ている物よりはマシかと」

「だから女の子なんだからちゃんと可愛いの着にゃいと!」

 問答無用でお店に入ったんだけど、やっぱり臭いで顔をしかめる店員さん

 とにかく今持っているお金で彼女に似合う服を見繕ってもらうことにした

 汚れてる服は捨ててもらってね

 それからまず店員さんはこの美少女に合う下着をいくつかと、フェイの可愛さをより引き立てる服を用意してくれた

 フリフリのついた服だからどこぞの貴族のお嬢様かと見まごうほどの、いや、お姫様と言っても過言じゃないかもしれない

 店員さんも満足そう

 で、値段は・・・。うんいいんだ、公爵にもらったお小遣いが飛ぶくらいこの子がかわいくなるなら私満足

 いくつかの服を買って出て、公爵に事情を話しに行った。一応嘘偽りなく話すつもりだよ。あの人は信用できるからね

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