第20話 4月8日 2 開始
「つまり桃園は、珠弓の様子を見ただけで、それなりに理解したと」
「そうです。国宝にしないといけないレベルの人を見つけたと思いました」
「……国宝……そういう事か。珠弓の言っていたコクホウは」
「そうです。こんなにかわいい子が大学にいるとは、思ってもなかったの。絶対に守らないといけない国宝です」
「……」
俺の隣で珠弓は――とっても恥ずかしそうに小さくなっているお昼休み。先ほどまではお弁当を食べていたが、桃園さんにかわいいかわいいと連呼されだしたあたりから。珠弓の箸が止まっていた。
それからも俺は桃園としばらく話していた。というか珠弓が会話に入ってくることがないので自然と2人が話すことになったのだが。聞いていてびっくりしたのは、桃園は入学式の時に珠弓を初めて見て何かを感じ取り。オリエンテーションで再度珠弓を見かけて話しかけたら。まあ、なんかいろいろあって今の状態になったと。守るべき国宝というのか。ごめん俺には理解できなかった。
まあ、とにかく桃園さん曰く。
「オロオロして、周りをキョロキョロしているかわいいお人形さんを見つけた」
と。そんな感じに第一印象というか。そして珠弓を見て感じたことを少し聞いていると……うん。ほぼあたり。ある意味怖いというかもしれないが。珠弓の性格をすでによく理解しているというのか。昔から知っていたのでは?と思ってしまうようなレベルだが……さらに桃園曰く「私は気になったものは、すぐに理解できるのです」だとか。なんか光一とは違うタイプのすごい人がいた。はい。これは能力というのか……全く話さない珠弓なのに読み取る能力がすごいというのか。まあとにかくすごい人らしい。
結局お昼休みは3人での食事となった。休み時間が終わる前に。桃園さんが俺とも連絡先を交換してほしいやらで、一応連絡先の交換をした。何故か……珠弓がちょっと睨んできたような……俺が「どうした?」と聞くといつもの珠弓に戻ったが。何だったのだろうか。俺の気のせい?とか思っている間に珠弓は桃園さんにまた連れて行かれた。まあ講義室が違うから。そうなるか。
ちなみに昼から光一は講義にやって来た。午前中は何していたかは……知らないが。困っても俺は知らんからな。言ったぞ?
「おい、弥彦。朝の変な女子居ないよな?」
「さあ?」
「おい。弥彦は気にならないのか?あれ危険人物だろ」
「お前の方が危険人物。って珠弓は思ってるだろうがな」
「それはないな!」
「なぜ言い切れるのかがわからない」
そんな話をしていると講義が始まったが。光一は……なんか俺の隣で他の事をしていたから俺は真面目に講義を1人で受けていた。
その日の午後。講義も終わり帰ろうと思っていたら。スマホにメッセージが来ていることに気が付いた。珠弓からで「終わったら連絡ください。待ってます」だった。って、これ1時間以上前に来てるから……ずっと待っているのだろうか?と思ったのと。珠弓が1人で待っていると考えると……なんかすごい人が集まっているような……嫌な感じしかしなかった。それに光一も講義が終わると同時に飛び出していったし……あれ絶対珠弓探しに行っただろ。珠弓関連しかあいつはなんなに早く動くことはないだろうから……。
とりあえず俺は今終わったことを連絡してみた。
「悪い。今終わった。まだ大学に居るのか?」
するとすぐに返事は来た。
♪♪
「桃園さんと売店にいます」
その文章を見て少し安心したというか。桃園さんと居たら――大丈夫だな。と、まだ知り合って数時間なのだが。桃園さんはなんか大丈夫そうと勝手に思っている俺だった。そして俺はそんなことを思いつつ、売店へと向かった。
売店に行くと珠弓と桃園さんがいた。うん。なんか周りではざわざわというか……ちょっとお2人さんが注目されてますが……って俺は気が付いた。光一が遠くから数人の人たちと珠弓たちを見ている姿を――何やってるんだか。ほんといつもいつも。すると、珠弓と目が合う。そしてすぐに珠弓が小走りでこちらにやって来た。
「珠弓ちゃん?」
急に珠弓が動き出したからだろう。桃園さんだけが置いてきぼりになったが。いいのだろうか……。
「珠弓。桃園さん忘れてる」
「……」
俺の前にやって来た珠弓に言うと。珠弓は「あっ」という顔をして振り返っていた。そして珠弓を追って来た桃園さんにぺこりと頭を下げていた。
「大丈夫大丈夫。にしても珠弓ちゃん柳先輩の事好きすぎでしょ」
「……」
桃園さんがそんなことを言い出すので、珠弓はなんかワタワタしていた。かわいい。そして遠くで光一が――睨んできているが無視。もしかして……桃園さんに光一は近づけない?これは……覚えておこう。
「お疲れ様。あと2人ともなんか初日から待たせたみたいで悪い」
