猫になりました4
猫に生まれ変わってから約二カ月くらいが経った
この世界の月日の経ち方は元居た世界とほとんど同じで、一日が二十五時間、一週間が七日で一月が三十日。分かりやすくていいね
この辺りは四季は無いみたいで、年中大体気温は一緒。そういったことは人々の話を聞いて大まかに分かったことだった
ちなみに魔物は世界中どこにでもいる上に、冒険者もいる。まぁ護衛に冒険者を雇えるくらいにはたくさんいるんだろうね
この辺りは比較的平和だったんだけど、最近は魔物の数も増えてきたからちょくちょく冒険者を見るようになったんだけど、鎧とか武器とか見るとちょっとテンション上がっちゃうよね。ゲーム好きだった私としては少しあこがれもあるかも
でもこの体じゃあんな鎧は着れないし武器なんて持てない。ていうか女神様よ、平和なんじゃなかったのかいこの世界は…
魔物が段々増えてるって言うのは物騒でいけませんよ
ま、私猫だからもし仮に魔王が出てきたとしても全く関係ないんだよね。なるようになる。レットイットビーだよ
猫は気ままに暮らすのさ
でもだよ、もしももしも家族であるミナモちゃんやお母さんが襲われたら、それに私に優しくしてくれるこの街の人達が襲われたら。その時は私の全力を持ってお相手させていただきますよ!
「ミーニャー、ご飯だよー」
「んにゃ!」
ミナモちゃんに呼ばれた私はベッドから起き上がって伸びをすると一目散にご飯の元へ
お米に似た穀物を炊いてさらに柔らかくしてくれたもの、つまりおかゆに魚の塩焼きをほぐしたものを混ぜただけの簡単なご飯だけど、これがまたおいしいのである
猫だからなのかな?
でも猫が魚好きって言うのは日本の観点からだけであって、本来猫は肉食なのである
日本は魚食文化だったから当然飼われていた猫も魚が好きになったのだ
とまぁ豆知識を頭の中で披露しつつ器の中のご飯を平らげて小さくケプッとげっぷを、おっと失礼
ご飯を食べ終わったら次はミナモちゃんとお店に行く時間だ
用意はもう済ませてあるからあとは向かうだけ。着替え終わったミナモちゃんの後ろを私は尻尾をピンと立てながらついて行った
「おおミーニャ、今日も元気そうだな。ミナモちゃんおはよう!」
「おはようございますベクトさん」
「んなっ!」
「今日は栗カボチャが入荷したから少し分けてあげるよ」
「本当ですか! お母さんも喜びます!」
お店通りの人達とそんなやり取りを数回済ませてから自分達の店に立った
私は看板猫としてただ丸まって寝てるだけだけど、それでもいろんな人たちが来てくれる
看板娘と看板猫、最高のコラボレーションだとは思わないかね?
こうしてこの日も平和に何気ない日常が過ぎていく。そう思っていた
突如上がる轟音。その直後に出入り口の方から門兵さんが走ってきて人々に告げた
「モンスターパニックだ! この街でも起こるなんて!」
モンスターパニック、それはあふれかえったモンスターたちが食料を求めて村や街、国を襲う災害で、一回の冒険者じゃ歯が立たないため実力ある冒険者たちを組織してようやく対抗できるようなもの
それがこんな小さな街に向かってきてる。ここにいる冒険者じゃ止めれない
「ど、どうしよう! お母さんが!」
「んにゃお!」
とにかくまずはミナモちゃんとお母さんを避難させないと。私はミナモちゃんを追って家に帰った
扉を開けると苦しそうに立ち上がっているお母さんの姿があった
「ミナモ、よかった、無事だったのね」
どうやら騒ぎを聞いてミナモちゃんを探しに行こうとしてたみたい。この体でなんて無茶を…
「お、お母さん! 荷車を出すから乗って!」
「ええ…」
ミナモちゃんは家の裏から商品積み込み用の荷車を引いてくるとそこに毛布を引いてお母さんを乗せた
私もお母さんの膝の上にちょこんと乗るとミナモちゃんはすぐに荷車を引いて走り出した
この子結構力持ちなんだよね
向かっている場所はこういった事態のために解放される街の教会で、一番安全な場所。もちろん祀られているのは猫神ニャフテスだ
到着するとすでにたくさんの人であふれてて座る場所もないくらい
とにかく救援を連れてくるために先ぶれ兵さんが走ったらしく、その救援を待つ間はこの街の兵と冒険者たちが食い止めるみたい
でも、数の差は火を見るより明らかで、絶対に食い止められないだろうって皆言ってる
私の大切なものが、魔物なんかに壊されていいの?
否! 断じて否である!
私は乗っていたお母さんの膝から飛び降りると駆けだした
「ミーニャ! 待って! どこ行くの!?」
「んにゃおおお!!」
安心してとばかりに雄叫
おたけ
んで私は教会を出ると出入り口のある門まで一気に走った
そこにはすでに数体の魔物が入り込んでいて、門兵さんが数人倒れていた
そんな人たちをかばって冒険者たちが必死に戦ってる
でも無残に切り裂かれ倒れる冒険者たち。私は今まさに殺されそうになっている冒険者の前に立つと魔物に爪を振り下ろして倒し、そのまま次の魔物にくらいついた
小さな口だけど噛んだのは空間で、何かの力で出来た巨大な牙がその魔物を噛み砕く
「な、なんだこの子猫は!」
「わ、分からないけど私達を助けてくれてるみたい」
私は怒涛の勢いで私の好きなものを奪おうとする魔物たちを切り裂き、噛み砕き、止まることなく倒し続けた
恐らく五百匹は優に超えていたであろう魔物をすべて倒したころには日は傾き始めてたよ
疲れてヘトヘトで、倒れそうになったところを冒険者のお姉さんが抱え上げてくれた
「すごいなお前、あれだけの数の魔物を」
「うにゃぁ…」
私はそのまま眠りについた
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