第29話 4月26日 4 風邪
桃園さんが帰ってからしばらく。
♪♪
「先輩居ますか?」
リビングに居たら珠弓からそんなメッセージが来た。どうしたんだ?と思いながら寝室に行ってみると――。
「どうした珠弓?何か欲しいか?」
「……」
珠弓ゾーンに入ると……うん。めっちゃ珠弓に見られている俺。が、今は通訳が居ないため。俺が読み取る必要がある。まあ、全くわからん。
「なんだよ」
「……」
「おかしいな。今日の朝はペラペラ話していたはずなんだが」
「……」
俺がそう言うと、珠弓はそっと布団に隠れた。おい。そしてまたすぐに少しだけ顔を出した。うん。めっちゃかわいい。
「で、なんだ?もしかして暇だからそばに居ろ?とかだったり――しないか」
「……」
俺は適当に行ったのだが……何故か俺の言葉に頷く珠弓。うん?
「えっと、ここに居ろと?」
「……」
頷く珠弓。布団に顔を半分隠した状態続く……うん。何度でも言う。めっちゃかわいい。今の珠弓。っか、なんやかんやで元気になった?とか思いつつ。
「珠弓もう一回熱だけ測ってみるか?」
「……」
俺が体温計を渡すと測りだす珠弓。そして――。
「37.7度。下がって来たな。まあ、今日はこのまま大人しくだな」
「……」
頷く珠弓……そして会話がなくなる……いやどうしろと?すると、急に俺の手に何かが触れた。見てみると、布団から伸びている小さな手が俺の小指を掴んでいる。
「……珠弓ってさ。実はめっちゃ甘えん坊?」
「—―」
俺が聞いてみると珠弓は完全に布団の中に隠れた。だが俺の小指だけは握っている。どうやら寂しい様子、まあ暇だし。いいか。と、そのまましばらく珠弓のベッドのところで過ごすことにした。珠弓に小指を拘束されているので、もう片方でスマホで適当に時間つぶし。
結局1時間ほどだろうか?ずっと俺の小指は珠弓に捕まっていたが。ふと握っている力が弱くなったと思ったら……ちょっとだけ布団から顔を出した珠弓がすやすや気持ちよさそうに寝ていた。
それを確認してから俺は一度リビングへとそっと移動した。
その後、俺が呼ばれたのは俺が風呂から出てきた時だった。
先ほどと同じようにメッセージで呼ばれて。ちょっと珠弓と話して。まあ俺の一方通行だが。そしてその中で「……お腹空いた」ということだけ、ちゃんと言ったお人形さんがいたので、2人でリビングへ移動。っか、珠弓。結構身体は元気なのね。よく食う。まあこれならすぐ治るかな。とか思いつつ。移動すると「……おにぎりが食べたい」と、再度小さな声で珠弓が言っていたので、おにぎりを作って珠弓に渡す。そして見ていたら俺も小腹が空いてきたので、結局一緒におにぎりを食べることになった。ちょっと遅い時間だがまあ食欲があるのは良いことか。とか俺は思いつつ。なんかニコニコおにぎりを食べている珠弓を見ていた。
その後はしばらく珠弓は起きていた。しばらく起きていたあと、再度珠弓はベッドへ。その後は、翌日までぐっすりだった様子。
そして翌朝は今までと同じ流れとなっていた。俺が起きる。仕切りの向こうでごそごそ。そして俺が準備出来たころに寝室から珠弓が出てきて。ぺこり。うん。いつもと同じ流れになった。
「もう大丈夫か珠弓。無理するなよ?」
「……」
珠弓はしっかりと頷いていた。前日みたいにペラペラ話すのは――なくなったが。
ちなみにその後にちょっと確認してみたら。
「それは先輩の気のせいですよ」
と、珠弓にメッセージで言われた俺だった。
そういえば光一は、1日遅れで珠弓が風邪をひいていたことを知った。そして、大騒ぎ。大学で大騒ぎしたので、近くに居た桃園さんが光一に馬乗りになり。光一を黙らせてくれました。いやー、すごい。早業みたいに光一が地面と仲良しになっていた。
「いてー、弥彦!見てないでこの暴力女を何とかしてくれ」
「……」
もちろんんだが俺は見ているだけ「すごいなー」と思いながら。いやほんと。すごい。
「……」
「なんで珠弓ちゃんもスルーなんだよー!ちょっと!珠弓ちゃん!助けて!」
珠弓も俺の横に立って光一を見ているだけ。いや訂正。めっちゃ睨んでいる。以上。
「柳先輩。どうしましょうかこの後」
「まあ光一は喜んでいるみたいだから」
「なら強めにしときます」
「馬鹿!死ぬ。桃園!っか弥彦!余計なこと言うなー」
まあ、かなり注目を集めていたが――いいか。
お人形さん元気になりました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます