おかわり第2話「ストロガノフ流ブフパスタ」
コンテ
https://www.pixiv.net/artworks/87179719
(擬音・吹き出し外文字)
「セリフ」
{人物モノローグ}
<ナレーション・モノローグ・解説>
・羽田涼
クラスメイト13番。「陰気キャラ」を自認する京子のクラスメイト。京子が好きだけどただ見ているだけ。小説が好き。なろう小説書いている。
●1
■トビラ
夕食終わって食器を洗っている京子。ふと思いついてニヤリ。独り言のように。
京子「ウナギの稚魚が海から帰ってこられなくて」「ウナギになりそこねた奴がアナゴなんだよ」
忍「え?」
<京子の思いつきの冗談を真に受ける忍>
●2
■
手を拭いて。
京子「味も似てるでしょ」
忍「あー」「そういえば……」
■
京子「あとほら」「名前も近い」「三文字で」
京子「あ行のア」「な行のナ」「が行のゴ」
京子「あ行のウ」「な行のナ」「が行のギ」
忍「ホントだ!」
<次々とデタラメのエビデンスが飛び出す>
■
忍「出世魚なんだね」
京子「ウナギという出世コースから外れたドロップアウト魚がアナゴ」
<↑上手い事を言っただけのつもりの京子>
<この半年後、寿司屋の大将に話して大ウケされてポカンとする忍の姿があった…>
●3
■1段目
朝。
京子が通う貫井高校への通学路。
クラスメイトの羽田が歩いている。眠そうだが小説を書き上げて充足感を感じている。
羽田{昨日上げた最新話は初めてコメントがついて手ごたえがあった……}
羽田{やはりラノベデビューの近道は小説投稿サイトしかない……}
羽田{新作のアップはこまめにせねば}
■2段目↓
羽田{あっ}
と先の十字路を見てハッとする。
■ぶち抜き。
羽田{市川京子……さん}
颯爽と登校中の京子。
■
羽田{ううっ}{……好きだ}
密かな慕情が漏れそうに顔を赤らめる。
羽田{歩いているだけで一幅の絵のようだ……}
●4
■
画面手前に向かって歩いてくる京子なめ、後方を歩く羽田。
羽田{一部男子の間で、貫井高校一年美少女四天王なんて言われているけど}
{僕にとって君以上の女子はいないよ}
■
羽田{でも、僕はクラスの中では陰気キャラ……}
いじけたように。顔に影が差す。
■
羽田{君に憧れながらも遠巻きに見る事しかできないさ}
と目を伏せて哀しそうにする。
宮脇「おっ、市川京子」
とその前を歩いている宮脇、佐々木、小田が京子を見つける。
●5
■
佐々木「今日も良いなあ……」「あの尻たまんねえ」
と好色な視線を無遠慮に投げかける。
宮脇「お前、朝からあからさまに視姦するのやめろよ」
■
京子に対する妄想をバックに語る佐々木ら3人。
佐々木「けど、ツンツン澄まして近寄りがたい雰囲気出しながらも、あのドスケベボディ」
佐々木「妄想せずにはいられんだろう」
小田「うむ」「つい見てしまう」
■
宮脇「まあ、高嶺の花ってやつだよなー」
佐々木「その摘めない花をどう活けようか想像するくらい自由だろ」
■
羽田{ふっ}{下品で馬鹿な彼らも身の程をわきまえているか}
羽田{……確かに彼女の魅力はすでに目の毒を越えて暴力の域だよ}
{見るなと言われても魅入ってしまう……}
■
羽田{だが不届きな想像は許さないぞ!}
(メラメラ)
と佐々木たちをこっそり睨む。
●6
■
昇降口。下駄箱前で靴を履き替えようとする京子。
■
踵を上げて上履きを履こうとしてよろける京子。
京子「とっ」「とっ」
それを近くで見ている羽田、少し離れて宮脇小田佐々木。
■
京子の踵が上がって上半身が前傾して泳ぎ、パンツが見えそうになる。
佐々木「お、お…」
と前のめりになって覗き込もうとする。
■
佐々木{あと少し……}
宮脇「おいおい」
と佐々木がしゃがみこもうとするのをたしなめかける。
