第28話 4月26日 3 風邪

俺は講義開始ギリギリに講義室に滑り込んだ。セーフ。適当に空いていた席に座る。光一は……どこ行ったんだろうな。見る限り講義室には居ない。まあそれは良いとして。今日の今からの講義は大講義室で人も多い。少しくらいならスマホをいじっていても大丈夫なので。「風邪、薬局、買うもの」とかを検索していたりした。いや、珠弓にはドラッグストアに寄って来てやる言ったが。実際何が必要なのか浮かばなかったので。基本俺は常に元気であり。光一は――馬鹿だから風邪ひかないだろうし。とか思っていたら。今講義室に光一入って来たわ。見つからないように小さくなる俺。光一は……ドア付近に座った様子。良し。俺は検索再開。


ネット情報では……まあやっぱり薬や冷たいシート。とりあえず水分みたいな感じに書かれていたので。とりあえず書いてあったものをすべてメモした。


そんなこんなで半分くらいしか講義は聞いてなかったが……とりあえず講義終了。


すると、俺が連絡するより先に助けを求めようと思っていた相手が連絡をくれた。


♪♪


「柳先輩。珠弓ちゃんが講義に来なかったのですが。どうしたんですか?メッセージ入れても今のところ返事が無くて」


桃園さんからのメッセージを見て――「あー、珠弓のやつ1人になったから寝たか」とか思いつつ、もしかして。ぶっ倒れた?と、ちょっと嫌な予感もしたが……ほぼ同時だった。


