おかわり第6話「あげかまピザ」

コンテ

https://www.pixiv.net/artworks/87181073


(擬音・吹き出し外文字)

「セリフ」

{人物モノローグ}

<ナレーション・モノローグ・解説>


●1

■大 タイトル

 教室。休み時間。京子の机近辺に集まってだべっている。

ボウヤ「年下の弟みたいな男とつきあうといい、って占い師に言われた」

セクシー「へー」

クリ子「年下とかあんまりピンとこないんだけど」「ガキっぽいのはなー」

ボウヤ「そうよのう」「デートするイメージとかできない」

 と腕組みして目をつむる。

京子「デートねえ」「忍とよく「デート」と称してお出かけするけど」

 と思い出すように。

ボウヤ「そう! それそれ!」

 と、くいついて。

ボウヤ「いやちょっと考えたんだけどさ」

ボウヤ「どんな感じなのか試してみたいのよ」「年下の男をリードするってやつを」

 と悩んだ末に京子を頼るように。

京子「?」

 なんだかわからない。

<突然のボウヤによる忍へのデート申し入れ──>


●2

<──忍はこの不可解な申し出を途惑いながらも> <「京子が一緒なら……」と回答>

 待ち合わせの新宿小田急改札前に立つ二人。

忍「デートってどうすればいいの」

 ちょっととまどい気味な忍。

京子「手ぐらいつないでやれば?」

 といたずらっぽい笑み。長ズボンにスニーカー姿。

ボウヤ「おーい」

 とやってくる。

 待ち合わせに来て、

ボウヤ「忍は今日一日わたしの弟で彼氏だかんな!」「お姉ちゃんだと思って甘えてよし!」

 張り切るボウヤ。同じく長ズボンスニーカー姿。

忍「う、うん」

 改札をくぐり、歩きながら忍に聞こえないようにそっと寄ってきて。

京子「占い師が言ってた年下って絶対小学生じゃないと思うけどなー……」(ぼそぼそ)

 とニヤニヤしながらボウヤに。

ボウヤ「忍という安全なハードルを飛ぶことで感覚をつかみたいんだってば」(ぼそぼそ)

 苦笑い。

<こうして姉付きのデートは承認され> <ボウヤ自ら練ったデートプランにより、一行は小田原へと向かったが……>

 ロマンスカーが停車しているホームをふりかえりながら走るボウヤ、なんだかわからないまま追いかける忍と京子。

ボウヤ「忍こっちこっち!」

忍「?」


●3

 先頭車両の前で、

ボウヤ「ホラ、写真撮れ」

 と促す。

忍「え?」

 途惑う忍。

ボウヤ「え?」

 その反応に意外そうに小さく驚く。

忍「なんで?」

 疑問しかない。

ボウヤ「だってロマンスカー……」

 と信じられないものを見たように、困惑して絶句。ロマンスカーをさす指が漂う。

京子「ボウヤ、忍は電車には特に興味ないと思うよ……」

 と呆れ笑い。

ボウヤ「え、男の子は電車好きだよな?」

 と、まさかな、というように焦りながら忍に聞く。

ボウヤ「ウチのアニキなんか絶対撮るぞ」

忍「う、うーん?」

 返事に困る。

忍「じゃあ撮ろうかな」

 としかたなく京子のスマホを借りてかまえる。

ボウヤ「忍、こっちからだ! この角度!」

 と撮影位置を指示する。

<デートは出だし新宿駅から混迷錯綜していた……>


●4

 小田原駅の改札をでた3人。

忍「ボウヤがお城案内してくれるの?」

ボウヤ「おう」「小田原と言えば小田原城だ」

 小田原の駅から城山への道。

忍「あれ?」「小田原城あっちって書いてあったけど……」

 とボウヤに案内表示を指摘。

京子「ほんとだー」「なんだっけ? 天守閣っていうの? あそこに見えるよ」

 と振り返って指さす。

ボウヤ「天守閣なんて、あんなのコンクリの偽物だ」

 ずんずん歩きながら。

ボウヤ「本物の小田原城を見せてやる」

 と坂道の先を行くボウヤをおいかける京子と忍。

京子「ボウヤどこ行くのコレ」「登山じゃん」


●5

ボウヤ「ついた! 見ろこの巨大な空堀!」

ボウヤ「ここが元々の城だったんだぞ」

 と大堀切の底で手を広げる興奮気味のボウヤ、汗を拭きながら。忍と京子も息をつきながらキョロキョロ見回す。ここが城? とピンとこない。

忍「じゃあ、あのお城は?」

 と山の上から見える天守閣を指さす忍。

ボウヤ「あれは平和な江戸時代の建物の復元」「戦国時代はこの八幡山が本丸だった」

 坂の多い住宅街を歩く3人。。

京子「山の中の住宅地だけど」

 ボウヤが縄張り図を手に歩き回りながら案内しているのについて歩いている。

ボウヤ「北条早雲が関東進出の足掛かりにした小田原城はこっち!」

 なぜか得意げに興奮。

ボウヤ「どうだこの眺め?」「北条早雲の気分じゃないか?」

 と気持ちよさそうに小田原の街を眺める。

忍「え?」「だれ?」

 とボウヤを見る。

ボウヤ「えっ?」

 と忍を見る。


●6

ボウヤ「あれっ? もしかして北条氏嫌いだった?」

 と地雷を踏んだ? みたいに忍をうかがう。

京子{「北条氏が好きか嫌いか」って二択があるかな?}「いやあ、忍は戦国武将よく知らないよね?」

 と呆れながら忍をフォロー。

 どんな反応していいか困る忍。

ボウヤ「えっ、男の子なのに?」「アニキとかアニキの友達みんな詳しいんだけどな……」「でも豊臣秀吉は知ってるだろ?」

 自分の常識が覆されて本気で困惑するボウヤ。

忍「えーと、ゾウリ暖めた人?」

 と気を遣いながら知識を総動員。

ボウヤ「そうそう!」「この城は秀吉に攻め落とされたんだ」

 やっと話が合ったとホッとするように。

 石垣山のほうを指しながら。

ボウヤ「あの山に秀吉が小田原城を攻めたときに作った石垣山一夜城があるよ」

忍「あ、知ってる! お殿様に命じられて競争させて一晩で作ったお城でしょ?」

ボウヤ「惜しい! それは墨俣一夜城だ」


●7

 銅門の前。

ボウヤ「こういう門は「枡形虎口」っていって城の重要防御施設だ」

 一の門をくぐった枡形の中。

ボウヤ「最初の門を破ってこの狭い空間に入り込んだ敵をあの穴から撃ちまくって攻撃する」「※別名「絶対殺すゾーン」だ」

京子「絶コロゾーンとな」

 とおののく。

 門や塀を見上げる3人。

欄外注 ※ボウヤ用語です

ボウヤ「城は天守閣がなくても虎口はいろんな形で必ずあって、そこに絶コロの工夫がある」

忍「うちの近所の公園のお城にもあるの?」

ボウヤ「もちろん!」「……たぶんあった」

●8

 本丸常盤木門前。

忍「もしかしてここも虎口?」

 口を開けて見上げている忍。うなずくボウヤ。

ボウヤ「そう!」「本丸の常盤木門は橋と階段で進入しにくくした枡形虎口!」「まさに入ってきた奴を絶コロ!」

 ひえー、と絶コロにおののくようにおどける京子。

ボウヤ「忍は飲み込みがいいな!」

 楽しそうなボウヤ。

京子「天守閣だ」

 本丸到着。

忍「お猿がいる」

 と檻の方を指す忍。


●9

 猿の檻の前で。

ボウヤ「2000年代までこの本丸は動物園になってたらしい」

ボウヤ「その頃けっこう大きなゾウがいたって」

京子「城にゾウがっ?」

京子「小田原城の小田原ゾウってダジャレかな」

 と、ひとり可笑しそうに考え込む。

ボウヤ「これはアニキの先輩の友達が叔父さんから聞いたらしいんだけど」

 声を潜めて。

忍「怖い話?」

 ぎくっとする。

ボウヤ「そのゾウがまだ生きてるときに飼育係の人と話してたら」「もしゾウが死んだら、その巨大な亡骸をどうするのかって話になって」

忍「やっぱり怖い話だ!」

 怖がる。

 何の話かなーと腑に落ちない顔で聞いている京子。

ボウヤ「この本丸まで来るのに攻めにくい門や階段や橋を通ってきただろ?」「攻めにくいってことは出にくいってことでもあって、どうやって大きなゾウの亡骸を運び出すのかって難題でさ」

京子「ああ!」

 なるほど、と納得する。

ボウヤ「飼育員の人が言うにはチェーンソーでバラバラにして出すつもりだって」(本当にその通りにしたかは知らない)

忍「かわいそう」

京子「でもしょうがないね」


●10

■小

京子「あれ?」

京子「だとすると、そもそもどうやってゾウをこの本丸に入れたんだろ?」

忍「ホントだ!?」

■大

京子「みんなその場を動くな」「これは密室トリックだ」

 と場を制すように手を広げる。

(バーン)

<名探偵京子の事件簿 小田原ゾウ密室トリックの謎> 

 ホームズ風のかっこうになった京子。

京子「仮説1!」「バラバラにして運び込んで本丸で組み立てた!」

 コナン推理シーンにでてくる黒い犯人が組み立てるイメージ。

ボウヤ「なるほどですぞ」

 うなずく。

 疑う忍。

京子「仮説2!」「卵のうちに持ち込ん本丸で孵化させた!」

 黒い犯人が卵を持ち込むイメージ。

ボウヤ「乙女ゆえ小学生の前ではいなめない」

 うなずく。

 ますます疑う忍。

京子「仮説3!」「元々ゾウがいたところに城を作った!」

 北条早雲(黒い犯人)が象を囲って城普請の差配をしているイメージ。

ボウヤ「犯人は北条早雲かな」

 納得したように手を打つ。

忍「まじめに聞いて損した」

 呆れ顔で振り返りつつ去る忍。


●11

 本丸から降りてくる途中。忍が先行している。

ボウヤ「忍、楽しんでくれてると思う?」

 と京子に囁く。

京子「楽しんでるんじゃない」

 とボウヤを安心させるように。

ボウヤ「ここまでのデートプランでいまいち心をつかめてない気がする」「というか噛みあってない」

 納得いってない感じ。

ボウヤ「特急とか城とか男の子が好きそうなものをチョイスしてたつもりだったんだけどなー」

京子「ボウヤのお兄ちゃんみたいなデート相手だったらバッチリだと思うよ」

(えー)

