第17話 4月1日 2 大学生
なんていうんだっけか?過保護?って言うのかもしれないが。一応1年先輩で、現在後輩を預かっている?というのか。一緒に暮らしているので、一応確認。心配とかではなく……って、まあ全部言い訳にも聞こえるか。とにかく、「もう少ししたら帰る」というメッセージを送って来た珠弓が2時間以上帰って来ないのと、メッセージにも反応していないので。俺は多分入学式にも居たであろう。光一に電話をしてみた。
♪♪……。
「—―おー、弥彦。ど……た?もう……学式は終—―たぞ!残念だ……な!」
なんか光一は電話に出たが――めっちゃざわざわしているところに居るみたいだった。周りがうるさい。大変声が聞きにくかった。
「—―いや、残念とかなんかは知らんが。それより。珠弓と居るか?」
「もちろん!」
はい、珠弓の無事が確認されました。短い言葉だったからか、ざわざわしている感じの中でもちゃんとその言葉は聞こえた。なるほど光一に捕まっていたのか。予想通りでまあなんか安心したが……珠弓が荒れていないかが心配だ。
「珠弓を怒らさないようにな」
「……丈夫だ。めっ……元気だから」
「……珠弓が元気っていうのが全くわからないのだが――」
珠弓が元気……うん。想像できない。
「っか。一応聞いておくが何してるんだ?」
「新入……サー……勧誘!」
「—―あっそう」
とりあえず勧誘が聞こえたからサークルだろう。と勝手に解釈。そういえば光一って。サークル。あー、そういえば……なんか作っていた?入ってる?ような……とか思い出した俺。入学してしばらくして、そういえば光一は仲間を集めてなんかするとか言ってたな。それとどこかのサークルの掛け持ち?みたいなことも。まあ俺は関わりたくなかったから。無視したが。でそれに珠弓を勧誘か。うわー……どえらいことが起こりそう。とか俺が思っていると――ちょっと光一側の声が聴きやすくなった。移動した?
「弥彦も入るか?今からでも歓迎だぞ!資金はまったく気にしなくていいからな」
「入らん」
「排卵?子供でも作るのか?」
「—―お前の頭の中の変換はどうなってるんだよ!この金持ち馬鹿野郎!」
「まあまあ、騒ぎなさんな。今いい感じに入学式に居たかわいい子10人くらい捕まえたんだから」
「お前そのうち警察に捕まると俺は見た」
「いやいや、そんなヤバイどこじゃないからな」
「雰囲気が怪しいよ。っか店で暴れたらそれこそ。警察呼ばれるぞ」
「大丈夫だ、ここはハンバーガー屋だし。少しくらいは問題ないだろ!」
「はいはい。まあ、俺は関係ないからじゃ、切るな」
「おー。弥彦!ちょちょ」
ブチ。
とりあえず、通話を切った。なんか……大変そうだが。このあたりで学生が集まるハンバーガー屋ね。1つしか店が無いからそこしか浮かばなかったんだが……行った方がいいのかね。
そんなことを思いつつ時計を見ると、多分1時間は光一に捕まっているであろう珠弓。考えた結果俺は、貴重品だけ持って、家を出た。エレベーターの中で、一応スマホで再度場所の確認。うん。地図アプリに出てくるハンバーガー屋は俺の知っているところだけだった。
マンションを出ると、駅の方向へと歩き出す。そして大学方面へ移動する。
15分くらいして、目指していたお店が見えてきた。このあたりではレアだが。まあ都市部に行けば山ほどあるチェーン店。っかまだ店の外なんだが、光一が居るのを発見してしまった。窓側に……スーツ姿の女子が9、10人か。あっあの後ろ姿は珠弓か。そしてよく光一と一緒に居るメンバーが……ちょっと多めで今日は5人くらいか。何だろうな。入りにくい。っか外からでもわいわいしているのがわかるのだが――大丈夫かよ。
そんなことを思いながらお店に入ろうとすると、中からスタッフの人がやって来た。何だろう。まさか、危ない連中が中にいるから今は一般客入れてないって?とか思っていると。
「すみません、現在貸し切り利用中でして」
「……はぁ」
ヤバイ、なんか嫌な予感がしてきた。俺はスタッフの人に。
「もしかして、ここを今貸し切っているのは黄金光一という人でしょうか?」
「えっ、あ、はい。そうです。もしかして、お連れの――?」
「違いますが。一応理由がありまして、ちょっといいですか?」
「どうぞ」
なんか変なやりとりをして店内へ。本当に窓際で15、6人が……騒いでいた。いや、正確には騒いでいるのは、男子か。すると、1人が俺が入ってきたことに気が付いた。見たことないが。普通に綺麗な学生さんだった。そしてその隣の人も俺を見て……変な人が入って来たとか思われてるかな?これは。
すると俺に気が付いた2人目の人がこそこそ何か1人目の人と話しているとその隣に居た女の子。この店内で全く違う雰囲気を出していた珠弓がいた。何だろう。見た感じ……めっちゃ今の状況が落ち着かない。と言わんばかりの表情だった。まああれだけ囲まれてたらか――。
