第13話 3月28日 大学

俺が現在通っている大学は、入学式の前に1回登校日?というのか。いろいろ書類というのか。今後の大学生活のしおり?とでもいうのだろうか。簡単に言えばプリントの山。そういう物の配布日。まあ説明会がある。


俺も去年それを経験した。そして今日は珠弓がその日。昨日の夕方からなんか部屋でゴソゴソしてるな……と思っていたら。昨日の夜の事


ツンツン。


部屋でくつろいでいたらいきなり背中をツンツンされた俺。まあ犯人はわかっているのだが……。


「っ!……だから。珠弓いきなり後ろから突っ突くな。心臓に悪い。後……って……どうした?スーツなんか着て」


俺が振り向くとそこにはスーツ姿の珠弓。うん、かわいい。ちゃんと珠弓のサイズだ。うん。ピシッとして……かっこいい。ではなく。かわいい。何だろう。あまりスーツを着ていてかわいい?は言わない気がするのだが……珠弓が着るとなんでもかわいくなるらしい。かわいい。


「で、珠弓。スーツなんか着てどうしたんだ?」


♪♪


こいつ。この距離に来てもスマホって……あれ?今スマホ持ってなくないか?珠弓。と思ったら。ちゃんと右手に持っていた。っかこいつ。文章作ってから俺のところ来て送信したな。と、勝手に思いつつ机にあったスマホを見ると……。


ビンゴだった。


「スーツ大丈夫かな?ちゃんと着れてますよね?大丈夫か見てほしいです。あと、明日の事前登校は私服かスーツどちらがいいのでしょうか?」

「……珠弓よ。毎回聞くが声はどうした?」

「……」

「無言はやめなさい」

「……」


頷く珠弓って……結局無言じゃないかい!はぁ……ホントどうしたらいいのだか。


「ってまあ、似合ってるし。問題ないと思うぞ」


俺が言うと安心した。という感じの表情をした珠弓。


「あと、事前登校は半々くらいだったな。スーツの人も居たが私服の人も結構いた。まあちょっと私服の方が多かったかな。ちなみに俺はスーツで行った。周り見ると……少数派だったがな」


俺が1年前の事を言うと珠弓はちょっと考えている……?みたいな様子で。スマホを触り……。


♪♪


「ありがとうございます。スーツに慣れたいのでスーツで行きます」

「話せよ。はぁ……あっカバンは忘れるなよ。マジで多分ないと大変だから」


俺が言うと珠弓は頷いてから寝室の方に歩き出して。


「……ありがと」


そう言ってから足取りは軽そうに寝室へ……って。ダメだ、たまにこうやって珠弓の声を聞けるとなんか幸せ過ぎて、気にしていたことが、どうでもよくなってしまう俺がいた。いや、だって今まで小学生のころから高校まではホント数えれるくらいしか珠弓の声聞いたことなかったのに、一緒に生活しだしたら多分もう今までの回数超えたから。なんかうれしいんだよ。あー。俺もダメなやつだわ……ホント。


そんなことを思いつつ俺はソファーに深く座った。


そして現在。俺が昨日の事を思い出したりしている間に、珠弓は準備をしてリビングに出てきた。うん。何度でも言う。スーツ姿の珠弓かわいい。2回目でも全く同じ感想の俺だった。


っかちょっと朝から珠弓が緊張している様子。


「珠弓?」

「……」


俺が話しかけると珠弓は俺を見た。


「そんなに緊張しなくても。ただ大学行って案内された部屋で話聞いて、いろいろ馬鹿みたいに書類やらやらもらったら帰って来るだけだよ」


俺が去年の流れを言うと、何度か頷いている珠弓。まだちょっと硬い雰囲気だが……大丈夫かな?とか思ってしまうが……まあ大丈夫だろう。


それから珠弓が出発、俺は休みなので玄関まで珠弓を見送る。


「じゃ、気を付けてな」


俺が珠弓の背中に声をかけると。珠弓は振り返って。


「……行ってきます」

「……お、おお」


そう言ってからドアを開けて大学へ向かった。何だろう。意表を突かれたというのか。俺しばらく立ちすくみました。なんか。行ってらっしゃい。行ってきますのやり取りが……うん。すごく驚いたというか。2日連続で珠弓の声聞けたのは初ではないだろうか。


そんな感じに1人幸せな時間。とか思っていたからだろう。俺は忘れていた。光一という存在を……。


珠弓が出かけてからしばらく。俺はいつものように洗濯やらをしていた。天気も問題なく快晴なので、普通に大学に向かっていたらもう珠弓は着いているだろう。そんな事を思いつつ。洗濯を干している俺。決して珠弓の洗濯物を眺めていたわけではない。そう、ない。すみません。やっぱりちょっと見てました。はい。


余計な考えを頭から飛ばし。俺は洗濯を干し終えると室内へ戻る。そういえば俺も珠弓たちの入学式前日にはオリエンテーションがあるので、ちょっと確認しておこうと。寝室に行き。確認。特に持ち物とかはなく。時間と場所が指定されているだけなので……うん。特に問題はなさそう。あっ、大きなカバンだけは出しておくか。とか思っていると。


♪♪


「うん?メッセージか」


俺はスマホが鳴っていたので、リビングに向かう。そして確認すると……。


「黄金先輩を止めてください」


あー。珠弓って光一の事。黄金先輩って呼んでたんだ……じゃなくて。うん?どういうこと?時計を見ると。時間的には……そろそろ説明会が終わっている頃だと思うのだが……ってなんで光一の名前が出てきたのかがわからない。あいつも俺と同じく今日は休みのはずなんだが……まさかあいつ大学に居るのか?


とりあえず、電話……と思ってから……珠弓に電話をかけたことが今のところないのだが……果たして出るのだろうか。と思いつつ。電話をかけてみた。


♪♪~。


「……無理だよな」


電話はずっと呼び出し音。と思ったが。急に音が聞こえてきた。ちゃんと珠弓電話出るのか。と思っていると……。


「……ゃん!珠弓ちゃん。いや。俺が案内するからさ。ほら行こう。あっ他の新入生も俺が案内するぞー!」

「……」


なんでだろう。光一の声が珠弓のスマホから聞こえた。ちょっといつもよりボリュームが小さいので……多分バカ騒ぎしている光一の声を珠弓のスマホが拾っているだけだろう……。


って、あいつは何をしているのだろうか。頭が痛い。そして困り果てているか。怒り心頭の珠弓の姿が想像できた俺だった。


「……珠弓。聞こえるか」

「……」


返事はない。が、聞いている可能性はあるので……。


「女子トイレにでも逃げろ。突撃してきたら、頑張って悲鳴あげろ。そしたら何とかはなると思うぞ」


プチ。


「あっ、切れた」


俺が少し話すと電話が切れた……これ大丈夫かな。とか思っていると。5分くらいしてから。


♪♪


珠弓からメッセージが来た。


「助けてください。トイレから出れません」


珠弓。ごめん、メッセージ見た瞬間現場が想像できて笑ってしまった俺だった。

まあ何たることか。何がどうなったら。そうなったのかは知らないが。とりあえずトイレには逃げたらしい珠弓だが。これは光一がまだ近くに居ると見た。


俺は珠弓のメッセージを見た後。光一に電話してみた。


♪♪~。


「……おー。弥彦。どうした」


馬鹿はすんなり電話に出た。


「お前。今どこにいる?いや言わなくていいわ。大学で何してるんだ?」

「いや、サークルの勧誘手伝ってくれ言われたからさ。チラシ配りしてたらさ。珠弓ちゃんが居てよ。数人の新入生と一緒に居たから。これは珠弓ちゃんの先輩である俺が入らないわけにはいかないと思って。校内の案内でもって提案したら。珠弓ちゃんに急に逃げられてよ。追いかけたら今さっきトイレに逃げ込まれた」

「説明ありがとう。とりあえず、早くサークルの手伝いに戻れ」

「嫌だよ」

「戻れよ。頼まれごとだろ?」

「珠弓ちゃんが居たから別だ」

「はあ……」


俺の頭の中では……どうしようかな。とか思いつつ。


「……光一。そういえば珠弓がな。昨日の夜あれだ。あれ。大学の売店にケーキ売ってるだろ?その話をしてやったら。気になったからそのうち欲しいとか言ってたぞ」

「マジか!?それは買ってプレゼントしないとだろ。馬鹿野郎それを先に教えろよ今すぐ買いに行くわ」


プチ。


そこで光一の電話が切れた。上手くいったのかは知らないが。俺は珠弓にメッセージを送る。


「少しの間だけ光一。売店に行ったかもしれないから……まあ外の様子見て見ろ」


その後珠弓からの返事はなかったが。40分くらいして。


ガチャ。


玄関のドアが開く音がした。鍵を持っているのは俺と珠弓だけなので……玄関に行ってみると……。


「……お、おかえり」

「……はあ……はあ……」


めっちゃ息切れしている珠弓が居た。もしかして、駅から走って来た?珠弓と目が合うと。何かを訴えていたが……まあとりあえず……。


「珠弓。とりあえず昼ご飯作ってやるから、着替えて落ち着いてこい」

「……」


俺が言うと何回か頷き珠弓は重そうなカバンを持って寝室へと入っていた。どうやら大きなカバンは役に立った様子。





今のところお人形さんは2日連続話してくれました。

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