第12話 3月23日 買い物

「珠弓。待て待て。背中押さなくても行くから」


俺は朝からお出かけモードの珠弓に押されている。すべてが可愛いから、されるがままの俺。って、珠弓はえらく気合を入れているというか。今日の服装。本当にお人形さんというか。おしゃれ。背は小さいのに……あっ、これは失言か。良かった口に出さなくて。えっと今日はスカートの珠弓。背は小さいが。うん。足綺麗なんだよな。すらっとしてて……って俺は何を言っているのか。失言祭りな気がする。まあとりあえず、かわいいのよ。こいつは。


えっと。で、なんでこうなったんだっけ?まだ大学は春休み。珠弓もまだ春休みの今日。朝から俺は珠弓に背中を押されている。理由は……。


♪♪


「お買い物行きませんか?」


昨日そんなメッセージから始まった。夜ベッドに寝転んでいたらスマホが鳴った。って珠弓。お前仕切りの向こうに居るよな。


「珠弓。どうしたんだ急に?」


仕切りに向かって話す俺。するとすぐに……。


♪♪


「新しい洋服をみたいなと思いまして」

「……珠弓よ。姿は見えないが、話すという選択肢はないのか?絶対スマホで文字打ち出す方が面倒な気がするんだが……」


♪♪


「問題ありません」

「あるよ。っか珠弓がメッセージの返事返すのが早いことはわかったからさ。この距離くらいの時は話さないか?そんなに話すの嫌なのか?珠弓は」


♪♪


「嫌ではないです」

「なら話した方が早いって」


♪♪


「今はまだ準備が」

「準備ってなんだよ。っか、まあ、もういいわ。これ話してるだけで時間がかかりそうだ。で、買い物?」


♪♪


「はい。休みのうちにもう少し私服を増やしておきたいな。と思いまして」

「珠弓それなりに服持ってるよな?洗濯見てると……結構ある気がするんだが……」


そう言いながら思い浮かべると……うん。珠弓の洗濯見てるが。いろいろ持っている気がする。珠弓スペースのところも服はそれなりにあると思うし。


♪♪


「ダメですか?」

「いや、ダメではない。って俺に付いてきてほしいのか?」


♪♪


「はい」

「……うん。素直に言われると……いや、言われてはないか。でも、まあ、暇だし付いて行ってもいいが……」


♪♪


「じゃ明日お願いします。おやすみなさい」

「ちょ、珠弓」


そこで珠弓からのメッセージは終わった。ってこいつ言うだけ言って連絡を絶ちやがった。まあ仕切りの向こうにいるから乗り込んだらいいのだが……うん、トラブルが起こるとなので。一息吐いて、俺は再度寝ころんだ。


「……おやすみ。珠弓」


そして、今である。なんか朝からご機嫌な珠弓が早く行こうという感じで俺を急かしてきていた。いやいや行くから、ちゃんと行くから。


マンションを出た俺たちはそのまま駅へ、電車に乗りしばらく。大きなショッピングモールに来ていた。って、こう考えると、珠弓と居るだけでなんか目線を感じる。隣を歩く珠弓に向けてだと思うが……結構な視線を感じる。って珠弓こういうのはもう慣れっこなのだろうか。と、様子を見てみると……うん。慣れてます。完全に、入り口にあったフロアガイド見つつ歩いていました。


「珠弓よ。まずどこ行くんだ?」

「……」


珠弓はフロアガイドをこちらに見せて、1つの店舗を指さしている。それは昨日から言っていた服屋さん。って一緒に生活しだしてから俺は知ったんだが。珠弓って服はめっちゃいいブランドの物とか来てるとか勝手に思っていたが。よくよく洗濯の時とかに見たり。ちょっと本人に確認してみたら。よくある大手チェーン店。安くて助かるお店。の物しか買わないらしく。服にお金をかけていない子であった。っか。えっ。その服そんなに安かったのか?とその時は結構驚いていた俺だった。


お店に到着した珠弓が今見ているのは1000円札出したら普通に100円玉が数枚帰って来るようなお値段の服を見ている……って俺普通に付いて来て珠弓の横に居たが……ここ女の人向けの服屋っていうか。場所だよな?うん。なんか俺の居場所ではないので……。


「珠弓。俺は外で待ってるよ。終わったら出てきてくれ」


そうやって珠弓に一声かけたら……。


ギュッ。


「……はい?」


出口の方に向きを変えたら服を裾を持たれていた。えっと……これは……隣に居ろと言う事でしょうか。


「居ないとだめなのか?」

「……」


珠弓は大きく頷いた。そして、今手に持っていた服2つを俺の方に見せてきた。えっと。またなんか読み取る必要があるらしい。


「もしかして……どっちがいい?的なやつか?」

「……」


2回ほど頷いた珠弓。いい笑顔していることで。


「……えっとだな。珠弓は明るい色が似合うし良いと思うが……たまには右手に持っている落ち着いた感じの服も俺はいいと思うが……」


何が正解かはわからないが。今見た瞬間に思ったことを珠弓に言ってみると……服を見ながら珠弓は頷いた。そして明るい感じの服を元に戻した。そして、もう一つの服を持ってそのままレジへ。おいおい、俺の意見そのまま聞くのかよ。とか思ったが。会計を終えて戻って来た珠弓がなんかいい笑顔だったので。何も言わなかった。そんなに選んでもらったのがうれしかったのだろうか?


その後も2、3軒お店を見てまわった。なお3軒目はお店の外で俺待機となりました。何故かって?下着売り場だったから。俺に付いてきてほしくない時は止められるのが早かった。お目当てのお店の3軒くらい隣。かなり前から「待て」の指示が珠弓より出た。早い。


そんな感じでなんかいい感じに珠弓と買い物ぶらぶら。今日は平和に終わるかな。と思っていた俺だったが……終わらなかった。ある程度回ってから。施設内でお昼を食べていたらだ。まさかまさかの……。


「……光一」


そういえば今日は出てくるとき静かだったな。とは思っていたが。まさかこいつも買い物に来ていたとは、どうやら周りに居るのは大学の知り合いかな。俺もなんか見たことある人だったから。まあとりあえずお友達数人と光一も来ていたようで……。


……うん。説明するの大変だから。ご想像にお任せします。


珠弓を発見した光一は……暴走した。それだけ。珠弓は……それはそれは、迷惑そうな。なんというのか。俺の後ろに隠れて俺が盾にされるという……大変だった。


前半はのんびり静かな買い物。後半は……どっと疲れました。ちなみに、光一と一緒に居た数人は……珠弓に見惚れていました。だが「あれ誰の妹?」みたいな声が聞こえたから……そのうち大学で珠弓を見かけて、大騒ぎが起こりそうな予感がした俺でした。って珠弓服が伸びるから引っ張らないで。俺珠弓ほど服持ってないから。ちょっと!引っ張らないで!





今日のお人形さんはお買い物へ。前半ニコニコ。後半睨む攻撃でした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る