第6話 2月26日 春休み
それから数日後。俺は珠弓が使うベッドやらを調達して準備した。クローゼットや棚も俺のスペース。珠弓のスペースとちゃんと分けたり。一応ベッドとベッドの間に仕切りを立ててみた。なくてもよかったかもだが。ちょっとくらい1人の時間。スペースもあった方がいいかと思い。
ある程度のできることはした。あとは珠弓が自分のは自分で準備するだろうと。とりあえず今のところはそんな感じ。
ちなみに今。珠弓はこちらに向かっている。昨日連絡があり。さらに朝にも連絡がちゃんと来た。自分の荷物を片付けに行くと。あと、荷物の一部を送ったので受け取ってほしいと。
それが昨日の事。そんなんことを思い出していると……。
♪♪
「今駅に着きました」
珠弓から連絡が来た。真面目なやつだなぁ。とか思っていると。すこしして……。
ピンポン。
「無事来たか」
ドアを開ける。そこにはキャリーケースを引いた珠弓がいた。なんだろ。中高生くらいの子のお出かけ?かな。いやいや。怒られるか。まあ口にしてないから多分セーフ。
「これは……おかえり。になるのか?」
俺がそう言うと。ちょっと驚いたみたいな表情してから。2回くらい頷いていた珠弓だった。なんかかわいい反応だった。
それから部屋に入るとまず珠弓は片付け開始。そして昼過ぎには、珠弓が実家から送った荷物が無事に届いた。
「ほら、珠弓荷物来たぞ」
俺は荷物運びくらいしか今はすることがないので、荷物運びが終わると。バルコニーに居た。片付けの邪魔しても悪いので。
するとだ。俺がいることを察した馬鹿が居たらしく……隣のバルコニーから声がした。
「弥彦ー。珠弓ちゃんもう来たよな?」
「黙秘」
「おい。来たんだろ?知ってるからな。俺もそっち行くわー。鍵開けてくれー。鍵」
「珠弓は片付け中だ。邪魔するな。っか。知ってる。って駅かどっかで待ち伏せでもしたか?」
「するわけないだろが。この俺が」
「……怪しいな」
「駅前のコンビニで駅見てたら。珠弓ちゃんが通ったからだよ」
「……めっちゃ待ち伏せしてるじゃん」
「したよ!」
「認めるのかよ!」
まあ、片付けの邪魔されると珠弓も嫌だろうしで、危険人物を入れることはもちろんなかった。何回かインターホンが鳴ったが。一応珠弓にも光一だから。というと。納得したみたいで片付けに戻った。
とりあえず俺はのんびり珠弓の片付けが終わるのをバルコニーで待った。少しして光一は諦めたのか。静かになった。
それから少しして、バルコニーへのドアが開いた。
「終わったか?」
聞くと珠弓が頷く。そして俺の横に……来たそうな感じだったが……。
「あー。サンダル1つしかないからな。また買っとくよ。まあ別にそのまま出てきても問題はないがな」
そういうと、こちらに出てくることはなかったが。ちょっと笑顔で珠弓は頷いてくれた。俺はとりあえず珠弓の片付けが終わったみたいなので室内へ戻る。
「たまにだけど、バルコニーあるから机と椅子出して1人優雅に食事やらしてたけど、珠弓もしたいか?」
部屋に入りながら珠弓に言うと……超高速で頷いている珠弓。かなりやってみたいらしい。必死って感じがかなり伝わってきた。
「……わかった。わかった。まあ、落ち着いたらかな。首痛めるぞ?そういえば、今日は何時まで居るんだ?まだ高校はあるから今日も帰るんだろう?」
頷く珠弓。するとスマホをポケットから出して。
♪♪
「遅くならないように帰る予定です」
「了解。そういえば光一が会いたい言ってたぞ」
♪♪
「……」
「だから、メールで無言はやめろ」
♪♪
「……はい」
「……で、まあ、光一は苦手なんだろ?」
♪♪
「……はい。怖いとかではないですが。明るすぎるといいますか……苦手です。とっても」
だろうな。とは思っていたが。珠弓ははっきり苦手と書いてきた。苦手な人がお隣か……珠弓よくうちに来ることにしたな。ほんと。
「まあ、なんとなくわかる。でもまあ、昔から……だからな。俺も諦めてるから、まあ諦めてたまにはウザいって言ってやれ」
♪♪
「……お願いします」
って、珠弓からは返事が来たが……これは……。
「俺が言うのか?」
♪♪
「はい」
「おいおい。便利屋か?俺は」
♪♪
「……すみません」
「っか……珠弓。何故話さないんだ?」
♪♪
「……」
無言のメッセージが送られてきた……少し前にもあったな……と俺は思いつつ。
「だ・か・ら……って。まあいいわ。また気が向いたら。少しでいいから話せよ」
