第39話 6月20日 雨の日

ここ最近雨の日が続いている。雨の日は傘という荷物が増えるし。歩きにくいし。冷たいし。良いことがない。おまけに今日みたいな風のある日は、、、。


「珠弓。大丈夫か?」

「、、、」


現在大学の帰り道。俺を待っていた珠弓とともに歩いている。ちなみに先ほどまでは桃園さんも居たが。課題の提出を忘れていたとやらで、別れたので現在は珠弓と2人。そして先ほどからお隣さんは何度か風に煽られている。風が吹くたびに傘が左右に振られている。


「、、、」


珠弓はいつも通り。無言ながら、、、。うん、表情を見ると必死に傘が飛ばないように。というかひっくり返らないように?している珠弓。ちょっと強い風が吹くと珠弓が飛ぶのではないかと見ているこっちはかなり不安になるのだが、、、。


すると、後ろの方から。


「珠弓ちゃん!」

「、、、」


あっ、とある人物の声を聞いた珠弓が歩くスピードをアップした。


俺は立ち止まり後ろを確認してみると。いや、確認しなくてもわかるのだが。光一が追いかけてきていた。そして珠弓は早々と俺より20メートルほど前を歩いている。いやいや、危ないぞ珠弓。マジで飛ばされるから。


「珠弓ちゃんちょっと!タクシー。タクシー呼ぶよー!タクシーで帰ろ!ついでにどっか寄って行こう!遊びに行こう!」


そんなことを言いながら光一が俺の横を通過。元気だね、、、。雨の中。すると光一が止まった。


「あー、弥彦もタクシー乗るか?」

「いや、遠慮する」

「そっか?じゃ、珠弓ちゃん!ちょ、、、。あれ!?珠弓ちゃん!?」


一瞬目を離すと居なくなる。まるで小さな子供。俺と光一が少し話している間に珠弓の姿は消えていた。早い。


「弥彦!珠弓ちゃんどこ行った?」

「知らん」

「マジかよ!珠弓ちゃん!風邪ひくよー!どこだー?どこ行ったー!」


そんなことを言いつつ。光一もどんどん先に進んでいく。ちなみに俺の近くに居た学生から、、、。何か変な視線を感じる。まあ、そうだよな。変なのが騒いでいたから。俺は普通の学生だぞ?


っか、珠弓の奴本当にどこまで行ったのだろうか。そのあたりで風に飛ばされてなければいいが、、、。光一が飛ばされるのは別にいいのだが。珠弓が飛ばされてけがをしたらとかだと大変だからな。


そんなことを思いつつ。俺も前に進むを再開。そして大学の敷地内を出たところで。


「あれ?柳先輩。珠弓ちゃんと一緒じゃないんですか?」


後ろから声をかけられた。


「うん?あー、桃園さん。課題提出はどうしたの?」


「まさかの家に忘れてまして、、、。あはは、、、。今からダッシュで家まで戻るところです」

「、、、。お気をつけて」

「はい。で、珠弓ちゃんは?」

「光一に遭遇して先ほど逃げて行った」

「もう、あの先輩はどうしようもないですね。また踏んでおきます」

「まあ、大ごとにならないように」

「黄金先輩弱いですから」

「弱いというか、、、。まあ、うん。いいか」

「でも、柳先輩。珠弓ちゃん探さなくていいんですか?どこかでずっこけている可能性もありますよ?」

「いや、、、。うーん」


光一から逃げていった珠弓。そして、そのあたりでずっこけている珠弓か、、、。うん。ないとは思うがなんかありそう。


「大丈夫と思いたいがな」

「まあ、先輩早く探しに行きましょう。って、私は急いで帰りますので、これで!」

「ああ、桃園さんも気を付けて」

「はーい」


そんな感じで桃園さんとの再会はあっという間に終わる。そして俺も家に向かって進んでいくのだが、、、。


「珠弓もう家まで行ったのか?」


結局俺は今マンションのエレベーターに乗っている。途中雨風が強くなったため。ズボンが、、、。重い。冷たい。靴もぐちゅぐちゅ。最悪である。とりあえずとっとと着替えよう。そう思いつつエレベーターを降りて家のドアをまわす。


ガチャガチャ。


「うん?まだ帰ってきてないのか」


俺は鍵をカバンから取り出す。そう言えば光一にも合わなかったし。もしかして本当に光一に珠弓は捕まってどこか連れて行かれたか?と思いつつ。まず室内へ。そして靴下やらやら濡れた物を洗濯機へ。濡れているズボンやらも全部脱いで洗濯機の中へ。ホント、雨の日は嫌だ。カバンを濡れないようにすると自分が濡れる。


洗濯機をまわしてから、俺はリビングでスマホを確認したが。今のところ何も連絡はない。どこ行ったんだか。


♪♪


俺がスマホを机に置くと通知音が鳴った。


「えっと、、、。噂をすればか?」


そう言いながら確認。だが珠弓ではなかった。メッセージを送って来たのは桃園さんだった。


「柳先輩。珠弓ちゃん見つかりましたか?」

「いや、まだだな。家には帰ってきてない」


俺が返事をするとすぐに返事が来た。


♪♪


「ダメじゃないですか。すぐに探しに行かないと。珠弓ちゃん黄金先輩大嫌いですから」

「っかどこいるかわからないからな。外雨だし」


♪♪


「雨でも行くんですよ」

「マジですか」


♪♪


「マジです」

「、、、。まあ、ちょっと見てくるよ。風も強くなってきたし」


♪♪


「先輩。迎えに来てください」

「、、、。う。うん!?」


桃園さんとやり取りをしていたはずだが。通知が来て開いたら、珠弓とのメッセージ画面に。そして、、、。迎えに来てください?どういうことだ?と、思っていると桃園さんからの返事が来た。


♪♪


「そうだ、柳先輩こういう時はタオル持って探しに行くのがいいと思いますよ?」


そのメッセージを見て、、、。うん。確かに必要かもしれない。と思い。桃園さんに「ありがとう」とだけ返事をしておいて、珠弓に返事をした。


「どこにいるんだ?」


少しして、、、。


♪♪


「〇×のバス停前です」


〇×のバス停って、、、。待て待て8駅は離れているのだが、、、。どういうことだ?と、思いつつ。スマホで地図アプリを開くと徒歩。25分と書かれていた。


「、、、。もしかして、、、。そこまで逃げたのか?」


そんなことを思いつつ。俺はタオルをカバンに入れて再度家を出発した。




 

今日のお人形さんは逃走しました。

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