私は神獣ではないです5
後日案の定公爵家に呼ばれた私とミナモちゃん
ミナモちゃんの緊張はやはりというべきか、あの伯爵の時より緊張して声と体がものすごく震えていた。可哀そうなほどに
「そんなに緊張しないでくれ、君の猫は私の娘の命の恩人なんだ。感謝こそすれど危害を加えることなど断じてないと公爵家の名に誓おう」
「ははははははい…。ああああの、ここここ今回は、お、お招きいただき、あああありがとう、ごございまます」
「だからそんな緊張しないでほしいですの。それにしてもわたくしを助けてくださったこの猫ちゃん、本当にすごいですのね。賢いし、わたくしたち人間の言葉を理解しているようですわ」
「そ、そうなんです! ミーニャはすごい子なんです!」
「フフ、好きなんですのね。わたくしも大好きになりましたわ。よろしければミナモさん、わたくしとお友達になってくださいませんか?」
「え、ええ!? で、でも」
「私からもお願いするよ。娘は身分のせいか友達と呼べる同世代の子がいなくてね。学園に通い始めれば変わるかもしれないんだが…」
「は、はい、こ、こちらこそ、よろしくお願いします」
「まぁありがとうございます! いつでもミーニャと共に来てくださってかまいませんからね。学園に通う間はわたくしも王都に滞在しますので」
どうやら学園に入るために王都に来ようとしてたみたいね。それにしても初めてきたけどこの王都、とにかく広くて大きい。特に貴族街は見せつけるかのような貴族たちの屋敷が多くて、その中でも特に大きいのがこの公爵家の別宅
本宅は別の街にあるけど、公爵が王都勤めなので別宅を構える必要があったみたい
そのおかげでシュシュアちゃんはここに住めるのか
王都は私達が住む街からも比較的近いし、ミナモちゃんも通いやすいかも
ちなみにこの公爵様、なんと王様の弟、王弟なんだそうだ
「それと君には病気がちなお母様がいるそうだね」
「は、はい、なぜ、ご存知なのでしょう?」
「ハハハ、ここに招くにあたって君たちの裏取りはちゃんとしてあるからね。一応これでも公爵だ。身の危険はできるだけ回避したいんだよ。まあそこは今はいい。君のお母様の病はもしや魔力に関する病では?」
「は、はいそうです!」
「そうか、それならなんとかなるかもしれない」
「え?」
「君のお母様は魔力が高すぎるんだ。失礼だとは思うが恩返しになるかと思って調べさせてもらったよ。魔力が高いがゆえに体に不具合を起こす病、通称“高魔症”はね、魔力を発散させてあげればいいんだ。だが恐らくあの辺りにその術を持っている癒術師はいなかったはず。二人とも王都へ移ってこないか? ここならば高魔症の治療をできる施設があるんだ」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ、それとだね、もしよければなんだが君も娘と共に学園に通う気はないかね?」
「え、そんな! 貴族様の学園に平民の私が通うなんてとんでもないです!」
「ああそこは大丈夫だよ。王立ハルライト学園はね、優秀な平民の子なら入れるんだ。高い魔力と言うのは遺伝するんだ。君も恐らく、いや確実に高い魔力を持っているんだ。どうだい? 魔導士を目指してみないかい?」
「ま、魔導士ですか? でも私、魔法なんて使えないです」
「今はね。でも学園に入れば使えるようになるはずだよ。そして将来的には宮廷魔導士、なんてことも君なら叶えられる。学費に関しては私に任せてほしい。娘を助けてもらったんだ、そのくらいは援助させてほしい」
「す、少し、考えさせてください」
「ああ、時間はあまりないけれどしっかりと考えて欲しい。君は優秀な魔導士になれる。それだけは断言させてもらおう」
凄いことになった。ミナモちゃんが魔導士かぁ。それって冒険者とかになっちゃうことも?
そうなると私がミナモちゃんを守っている間にミナモちゃんが呪文を唱えて敵を倒す、なんてこともできるんじゃない?
わお素敵!
でも問題はお母さんのことだね。この病気って完治するのかな? 聞きたいけど話せないのがもどかしい
そう思ったとたんなんとまたしてもスキルが頭の中に浮かんできた
えっとなになに、“言語機能追加”? よく分からないけど喋れるようになるってこと?
「んにゃ、むぅ、にゃ、あーあー、テシュトテシュト、んにゃ、おお、にゃかにゃかに喋れる気がしゅるにゃ」
「ミ、ミーニャが…」
「しゃべりましたわ!」
「んにゃ、吾輩は猫である。うにゅ、えっとミニャモちゃん、あたしは賛成だにゃ。でもそにょ場合お母しゃんにょことだにゃ。おかあしゃんの病気は感知しゅりゅにょかにゃ?」
「あ、ああ、それは保証するよ。王都にいる癒術師は優秀だからね…。それよりも君、話せたのか」
「うにゅ、急に喋れるようになったにゃ。ミニャモ、いつも美味しいご飯ありがとにゃ。大好きだにゃ。これずっと言いたかったんだにゃ」
「そんな、私だってミーニャがいてくれたから頑張ってこれた。私の方こそ感謝してるし、大好き!」
「んにゃぁ、それでお母しゃんのことにゃんだけど」
「もしよければ完治後にうちで働いてもらえないかな? 彼女ほど魔力が高ければ少し教えれば癒術師として働けるだろうし、専属になってもらえれば助かる。実は先月お抱えの癒術師が引退してしまってね。少し勉強してもらうことになるが、どうかな?」
「お、お母さんに聞いてみます。本当に何から何までよくしてもらって、ありがとうございます!」
「何、もらった恩は返しきれないほど大きい。私が是非とも返させてほしいんだ」
「ふにゅふにゅ、じゃああたしはミニャモちゃんについて行くにゃ。いつまでも一緒だにゃ」
「そうだな、君ほどの知能を持つなら君も学園の生徒として入ってもらうのも面白いかもしれない」
「へにゃ!?」
え、何を言ってるのこの人、猫が学生になるとかありえないと思う
「なーに、学園長は私だ。どうとでもなる」
「げにゃ! 勉強は嫌いだにゃ!」
「でもミーニャが一緒に通ってくれるなら私も心強いかも」
「よろしいにゃ、一緒に行くにゃ」
「か、変わり身が早いんですのね」
と言うわけで今後の方針が決まった
お母さんは治療に専念して完治後ここで癒術師の勉強をして癒術師になる。これはお母さんも思ってないほどの幸運だったみたい。なんとお母さんは昔冒険者として癒術師を少しの間やってたみたいなんだよね
それなら少し勉強しなおせばまた癒術師として働けるね
で、ミナモちゃんと私は学園に通う。お母さんもいい経験になるだろうってことで了承してくれた
いやぁ何が転機になるのか分からない世の中ですよ
でもやっぱりか、この公爵様達もいよいよ私を神獣扱い。ああ、私のスローライフよグッバイ
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