第35話 6月3日 休み

とある休みの日の朝のこと。


時計を見ると、時間はまだ朝の6時。ちょっと今日は早く目が覚めてしまった。あまり早く起きると、仕切りの向こうにいる珠弓を起こしてしまうため。二度寝を考えたが。俺は完全に目が覚めていたので、静かに体勢を変えてうつ伏せになりスマホを手に取る。


そして、適当にニュースなどを見る。まあ対したニュースはなかった。次に天気でも見てみる。今日は晴れ。洗濯日和らしい。ならたまには、シーツやらを洗ってもいいかもな。と、今日の予定を考える俺。


それにそろそろ暑くなってくると思うので服も考えないとな。とか思っていると。


、、、。ゴソゴソ。


仕切りの向こうで音がした。寝返り?か、と思っていると。


トン。と、ベッドから降りる音がした。なので、ふと仕切りの方を見ると。珠弓が出てきた。というか姿が見えた。珠弓は俺が起きているとは思わなかったらしく。目が合うと。ビクッとその場に珠弓は立ち止まった。ごめんごめん。驚かそうとかは全く思っていなかったのだが、、、。何か悪いことをしてしまった。


「、、、。お、おはよう?」

「疑問形できたな。まあ、まだ早いから起きないが、おはよう。珠弓」

「、、、」


挨拶をすると珠弓はぺこりと頭を下げて、トタトタと部屋を出て行く。しばらくすると水の音が聞こえていたから、、、。トイレで起きただけみたいだった。


そんなことを考えつつも。ってあまり考えるとなので。先ほどの事は頭から振り払い。俺はまたスマホを見ていると珠弓が寝室に戻ってきた。そしてまた仕切りの向こうに、、、。と、思ったら違った。


「、、、」

「、、、。どした?珠弓」


さすがに足音で珠弓が近づいてくるのはわかった。俺が珠弓を見つつ少し起き上がると、、、。珠弓は俺ではなく。俺が見ていたスマホを覗き込んでいた。


「珠弓?」

「、、、」


最近はこういう時に「桃園さんが居たらなー」と、思うようになった俺。いや、すぐに珠弓が考えていること教えてもらえるとね。うん。めっちゃ助かるというか。うん。助かる。ありがとうございます。今度お礼でも考えておこう。


「ただ天気やら見てただけだぞ?」

「、、、」


珠弓は何回か頷いて、、、。自分のベッドに戻っていった。


「、、、。なんだったんだ、、、」


♪♪


俺がつぶやくと同時くらいに俺のスマホが鳴る。画面を見ると、、、。仕切りの向こうに居る方からのメッセージだった。なんだ?と見てみると。


「お出かけするんですか?」


というメッセージが届いていた。


「お出かけ?あー、天気見てたからか。いやいや、なんとなくな。洗濯できそうだなって見てただけだよ」


仕切りの向こう返事をすると。


♪♪


「そろそろ衣替えしないとですよね。ちょっと暑くなってきましたから」

「俺も思ってた。ちょっとパジャマ暑くなってきたし。薄いのにしようか。とかな」


♪♪


「今日は衣替えしましょうか」

「そうだな。そうするか」


結局俺たちは休みだが、そのまますぐに起きて洗濯やらをして、服の入れ替え。俺は服が少ないからすぐに終わるが珠弓は、、、。結構大変そうだった。まあ手伝うのは、、、。だったので、、、。


俺は他の場所の掃除したりしていた。普段から俺も洗濯やらやらしてるから珠弓の手伝いも、、、。と、思ったりしたが。珠弓が嫌がる可能性もあるので、他のことをしているのが安全と判断した。