「いえいえ、私は珠弓ちゃんと少しでも長く入れるので問題ありません」
「あ――そうか。で、珠弓。待ってます。だったが。何だったんだ?」
「……」
まあ俺が聞いたところで珠弓は答えないが……お隣から返事が来た。
「いやいや柳先輩。珠弓ちゃんは先輩と一緒に帰りたいだけですよ?」
「……」
珠弓がワタワタ桃園さんの口を押えようとするが……身長的にちょっと不可能だった。桃園さんスタイル良くて背もそれなりにあるからね……って珠弓から見たらみんな背が高いか。
「—―珠弓。とりあえず帰るでいいのか?」
「……」
俺が聞くとわたわたしていた珠弓は、俺の方を見て小さく頷いた。かわいい。なんかめっちゃ照れているような気がするが……。
そして3人で歩き出すが……目立つな。これ。とか思いつつ帰ることとなった。そして俺と桃園さんが話しながら歩く。
「ということは、珠弓ちゃんと柳先輩は同棲中と」
「まあ、こんな状態というか。態度だから。親は心配したんだろう。俺に決定権はなかったが」
「なるほどなるほど、珠弓ちゃん何かあったら私のところも泊まりに来ていいからね?」
「……」
桃園さんに話を振られた珠弓は「なんて答えたらいいんだろう」と。いう顔だろうか。ちょっと困ったような感じで俺を見てきた。
「珠弓。ちょっとくらい返事しろよ。桃園さんも多分……珠弓はこんな感じだったと思うけど……しばらくは……多めに見てやってくれて」
「大丈夫大丈夫。これがかわいいんじゃないですか。国宝です国宝。それに珠弓ちゃんの思っていることは見たらわかります」
「国宝かどうかはわからないが……っかわかるのがすごいんだが……」
「……」
俺の隣を歩いている珠弓がどんどん小さくなっている気がするのは気のせいだろうか……。
「でも、先輩と珠弓ちゃんは同棲しているのに。あのストーカーが彼氏とか言ってるんですよね?」
「……桃園さん光一の情報ももう持ってるわけ?」
「なるほど、光一が名前?ですか。ありがとうございます。先輩」
「……俺今—―情報渡した?」
「はい。ありがとうございます。これでストーカーの情報がさらに追加されました」
「ちなみに……どうやって情報収集してるの?」
「えっ?それは、まあ周りの方に聞いたら何となくわかりましたよ?入学式の日からいろいろ派手にしているみたいだったので、同級生に少し聞いたらすぐに出てきました」
「マジか。すでに光一の事はそんなに1年生でも広がっているのか……って桃園さん……入学してまだ少ししか経ってないよね?」
「はい、でも、人に聞くのは得意ですから」
「……すごいな」
桃園さん……敵に回すと大変というか。怖そう。にしてもホントすごいな。こんな短期間で、すごい情報の集め方というのか。ホントすごい。っか桃園さんが居るおかげで本当に光一が寄ってこないから俺的にもめっちゃいいかも。一応光一がかなり離れた後ろを付けてきているのは気が付いている俺だった。
「じゃ、珠弓ちゃん。柳先輩。私はここで」
「ああ、気を付けて。後、これからも珠弓の事頼むよ」
「もちろんです。このまま連れて帰っても良いですよ?」
「……」
桃園さんがそう言うと……さすがに珠弓は俺の後ろにそっと避難した。
「珠弓ちゃん冗談だから。柳先輩とイチャイチャするんでしょ?」
「あの、桃園さん一応だけど、俺と珠弓は珠弓の親に頼まれてなんか一緒に居るだけで付き合ってるとかないからね?」
「ふーん、ふーん。まあ、それの方が楽しい珠弓ちゃんが見れるかな?今日もいっぱい話してくれたからね」
「うん?珠弓……俺が居ないところでは桃園さんと話してたのか?」
「……」
一応ないだろうと思いつつ珠弓に確認してみたら……うん。予想通り珠弓は首を横に振る。すると桃園さんが。
「私はもう珠弓ちゃんの表情見たら何考えているか完璧だから!」
「……それはそれで――怖いというか。らしいぞ珠弓」
珠弓に話を振ってみると……なんか顔を赤くして……オロオロしていた。うん?どうした珠弓?今日変じゃないか?
「柳先輩。ダメですよ、珠弓ちゃん困らせたら」
「へ?」
「まあ遅くなるとなので、今日はこのあたりで、おやすみなさい。珠弓ちゃんまた明日ね」
「……」
そう言うと桃園さんは……俺たちの視界から消えていった。すごい人だったな。とか思いつつ。珠弓を見ると。
「……」
いつものように無言でこちらを見ていた。
「えっと――帰るか?」
「……」
俺が聞くと珠弓は頷いた。そして歩き出したら――。
「やっと邪魔が消えた!珠弓ちゃん!」
桃園さんとは別のすごいやつがやってきてしまった……桃園さん今すぐ帰ってきて。とか思っている俺だった。
今日のお人形さんは友人と一緒に行動していました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます