第9話
二日酔いに支配された頭の中で、私はなぜここまで堕落してしまったのかを考えていた。高校生の時までは、自分の人生は比較的うまく行っている方だった。何かに秀でた才は特段なかったが、かといって平均から著しく劣る分野も思いつかなかった。気合を入れて努力をすれば大概のことは叶ったし、異性との付き合いにも不自由はしなかった。きっとこのまま、特別熱中することも見つからないものの、ある程度の生き甲斐をもって、まずまず満足のいく人生を歩めるものだと思っていた。大学でいろいろな遊びを覚えて、社会に出て要領よく働く。そのうち経験的に相応なパートナーと結婚し、中流階級としてあからさまな不自由や不平等を感じることなく死んでいく。その予定だった。
そして大学生のうちは、そんな夢のない未来予想図も、友人と麻雀でも打ちながら更けていく夜に紛れさせて、酔うためだけに飲むお酒でぼやけさせていく。そういう、ありきたりな、それでいて悪くない大学生活を送れるものと考え疑わなかった。
だが、どこで間違えたのか、私が走るレールは、見覚えのない錆びたものに切り替わっていて、本来の目的地とは正反対の方向へと続いていた。そしてその決定的な切り替わりの瞬間を、私は思い出せずにいた。そもそも、そのようなポイントはなかったのかもしれない。私が進むはずだと思っていたレールは、最初から堕するようになっており、私の放蕩は予定調和的に陥ったものだ、そう考えることもできた。いずれにしても私は、直接的な原因を明らかにできず、したがって現状を変える打開策も持ち合わせていなかった。不謹慎なことだとはわかっていたが、感染症が蔓延する世界を私は祝福していた。気骨のない私が努力をしない理由を、それは与えてくれた。あらゆるものが淘汰されていく非情な終末感が、私の飲む酒を一層と甘美なものにし、煙草から上がる煙はその犠牲になった者たちへの弔いの線香となった。単調で退屈な毎日。罰当たりな私は法悦に浸っていた。数ヶ月間の時間の流れが、ほんの一週間程度に感じられる。だがそんな都合のいい話はなく、私が刻々と死に向かっているということを、部屋に転がる幾多の芥が宣告してくるのであった。そう、人は常に死に向かって歩いている。酒と煙草に明け暮れる私はそれよりも早いペースで。死が逆に向こうから迎えに来ているのかもしれないが、それは大した問題ではない。個人的な見解を述べれば、死は個人に合わせてスピードを緩めたり早めたりしながら優しく迎えに上がってくれるようなものではなく、聖地のように厳として存在するもののように捉えている。ともかく、私達の生は死と絶対的な隔たりはなく、今年は特に誰もがそれを確認できる年であるということに違いない。委縮した脳で中途半端に物思いにふけ、気分をよくした私は更なる快楽を求め、文字通り精を出していた。
死ぬということ、ひいては死そのものについて、全く考えたことがないわけではなかった。それは絶対的な響きを含んでおり、本来軽々しく使ってよいわけがない、魔力をもつ言葉なのである。そのことを十分熟知していると思われる彼女が、たった今、その言葉を使った。半分死んだ。死ぬということの絶対性に、半分も按分もないのではないか。私は彼女の底意がわからず、依然目をまっすぐと見つめたままたじろいだ。
「半分死んだ、というのは、憂鬱な気分で、墜ちるところまで墜ちた、そのくらいの意味?」
「いいえ、私は、本当に半分死んだの。半分の私が、自分の片割れを殺した、そう言い換えることもできる。あるいは、一分の一の私が、自分を構成する二分の一に相当する部分の私を痛めつけて、結果、半分が死んでしまった、そう捉えることもできるわ」
「ますますわけがわからない。それはつまり、右手を使って、左手を切りつけるようなこと?」
「いろいろ要素が脱落してしまうけど、いいところ突いているわ」彼女はそう言って、アッシュグレーのニットの、左手の袖を捲った。露になった彼女の左手首の内側には、夥しい数の傷痕があり、どれもすでに完全に塞がってはいたものの、あまりの生々しさに私は目を背けた。
「ごめんなさい、急に見せるものではなかった」
「いや、大丈夫。思ったよりはグロテスクじゃなかった」
「あなたって正直ね」彼女は袖を戻し、その上から右手で包む。丁度、親指で脈拍を測るような状態である。
「高校を卒業して、私も一人暮らしを始めた。高校生になったときは失敗してしまったけれど、今度こそ私は自由になれる、また混じり気のない純粋な表情で笑えるようになる、そう淡い期待を持ちながらね」
「なれたんじゃないのか。今のお前がそうであるみたいに」
「最終的にはね。でも、進学した当初は、全然そんなふうにはならなかった。むしろ、世間の陰鬱とした空気感に圧倒されて、めっきりと塞ぎ込むようになってしまったの。中学生の時から私は、その場その場で周囲の状況にすっかり溶け込むことで自分を保ってきた。大学という開放的な、といってもほとんど行くことはできなかったけれど、ある種基準とするべき状況というものがない空間に放り出された私は、今までの生活様式が終局を迎える、錯乱した世間と同化してしまった。」私自身が零落してしまったのも、案外同じような理由なのかもしれない。心の中で共感を試みる。
「今年の七月、有名な俳優が自殺したのは覚えてる?」
「もちろん。特別好きってわけじゃなかったけど、すごくショッキングだった」
「私、彼の演技がすごく好きだったの。私生活が、とか交友関係が、とかには興味なかったけれど、彼がお芝居の中で見せる一挙一動に、いつも釘付けになっていた。なんていうんだろ、画面の向こう側から、こちら側にいる私に直接語りかけるみたいで。彼のことを一躍時の人にした恋愛映画を見たとき、幼かった私は本気で彼に恋をしたわ」北川も恋愛感情を抱くことがあるのか、私は失礼な感想を抱く。
「彼の訃報を聞いた時ね、私の中で何かが音を立てて切れたの。私をこの世界にとどめておこうとする、ピアノ線のように張りが強く、細い糸のようなものが、プツン、いや、ブツン、と硬い音をさせて切れてしまった」
「北川を、この世界にとどめておく、細い糸」この世界、というのは、あの世、というものに対置している世界のことだろうか。私は彼女の言葉を待つ。
「うまく言えないのだけれど、この世界が負の世界だとしたら、その裏に存在している正の世界。糸が切れてしまった私は、そちら側の世界に烈烈な誘惑を受けるようになった」
「あくまでもこちら側の世界が、負の世界なんだね」
「当たり前よ、こんな醜悪な世界、負の世界に決まっているわ」彼女は可笑しそうに笑い、まだ手を付けていなかった、ピンクがかった、恐らく苺が混ぜられているクリームチーズをクラッカーの上に乗せて一口で食べる。
「それはさっき俺が言ったみたいな、現実世界に対する夢の世界とは違うのか?」
「連続的か離散的か、そういう違いがあるわ」
「どちらも離散的なように思える」
「一見ね。でも、現実と夢、この関係は、私は連続的だと思う。夢から醒めた夢、というタイトルのお話があるけど、この関係は無限に続くものなの。夢から醒めた、そう思ったのも束の間。今度はそう思っているだけの夢を見ているかもしれない、という不安に支配される。少しずつ現実に向かうことができるけど、夢を見る夢、という無間地獄にはまってしまって、何回覚醒しても決して現実に目覚めることはできない。起点は夢だろうと現実世界だろうと変わらないわ」
「漸近線のように、現実世界に近づくことはできるけど」
「どんなに近づいても、現実世界と交わることも、接することもない」私はそれを聞いて思った疑問を口にする。
「だとするなら、結局夢と現実の関係だって、離散的じゃないか。交わることも、接することもないんだろ」
「そこは私の逃げなんだけど、帰納法的に結論づけているの」
「帰納法的に?」
「夢と現実世界との間には、論理の架け橋があるの。それが帰納法。私はこう考えている。第一に、夢の中の世界の私達は自由に振舞うことができる。第二に、現実世界の私達は自ずと制約を受けながら行動している。第一、第二より現に制約を受けながら行動しているなら、私が今いる世界は現実世界であり、このことは自由に振舞うことができない限り覆されない」
「その論理を使って、夢から現実に帰り、行きついた結論に納得することができる。まさに帰納法だな」
「駄洒落まで言うのね。座布団の代わりに、これをあげる。はい、あーん」彼女は苺の果肉が混ざったクリームチーズを乗せたクラッカーを、例のごとく私に食べさせる。爽やかな酸味と豊かな甘味がして、これもまた美味であった。
「自由な振舞い、っていう表現は引っかかるな。そんな都合のいい言葉は自分自身の首を絞めることになる」
「その通りよ。昔の人が今の私達を見たら、十分自由に振舞っているように見えるはず。空を飛んだり、地球の反対側の人と瞬時にコミュニケーションをとったりしている。同性同士の恋愛を慶し、肌の色で人生が決まってしまうことを許さない人が増えてきている。私達の世界は、夢の世界とされても反論できない。私達はこの状況を、自由とは考えずに既に当然のものとして受け入れているけどね。だからこそ、論理の橋はぎりぎり陥没を耐えている」
「随分脆いんだな、その橋は」私はクラッカーを手に取り、両端を持ってパキン、と二つに割った。片方にはレーズンのクリームチーズを乗せ、お返しにそれを彼女に食べさせた。私はもう片方のクラッカーに柚子のジャムが混ぜてあるクリームチーズをのせて味わう。
「で、それに対して、負の世界と、正の世界、その関係は?」
「それは、完全に分離していて、一切交わることも接することもない、相反する関係と見ることができる。私達が今いる、夢とか現実とか、そういうことを紛議する次元をも超越した、十全な世界。すべての存在一般が存在できる、無の世界。表現の仕方はいろいろあるけど、とどのつまり、こちら側の世界ではない世界と言うのが一番簡単ね」
「こちら側と、あちら側の間には、論理の橋をかけられないほどの無慈悲な径庭があって、君はその向こう側からの誘惑を受けた」突飛な主張に思われるが、この突飛さこそが、彼女の言う、論理の橋をかけられない、ということの対応関係をまさに言い表している。とりあえずそう理解し、彼女の話を引き出す。
「そういうこと。そしてその誘惑は実際に私の行動を大きく変えたの」
「さっき見せた手首の傷痕は、そのまま行動の痕跡ということ?」
「結果的に失敗してしまったけれど、それも私の足掻いた証」
「君は自傷行為とか自殺を試みることで、あちら側の世界とやらに行けると思ったの?君の好きだった俳優がそうであったみたいに」帰する所、彼女は自殺して楽になりたい、それだけのことを勿体らしく言い換えているのではないか、そんな気がする。
「少し違う。別に死んだらあちら側の世界に行けるとは考えていないわ。むしろ、生きている内にこそ可能性があるとすら思っている。私が自傷行為をしたのは、誘惑の所為に過ぎないの。それが直接、あちら側の世界の入口へと繋がっているかはわからない」
「でも誘惑は、あたかもそれが道標になるかのように、君に匂わせた」
私は頭の中で、小学生の時の帰り道のことを思い出していた。毎日、平日午後5時くらいの帰り道、決まって焼き肉屋の匂いがする通りがあった。しかし不思議なことに、そこは単なる住宅街で、焼き肉屋の匂いの出所は見当たらなかった。同級生の間では学校の七不思議というのが流行っていて、私達はその通りのことを焼き肉29号線と名付けて、掃除で同じ班になった下級生にそれを吹き込むというミッションをこなすことを楽しんでいた。
ある日、授業参観の帰りに、私の母、仲の良かった友人、その母、の四人で焼き肉29号線を歩いていた時のことである。私と友人は、ほら、ここ焼き肉屋の匂いがする。前に言ったとおりでしょ、とケラケラ笑いながら母達に言ってみせた。だが、二人の中年女性は、焼き肉屋の匂いなんかするかしら、いいえ、からかってるだけじゃない、と目配せをして、あら、ほんとね、授業頑張ってたみたいだし、今日は焼肉にしましょうか、と陽気に言うのであった。横にいる友人は大人たちの間で交わされた密談に気づいている様子はなく、焼肉、まじか、と突然の豪華な晩餐の報に欣喜雀躍していた。
「それからね、私は死ぬことに非常に強い魅力を感じるようになったの。死ぬことであちら側の世界にいけるとは、何度も言うようだけど考えていない。だけど、私の理性とは反対に、底の部分にある感性を強引に捻じ曲げるようにして、その誘惑は私を死へと誘った」
「北川がそれで死ななくてよかったよ。少なくとも半分の君が残ってくれたおかげで、こうして一緒においしいカクテルを飲めている」私はグラスに残ったカクテルを飲み干す。見ると、彼女のグラスはいつの間にか空いている。
「私は、ただ生きることがいかに難しいかを、毎日実感していたわ。駅で電車を待っている時、耳元で声が聞こえるの。子供みたいに無邪気で、それでいて何でも知ったふうな口を利く大人みたいな声が。ほら、もうすぐ電車が来る、飛び込みなんてしなくていい、ただ二、三歩前に足を出すだけで、君はあちら側の世界に行ける。ベランダに出て洗濯物を干している時にもその声は聞こえてくる。ほら、ここから頭を下にして落ちるだけで、君は一瞬たりとも苦痛を味わうことなくあちら側の世界に行ける。料理をしている時も、それを食べる時も、ずっと私には誘惑の声が聞こえていた」彼女は、私の空いたグラスを見て、もう少ししたら頼みましょう、あと一杯、おすすめのがあるの、と微笑む。私は、彼女のつくるカクテルを飲んでみたいと思う。
「ある時、その誘惑に耐えられなくなった私は、筆箱の中からカッターナイフをとりだして、ほんのちょっとだけ、刃先を軽く手首に当てたの。そしたら、その時の安心感ったらなかった。ひんやりとした刃が気持ちよくて、このまま手前に素早く引いたら、きっと私はすごく落ち着ける、そう瞬間的に理解した」彼女はその時を思い出すかのように、自分の左手首を恍惚とした表情で見つめる。
「カッターを持つ手が震えた。緊張とか、恐怖とか、恥辱とか、いろんな負の感情が頭に沸いたけど、その時、今までで一番はっきりとした声で聞こえたの。それでいいんだよ、って。私は泣きながら、初めてのリストカットをした」そう言う彼女の目には、うっすらと涙が浮かんでいる。彼女は一回鼻をすすると、ベルを鳴らした。またあの店員が来る。彼女はお決まりのオーダーをする。彼が戻り際に空いたグラスを下げる。全てが淡々と進み、酔いが深くなっていくのだった。
男性の店員が持ってきた三杯目のいつものは、翡翠のような緑色をしており、上品で美しかった。一杯目と同じような色合いだったが、それよりかは仄々と透き通るように見えた。店員はカクテルの他にも、大きめのサンドイッチを持ってきた。ふんわりとした食パンに、沢山のローストビーフとレタスが重ねて入れられており、そこに粒上の黒コショウが混ざっているのが見える白濁のソースがたっぷりとかけられている。耳つきの食パンはトーストされておらず、しっとりとして絹のような表面が滑らかな舌触りを想像させる。彼女は私をみて、すっかり気に入ったようね、と嬉しそうだった。カクテルに口を付けると、一杯目と味の方もよく似ていた。チョコレートの風味はなく、代わりにハッカの冷涼感とレモンの酸味を感じる。だがつん、とすることはなく、生クリームのまろやかさが全体の味を嫋やかに包み込んでいた。
「適当に食べながら聞いてね。食事中にする話ではないかもしれないけど、初めてのリストカットを終えた私は、深い陶酔感の中にいたわ。腕を伝って、肘から床にぽたぽたと滴り落ちる生血を眺めていると、耳元で囁く声が遠のいていった。代わりに、外から聞こえる騒いだ大学生の声とか、扇風機の首振りが切り返す時の一瞬の静止とかを、直接脳内に響くように感じたの。しかもそれが、なぜだかわからないけどすっごく可笑しくって、血が乾いて赤黒くなるまで、私は一人、部屋でわけもなく笑っていた。小学生以来よ、あんなに心から笑ったのは」彼女は口に手をあて、ふふ、と少し思い出し笑いをする。
「残念ながらそれは、でも長くは続かなかった」彼女がカクテルを飲むタイミングで、私はサンドイッチを頬張る。ローストビーフの肉の甘味に、レタスのシャキシャキ感、ブラックペッパーの効いたソースが合わさり、今まで食べたサンドイッチの中で文句なしの一番の絶品である。ソースはブラックペッパーだけでなく、粒マスタードのキレと、玉ねぎの辛味もあり、噛めば噛むほど極上のソースへと変化する。彼女も、いただきます、と小さく呟いて、控えめな一口を食べる。私はまだ咀嚼を続ける彼女に話す。
「俺が中学生の時さ、隣のクラスの女子で、リストカットを自慢するように話すやつがいたんだ。血をみてると落ち着くの、リスカおすすめだよ、って。其の癖、切る場所は肩に近い部分とかの、基本的に見えない場所だったんだ。正確にはリスカって言わないんだっけか、そういう場所の場合。とにかく、みんなはそれが鬱陶しくて、煙たがっていた。彼女はクラスだけじゃなく、学年でも浮いた存在になってしまって、終いには相手にされなくなった。でも、彼女は自分の存在を認めてほしくて、更に声を大にしてリスカを勧誘するようになった。最初は目に見えない位置で、みんなも彼女が本当にしていたかどうかを疑っていたけど」私は一口カクテルを飲んで早くなった口調を落ち着ける。
「ひと月もすると、彼女の腕は傷痕だらけになって、正直ドン引きだったよ。もちろん、長袖のシャツとかカーディガンとかで、普段は見えないようにしてたけど、着替えがあるときとか、先生がいないタイミングとかを見計らって、彼女は堂々とその痕を見せびらかしていた」真剣に聞いていた彼女が尋ねる。
「それで彼女は、最終的にどうなったの?」
「不登校になったよ。詳しい事情はわからないけど、それで終わり。卒業してどうなったかも聞いてない。今北川の話を聞いてて思い返してたんだけど、彼女にもその声が聞いていたのかな」
「どうかしら。自傷行為をしている、という結果だけは同じだけど、本当のことはその子に聞いてみないとわからないわ。ただ、私だったら、多分不登校にはならなかったと思う。その子のように学年で浮いた存在になって、腕には日に日に傷が増えていったとしても」
「誰かに認めてもらうためじゃなく、耳元で聞こえる声を消すための行為だったから?」彼女はうん、と頷き、指についたソースを舐める。そしてまた、丁寧にその指を拭く。
「私の場合、リストカットをして声が消えた後の、緩々と訪れる陶酔感が、忘れられなかった。自傷行為をして、しばらくはそれで落ち着くことができたわ。だけど、しばらく時間が経って、ふと気づいた時には、また例の声が聞こえるの。しかも、以前よりも大きく、はっきりとなって。声の様子が違っているように、以前と違う点は私についてもある。それは、声を消す手段を知っている、ということ。再び耳元で聞こえる声に我慢の限界を迎えた私は、今度は躊躇なく、無情にリストカットをした。声は遠のき、代わりに官能的な快楽の波がやってきて、その潮騒が聞こえるほどだった。ああ、生きているということはなんて素晴らしいんだ、私は全身全霊で実感することができた」
「それで君の手首には、そんなに沢山の傷跡があるんだね」
「なんだか、今までにしたマスターベーションの数をタトゥーにして残しているみたいで、少し恥ずかしいけどね」彼女と私は示し合わせたように同じタイミングでカクテルを飲み、ローストビーフサンドイッチを食べる。そういえば、このカクテルはなんという名前なのだろうか。
「相応しくない例えだけど、マスターベーションもリストカットも、どちらも人前ですることはできないのが難点ね。あくまでも基本的には、ということだけれど」
「街中で唐突に我慢の限界が来た時の話か」彼女はご名答、と言って笑う。
「今までだったら、ホームに飛び込んじゃいなよ、という声を振り切って、部屋に帰るまでは何とか我慢して、高まった性欲を爆発させるみたいに、一人で思い切りすることができた。けれど、声が遠のいていったあと、また聞こえるようになるまでのペースが早くなって、質感も前とは比較できないほど生々しくなっていったために、最早そうしてきたみたいな対処療法が適わなくなったの」
「でもそのままだったら、君は本当にホームに飛び降りてしまう」
「その寸前のところまで行っていたわ。黄色い線の内側に下がってお待ちください、そういうアナウンスが入った後で私は、列車すれすれのところまで前進して待つの。そうするとね、列車が来た時にぶわっと強い風が吹いて、その風のお陰で声は少し遠ざかってくれる。それでいい、わかってるじゃないか、次はもう少し頑張ってみよう、そう言葉を残して待ってくれるの。駅員さんにすごい剣幕で注意されるんだけど、それが愉快で、火照った体を震わせながら家路についた」駅員さんからしたら、君は要注意人物だね、私と彼女は笑ってサンドイッチを頬張る。
「不躾な言い方をしてしまえば、君は街中でマスターベーションをしていた、というわけだ」
「この例え、なかなか秀逸じゃない?私はとんだ淫乱になってしまうけど」
「それで、そろそろ君が半分死んだ、というところに繋がるんじゃないか?」彼女は自傷行為に嵌り、街中で死というスリルを味わっていた。死があちら側の世界へと繋がる門ではないことを直感的に知りつつも、誘惑の声に逆らえなくなっていた。彼女の話を聞きながら当時の彼女を想像し、本当に自殺してしまうのも時間の問題のように考えていた私は、いよいよ彼女の発言の本質へと足を踏み入れる。
「ええ、もう少しよ、私が半分死ぬまでは」彼女は残っていた最後のクリームチーズをパンの耳につけて綺麗に食べてから続きを切り出す。
「街中で急にそういう衝動に襲われることが怖くなった私は、以前と同じように家に引籠るようになった。私は誘惑の声に従って本当に死ぬわけにはいかない、そう思って、外を出歩くということを諦めた。手首の傷跡が、私の抗った証というのはそういうこと。なんとか弱い刺激で、声を振り払おうと必死になっていた。矛盾するようだけど、私は生きるために自分を傷つけていたの」彼女はそう言って、もう一度袖を捲る。私は今度はそこから目を逸らすことなく、線の一本一本を数えるように見つめた。
「でもね、そんな時、声は到頭、一番してはいけない質問を私に投げかけた。なあおい、お前はなんでそんなに必死になって生にしがみついてるんだ?そもそもお前は何のために生まれてきた?って」
「そんな質問、誰も答えられるはずがない」
「そうね。本当に理不尽な質問を、声はぶつけてきたの。苦悩する私に、声はこう続ける。お前はあちら側の世界の存在を認識している、選ばれし存在なんだ。これはもう奇跡としか言いようがない。お前は天文学的な確率によって選られた、特別な存在なんだ、って。その時声が使った、確率、というその言葉が妙に頭に残って離れなかった」彼女は私の方を見て、ここ、ソースついてるよ、とナプキンで私の口の端を拭く。彼女がさっき指を拭くのに使っていたナプキンだ。
「確率。そう、確率なのよ。あちら側の世界というものを考えるようになったのも、私に声が聞こえるようになったのも、そもそも私が生まれてきたのも。全部。ありとあらゆる事象の中から、偶々実際に起こったことの積み重ねでしかない。その裏には、数えきれないほどの、起こり得た現実があって、この現実だけが唯一無二の結果ではない。意味なんてないのよ、もともと。生きている意味だとか、生まれてきた理由とか、そんな高尚なもの、私達が生きている世界に」彼女は哀切極まりなく言い放つ。
「でも、多くの人は生きることになにかしらの意味を見出しているし、少なくとも見出そうとしている」私は彼女の主張に、人類を代表して反論する。
「あなたは、仮に宝くじ一等三億円が当選したとして、その結果に対して理由をつける?普段の行いがよかったから、とか、一度一等が出たことのあるお店で買ったから、とか。あなたがそうしなくても、一等の当選となにかを結び付けようとする人は多いわ。人間はそういう生き物なの。意味がないことに納得ができない。結果の裏には絶対に理由があると信じて疑わない。人間は物語る生き物である、というそれ自体のストーリーがあるから、ここまで文明は発展して、物質的に満たされた生活を送ることができるようになった」
「しかし、全てに理路整然とした理由があるとは限らない」
「本質的な問いはとくにそう。私が、そしてあなたがなぜ生まれたかなんて、辿っていけばただの化学反応でしかない。その化学反応は、条件が揃ったときに必ず起こるもので、その条件が、偶々その日その時その場所で揃った。私たち二人は、流産する確率も、乳児のうちになんらかの要因で死ぬ確率も、赤の他人になる確率も乗り越えて、天文学的な確率で一緒にお酒を楽しみ、ローストビーフサンドに舌鼓を打っている」
「そしてその裏には、無数の実現しなかった現実がある」
「あなたと出会えて、本当によかったわ」なぜ彼女がここまで私を気に入っているのか、その理由はわからないが、とりあえず私はそれに喜び、照れながらカクテルを飲んだ。
「私は、声から逃げることをやめた。その代わり、誘惑の声と真っ向から対峙することにしたの。誘惑が使う、確率、というものを使って、決めることにした。誘惑が言っていることが正しいのか、私の直観が正しいのか」
「それはつまり、死ぬことであちら側の世界に行ける、という命題の真偽を、確率を使って証明しようとした、ということ?」
「そう。それが一番両者が納得できる方法だった。どちらが正しいかなんて、水掛け論でキリがなかったし、その間にも私の体は前よりも一層死への魅力を感じ始めていた。あなたが反論したい気持ちもわかるけど、私に残された時間はそう多くはなかったの」そう言うと、彼女はバッグの中から一枚の十円玉硬貨を取り出した。錆で黒ずんいて、酸化したところが所々緑色がかっている。彼女はそれを、10と書かれた方を上にしてテーブルに置き、私に差し出す。
「この十円玉に、全てを託すことにした。こっちの面が出たら、私は生きる。生きて、あちら側の世界へと繋がる本当の入口を探す」
「そしてその裏が出たら」私の脈拍が速く、強くなる。
「私は死ぬ。誘惑が言っていることは正しかった。私は自殺して、声の誘導する通りにあちら側の世界へと行く」彼女は、落ち着いたトーンでそう言ったあと、ぱっと明るくなって続けた。
「別にどっちが出たってよかったんだよ。私、中学の時の修学旅行でね、同じ班の女の子に、体調が悪くなったって嘘をつけ、そう言われたの。そこまで直接的に干渉してくるのはそれが初めてで、私は怖くなって、先生に今日の見学休みます、って伝えに行った。だからその日、ずっと宿にいた私はね、平等院鳳凰堂を見に行けなかったの」彼女はテーブルの上の十円玉をひっくり返し、錆びれた絵を仄かな明かりに照らした。
「遂にこの十円玉を親指にのせたとき、それだけで私は、震えるほどの絶頂感を感じた。その震えで、十円玉を落としそうになって、左手で右手の手首を抑えるんだけど、そうすると左手の震えまでもが伝わっちゃって、余計に震えが大きくなった」彼女はその時を再現するかのように、話をしながら身振り手振りを一致させる。
「これからの自分の運命が、非情なコイントスによって決まる。私は十円玉を弾きたくて堪らなくなった。そして、いよいよ十円玉を上に投げたとき、私は本当にオーガズムに達した。椅子から崩れ落ちて、その拍子に頭を打ったわ。だけど、その痛みも快感に変わって、全身の血液が沸騰するみたいに熱くなった。足をピーンと伸ばして、背中を仰け反らせて、じわりと滲み出てくる愛液が垂れてくるのがわかった。ピクピクとした痙攣がとまらずに、強い電流をずっと流されているようだった。ネズミくらいの小動物の大群が、私の体の上で走り回っている。勃起した乳首の上を、カリッと引っ掻いて、砕けている臀部に潜っていく。暫くコイントスのことなんか忘れていたわ」彼女はその時の記憶に陶然となっている。私は残りのサンドイッチを一口で食べて、ナプキンで口の端をきれいに拭く。
「どのくらいその体制でいたんだろう。まだ心地よさは体中に残っていたけど、その時すごく優しい声が聞こえた。ほら、君の手の先に、君の運命が待っている。それでいいんだよ、よくここまで頑張ったね。私は嬉しさのあまり、涙を流しながら、落ちている十円玉に向かって這った。そして、」彼女はカクテルを一気に飲み干して言う。
「私は、半分死んだの」
「それは、修学旅行では見られなかった平等院鳳凰堂を見てしまった、ということか?」
「あなたはどう思う?」彼女は笑って続ける。「シュレディンガーの猫って聞いたことある?」
「なんとなくは」
「私はまさにその例の通り、不完全な状態になった」
シュレディンガーの猫。高校生の頃、よく話が脱線する倫理の教科担任が教えてくれた。中が見えない箱に閉じ込められた猫は、一定時間経過した後、二分の一の確率で死に、残りの確率(当然二分の一である)で死を免れる。しかし、一定時間が経過した後も、箱を開けるまでは中の猫が生きているのか死んでいるのか確認することはできず、この例はそれまでの量子力学的記述の不完全さを示す思考実験であると、定年間近の教師は快弁をふるった。その饒舌ぶりが、これまで幾度となくその話をしていたのであろう、ということを語っていた。
「不完全な状態」私は彼女に教えを乞うようにして、ぽつりと口に出す。
「つまりね、私は死んでもいたし、同時に生きてもいたの。私の中にいた二人の私、落ち着いた私と明るい私。その片方が死んだ、という意味ではなくね」
「君の中に二人の北川がいたとして、そのうちの片方が死んだわけではなく、その両方の北川が半分ずつ生きて、また半分ずつ死んでいた」
「そう。私は不完全な状態にあったけど、だからこそ、同時に完全な状態でもあった」
「不完全な状態であり、かつ完全な状態でもある」
以前、ネットニュースで読んだことがある。量子という極めてミクロな領域では、ゼロとイチという二値の情報を同時に持ち、それでいて科学の世界には相容れない確率まで存在するという。十円玉を弾いた時、彼女はそのような状況にあった。二人の人格のうち、片方の彼女が死んだわけではない。一人の彼女が一度死んで、それから生き返ったり生まれ変わったりしたわけでもない。彼女は死に、同時に生きていた。
「生と死。不完全と完全。そういう、相反することが私の身に起こった」
「それで、本質的な矛盾を体験した君は、中学校でいじめられる以前のように、また明るくなった」
「その時と、全く一緒、というわけではないけれど。さっき言った通りよ。一度経験したことは、なかったことにはできない」
彼女はグラスを口元に運んだが、中になにも残っていないことに気がつく。「もう一杯飲むか?」と聞いたが、「もう十分よ」と優しい声で返した。彼女は暫く、窓の外や空のグラスを見遣り、私が彼女の発言について、考える時間をくれた。
「聞き流してもらっていいのだけれど、私がこの店を知ったのは、半分死んだ後のことよ」
「その時も、今日の俺みたいに誰かに連れてきてもらったのか?」
「どうだったかしら。きっとそのはずだわ。ねえ、面白いことを一つ教えてあげる。ここのお店にはね、いつもの、というメニューしかないの」
そういえば、最初のオーダーからずっと、彼女はそれでしか注文しなかった。カウンターやテーブルの上にメニューが置かれていないのは、お洒落な雰囲気を演出するために無駄なものを排除しているのかと思っていたが、そうではないらしい。この店には、「いつもの」しか置いてないため、そもそも置く必要がないのだ。彼女は続ける。
「私にはね、四杯目のいつもの、がないの」
「君を最初にこの店に連れてきた人もまた、四杯目のいつもの、がない」
「それが、あまり覚えてないの。その前に私が帰っちゃって、いなかっただけかもしれない。少し残念よ。あなたにもっと、この店のお酒を堪能してほしかった」
「いや、俺ももう十分だよ。すごく美味しかった」
こんなに上質な酒を飲んだのは久しぶりだった。一人暮らしの部屋で私は、ただ度数が高いだけの不味い酒を呷り、つまみも何も食べないため悪酔いし、慌てて何かを口に入れても吐き出してしまっていた。
「でもそれだと、二つ、おかしなことにならないか?」
「鋭いわね。続けて?」
「いつもの、しか置いてない店。ということは、必然的に一見さんお断り、ということになる。それならまだわかる。だが、そしたら、店の常連の飲むものがみんな同じになってしまわないか?」
「当然の疑問よね。私にこの店を紹介した人、その人に、さらにこの店を紹介した人がいる。いつもの、が受け継がれていくなら、みんなが同じカクテルを飲むことになる」
私は店に来ている他の客の方に視線を移した。すると、どの客も寛ぎながら、それぞれが別のカクテルを目の前に置いていた。真白く濁ったもの、しゅわしゅわと炭酸が小麦色のお酒から発泡しているもの、ステンレス製のカップに入り、何を飲んでいるのか外側から確認できないもの。それぞれに、それぞれのいつもの、があるようだった。
「昔はいろんなメニューを置いていたとか、そういうことか」
「私も気になって、紹介してくれた人にそう聞いたの。だけど、その人は答えを知らなかった。私とあなたが今しているようなやり取りをしただけ」
私は腑に落ちないまま、最後のカクテルを飲み干した。
「これは私なりの仮説だけどね、一つだけ、思いついたことがある」私は興味をそそられ、「どんな仮説?」と聞く。彼女は肘をついて腕を立て、顎を手の上に乗せながら話し始める。
「バーテンダーの方の気まぐれで、時々変化が起こるのではないかと考えているの。お店に入った時に出迎えてくれた、白髪交じりの男性、覚えてる?」私は「もちろん」と頷く。
「あの人、いつもいるし、風貌からしてマスターだと思うんだけど、そのマスターが、同じものばかり作るのに飽きちゃって、気まぐれで突飛なことをするんじゃないかしら」
「注文した方は驚くだろうね。いつもの、が来ないんだから」
「でも、仕方なしにその人も、次回からは変化したいつもの、を頼むしかない」
彼女の説明は筋が通っていた。それなら、店内にいる客毎に飲んでいるカクテルが違うことに納得することができる。しかしそれでも、説明できない根本的な疑問が残る。いつもの、というメニューを、そもそもどうやって一人目が頼むことができたのだろう。私はその疑問を彼女に投げかける。
「注文が通ったあと、マスターのせいで変化が起きる、ってのはわかった。でもそれなら、最初の一人目には一体なにが出てきたんだ?一度出現したものが枝分かれして変化していくならわかる。だけど、まだ何もないところから、ゼロからイチになる間に、何が起こった」
「さっき私の仮説を言ったし、今度はあなたのを聞かせてほしいわ」
私は頭の中で論理を組み立てる。いつもの、しか置いてないこの店は、誰か常連の連れでないと入ることができない。仮に入れたとしても、なにも頼めないのでは同じことなので、ひとまず入ることができないという前提を置く。すると、この店を利用した最初の一人は、一回目の来店からすでに常連になっている必要がある。マスターは以前他の場所でも店を経営していて、その時の常連が来たのか。あるいは、一階の喫茶の常連が、こっそりとマスターに招待されたのか。例の若い男性のスタッフが、マスターと関わりが前からあった青年で、最初の一人になったのか。いろいろと考えてはみたものの、納得のいく仮説には至らない。
「なにか思いついた?」
「いや、駄目だ。どれも中途半端だし、検証だってできない」
「それでいいのよ」その返答に、私は拍子抜けして視線を彼女に向ける。
「考えてもわからないことは、わからないこととして理解する。変に簡略化したり、都合のいい解釈をしたりしないで、事実をまず直視するの」
「でもそれだと、そこから前に進めなくなる」
「そんなことはないわ。理由はどうであれ、とにかく、マスターは初めてのお客さんにいつものを提供した。それが事実。それを出発点とすれば、とりあえず今の状況を考えてみることができる。わからないから前進できない、というのは少し安直だと私は思う」
わからないことは、わからないこととして理解する。矛盾することのない論理や説が生まれるまで、ひとまずありのままの事実から出発する。それはこの世界とよく似ている。私達はなぜ生まれたのかを理解できないし、それは北川の言う通り単なる確率なのかもしれないが、それでも私達はこの世界に生まれた。世界には説明がつかないことが今以て無数にあり、そもそも私達の認知していない事象も無限に存在しているはずである。いきなり世界規模というスケールの大きい考えをしたせいで、私の頭はクラクラしていた。
「君もまだ考えついていないんだね、最初の一人目についての仮説」
「ええ。でも、そこまで私は拘っていないわ。最初の一人目がどうやって頼んだのか、そもそも最初の一人目なんて存在するのか、そんなこと、私の知るところではない。私にとって重要なのは、今あなたとこの時間を過ごせている、ただそれだけよ」彼女は私のグラスに視線を移し、その拍子に思い出したかのように机の上の十円玉について言及した。
「その十円玉、あなたにあげる」
「この十円玉なのか、お前が使ったのって」
「うん。今までは御守りみたいな気持ちで持っていたけれど、あなたが持っていた方が、なんだかいい気がする」私は十円玉を手に持って、そこに描かれた平等院鳳凰堂をじっと見つめる。彼女の手が、十円玉を持っている私の手を包む。
「この十円玉だけじゃなく、あなたがこれから使う十円玉一般について、あなたがそれを使うとき、私のことを思い出してくれたら嬉しいわ」
私は十円玉を固く握る。その上から、彼女の小さくてなめらかな手が覆う。その様子はまるで、春に向けて花を咲かす準備をする蕾のようだった。
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