♪♪
「ありがとうございます」
そんなやりとりをしてから。
「昼はパスタくらいならすぐできるぞ。食ってくか?」
そう聞くと珠弓は頷いたので、俺は昼の準備を開始する。すると……。
ピンポン。
インターホンがまた鳴った。
ピンポン。
するとまたすぐにインターホンがなる。って、なんか嫌な予感……っかさっきもこんなことがあったのですが……。
ピンポン。
ピンポンピンポン。
「あー、光一だろ。毎度ながらウザい。珠弓ちょっと火見ててくれるか?」
珠弓が頷き。俺と火の当番を交代する。そして俺は玄関に移動。
「なんだ光一」
「腹減った」
「知らん。っか普段外食しまくりがどうした?」
「今日は気分じゃないからな」
「……どーせ。珠弓がいるからだろ」
「当たり前だ。それ以外に何がある。っか珠弓ちゃんまだいるだろ?帰ってないだろ?」
「怖いわ。ストーカー」
などと、ドア越しでやりとりしたが。まあウザい。インターホン連打をしてくるから……結局。珠弓に許可を得てから。部屋には入れたが……。
「光一。とりあえず昼ごはんの邪魔をするなよ」
「大丈夫だ。弥彦の分食べるから」
「はぁ……会話不成立かよ。ホントウザい」
テーブルには3人。まあちょっと狭いがそこまで狭くはないのだが……珠弓は……俺の横で光一をめっちゃ睨んでいる。いや、見た目は多分普通だが。ずっと一緒に居るとなんかそう見えるんだよ。ちょっと違うみたいな。うん。敵を睨みつけている。そんな感じ。
「珠弓。味大丈夫か?」
「さすが弥彦。美味い。いつも通りだ」
「おまえに聞いてないし。っか普通に俺の分食ってるし。はぁ……」
馬鹿は相手する必要ないので、珠弓を見ると……笑顔で頷いてくれた。味は大丈夫みたいだ。っか、なんか癒されるというか。光一見てから珠弓見ると……めっちゃ癒されるかも。
とか思いつつ。俺は冷凍庫からご飯を出して温める。そして1人おにぎりを作ってから席に着いた。
「で、珠弓ちゃん」
「光一。食事くらい静かに食え」
「うるせーなー。弥彦は。はいはい。わかった、わかった」
とりあえず食事はなんとか終えました。が……が、だよ。
「珠弓ちゃん。そろそろ返事くれよ。な?俺ホント珠弓ちゃん好きだから。大学なると同時に。な?ダメか?1回。な?付き合ってくれー!」
「……」
「……」
「いや、マジなんでもするから。な?珠弓ちゃん。俺と暮そー!弥彦のところに居るってことにして俺と暮らそう!」
「……」
「……」
ウザい。っか。人の部屋で告白しまくるな。ちなみに珠弓はかなり、かなり迷惑そうに無言。たまに俺の方を見て「ヘルプ」みたいな感じの視線を送って来るが……部屋の中に逃げ場はないというか。光一はずっと付いてくるからな……。
俺はバルコニーにでもと避難を考えたが。1人で動こうとすると珠弓から無言の圧力というのか「近くに居て」という視線があったので渋々いるが。
「そうだ。珠弓ちゃん。まず遊びに行こう。そしたら変わるかもだし」
「……」
にしても、光一はある意味すごい。とちょっとは思うが。このままでは珠弓が可愛そうといか……ストレス?しかたまらないので。
「光一。騒ぎまくってるところ悪いが。珠弓はそろそろ帰らすからな。それに遊びに誘ってもまだ高校もあるからな。っか卒業してないんだぞ?春休みの俺らと違って」
「あー。そっかそっか。って、珠弓ちゃんの制服姿見たいわー。久しぶりに。っかよし。今から見に行くか」
「……」
「……」
こいつある意味ホントすごいわ。と思っていると。さすがに耐えれなくなったか。テーブル近くに居た俺のところに珠弓が寄ってきて……。
目だけでめっちゃ訴えてきた。顔近いよ。珠弓。あと目がガチ。近い。近いよ?
「……光一。珠弓が警察呼ぶってよ」
何となく珠弓の行動からそんなことを光一に向かっていってみると……。
「ちょ、待って。いきなり?珠弓ちゃんがそんなこと言わないだろ?」
「いきなりだそうだ。捕まってこいだと」
俺は勘で言ったのだが……ちらりと見た珠弓はしっかり俺の隣で頷いているから当たりだったらしい。
「ほら光一、捕まるか。とっとと帰るか」
「じゃ珠弓ちゃんの制服姿見るために実家帰るわ。そうだ。卒業式も行くか」
「……」
「……」
珠弓は俺に隠れて……俺は呆れる。
気がついたら。俺の服しっかり握っている珠弓。シワになりそうなくらい強く握られてますが、、、。珠弓。シワになるから持つなら優しくな?