ボウヤ「アニキみたいな…」

 げんなり。


●12

ボウヤ「忍、なに見てるの」

 観光パンフレットのスタンドの前でパンフを手に取って見ていた忍に声をかける。

 振り返る忍。

 かまぼこの里のパンフ。

忍「かまぼこ博物館だって」「ここ行ってみたい」

ボウヤ「へー」

ボウヤ「地図で見ると歩いてけそうだな」

 と指さして歩き出す。

京子「まてまてまて!」「二駅先だぞ!」

 と止める京子。

京子「ボウヤ、デートは相手の体力にあわせたほうがいいと思うよ」

 と真顔で両肩に手を置いて言い聞かせるように。

ボウヤ「お、おう」

 自分のうっかりを認めてうなずく。

 先行するボウヤの背を指しながら、

京子「あいつ練馬から立川までママチャリで行くのをためらわない女だからな」

 と苦笑いしている忍に囁く。


●13

 かまぼこの里の入り口。

京子「おお!」「駅前すぐだ」

京子「うわー」「ショッピングモールみたい」

 中に入ってわっとなる3人。

 売り場風景。

忍「これ売ってるの全部カマボコなの?」

京子「いろんなカマボコある」「これお菓子っぽい」


●14

 ショーウィンドをのぞく忍とボウヤ

忍「このゼリー寄せみたいなのもカマボコなんだ」

ボウヤ「試食できる」

ボウヤ「お魚カツサンドってなんだ?」

京子「かまぼこバーに甘味処にスィーツカフェ」「あっちは高級カマボコのラウンジ」

 あっちこっち指さしながら楽しそう。

 建物の外に出る三人。

京子「道の反対の敷地にレストランとかそば屋があるよ!」

忍「かまぼこ博物館、あっちだって」

 と指さす。

 かまぼこ博物館全景。

ボウヤ「カマボコのテーマパークだなこりゃ」


●15

 かまぼこ博物館の中。

忍「ぼく、かまぼこ手づくり体験教室やってみたい!」

 と指さす。

 受付で話す京子とボウヤ。

京子「え、さっき締め切って今日はもう終わり?」

京子「残念だね」

 なだめるように。

忍「惜しい」

 少し「えーっ」って感じで落胆する忍。

ボウヤ「そうか! 忍はこういうのが好きだったんだ……!」

 と、あーっ、と気が付く。

ボウヤ「ごめん」「もう少し早く城見るの切り上げてればまにあったかも」

 申し訳なさそうに。

■大

忍「んーん!」「小田原城、楽しかったよ!」

 とボウヤを見上げて首を振る。


●16

■大

忍「絶コロゾーンの虎口のことは完ペキにおぼえたよ!」

 笑顔。

■大

 救われたようなボウヤの表情。

■小

 かまぼこ作り解説の展示を見に小走りにかけていく忍を見送ってポツリと

ボウヤ「……あいつきっとモテるだろうなあ」

 振り返る京子。

■小

京子「え? そうかー?」

ボウヤ「そうだよ」


●17

 帰りの小田急線。すっかり暗い。普通車両。

京子「小田原を満喫したね」

ボウヤ「大人のデートだったら箱根で一泊したいとこだ」

 おみやげの紙袋を抱えているふたり。寝ている忍。

京子「でたでたボウヤのスケベー」(いひひ)

ボウヤ「しーっ」

 忍に聞こえないかと慌てる。

京子「寝てるから大丈夫だよ」

 京子に寄りかかってスースー寝ているいる忍の寝顔。

 おみやげに買った「かまぼこの秘密」を胸に抱えている。

京子「で?」「今日のデートどうだったね?」「なんかピンときた?」

ボウヤ「いや、姉同伴のデートって」「これ完全にデートじゃないだろ」

 苦笑い。

京子「んだなー」(わはは)

 宇宙をバックに飛ぶ小田急線。999のように巻紙ナレーション。

<デート、嬉しくも恥ずかしい、甘酸っぱい響き 

 そう、デート、それは男女二人がお互いを深く知り合うイヴェント>

<ああ、デート、若さとは力(マイティ)、若さとは罪(ギルティ)

 いま万感の思いをのせ、汽車はゆく──>


●18

 夜。アパート外観。

忍「ぼく電車で寝ちゃったからあんまり眠くないや」

 居間。

京子「なんか小腹すいたね」

忍「夜食にカマボコ食べちゃおう」「待ってて、切ってくる」

 と台所に。

忍{そうだ、せっかくなので}

忍{カマボコの飾り切りにチャレンジ!}

 とカマボコを手にして。

 飾り切り図解。


●19

忍{あとは……}

忍{カマボコレシピが載ってるからこれを作ろう}

 とかまぼこの秘密をめくって。

京子「まだー?」

 と居間でゴロゴロ。

忍{おみやげで買った揚げかま}

忍{半分にそぎ切り}

忍{ピーマンを輪切り、パプリカを角切り、トマトを薄切りにして}

忍{揚げかまにのせて、さらにその上にピザ用チーズをのせて、ガスレンジのオーブンで3分半焼くだけ}


●20

<あげかまピザ>

<飾り切りのカマボコ>

京子「おっと、またわざわざ手の込んだことを」

忍「このほうが楽しいでしょ」

 のびるチーズを口でたぐりながらあげかまピザを食べる二人。

 鼻歌交じりにご機嫌な忍。

京子{こういう気が利く男って確かにモテるかもな……}

 と忍を盗み見て将来を案じる。



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