猫になりました2

 街を目指す道中に色々とできそうなことを確認してみた

 私の体毛の色は真っ白だね。川があったから姿を見ると恐ろしく可愛い子猫じゃない!

 それはさておき体の動きについて

 体はもちろん四足歩行で、ジャンプ力は子猫なのにかなりあることが分かった

 何このスペック、三十メートルくらいは有に飛べたんだけど

 しかも走る速さは目測で多分時速四十キロくらいは出てるんじゃないかな?

 これって、普通の猫じゃないよねもう

 バステトさんのギフトおそるべし

 それから自分の確認、どうやらゲームのような感じでステータスみたいなものが見える

 これもギフトなんだろうけど、ステータスにはところどころ隠れてて見えない部分があって読み取れなかった

 名前はなし、スキルなどの類は不明になってる

 あと種族名が不明っていうのはどういうことなのかな?

 猫でしょそこは! 吾輩は猫である!

 その気持ちを忘れないよう優雅に気ままに、太らないようある程度の運動もしながら適度に怠けて生きてやるんだ! 


 そこから約半日くらい走ってようやく街が見えてきた

 その街は結構大きくて(まあ子猫だから大きく見えたのかもしれないけど)、周りは高い壁に囲まれてた

 なるほど、魔物が出るからこういう高い壁が必須になってくるわけか

 高さは二十メートルくらいだけど、これなら私でも簡単に飛び越えられる高さ

 でもここはあえて門から堂々と入る! 子猫を警戒して殺すようなことはしないでしょ

 私はすたすたと悠然と歩きながら門をくぐる

 案の定門兵さんたちは私を見て目を輝かせていた。猫の役得である

 あ、そう言えば門兵さんたちの言葉が分かる。これもギフトに違いない

 おっほ、これは便利便利、こういった異世界で言葉が分からないって言うのは死活問題だもんねー

 で、街は結構整備された石畳のある綺麗な街だった

 人も多いし、ここなら私をペットとして飼ってくれる人もいるはず

 ひとまずお腹がすいたから大通り沿いの屋台がたくさん居並んでいるところへ来た

 ソーセージやらハムやらお肉やら、野菜果物パン、たくさんの美味しそうな食べ物が目についた

 私はその傍らにちょこんと座って何かもらえないかと店主たちを眺める

 店主たちは私をちらっと見た瞬間に可愛いと近寄ってきてくれた

「何処から来たんだろうねぇ、この可愛さ、こりゃそうとう格式高い家で飼われてるような猫だよ。あ、でも首輪はないねぇ。野良なのかねぇ」

「可愛いなぁ、俺飼おっかな? 見ろよこの子、凄く人懐っこいぞ」

「そうだ、ソーセージ食べるかな?」

「まだ子猫だからもう少し柔らかいものがいいんじゃないかい? ほらパンだよ、お食べ」

 パン屋のおばさんが私にパンをひとかけ千切ってくれた

 何これすごくフカフカしてて美味しい!

 それからいろんな人がミルクをくれたり食べ物をくれたりと、すぐに満腹になってしまった

 その中で一人の少女が私の前に立った

 その子も屋台を出してるみたいで、パンの屋台から二軒となりの花を売る屋台の店主みたい

 こんな小さな少女が店主?って驚いたけど、周りの話を聞くにこの子は早くに冒険者である父親を魔物に殺されて亡くしており、母親も病気でふさぎがち

 その子は私を抱き上げると耳の後ろを撫でてくれた

 ふわぁ気持ちいい…

 猫の体で抱っこされるってこんな感じなのか。悪くない悪くない

「ねぇ、うちに来る?」

 その子は一言そう言ってくれた

 それは願ってもないことだけど、私一匹が増えるってことは食い扶持が増えるってことだよ? それでもいいの?

「そっか、ミナモは猫が好きだものね、いいんじゃないかい? お母さんも好きでしょう? その子のご飯のことなら私達が持ってきてあげるから、飼ってあげたら?」

「ありがとうヘラおばさん。ねぇ、一緒にお家に帰ろう?」

 そういうことなら答えは決まってる

「なぁーん」

 一鳴きしていきたいと答えた

「よし、じゃああなたの名前は…。ミーニャ! ミーニャ、よろしくね」

「んなーん」

 やったね、こんなに早く飼い主が見つかるとは思わなかったよ

 病気のお母さんのことは気になるけど、猫の私にできることは気持ちを癒すことくらい

 気ままに飼い猫生活を楽しませてもらうよ


 そして翌日

 温かい毛布と籠を用意されて私はその中で眠っていた

 病気のお母さんも私を嬉しそうに向かい入れてくれたからよかった

 それにしてもこの家、掃除も行き届いてるし整理整頓もちゃんとされてる

 動けないお母さんに変わってミナモちゃんが家のことを全部しているはず

 それは大変なことだと思う

 私はそんな彼女の行動を一部始終見ていた

 まず日が昇るころに起床して、朝の炊事掃除洗濯をする

 そのあとは庭に咲いている花を摘んで、それからその横で栽培してある薬草なんかを積んで籠に詰める

 次にそれを荷車に積んでからあの屋台へ向かった

 私は彼女にずっとついて行ってみたけど、彼女どうやら街の人達に可愛がられてるみたいで、たくさんの人に挨拶されてた

 それに肉屋さんや八百屋さんが残り物のお肉や野菜をくれてるみたい

 生活はこれで問題ないようね

 ただ危険なこともしてるみたい

 薬草や花を売った後の午後は街の外に庭には植わっていない薬草を摘みに行くみたいで、そこは少なからず安全とは言えない

 弱いとはいえ兎の魔物が出ることがあるみたい

 彼女は恐らくいつも通りであろう行動でその薬草採取、それに私もついて行った

 もちろん護衛のため

 まぁこんな身体で護衛って言うのも無理な話かもしれないけど、私の運動能力を考えるに兎魔物くらいなら簡単に倒せそうって思った

 まぁとりあえず私が周りを警戒しておいて、もし何か来たら知らせて逃げてもらうのが現実的かな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る