「光一。早く帰れ。そのうち珠弓がマジで泣く。大泣きしたらどーすんだよ」
「なんでだよー!なんで俺は相手にされないんだよー。って、あっ帰る準備してくるわ。珠弓ちゃんの制服が見納め必須だからな」
馬鹿はどこまで行っても馬鹿らしい。これあとっで光一パパママに連絡しとくか。珠弓がこのままだと壊れるかもしれないから。
「……」
「……」
そして忙しいバカ野郎は帰宅。ホントなんだあれ?っていうのか。ブレーキがないというか。アクセルしかない人間というのか。俺……今までよく馬鹿野郎の相手してるな。と、うん。ホント。俺がすごいんだ。間違いない。
♪♪
すると俺のスマホが鳴った。スマホを確認すると。俺の後ろにいるお人形さんからだった。
「そんなことで泣きません」
「悪かったな。まあ、でもうちに住むとよく来るぞ。あのバカ」
♪♪
「苦手です」
「ビシッと言わないと無理だろな」
♪♪
「それは難しいかもです」
珠弓の顔は見えないが。って俺たち何してるんだか。こんな近い距離で。
それから珠弓は帰る準備をしていた。そして珠弓の準備が出来て、俺の家を出るとだった。
「おー、来た来た」
「……」
玄関のドアを開けると光一が居たからか。珠弓は俺の部屋に戻ってきて。ドアを勢いよく閉めた。そして俺に何か訴えていた。
「……話したらすぐ伝わるぞ?大嫌いとかが光一には効くかもな」
「……」
と俺が言ってみたが。珠弓はスマホを出して……。
♪♪
「一緒に来て欲しいです」
そんなメッセージを急に送って来た。
「……俺帰る用事ないんだが……」
♪♪
「あれじゃ帰れないです」
すると外からは……。
「おーい。珠弓ちゃん?帰らないのか?」
「……呼ばれてるな。光一に」
♪♪
「来てください」
とお人形さんに言われている俺。いやメッセージが来ている。ここで「ちゃんと珠弓が話したらな」とか言うとどうなるか。と思ったが。今の時点で珠弓と揉めると大変そうなので……。
「はぁ……わかった。実家でなんか食えるもの貰いがてら一緒に帰ってやるよ。準備と戸締りするからちょっと待ってろ」
俺が向きを変えると、だった。後ろから……。
「……ありがと」
俺回れ右でまた珠弓見る。久しぶりに聞いた。珠弓の声を。めちゃめちゃ小さかったので。もしかしたら外の馬鹿のせいで聞き逃しそうだったが。ギリギリ聞こえた。
「……もっと普通に話せよ。たくさん話すと爆発でもするのか?」
「……」
困った。という顔している珠弓。ホントお人形さん。まあ、でも、ちょっと話したから付き添ってやるか。と戸締りやらする俺。ってやっぱ俺も珠弓に甘すぎ……だよな。
そして結局3人で実家に帰ることになった。
家を出てからはずっと珠弓と光一に距離があり……なかなか面倒。歩いていても珠弓がどんどん歩くスピード遅くなるし。前に居る光一はうるさいし。とりあえず目立つから黙れ。光一が話さなくても目立ちそうなのに……。
そして電車に乗れば、珠弓は車両を変えようとするし。追いかけるバカ野郎もいるし。ホント大変。まあ相手すると大変なので俺は寝ることを選んだが。そして珠弓はちゃんと俺の横に避難してきていた。ロングシートの車両じゃなくて、クロスシートだったので俺が通路側。珠弓が窓側で一応通路挟んで隣に居る光一とは離れた珠弓。っか車内では静かにしろ。光一。マジで。
そしてなんやかんややりつつも無事に実家に到着した。よかった……。
各家族から「あの子たちみんなで帰ってきたよ」みたいな感じに言われたが。まあ、みんなで帰ってきたからそう言われるのは当たり前か。
光一はなんか親に怒られていたが……ほっておけばいいだろう。いつものことだし。俺が連絡しておいたからかな?
とりあえず、俺は珠弓にいつものように挨拶してから自分の家に入る。そして親に賞味期限とかギリギリなものあったらもらっていくから。と、いつものことだが実家の残り物整理をする。
普通はあまりなさそうだが……うちは結構出てくるんだよ。不思議と。賞味期限ギリギリとか。まあまとめて買うからか。なので乾物やらは先にカバンに入れる。っか入れながら……俺いつ帰ろう?数日後には珠弓があっちに来るから……一緒に帰った方がいいのだろうか。とか思っていると。
♪♪
スマホが鳴る。画面を見てみると珠弓からだった。
「こっちにはいつまで居ますか?」
なんか同じような事をちょうど考えていたらしい。とりあえず決まってないが返事をしようとすると。
♪♪
「また?」
メールはまた珠弓からだった。
「1日が卒業式なので、私は2日には出発予定です。大丈夫ですか?」
追加でメッセージが来た。まあ数日後には珠弓が俺のところにくる。って、なら……。
「じゃ、2日に帰る予定にしとくわ」
と返事をしつつ。あと「あっ、鍵珠弓に渡さないとなぁ」とか思ったりしていたら。またスマホが鳴る。
♪♪
「ありがとうございます。あの良ければ卒業式……の日とか会えますか?」
「……は?」
メールの返事に一瞬固まった俺だった。
なぜに?とね。
今日の後輩は、4文字言葉を発した・
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