おかわり第7話「ゆで豚」

コンテ

https://www.pixiv.net/artworks/87181514


(擬音・吹き出し外文字)

「セリフ」

{人物モノローグ}

<ナレーション・モノローグ・解説>



●1

■大 タイトル

 9月日曜午後。

 道に迷っているコヤジュン。

コヤジュン「あれれ……?」

コヤジュン「この辺だと思ったんだけど」

 梨由子の部屋のリビング。

 ソファに転がってる沙織。

 その前で壁掛け時計を気にしてる梨由子。

梨由子「まだ来ない」

 テーブルにほおり出してあるケータイが振動するのに気がつく梨由子。

(ヴーヴー)

 ライン画面。

 梨由子「ほんとに迎えに行かないでいいのか?」

 子安純子「だいじょうぶです!」

 子安純子「女子会楽しみ!」

 日付変わって、

 もうしわけないスタンプ。

 子安純子「まよいました。地図おくってください」


●2

 ケータイを手にしているコヤジュン。

(てろん)

 返信音が鳴って嬉しそうに見る。助かった!

コヤジュン「あっ」

 ライン画面。

 送られてきたのが絶対国防圏の地図。

http://oki.ismcdn.jp/mwimgs/3/6/330m/img_36e4222ed061805cd40dad26c0807f08226671.jpg


●3

 駅前。

 改めてまちあわせて、だからいわんこっちゃないと少しイラついた梨由子とニヤニヤした沙織がむかえにくる。コヤジュンを見て無言。

コヤジュン「意地悪しないで普通の地図送ってくださいよ~~」

 困り顔上目遣いで申し訳なさそうに怒りをなだめようとする。

梨由子「オマエ地図だけ見て目的地にたどり着けたためしねえだろ」

「だから最初から迎えに行くっていったのに」

コヤジュン「すみません」

 と梨由子についていく。さらに後から沙織もブラブラついてくる。

梨由子「まあいいや買い物したかったし」

 とスーパーを指さす。

 スーパーで買い物を済ませて梨由子の家に向かう買い物袋をさげた3人。肉とか長ネギとか色々買った。

沙織「明日は創立記念日で連休だって?」

コヤジュン「久しぶりに休日っぽい感じですねー」

梨由子「創立記念日って学校サボってウロつくときの決まり文句だったけどマジであるんだな……」


●4

 夕方過ぎ。

 梨由子の家。宅飲みしている3人。

 ちびちび飲みながらワイワイ話している。

 てきとうなツマミが出てる。

梨由子「そろそろなんか作るか」

 と冷蔵庫を開ける。

コヤジュン「あ、なにかやることあれば」

 と立ち上がりかける。

梨由子「特に手伝ってもらうことないけど」「これ作りかたかんたんだから憶えてけば?」

 と買い物袋から大きな肉の塊を出す。

コヤジュン「わ」「大きなお肉の塊」

 生姜の皮を剥きながら

梨由子「生姜をすりおろしてくれ」

梨由子「剥いた生姜の皮は捨てずにとっとく」


 すりおろすコヤジュン、その後ろでニンニクを切ってる梨由子。

梨由子「にんにくは3かけ、……ちっ、もう芽が出かけてるから全部使うか」

梨由子「半分に切って、芯を取る」


●5

 鍋。水と豚肉の入った鍋に材料を入れていく。

梨由子「鍋に豚バラ肉の塊300g、豚肩ロース塊300gを入れて、水6カップ、酒1/2カップ、長ねぎの青い部分、と切ったニンニクと生姜の皮を入れて強火にかける」

梨由子「沸騰したらアクをとって、フタをして弱火で1時間茹でる」

コヤジュン「このすりおろした生姜は?」

梨由子「生姜ダレを作る」「生姜に醤油をまぜるだけ。早めに作って馴染ませておくといいかな」

 まぜるコヤジュン。

梨由子「もういいな」

梨由子「火を止めたら、ゆで汁のまま少し冷ます」

梨由子「そのあいだにタレをもう一種作る」「ゆで汁からニンニクをとり出して」

 ニンニクを器に取る。


●6

 梨由子の指示で作るコヤジュン

梨由子「ニンニクをつぶして、豆板醤小さじ1、酢小さじ3/2、しょうゆ小さじ2、ごま油小さじ1/2と混ぜる」

コヤジュン「うわ、これおいしそう」

梨由子「それ終わったらサニーレタス洗ってくれ」「葉を半分くらいにちぎってな」

コヤジュン「はーい」


 片手鍋にゆで汁を移しながら

梨由子「このゆで汁も半分くらいスープにする」

梨由子「別鍋に移して、中火にかける」

梨由子「ナンプラー大さじ1、塩コショウてきとうで味を調えて」

 味見しつつ

梨由子「ネギの残りを小口切りにして入れて、レモン汁ぶっこむ」

梨由子「肉もそろそろいいな」

梨由子「豚肉を取り出して7mm厚くらいにカットして」

梨由子「肉はギリギリまでゆで汁につけといて冷ましておくと乾かない」「少し温かいくらいがいいんだ」


●7

<ゆで豚サニーレタス大葉添え> <生姜ダレ> <ピリ辛ダレ> <タイ風スープ>

 サニーレタスと青じそ(20まいくらい)が盛られた器

 カットされた二種類のゆで豚

 二種類のタレ

 ネギが入ったスープ

コヤジュン「うわー、ごちそうだ」

コヤジュン「豚肉とはいえこの塊の大きさだと、独り者がおいそれと作れないですね」

梨由子「まあパーティ料理だな」


●8

梨由子「こうやってサニーレサスに青じそと豚肉をのせて、好きなタレをのせて……」

梨由子「巻いて食べる」

コヤジュン「おいっしー!」

 目を輝かせるコヤジュン。

コヤジュン「バラ肉と肩ロース二種類の味と食感の違いが楽しめて贅沢ー」

コヤジュン「このスープ、おしゃれなカフェのごはんみたい!」

梨由子「……ふだんからちゃんと食べろよ」

 と不憫そうにコヤジュンを見る。

コヤジュン「?」

 と素知らぬ顔で食べ始める梨由子を怪訝に見る。

<こっそり見てしまった忍とコヤジュンの交換ノートの内容を思い出す梨由子であった>


●9

 食事ひと段落、酒を飲みながら。

沙織「小学校どうだ?」

コヤジュン「まあ苦労は絶えませんね」

コヤジュン「最初の一年は緊張しましたけど、少し慣れてきました」

沙織「モンペとかいないか?」

「オマエは人が良いからつけこまれそうだよなー」

コヤジュン「保護者の中では梨由子先輩がいちばん緊張します」

 と苦笑い。

梨由子「言うようになったな」

 と牙をむく

コヤジュン「私のクラスはみんないい子ですよ」

「リーダーっぽい子がいるんですけど」

「その子が人気者でいい雰囲気つくってます」

 中津くんのイメージ。わいわいみんなをリードしている。

コヤジュン「忍くんもその子と仲良しでよく遊んでますね」

「あと、女の子たちも一緒に遊んでいたり」

 忍とロングキスグッドナイト、ゆみみが楽しそうに遊んでる。


●10

コヤジュン「うふふ」

 思い出し笑い。

梨由子「ん?」

コヤジュン「たぶんなんですけど」

「あっ、これ絶対ナイショですよ?」

 楽しそうに。

コヤジュン「その女の子たち忍くんのこと好きなんじゃないかなー」

梨由子「フーン」

 とグラスを口につけながらコヤジュンをじっと見る。見透かす目。

梨由子「純子、オマエさ」

 とワイングラスを置く。

梨由子「女子に嫌われてない?」

コヤジュン「えっ!?」

 ギクっとする。

コヤジュン「そそそそ、そんなこと…」

 目が泳ぐ。

梨由子「なんか思い当たるだろ」

 ホラな。


●11

梨由子「だいたいがオマエは特にワケもなくオンナに嫌われるタイプなんだ」

沙織「ホステス時代もイジメられかけてたしな」

コヤジュン「いいい一番イジメてたのは梨由子先輩と沙織さんですよ!?」

 と不本意そうに言いかえす。

梨由子「バーカ」

沙織「バーカ」

 えっ、とびっくりする。

沙織「ちげえよ」「オマエが他の奴らにマジでイジメられないようにアタシらが囲って庇ってたんだよ」

沙織「純子イジメていいのはアタシらだけ、ってことにしてだなー」

梨由子「あー無理無理、コイツそういう機微がわかんねーから」

コヤジュン「え?」「え?」

コヤジュン「そうだったんだ……」

梨由子「だから「ボンクラ」って言われてんだよ」


●12

■大

梨由子「思い返してみろ、ずっとそういう女子の世界で生き辛かっただろ?」

コヤジュン「はあ、たしかに……」

 中学生時代の地味すぎるコヤジュンのイメージ。しょんぼりしている。

梨由子「オンナ同士のめんどくさい人間関係とかムリだろ?」

コヤジュン「はい……」

沙織「いーんだよ」

沙織「アタシらだってそういう理不尽で野蛮なメスの世界のアレが嫌いだからずっとコブシで解決してきたし」

「オマエはどっちかっていうとむしろコッチ側なの」

梨由子「でもオマエみたいな良い奴にはまっすぐなままでいてほしい」

 慰めるように。

梨由子「まあ、だからそういうお前が自我が芽生え始めた小学生女子と上手くやれるわけがないよ」

 と苦笑い。

コヤジュン「上手くやってるとおもうんだけどなー…」

 と思い当たることをなんとか否定しようと思い巡らせている。

梨由子「じゃあいいか、想像してみろ」

 と指をさされる。


●13

梨由子「例えばだな」

梨由子「体育の授業で校庭で集合かけて、外だからオマエが声を張るだろ?」

 頭の上にイメージするコヤジュン。

梨由子「そんとき子供たち見回して、声が届いてない感じの女子がいないか?」

 ロングキスグッドナイトのイメージ。

 コヤジュン、あ、という顔

梨由子「あからさまにおしゃべりしてるとかでなく──」「──こう、見透かすような冷ややかな眼差しでオマエを見てるけど、でもオマエの声が届いてない感じのヤツ」

 ロングキスグッドナイトの眼差し。

梨由子「いるな」

コヤジュン「……はい」


●14

梨由子「ひとりだけか」

(こくり)

 うなずくコヤジュン。

梨由子「これが何人もいるようならヤバいぞ」

梨由子「もしかするとオマエは今のところ失点がなくて「気に食わねー」レベルで見られているだけかもしれないが」

「その女子の扱いは慎重にな」

 占い師のような梨由子の慧眼に恐れ入りつつ説教をきいている。

梨由子「そういうオンナは扱いを間違えると、アタシとか沙織みたいになる」

 ギョッとするコヤジュン。

 ニヤリと笑う二人。

沙織「アタシらにとって純子はかわいい後輩だけど、もしオマエが自分の担任教師だったら容赦なくイビるぞ」

梨由子「同じような性質の人間でもお互いの立場が違うとガラっと関係の良し悪しが変わるよな」

「アタシらにとってのオマエの美点は」「ナマイキな小学生相手には欠点に見えるかもしれないわけだ」

梨由子「けどオマエは教師なんだし相手は小学生なんだからな」

コヤジュン「……自信なくしそう」


●15

梨由子「いっときでも銀座の店でナンバーワンだったんだから、もちっと胸張れよ」

 慰めるように。

 困ったように笑うコヤジュン。

コヤジュン「……いまちょっと」「梨由子先輩が小学校の先生になってたら、どんな感じなのかなーって思ったんですけど」

 やなこときくなーって感じに微妙な顔をする梨由子。

沙織「梨由子も女子には嫌われるな」

梨由子「なんでだよ」

沙織「甘い顔で猫なで声出したと思えば、鬼の形相でビリビリ響く喊声で号令かけたり」

「そんな豹変する女教師、存在が不穏すぎてイヤだ」

 女教師梨由子のイメージ。ニコニコしながら乗馬鞭折りそうにピリピリしてる。稲妻フラッシュ。


●16

梨由子「そんなわけねえだろ」「店で客相手すんのと同じだよ」

沙織「あー、そっか」

梨由子「まあ女の子は勝手に大人になるけどさ」

「男は子供のまんまの奴がゴロゴロいて」

「それをウチの店とかで面倒みてる」

「そういう仕事だよ」

コヤジュン「それはわかります!」

梨由子「けどまあ」「どっちかっていうと保育士になったほうが良かったかな──」「って思うときあるよ」

 梨由子を憧れの目で見るコヤジュン。

 盛り上がる酒宴。更けていく夜。


●17

 翌朝。

 雑魚寝から起きるコヤジュン

 いぎたなく寝てる沙織。

 すでに起きて歯磨きしている梨由子。

梨由子「おー」「朝飯食いに行くか」

 駅前にむかってぶらぶら歩く3人。

 前から来る保育園の散歩に気がつく。

コヤジュン「あ、お散歩」

コヤジュン「保育士と小学校教員で最後まで迷いましたよ私はー」

 と梨由子に。

 保育園の散歩が来る。

 https://search.yahoo.co.jp/image/search;_ylt=A2RCAwaVfjdblX8AnR2U3uV7?p=%E4%BF%9D%E8%82%B2%E5%9C%92%E3%80%80%E6%95%A3%E6%AD%A9%E3%80%80&aq=-1&oq=&ei=UTF-8#mode%3Dsearch

 手押しのお散歩カートを押してくる。

 歩ける子もいる。


●18

保育士「はい、わたるよー」

 と子供たちに声を掛けながら車道を横切る。

 ニコニコする梨由子とコヤジュン。

 梨由子に手を振る子供。

 甘い顔で手を振り返す梨由子。

 その様子を見て思うところあるコヤジュン。梨由子の優しさにふれる。


●19

■大

 イメージ。

 保育士になってるコヤジュンと梨由子が子どもたちと散歩にでかけてる。

 走り出す子供に手を引っ張られてちょっとコヤジュンが焦って、微笑ましく見ている梨由子。

 もしかしたらそんな可能性もあったかも的なビジョン

 3人とすれ違う散歩園児たち。

梨由子「やっぱあんくらいの子供ってほんとかわいいよなー」

 と欲情ギリギリに顔を緩めて散歩のほうを振り返る梨由子。

 なんとはなしに振り返る沙織。

沙織「なあ」


●20

沙織「アレ、フランス革命のときに捕まって町中引き回されてる貴族みたくね?」

https://pds.exblog.jp/pds/1/201011/21/64/e0011664_1349275.jpg

 ↑に乗せられた貴族たちが街頭の民衆から腐った果物を投げつけられているイメージ。貴族のカッコした京子たち。とか。

 うはははと笑いながら歩いていく3人。


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