そして昼前すぎには珠弓がリビングにやってきた。


「終わったか?」

「、、、」


頷きながら俺の横にやってきた珠弓。終わったので休憩らしい。


「、、、」

「、、、」

「、、、」

「、、、」


2人も人が居るが、基本俺が話さないと無言が続くリビング。でも、変な空気。雰囲気とかではなく。とっても落ち着くいい感じの時間だった。


ツンツン。


すると横腹を突っつかれた俺。


「、、、。珠弓。くすぐったい」

「、、、くすっ」


俺が言うとなんか。笑顔の珠弓がいた。うん。癒し。かわいい。じゃなくて、、、。


「どうしたんだ?」

「、、、」


すると珠弓はスマホの画面を俺に見せてきた。それを見てみると、、、。


「、、、。えっと、、、。ケーキバイキングね」

「、、、」


珠弓のスマホに表示されていたのは、ここからだと、、、。電車で行ける所にあるホテルのケーキバイキングの画面だった。俺が文字を読み上げると珠弓が頷いているので、まあ読むところは間違っていない様子。えっと、、、。つまり、、、。


「ケーキバイキングに行きたいと?」

「、、、」


笑顔で数回頷く珠弓。かわいい。めっちゃ笑顔だし。


「桃園さんと行くと言う選択肢は?」


一応新しいお友達と行くのもありかと思ったので、珠弓に確認してみると。またスマホをポチポチして、画面を見せてくれた。


「ごめん!その日空いてないんだー。柳先輩に連れて行ってもらったらどうかな?」


どうやら見せてくれたのは桃園さんとのメッセージ画面。ちゃんとはじめに桃園さんを誘っていたらしい。って、その日?と、思い。


「珠弓。さっきのケーキバイキングの画面もう一回見せてくれるか?」

「、、、」


珠弓はすぐに先程の画面にしてくれた。そしてよくみると、、、。


「なるほど、期間としては、2ヶ月くらい開催しているが。毎日じゃなくて決まった曜日だけで、最終日が6月7日と」

「、、、」


頷きながらあと1回しかチャンスがないことを画面を拡大してアピールしてくる珠弓。結構必死にアピールというか。珠弓さんそんなに6月7日の部分だけアップにしなくても大丈夫です。見えますから。ねえ珠弓さん?もう6月7日しか見えないんですけど、、、。アップにし過ぎです。


まあとりあえず行きたいということはわかったので。


「ケーキバイキングに行こうという事か」

「、、、」


俺が聞くといつものように頷く珠弓。そのとき俺の頭の中には、なんかいつも頷くだけが多い珠弓なので、、、。ちゃんと誘ってきたら行く。ってのもいいな。と俺は思い。


「ちゃんと誘ってくれ、、、」


、、、。たら行ってもいいぞ。と、ちょっと意地悪をしようと思ったのだが。俺の言っている途中で。


「先輩。ケーキバイキングに行きましょう」

「、、、」


俺がフリーズ。固まります。はい。普通に珠弓。誘ってきたよ。詰まることなく。普通に話して。


なるほど、こいつ。普通に話せるのに黙っているタイプか。と。っか、今までの決まりというか。極力話さない?みたいなルールを即破るほど、ケーキバイキングに行きたかったのか。このお人形さんは、、、。


「、、、」

「、、、」


少しの間俺が黙っていたからか。不安そうに珠弓が覗き込んできた。


「珠弓」

「、、、」


何?という感じで首を傾げる珠弓。


「これからは話さないとダメ。とかにするか。ちゃんと話せるみたいだしな」

「!?」


俺が言うと珠弓はわかりやすく反応。というのか全力で首を横に降る。おまけに手も前に出して無理無理アピール。いやいや、今普通にケーキバイキング行こう。言ったじゃん。即言ったじゃん。っか。先輩って呼ばれたのがありえないくらい嬉しかったから。ニヤつかないように我慢するのが結構大変だったんだからな?今の沈黙はそれだからな。って、珠弓。いつまで首振り続けるんだよ。


首を振り続ける珠弓を見つつ俺が思っていると。次第に珠弓の動きは小さくなり。そして同じく手の動きも小さくなり。両方が止まった。どうやら疲れたらしい。


結局その後の珠弓は先程のケーキバイキングに行きましょう。以外話さなかった珠弓だった。わからん。最近の女の子は全くわからん。うん。わからん。





今日のお人形さんは誘ってきました。

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