第8話 3月7日 引っ越し

珠弓がマンションにやってきてから数日。平和な日々……だと嬉しかったのだが……そんな俺の願いは馬鹿野郎がいるからすでにぶっ壊れている。


「な?珠弓ちゃん。たまにはうちに」

「……」

「半日、1時間でいいからさー」

「……」

「なら付き合おう。そしたら変わるから。何事も経験。経験大事だから!」

「……」


大学もまだ春休みだから。というのもあるが。追っかけてきた光一。まあ隣だからそのうちには来るだろう思ったが。翌日には追っかけてきて、その後もかなり頻繁にうちに来やがる。


朝からドアをドンドン。そしてピンポン。ピンポンの嵐とかいらないから。インターホン電源抜きたいよ。マジで。何事かと思ったよ。


そして珠弓はめっちゃ光一と距離をとっていた。当たり前だよな。超危険人物だからな。


「光一。うるさい」

「弥彦には聞いてない」

「はぁ……」

「珠弓ちゃんマジでな?付き合ってくれよ!」

「……」


こんな生活続くとか嫌だからな。マジで。もう何回も言っているが……。


「珠弓」

「……」


俺が声をかけると珠弓がこちらを見てくる。って「早く助けてください」オーラが見えた気がした。


「……警察に相談でも行くか?」


とちょっと冗談のつもりで言ってみたら……。


「……」


何度も大きく頷く珠弓。あれ?


「ちょ、珠弓ちゃん!?警察?ちょー」


光一も騒いでいるが珠弓はガチらしく。向きを変えて寝室へ。そしてテキパキと寝室からカバンを持ってきた。これはおでかけ準備よし。という事だろうか。


「珠弓……マジで警察行くのか?」

「……」


強く頷く珠弓。目が本気だ。あー。これは知らんぞ。俺。言い出したのは俺だが。知らんぞ。うん。


「ちょ、珠弓ちゃん。わかった。わかったからー!」


まあ、光一が騒いでいるが。たまにはいいかと。


「光一。じゃ珠弓と警察行くから。ほら、帰れ帰れ。このままここに居て警察来たらやばいぞ」

「弥彦。タイム、タイム。珠弓ちゃんタイム!警察はダメだからー!ちょっとー!」

「……」

「タイムなしだとよ」

「いや、帰る帰るから。って、珠弓ちゃんはもう玄関だし!?」


光一はとりあえず慌てて帰っていく。って、珠弓ホントに警察行く?のだろうか。とか思いつつ。俺も光一が静かになれば。と思いながら。財布やらだけ持って。外へ出る。


そしてすでに待機中の珠弓と玄関で合流。一応お隣さんに声かけ。って居ないからメッセージ送っておいた。


「じゃ、光一行ってくるわ」


とメッセージをエレベーター内で送ってみた。そして多分ガチで警察向かっている珠弓にはメッセージ送った後にそのままエレベーター内で確認。


「珠弓」

「……」


こちらを見る珠弓。ちょっといつもの癒しオーラになってきた。光一が居なくて警戒しなくてよくなったからだろうか。


「ホントに警察行くのか?」

「……」


頷く珠弓。


「一応冗談だったんだがな。まあ、せっかく出てきたから。光一に警察には言ってきたって。思わせるために、ぶらぶらするか。この辺り教えるよ」


すると珠弓がスマホを出して……。


♪♪


俺のスマホが鳴る。


「警察署、交番行かないんですか?」

「珠弓。ホント行きたいんだな」


♪♪


「はい」

「まあ、場所は教えてやるから。今日はまあやめとこうな?光一……変わらないとはおもうが」


♪♪


「……わかりました。今日のところはやめておきます」

「っか珠弓。警察行ったら1人で話せたのか?」


♪♪


「あっ」

「……っか。あっ。をメッセージで送ってくる珠弓もなかなか」


♪♪


「話します……多分」

「ホントかよ。まあ、とりあえずスマホしながらは危ないから。喫茶店でもまず行くか」


♪♪


「行きたいです」


ということで、お人形さんと今日は警察署。ではなく喫茶店に向かうことにした。


しばらく歩いて、俺の知っている喫茶店に到着。席に着いてから珠弓はまたスマホを触っていたので……少しすると……。


♪♪


「近くの交番、警察署どこですか?」

「珠弓ホント、ガチで相談行くつもり?」


♪♪


「……あのままだと、ご迷惑かと」

「あっ、そうか。珠弓知らないもんな。大丈夫。光一前からっか、去年もあんな感じに来てたから。まあ珠弓にしてたラブコールはなかったが。とりあえずうるさいのはかわってないよ」


♪♪


「そうなんですか?でも……ご迷惑かと」

「じゃ、とりあえず相談言ったにしとくか」


と、俺がいうと頷く珠弓。なんだが……俺気がついた。


「珠弓」

「……」


なんですか?という表情の珠弓。


「喫茶店とかで俺が話すだけで。珠弓がスマホで返答だと。完全に俺が一方的に話してるように周りからみられてないか?」


♪♪


「見られてると思います」

「……なら話せよ」


♪♪


「……いつか」

「話す気ないだろ。全く」


喫茶店にて俺、お人形さんのような子に対して一方的に話している。を周りに見せつけました。俺やばい奴?になってそう。まあいいか。


そのあとはパフェをおいしそうにお人形さんが食べていました。甘いものは人を幸せにする。うん。食べてる姿もかわいいというね。ホント。


食べ終えたあとも居心地がよかったので珠弓とのんびりしていた。


♪♪


「ここ落ち着きます」

「だろ?まあうるさいのもいないしな」


♪♪


「そうですね」

「そういえば一つ聞いていいか?」


♪♪


「なんですか?」

「珠弓って、俺の事なんて読んでるんだ?」


と、少し前から疑問に思っていたので聞いてみた。今まで話しかけられる。呼ばれるがなかったので、珠弓って俺のことを苗字?名前?あだ名?どんな感じに呼んでいるんだろうか?と、思っていたので。


すると珠弓は……なんだろう。俺答えにくい質問した?考えながら……なんか。照れてる?


「珠弓?どうした?」

「……」


俺が再度声をかけると。珠弓はちょっとびくっとしてから。スマホを触り出した。


♪♪


「普通に先輩ですよ」


と、文章はいつも通り。っか、まあうつだけだならな。が、今正面にいる珠弓は……ちょっといつも通り。の雰囲気ではなかった。


「珠弓」


♪♪


「はい」

「先輩じゃなくて違う呼び方だったんじゃないか?」


俺が聞いてみると。なんか目そらされた。つまり先輩とは今まで読んでなかったとみる。


すると。


♪♪


「これからは先輩です。先輩で決まりです」

「必死なこった。まあいいけど」


それから少しして珠弓と喫茶店を出た。


「このあとは帰る。で大丈夫か?」

「……」


頷く珠弓。それを確認してから歩き出す。珠弓は俺の隣を歩いている。


基本歩いているときは静か。こんな感じである。っか、珠弓が大学通い出したら……大学内ですぐに珠弓の事が広がり騒ぎになりそう。やら光一がなんかしそう。とか思っていたらマンションに着いた。


珠弓はちゃんと付いてきている。部屋に戻るとき、光一の気配はなかったが。さてさて、何時間静かだろうか。


部屋に戻ってきてソファーでくつろぐ俺。珠弓は寝室に入っていった。


それから少しして珠弓もソファーに来た。っか2人になってからも基本こんな感じ。静かである。珠弓はどう思っているかわからないが。無言でくつろいでいるというのか。光一が来ると警戒モードになるが。基本2人のときはのんびりしている珠弓。


「珠弓」

「……」


珠弓がこちらを向く。


「まだ数字だから慣れないかもだが。だらけててもなんも言わないからな?多分大学休みだとこんな日々になるだろうし」

「……」


珠弓は頷きつつスマホを触っていた。まあ平和だから俺はいいが。珠弓が隣にいるはなんか変な感じがするが……。





今日のお人形さんは、いつも通りです。

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