♪♪


「スポーツドリンクが欲しいです」


珠弓からもメッセージが来た。多分珠弓あれだな。講義中だからって休み時間になるの待っていた見た。


「了解。他にもあったらまた連絡くれ。あと1限講義受けたら帰るから」


珠弓に返事をしてから。俺は桃園さんにも返事をする。


「多分珠弓の奴寝てるわ。あと桃園さんって今日何限まで講義ある?」


桃園さんからは返事が来た。


「今日は講義午前中だけです。って寝てるって。もしかして珠弓ちゃん風邪ですか!?風邪ですよね!?」

「そういうこと。で、もし桃園さん午後から予定ないならちょっと助けてほしい」


とりあえず休み時間のうちに桃園さんへは連絡完了。すると……また厄介なのが――。


「おいおい。弥彦!弥彦ー!」


なんかうるさいのに見つかってしまったらしい。


「—―なんだよ。うるさいな。周りに迷惑だろ?」

「いやいや、珠弓ちゃんマジでどこにいるわけ?探したけど居ないんだけど」

「知るか。どっかの講義室だろ?」

「全部見たんだけどなー。桃園が居れば居るかと思ったけど。桃園も見かけなかったし。っか、桃園には会いたくないし。あー、珠弓ちゃんと会えないとか。俺寝込むわ」

「寝込んでろホント」


こいつには知らせると限りなくうるさいのがわかるので……どうしようか。と考え。


「とりあえずもう講義始まるぞ」

「あー、珠弓ちゃんどこ行ったんだよ。そんなに俺に見つけてほしいのかよ」

「……」


光一の相手をしていると、こっちが頭痛くなりそうだ。


「もしかしたら食堂か?」

「……そういえば……売店に用?本?テキストが何とか言ってたかな――」

「何!?まさかの講義室じゃなくて、そっちか。よし早速確認してくるか」


馬鹿はすぐに出ていった。講義始まるまで後1分ないんだが……まあいいだろう。俺は講義が始まるまでに桃園さんに追加で連絡をしておいた。


それからしばらく。


午前中の講義がすべて終わり。俺はドラッグストアへ来ていた。あの後珠弓からは連絡がなかったのでとりあえず、先ほどメモした物と珠弓に頼まれたものを買ってお店を出る。


お店を出た時にスマホを確認すると。


「柳先輩。今駅に着きました」


桃園さんからメッセージが来ていたので「今ドラッグストア出たから、少しだけ待っていてくれ」と返事をしてから急いで駅に向かった。


そして駅で桃園さんと合流。


「桃園さんごめん。急に頼んで」

「いえいえ。珠弓ちゃんのお世話ができるという事は、国宝級の事ですから」

「—―えっと……まあ、とりあえず家はこっち」

「はい!」


ちょっと大丈夫かな?とは思ったが。現在珠弓の知り合いで、女性と言えば、桃園さんしかいないので、俺は助っ人とともに家へと戻った。


「ただいま」

「お邪魔します」


無事に光一とは遭遇することなく。帰って来れた。ちなみに光一には大学を出てくるときに。


「あー、光一。さっき桃園さんと珠弓から連絡あってな。今から買い物行くってよ」


まあ嘘だが。とりあえず光一にそう伝えてみたら――。


「マジかよ!桃園と2人は珠弓ちゃんが危険だから偵察しに行ってくるわ。っか弥彦も来るか?」

「……行かん」


びっくりするくらい思い通りに動いてくれる馬鹿。その後の光一は、俺の横でタクシーを呼んでいた……っか、俺は買い物。しか言ってないんだが――場所は一切言ってないのだが。すぐに来たタクシーに乗り。光一は俺の前から消えていった。


……まあいいか。


「よし、うるさいのは家から遠ざけた」


これが少し前の事。家に帰って来た俺は桃園さんを室内へ。


「いや……先輩。すごくいい部屋に住んでますね」

「まあ、いろいろあってな。で、寝室はこっち。って、入ったらバレるから。さっきも話したが……珠弓とは同じ部屋だからな?一緒ってことになってるからな?」

「大丈夫ですよ先輩。何回も言わなくても、それに普段の珠弓ちゃん見ていたらわかります」

「……わかるものなのか。それは――まあ、とりあえずこっちな」


寝室へと移動する俺と桃園さん。


「珠弓。帰ったぞ。あと桃園さんにヘルプを頼んだ」

「……」


寝室に入ると。返事はなかったが、ゴソゴソ音がしていたので、珠弓は起きているみたいだった。


「本当に仕切りだけですね」

「嘘は言ってない」

「ですね。何かあってもおかしくなさそうですね」


なんで桃園さんが楽しそうに聞いてくるのかは……うん。聞かない。聞いたら負けな気がした。


「ないからな」

「わかってますよ。珠弓ちゃん見ていたらわかりますから。珠弓ちゃんが超警戒している人はお隣の黄金先輩だけですからね。今のところ」

「まあ、隣はな。昔からだ」


部屋の中を見た桃園さんは、まあ驚いたというか、すごいですね。みたいな表情をしていた。だろな。実家がお隣というだけの男女が同じ家。さらには同じ部屋で寝ているんだから。


「珠弓?大丈夫だか?」


俺が仕切りの方を覗くと珠弓はベッドで起き上がっていた。


「寝てなくていいのか?珠弓」

「……」


俺が聞くが珠弓は何だろう。こっちを見て安心したというのかニコッとしているが……まだ熱はある雰囲気だな。そして俺の後から――。


「やっほー、大丈夫?珠弓ちゃん。助っ人が来ましたよー!」


桃園さん登場で。まあ多分声は聞こえていたからわかっていたと思うが……ちょっと恥ずかしそうにして俺を見ていた。


「……」

「柳先輩。珠弓ちゃんが、せっかく先輩と2人だったのに……ごめんごめん。珠弓ちゃん。待って無理に起き上がらないで!私が先輩に怒られるから。お願い今だけは私の言うことを聞いて!」


いつものように訳そうとした桃園さんを止めようとしたのか珠弓がベッドから出ようとしたので、俺と桃園さんは急いで珠弓の近くに移動して珠弓を止めた。


「珠弓。とりあえず熱測っとけ。スポーツドリンクはこっち置いとくからな」

「……」


すると珠弓がなんかちょっと俺から離れようとした。うん?ついに俺嫌われたか?と思ったら。


「柳先輩。汗かいたから、少し距離をとってほしいみたいですよ」


珠弓にぺちぺち軽く叩かれながら、桃園さんが訳してくれた。まあ桃園さんを連れてきたのは正解な気がするが……珠弓的にはゆっくりできないのか。が、今は桃園さんを頼る。うん。


「じゃ、珠弓。桃園さんに着替えやら手伝ってもらえ。あっ、桃園さん洗面所部屋の前で、タオルやら洗濯機の上にあるの使っていいから。洗濯は洗濯機に入れといてくれたらいいから。って頼んでいいか?」

「おまかせください!、じゃ珠弓ちゃん。この前のお泊りの時みたいに、裸のお付き合いしようねー」

「……」


よし、ここは早々に撤収しよう。このままちょっとでも長くいると大変なことになる気がしたので俺はリビングへ避難した。しばらく寝室からは桃園さんの楽しそうな声が聞こえていたが……まあ大丈夫だろう。


俺がリビングに避難してしばらく。桃園さんが寝室から出てきた。


「珠弓ちゃん。寝ちゃいました」

「悪いな。もしかしたら風邪うつるかもしれないのに、こんなこと頼んで」

「いえいえ、珠弓ちゃんと一緒に風邪をひけるならそれはそれでありですから」

「いやいや普通……風邪はひきたくないと思うぞ?って桃園さん、昼まだでしょ?あるものでいいなら適当に作るけど?」

「ほんとですか?やったー!」


といううことで、珠弓は寝ているという事だったので、今は寝かせておいて。俺は余っていたパンとウインナーやらでホットドックを作り。足りない分は冷凍食品のおかずを温め。テーブルへ。


って――いつの間にか、テーブルと椅子がバルコニーに移動していた。まあ「バルコニーがある!」と、先ほど桃園さんが言っていたので「外でも食べれるぞ」と俺が返したら……桃園さん外に机といすを運んでいた。うん。行動が早い。


「いいなー。外で簡単にご飯食べれるなんて」

「まあ、いつもは、してないが。たまに休みの時はこんな感じだな」

「私もまた誘ってください!」

「了解」

「ありがとうございます!」


桃園さんと2人でお昼を食べた後。珠弓が「お腹空いた」と起きてきたため。なおこれは、桃園さんの通訳情報。まあ食欲はあるみたいなことを言っていたので、軽くうどんを作ったら、綺麗に完食。そして少ししてまた珠弓はおやすみになりましたとさ。


結局夕方くらいまで桃園さんにいろいろ助けてもらい。先ほど桃園さんは帰っていった。なお、桃園さんが帰る数分前に、光一が帰ってきてしまったので……桃園さんと話を合わせてから……桃園さんは一時寝室に隠れて。


「弥彦!珠弓ちゃんマジでいないぞ」

「知らん。っか今日はここには居ないぞ」

「は?どういうことだ?まだ帰ってきてないのか?それはやばいだろうが!」


めっちゃうるさいですね。はい。いつも通りうるさい光一。


「……さっき連絡があって、今日は桃園さんところに泊まるってよ」

「はい!?それは全力で阻止しろよ。馬鹿野郎!」

「なんでお前に馬鹿野郎と言われているのかがわからないのだが」

「桃園のところに珠弓ちゃんが入ったら俺近づけないじゃないか」

「ならまだどっかの喫茶店にいるみたいだから探して来たらどうだ?」

「それを先言えよ!喫茶店なら行ける。よし!」


そんなことを言いながらまた光一は消えていった。ってだから俺は「喫茶店」しか言ってないんだが……。


光一が居なくなると。


「すごいですね。黄金先輩」

「だろ?」

「もう一回。十回くらい潰しても良いですね」

「……まかせる」

「わかりました!おまかせください!」


そんなやりとりをしたあと、桃園さんは帰っていった。





お人形さんは、お友達にお世話をしてもらっていました。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る