第22話 4月12日 注目
家ではほぼ珠弓と一緒に居る生活だが。大学では基本別行動。まあ学年が違うから当たり前っちゃ当たり前。そして最近の珠弓は同級生のお友達。なんでも珠弓の思っていることを当ててしまう。桃園さんと大学内ではよく一緒に行動をしているというか。桃園さんが珠弓を追いかけているのだろうか……本当にそのうち国宝に珠弓をするのだろうか。って国宝ってなんだよ。何だが、まあいいか。と思っている最近の俺。いや、桃園さんと珠弓が一緒に居れば。光一は絶対近くに来ないから。俺、超平和だから。
まあ、家に帰ると光一はよく乗り込んでくるが……確か昨日なんか……珠弓に土下座して「珠弓ちゃん頼む。あの桃園とか言うやつを何とかしてくれ。これじゃ彼氏の俺が珠弓ちゃんに近づけない。頼む」とかいろいろ突っ込みどころのあることを言っていたが――珠弓は桃園さんへの連絡もすでにできるので。
今どきというのか。テレビ電話で桃園さんを召還していた。まあでも実際に居ないので。光一は普通に俺の家に居座って、なんやかんや言っていたが。あれだね。実際に居ないから強気でいれるとかそういうものらしい。明日どうなっても俺は知らない。
しばらくそんな迷惑なことを俺の部屋でしてから。光一は退散していった。
そして、ここからは現在。俺は1人で空きコマの時間をつぶしていた。天気も良かったので、飲み物を買ってきて空いていた外のベンチに座りリラックス中。するとそこに、珠弓と桃園さんが偶然通りかかり――。
「……あっ」
どうやら珠弓の方が先に俺に気が付いたらしく、俺が気が付いた頃には、珠弓が俺が居たところに小走りで来ていた。そしてまあいつも通り。ぺこりと頭を下げていた。そして少し遅れて桃園さんがやってきて俺の横に来るなり何かを言おうとして。口を珠弓に抑え込まれていた。ホント仲いいな2人とも。日に日に珠弓が活発というか。俺や光一以外の人と珠弓が接してくれているから俺は普通に嬉しかった。だってよ、今までの珠弓見ていても、親や俺たち以外とこうやってなんかやりあっている姿見たことなかったので。すごくいいことだと俺は勝手に思っているが……珠弓よ。桃園さん苦しそうだぞ?
「珠弓、桃園さんが窒息死するぞ」
「ぷはああ――はあ……はあ……せ、先輩。珠弓ちゃん止めてくれてありがとうございます。危うく。幸せな感じにあの世に行くところでした」
「—―幸せ?」
「はい。国宝の珠弓ちゃんにあの世に連れて行ってもらうならこんなに幸せなことはありません。でも、もう少しこっちの世界で珠弓ちゃんと居たいですね」
「なんかおかしな会話している気がするが。珠弓も。ほどほどにな」
「……」
頷く珠弓。だが隣で…・・・通訳が発動した。
「もー。桃園さんをそのままにしておくといろいろ言われちゃうから困ってるのに――らしいで……ぐはっ」
桃園さん。珠弓に再度口をふさがれたというか……珠弓よ。グーの手を相手の口に押し込むのは……そりゃパーで抑えるよりは隙間があるかと思うが……まあいいか。
そんな感じで3人で話していると。
「あ、あの」
「「「うん?」」」
いつの間に複数の男性陣が近くに集まっていて、1人が俺たちに話しかけてきた。
珠弓と桃園さんもぽかん。というか。何だろうという顔をしてこちらを見てきたが。俺の知り合いではないからな?全く知らないぞ?今ここにいる奴ら。
「えっと、何か?」
俺が聞いてみると。
「弥刀さんですよね?」
「うん――?珠弓お前みたいだぞ。用事があるのは」
「……」
珠弓は俺の横にさっと来て……睨む攻撃をしていたが……おいおい、それは会話にならないからやめろ。するとそれを見ていた桃園さんが。
「えっと、珠弓ちゃんに何か用ですか?確か――同じ講義に居ましたよね?」
「あ、わかる?よかった。よかった。俺たち弥刀さんと。その、そうだ。友達になりたくて」
そんな感じで男性陣のグループは話し出したが……まあ、珠弓が相手をすることはなく。さらに桃園さんもなんか変な感じを察知したらしく。
「—―急になんですか?」
みたいな感じで言っていた。
「いや、じゃ。そのえっと。そうだ、ちょっとだけ、ご飯でも食べに行かない?」
一方男性陣も代わる代わる人が話して、何とか珠弓と接点が欲しいみたいだが。珠弓はというと完全に俺と桃園さんの後ろ。何だろう光一に近い存在……うん。光一……光一か。今日は確か大学には居るが。そういえば……珠弓を追っかけてないな。そんなことを思いつつ。ふと俺は周りを見渡す。
「……」
「……」
「……いた」
「柳先輩どうしました?」
俺の声に反応したのは桃園だった。珠弓も一応こちらを見てはいた。
「あのさ。もしかしてだけど、珠弓を連れてこいとか言われたんじゃないか?黄金光一とか言う2年生に」
「「「!!」」」
俺たちの前に居た数人は、光一の名前を出すと全員黙った。というかわかりやすく反応した。
「どうなんだ?」
「「「す、すみませんでした!」」」
男性陣はそう言い。1人が――。
「弥刀さんを連れてきたら……1人5万円くれると――言われまして」
「……はあ……馬鹿。お前たちも簡単に金出すような奴の手伝いはしない方がいいぞ」
「すみません」
「お、おい、行こうやばいって、絶対バレるな言われたんだから」
「だよな」
男性陣はごにょごにょ言ってから。ささっと俺たちから離れていった。そしてそれと同時に桃園さんも光一を確認したらしく。全力疾走。それに気が付いた光一が逃げ出した。何やってるんだよあの金持ち馬鹿。後輩を金で動かすとは……ってあの馬鹿がよくやる手口か。1年の時も同級生に金払って、レポートやら出席してもらってたからな。一応親にも報告したが――懲りてないな。あの馬鹿野郎
そんなことで、光一の作戦は失敗。そして、桃園さんがダッシュで光一を追いかけていったので……って、ホント桃園さんが居てくれると俺楽だ。
ツンツン。
すると俺の後ろに居たお方が背中を突っついてきた。
「なんだ珠弓?」
「……」
俺が振り向くと、安心したというか。一息ついた感じの珠弓がこちらを見ていた。まあ。急に囲まれたからな。びっくりはしていたのだろう。ってなんか違うな。
珠弓は俺が手に持っていた飲み物を指さしている。
「うん?なんだ飲み物が欲しいと?」
「……」
頷く珠弓。うーん。珠弓って確かマイボトルをいつも持ち歩いていた気がするのだが……なくなったのだろうか?それともちょっと睨む攻撃で疲れたから水分?とかだろうか。わからないがとにかく飲み物が欲しいと言っている気がした。
「えっと、まあ、俺の飲みかけでいいならあげれるが……って買ってこようか?」
「…・・」
言いだしてからすぐにさすがに飲みかけはダメか……と思って、買ってやるという選択肢を思いつき提案したが。珠弓は俺の持っていたボトルを欲しそうに手を出してきた。
すると後ろから。
「先輩と間接キスしたい。だって。柳先ばぃ……珠弓……ん…………」
そう言いながら光一を追いかけていった桃園さんが帰って来るなり珠弓に、
「……珠弓。早めに謝っとけ」
「……」
俺が言うと撃沈中の桃園さんにぺこりとした珠弓。まあ桃園さんには見えてないだろうが……俺は見たからあとで何か揉めたら証言はしておこう。っかそんなことを思っている間に、珠弓がそっと俺の手から飲み物を取って飲んでいた。よっぽど喉が渇いていた様子。
それから少しして桃園さん復活。
「珠弓ちゃん……意外と力強いよー」
「あと、足はめっちゃ速いぞ」
「そうなの?珠弓ちゃん?今度競争でもしようか?」
「……」
そういえば、飲み物を飲んでから珠弓はずっと照れているというか。顔が赤い気がするが……俺酒なんて飲んでなかったからな?普通にお茶だぞ?
まあ、なんかいろいろあったので、俺の空きコマはいい感じにつぶれてくれた。そしてその日は家に帰るまで光一を見ることはなかった。桃園さん結局追いついたのかな?見失った?まあ、いいか。
今日のお人形さんは一時取り囲まれ?ました。
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