第2話 2月16日 2 始まりも無言

実家の最寄り駅に着いたため光一とともに俺は電車から降りる。


久しぶりの地元だ。

確か……夏休み以来か。まあとくに変わりなし。まあそんなにころころ変わるようなもんじゃないか。


駅から実家は歩いて行ける距離なのでもちろん歩く。

まあお金持ちのご家庭。光一曰く。迎え呼んだら来るし。または「タクシーあるだろ?」みたいなことを先ほど電車から降りた時に言っていたが……俺は歩く。

俺が勝手に歩き出すと光一もまあ渋々付いてきたがな。すぐ楽をしたがるのが光一であるのでね。

こいつ1人だと数百メートルでもタクシー使うからな。

俺はタクシー待ってる間に歩けるわ。と毎回言っていたような……うん。何度も何度も言っていることだな。


そんなこんなで少し歩くと実家に到着した。

いや、ホント隣はいつ見てもデカイ。いきなりドーンって感じだよ。ホントデカい敷地と建物だよ。である。


まあそんなデカいお屋敷を俺が見ていると……。


「で、弥彦。どこ行けばいいんだ?」


光一がそんなことを聞いてきたが。


「それは知らん。帰って来いだけだったから」

「じゃ。とりあえず各自うちに帰るとするかな」

「だろな。まあ、光一とこの広間に集まることになるのだろうがな」


うん。詳しく状況。事情を知らない俺たちは、とりあえずその時はそれぞれの家に帰ったのだが…。

やはり俺の予想は当たった。


数十分後には光一の家に俺は居たからな。


光一の家にある大広間?でいいのだろうか。

とりあえず広い会場?に俺のところの親。光一のところの親。あともう1家族が今は集まっている。


「まあ、いつもの集まりだな」


俺の隣で光一が言う。


確かによく見ると言うか。

高校卒業までは週末やらはこうして光一のところに集まって食事を昔からよくしていたんだよな。うん。


現在の事を詳しく話すと……。

俺達の親同士が話しながら楽しく料理を食べている中。

俺たち子供3人は昔から親とは少し離れて座っていて、部屋の隅っこにあるテーブルが3人の定位置。指定席となっている。


そうそう3人と言ったが。紹介しておかないとな。先程までは男2人だったが。現在1家族。増えたことで。女の子が1人増えている。


俺の横に大人しく座っている。中学生……うーん。まあ、うん。年齢より若く見えると言えばいいのか。中学2、3年生くらいで成長止まった?と、言ったらかなり叩かれそうな気がするので絶対に言わないが…。


まあ少し前にも俺がチラリと触れたと思うが。

俺の横には小学校から繋がりのある幼馴染の女の子が座っている。


女の子と俺は言っているが年は1つしか変わらない。

けどね……見た目が女性ってより。まあ、昔から変わらないというのか。かわいい見た目のままなので、癖で女の子と今も俺は言ってしまう。


えっと確か卒業はまだのはずだがら…。現在は高校3年生かな?次は進学なら俺と光一と同じ大学生か。と思い。

俺ちょっと驚く。

いや知ってはいてもね。見た目が余り変わらないというか。周りのみんなが言うようにお人形さんとでもいうのか。そんな見た目のままなのでね。

まあ初めてあった時よりは、そりゃ身体は大きくなったが……うん。ここ数年は成長が止まってるのじゃないかな……?身体全体的に。ホント、あんまり触れると。もしなにかあると大変なのでこのあたりで説明は終わるがな。


って、終わっちゃダメか。ちゃんと紹介ができてないよな。

現在俺の隣に座っている。ボブカットの女の子。彼女は、弥刀みと珠弓みゆ

俺の家のお隣さん。並びで言うと。光一、俺。そして珠弓の家と3軒家が並んでいる。


珠弓は1年。年がズレているが。小学校から中学校まで同じ学校。高校も同じ高校と「なんだ幼馴染でかわいい後輩。女の子がいるじゃないか」ってなるだろうが。このお人形さん問題があるので……確かにめっちゃかわいい後輩。ではあるが……楽しくわいわいなどの過去は今のところない。


って話が脱線したか。

えっと……なんだ。とりあえず弥刀家の家族も昔から仲が良いので。よくこうして光一のところに集まっている。

そしてある時から珠弓は食事の時などは必ず俺の横にこうして大人しく居る。座っているようになった。

って、ホント次大学生?まだ今から高校生になるって言ってもわからない気がするのだが……あっ。はい。ごめんなさい。もう触れません。はい。いやなんか説明をしようとするとね。いろいろ思ってしまってね。余計なことを考えていた世である。


とか俺がいろいろ思っていると……。

金持ち馬鹿がまた馬鹿な事を言い出したのだった。


「珠弓ちゃん。珠弓ちゃんも次大学だよな?大学受験やらって、少し前に親から聞いたからさ。どこ受けたんだっけ?」


そんな感じに光一が珠弓に話しかけるが……。


「……」


沈黙。とでもいうのか。反応なし。でも光一の方は見ている。


「もしもーし?珠弓ちゃん?起きてます?うん。視線は合ってるね。って聞いてる?」

「……」


再度光一が話しかけても……やっぱり珠弓は光一を見ているだけで無言。


「ちよー。珠弓ちゃん、まだ無視なの?俺泣くよ?ホント泣くからな?いいか?いいんだな?」

「……」


と、光一が泣き真似の演技を今回もしているが珠弓は無言。反応なし。


「……ちょー。弥彦ー」

「……」


とりあえず。なんか光一がウザいから。俺も反応しないでおいた。


「弥彦も無視してきたー」

「……」

「……」


先ほどから俺の正面に座っていた光一が珠弓に必死に話しかけているが……やはり昔から変わってない様子だ。

光一の方を珠弓は見てはいるが……返事なし。の状態。これは昔からの事である。


ちなみに俺が無視したのは……まあまた光一がなんかやってるよ。ってことで、相手しなかっただけ。よくあることなので気にしないでほしい。ホントよくあると思うので。無駄にかかわると疲れるんだよ。うん。


そうそうすぐにわかると思うから先に言っておくが。


光一は珠弓が大好きだ。ほんと大好き。今にでも結婚したいレベルらしい。


昔……あれは出会ってすぐか。小学生の頃から猛アピールをしているが……珠弓がね。昔からこんなんで。何にも進展なく。今まで来ている。


でも、諦めない光一はすごいと思う。うん。すごいよ。


ツンツン。


すると俺の肩が隣からツンツンされた。まあ隣に居るのは珠弓なんだがね。


「なんだ?珠弓」

「……」


無言のままの珠弓だが。一度俺の目を見てから、チラリと光一を見て……また俺を見た。つまり……。


「光一」

「なんだ?弥彦」

「珠弓が、前に座っている奴がめっっっっちゃ。ウザいってよ」


俺が言うと珠弓は隣で頷いていた。どうやら当たりだったらしい。


「なんでだよー!珠弓ちゃんー。話そう。今日こそ話そう。話したら分かり合えるから。な?そしたら、未来安泰だからー」

「……」


冷たい目線?で光一を見ている珠弓。


「弥彦ー、通訳」

「いやいや。光一の声は聞こえてるから。反応なしってことは、同じくウザいってことだよ」


俺が言うと再度隣で頷いている珠弓だった。


「一度でいいから声聞かせてくれよ。って、話そうよー。珠弓ちゃん。なんで弥彦とはコミュニケーションあるのに俺とは全くないんだよー!」

「……」


とまあこれが珠弓。

基本こんな感じで無言というか。話さない。今光一が言っていたが。珠弓の声を聞いたことある人はかなり少ないと思う。


ちなみに俺は数少ない珠弓の声を知っている人間なのだが……。


ってか。そういえばだが。なんか騒いでいるのがいたから忘れていたが。親たちはなんで俺と光一を実家に呼んだのかまだわからないんだよな。その場に珠弓が居る理由も……関係があるのだろうか?と騒いでいる奴を無視して俺が少し考えていたのだが。ちらりと親の方を見て見るが……。


まあ今はまだ親同士で盛り上がっているから……まだ説明は無理か。説明してもらえる雰囲気に全くなってないしな。なら珠弓のことでも話しておくか。ということで……。


……。

……。

……。


珠弓と出会ったのは俺と光一が小学校2年生の時。空き地だった俺の家の横に新しい家が建ち。珠弓の家族が引っ越してきた。

俺は確か……珠弓の家族が挨拶に来た時に初めて珠弓と出会った。


その時は親の後ろに隠れていたのだが……。

お人形さんみたいにかわいい珠弓がかなり印象に残った。と言うか。うん。そのころから超美少女。かわいい。ホントお人形さんだった。

そのふわふわの髪はなんでしょうか?どうしたら。風がないのにそんなふわふわの感じになるの?と。もうオーラが違ったな。

あれは例えチビでも忘れるわけがない。

すごいかわいい子がお隣に引っ越して来た。とね。

まあその時珠弓本人からの挨拶はなかったが…。


そして家が隣同士なので学年は1年違ったが小学校の登下校が同じになる。もちろんだがすでに仲の良かったというか。お決まりのように俺と居る光一も居るので、2年生からは3人で登下校をすることになった。


あー、そうそうちなみに光一は珠弓家の挨拶周り?している時にはテレビ?アニメ?を見ていた?とかで、親が呼んでも部屋から出なかったので珠弓とは会っていなかったらしい。

光一が珠弓と始めて会ったのは……。

その後光一の親がご近所さんで同じ小学校の人だから。とかで。まあこの辺りは俺と光一以外は小学生が居なかったのでね。親睦会?交流みたいな理由で珠弓の家族も集めての3家族の食事会が会った時か。

光一は珠弓を見て……確かすぐだったと思う。ホントすぐ。珠弓見て3秒くらいで「俺おまえ好きだ。名前なんだ?俺光一な。結婚してくれ!」だったか。みたいなこと言って……周りの親は大爆笑。腹抱えて笑っている親も……多数。ってかほぼ全員だったか。

その一方で珠弓はというと恐ろしいものを見た。この世の終わりをみた。とにかく恐怖。という感じで……爆笑している親のところに猛ダッシュしていった。

なかなか強烈なことというか。まあ関係なかった俺も印象に残ったので今でもよくあの時の事は覚えているよ。


ちなみにだがその頃から光一の家で食事会があると俺と光一は隅っこのテーブルにいたが。引っ越してきてすぐの珠弓はまあ初っ端にいろいろあったため……。

食事会の時はずっと親のところに初めの頃は居たな。と言うか。光一が初めて会ってすぐに。馬鹿なことを言ったから完全にこちらを珠弓は警戒していたと思う。まあそれを見ている親たちはしばらく大爆笑だったと俺は記憶している。


そしてだ。

確かこのあたりで俺は気がついたな。

そういえば……まだこの子の声聞いたことない。と。


でも結局その日は珠弓の声を聞くことはなかった。





お人形さん初登場。

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