学園生活4
学園生活はおおむね順調かな? 魔法を覚えるのが皆大変みたいだけど楽しそう
お母さんの方も回復に向かってるし、このままいけばまた一緒に暮らせるようになる日も近いみたい
ただ私には気になることが一つあるんだよね
それは先生のことだ
先生は私達子供を見ているとき時々すごく寂しそうな顔をする
ため息をついたり悲しそうに笑ったり・・・
子供達を本当に可愛がってくれてるのは分かるんだけど、どうにも何か訳ありな気がして仕方がない
だから私は先生が一人になった時を狙って聞いてみることにしたんだ
「んにゃ、先生、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「はい~、なんですか~?」
ニコニコといつも通りの優しい笑顔で小首をかしげる先生
それにしてもこの人美人だ。おっとりとした性格に子供思いで優しいし、垂目が眼鏡によって魅力にさらに磨きがかかってる
「あの、先生はどうしてそんにゃに悲しそうにゃんですか?」
「え?」
いつものニコニコした表情が変わって困ったような顔になった
そして息を吸い込んで口を開く
「えっと、どうして先生が悲しそうだと思ったんですか?」
「にゃんだか子供達を見ている目が、時々過去を振り返っているような、なんだか悔いてるような顔ににゃってるにょで・・・。それでちょっと気ににゃったんだにゃ」
「そう、ですか・・・。だとしたら先生はやっぱり表情を隠すのが下手、なんですね」
いつものふわりとした話し方じゃない真剣な先生に私はちょっと戸惑った
「あのですね、これはミーニャさんだからお話するんです。なんだかあなたには話しておいた方がいい気がして・・・。べ、別に他意があるわけじゃないんですよ? ただ、一人だけになら知られてもいいかなって思ったんです。単なる気まぐれなのかもしれません。聞いてもらえますか?」
「んにゅ、あたしにできることにゃらにゃんでもするにゃ。ミニャモちゃんがいつもお世話ににゃってるし」
「ふふ、あの子はよく似ているんです。かつていた私の子供に・・・」
それから先生は切々と胸の中に秘めていたかつての記憶を語ってくれた
先生は二十年ほど前エルフの国にあるのどかな村で自分の娘さん、そして旦那さんと幸せに暮らしてたらしい
旦那さんは森エルフという森に住むエルフで、先生は水辺にすむ水エルフ
同じエルフ族だけどその違いは住処と使える魔法の違いにあるみたい
例えば森エルフなら樹木を操ったり風魔法が得意だったりなんだけど、水エルフだと水中で呼吸ができたり水魔法が得意だったりやっぱり水を操ったりと少し違う
その二人の間に生まれた二人の力を受け継いだのが先生の娘さんで、名前はイリファちゃんと言ったらしい
そんな三人家族で自然と共に幸せに暮らしていたある日、先生はエルフの国の首都エリフィアへと呼ばれて出かけていた
先生は水エルフの族長の娘だったため、族長会という会議に出なきゃいけなかったみたい
数日で帰る予定だったんだけど、思ったよりも早く会議が終わったため、まだ幼いイーファちゃんのために首都でユニコーンのぬいぐるみをお土産に買って、娘の喜ぶ顔を浮かべながら意気揚々と村に帰った
でも、村はもうこの世に存在していなかったの
先生がいない間にモンスターパニックが起きたらしくて、そこら中に見知った顔のエルフの死体が転がっていた
愕然としながらも愛する夫と娘の安否を確認するために壊された自分の家へと飛び込んだ
そこで見た光景は凄惨なものだったらしい
娘をかばうように倒れ、魔物に食い散らかされた夫の姿と、その下で腹を裂かれて内臓を食い荒らされていた娘の姿
持っていたユニコーンのぬいぐるみを取り落とし、先生はその場で泣き崩れた
その後のエルフの調査でモンスターパニックだと断定されて、犠牲者である村の人達はエルフ族先祖代々のお墓に丁寧に弔われた
先生はその後数年生きる気力もなくてふさぎ込んでいたらしいけど、ある日エルフの子供達に請われて魔法を教えたことがきっかけで、子供たちが純粋なまま育つよう先生という道を選んだらしい
そっか、それで先生は子供たちをあんな優しく悲し気な目で見てたわけなのか
「その、ごめんなさいね、こんな話を聞かせてしまって・・・」
「いや、ありがとうにゃ先生。これからも子供達を見守ってほしいにゃ」
「ええ、なにがあってもここの生徒たちは私が守るわ。あの時助けられなかった娘のためにも」
先生は私の頭を撫でて立ち上がった
「さて~、明日の授業の用意をしなきゃです~。ミーニャちゃんも気を付けて帰るのよ~。ほら、ミナモちゃん呼んでるわよ~」
「んにゅ! 先生も気を付けて帰るにゃ」
先生も私に話したことで少し元気になったかもしれない
でもなんだか私の心に引っかかるのよね
先生のあの笑顔にはもっと違った何かが隠されているような。うまくは言えないけど、心にもやもやしたものが詰まる感じ?
私の考えすぎじゃなきゃいいけど
(これで、私はようやくできる。ごめんなさい子供達、ミーニャちゃん、私はもう戻らないかも。あの子の、夫の敵を取らなきゃ。それでもし死ぬことになっても、私はあの人達の所に、ようやく行けるから、何も怖くない。待っていなさい、魔王!)
エルフの気丈な女性はこれまでに得た情報を手に死地へと向かった
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