あっ、珠弓と目が合った。すると珠弓は立ち上がり。ペコペコと、俺に気が付いた1人目。2人目に頭を下げて通しもらい……そして珠弓が動き出したことに気が付いた光一は「あれ?珠弓ちゃん?トイレ?」とかなんか言っていた。俺的にはそのまま周りの男子や新入生?の女子たちとバカ騒ぎして気が付かないでもらいたかったのだが……とか思っている間に珠弓が超高速移動。
周りに一緒に座っていた女性陣のところを抜けると――俺のところまで一直線……待て待て、タックルはやめろよ?と俺が思うと同時くらいに珠弓にタックルされた。
って、飛びつかれたというのが正解か。俺は何とか珠弓をキャッチ。というか受け止めて1回その場でくるっと回って珠弓のタックル?を受け止めたが……ちょっと待て。これあまり周りに見られては行けない気がする。だって……お人形さんと抱きついているのですが――。
「—―ちょ、珠弓。何だよ」
「ちょー!弥彦じゃないか!ってなんで俺の珠弓ちゃんと抱き合ってるんだ!?」
ほら面倒な馬鹿が騒ぎだして、一気に注目を集めてしまった。十数人の視線が集まる……どうしようこれ。
「……珠弓。一度離れろ。恥ずかしい」
「……」
珠弓のかわいい顔が真横にあるので冷静になるのが……ちょっと大変だったが。何とか耐えて、いつも通り話して、抱きついている珠弓をはがすというのか。まあ降ろす。っか、珠弓のやつ飛びついてきたから浮いていたのか。って軽っ。
「……」
珠弓と目が合う。って――泣いてる?。目うるうるじゃん。えっ!?
「……なんで泣いているだ?」
「……」
珠弓はいつも通り無言で、でもそっとまた俺にくっついてきた。っておいおい。皆さん見てますから。
「弥彦。なんか嫌な予感がして来てみたが。なんで珠弓泣いてるんだ?」
「はっ?珠弓ちゃん泣いてる?どういうことだ!?」
どうやら、今泣きだしたようです。ちょっと光一も焦っていた。
「とりあえず、このままだと俺がなんか注目されるから……帰るわ」
「ちょ、待て!珠弓ちゃん!残るでしょ!?」
すると、珠弓は光一を見ることなく全力で首を横に振って俺の身体を押した。つまり……帰りたい様子です。
「なんかわからんが――珠弓連れてくわ。じゃ」
とにかく注目されていたので、俺は珠弓を連れてお店を出る。っか。店員さんたちが一番驚いて困っている顔をしていた。
「弥彦!ちょっと!待て!」
とか言っていたが。まあ両側を他の学生に挟まれていた光一はすぐには出てこれなかったので、俺と珠弓はその間にお店を出て、歩いているとすぐに追いつかれそうだったので。近くにあったスーパーに入った。
そして、店内をぶらぶら歩くとお手洗い。と書かれた看板があり。その近くにベンチがあったのでそこに避難。
「で、珠弓何がどうなった?」
俺が聞くと、なんか珠弓は俺を見ることなく。キョロキョロ周りを見て――。
「あっ、珠弓?」
近くにあった女子トイレへと駈け込んでいった。あいつホント移動は早いな。ってなんだ?光一が言っていたように本当にトイレ行きたかったのだろうか?とまあ、待つしかないのでしばらく……結局15分くらいして、珠弓が出てきた。いつもの表情になって。
「……なるほど」
どうやらトイレとかではなく。単に見た目というか。化粧?をなおしてきた様子。あと、しっかり泣き止んできたらしい。そして俺の横に座ると。スマホをポチポチ。
まさか、今からメッセージで説明会か?と思っていると――。
♪♪
本当にそのようだった。
「入学式が終わったら、すぐに黄金先輩が居て捕まってしまって。そして私他にも何人か一緒に連れて行かれて、帰れなくなっていました。来てくれてありがとうございます」
「……珠弓。説明ありがとう。なんか光一の行動はわかるから。今の説明でなんとなく理解したわ。入学式が終わったと同時に光一やってきて捕まって。珠弓のほかに光一たちがというのか。あのサークルか?のメンバーが片っ端からかわいい子見つけて。なんか勧誘会始めた。って感じか?」
「……」
うんうん、という感じに頷いている珠弓。あいつ入学式から何してるんだか。とか思いつつ俺は珠弓へ返事。ではなく。近況報告を簡単にしておいた。黄金家へ。珠弓ほど早くはないが。簡単にポチポチと。
「とりあえず、着替えたいだろ?スーツは疲れるだろうから」
「……はい」
「あと、人前で飛びつくなよ。恥ずかしい」
♪♪
「あれは勢いです。事故です。ただうれしくて自然と気が付いたらしてしまいました。ごめんなさい」
「なんでそこはメッセージなんだよ。はい。言ったんだから、今の言葉くらい話せるだろ。ってうれしくて?俺が来たことがか?」
俺が確認のために聞いてみると珠弓は……うん、赤くなったそしてスタスタ歩き出した。
「珠弓。ちょっと」
「……」
俺が呼びかけてもなんか珠弓はスタスタ歩いて行く。まあいいがか。
今日のお人形さん抱きついてきました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます