第3章 チビとベル③
その夜。
ベルの枕元にはいつものようにチビが眠っていた。ベルはチビと一緒に眠るのが当たり前になっていて、すやすやと健やかな寝息を立てていた。
しかしそれは、突然妨げられることとなる。
「チビ……?」
ベルは枕元にいるチビへと目を向けて驚いた。チビの全身からまばゆい光が放たれていたのだ。
ベルは光っているチビを抱えて、急いでヴァンじいさんの元へと駆けていく。
「おじいちゃん!」
「おぉ、ベル。どうしたんじゃ?」
「チビが……!」
ベルはそう言うと、ヴァンじいさんにチビを見せる。ヴァンじいさんの太い眉毛がピクリと動いた。
「これは、これは……」
興味深そうにチビとベルに近づいてくるヴァンじいさんの動きを、ベルは目で追った。
「脱皮が、始まるようじゃな」
「脱皮?」
「ベル、チビをここへ」
ヴァンじいさんが手で示す場所に、ベルはチビを置いた。先程よりも光は増しているように感じる。
「龍が三ヶ月に一度脱皮をすることを、ベルは知っているかの?」
ヴァンじいさんの言葉に、ベルはチビを拾った翌日に魔導図書館で調べたことを思い出した。
「どうやらチビの、一回目の脱皮が始まっているようじゃ」
今夜は新月。真っ暗な外とは裏腹に、チビの身体は明るい。ベルとヴァンじいさんはしばらくチビの様子を見守った。すると急速に光がチビの身体へと吸い込まれていく。そしてその光が収まった頃。
きゅるる……
小さな鳴き声と共に大きくなったチビとその抜け殻が傍にあった。
「チビ!」
ベルがチビに抱きつく。チビはベルが抱えられる大きさからかなり大きくなり、首に抱きつけるくらいの大きさになっている。これでは先程のようにベルの枕元で一緒に寝ることはかなわなくなってしまった。
それでもベルにとってはチビはチビだった。
この二ヶ月以上を共にしたチビの成長に、ベルも嬉しくなる。眠気も吹っ飛んでしまったようで、チビに抱きついては撫でている。
チビも嬉しそうにきゅるきゅると鳴いていた。
「無事に脱皮が済んだようじゃの」
ヴァンじいさんもその様子を笑顔で見守っている。
チビの抜け殻であるウロコは白く濁っていたが、それでもベルにとっては大事なチビの成長の証しだった。
「おじいちゃん。このチビのウロコ、ネックレスにしてもいいかしら?」
「おぉ、いいとも。是非大切にしておやり」
ヴァンじいさんの言葉にベルは小さなチビのウロコを集めた。そして部屋へと戻ると明かりを点けて早速ネックレス作りに励むのだった。
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