京子のスカートがギリギリ。
背後から迫るセクシーの影。
■
(ドン)
佐々木「わっ!」
とぶつかられて羽田と将棋倒しになる。
●7
■
佐々木「なんだよ、おいっ……」
とカッとなって振り返って見上げる。
その下で見上げている羽田。恐れ。
■
見上げると虫を見るような目で佐々木を見くだしているセクシー。ビリビリバチバチと蒼天航路で初登場時の呂布が放ったオーラのようなエフェクト。
佐々木「うっ」
男4人、セクシーの登場に狼狽えて絶句。
■
セクシー「ごめんね」
佐々木に。
セクシー「よそ見してたらぶつかっちゃった」
とまったく悪びれない。むしろ威嚇。邪魔だ死にたくなかったらどけ。俺ならどくね。みたいな。
●8
■
セクシー「京子おはよう」
京子「よっすセクシー」
とあいさつを交わすふたりを見ている男4人。
羽田{高木陽子}{……美人だけど恐ろしい}{長身で鍛え上げたフィットネスモデルばりのスタイル}
■
羽田{しかしあのコワモテに恐れをなして近寄る男子は皆無……}
しょんぼりしている佐々木らを横目にみている羽田。
■
セクシー「気をつけなよ」「パンツ見えそうだった」
二人、階段をのぼりながら。ちらりと振り返って一瞥くれるセクシー。殺し屋か、って目。
京子「ええーっ」
今さらスカートの裾をおさえる。
■
羽田{……まるで虫のように男子を見るあの目つき}
セクシーににらまれてうつむく羽田。
●9
■
思い直すように後を歩く佐々木たちをチラッと非難するように見て、
羽田{けど…今のはケシカラなかった}
佐々木ら、やばかったなーみたいな話をしている。
羽田{だいたいパンツなど見てもそれでどうだというんだ}{ただの布だし、その中身が見えるわけでもないし}
■
羽田{いや、中身っていうか……}{……まあ、見たいけど}
妄想して顔を赤らめる。
■
羽田{ちがうちがう、そうじゃない}{僕は彼らとは違うぞ}
首を振って。
■
羽田{僕は市川さんの}{彼女の本当の魅力と気高さを尊んでいるんだ}
と思いを新たに。
■
教室。カバンを置く羽田が、クリ子、ボウヤたちと集まる京子セクシーを見ている。
京子「クリ子、ボウヤ、よっす」
クリ子「あー、京子とセクシーも聞いてよ」
■
何か会話が盛り上がっている京子たち。
羽田{ああ、僕も市川さんと話してみたい}
羽田{でもどんな話をしたらいいんだろう……?}
●10
■
昼休み。学食
ボウヤ「コングが劇場で鎖引きちぎってさー」
「スノッブなニューヨーカーが大パニック」
クリ子「あのシーンは「やったあ!」「いいぞもっとやれ!」って感じだよ」
■
テーブルで定食を食べている京子たち4人。
京子「あたしも「ゴリラになって暴れたい」って時々思う」
クリ子「ゴリラライフ楽しいよね絶対」
■
後の券売機で食券を買おうとしている宮脇佐々木小田。
宮脇「うわ、定食終わってカレーしかねえ」
佐々木「カレーでいいじゃん」
■
宮脇「晩飯もカレーなのに~~」
宮脇「ウチ、金曜はカレー曜日なんだよ」
小田「海軍か」
と券売機からチケットを取っている。
●11
■
佐々木「ウチのカレー、味噌入ってる」
宮脇「まじか」
とカウンターへ向かう3人。
男どものカレーの会話に耳をそばだててチラ見してる京子。
京子{昔は男子ともよく話したり遊んだりしたのになー}
■
京子{小学校高学年くらいから男女別れて遊ぶようになったような……}
と京子たち、食器を下げにテーブル席を立ちながら。
■
京子{中学生になったら急に暗くなってしゃべんなくなった男子とかいたし}
京子{アレはなんなんだよ……}
と腑に落ちないことを色々思い出している。
■
横を通り過ぎる佐々木たち。
佐々木「とか言ってお前、カレー大盛りかよ」
宮脇「うるせえな!」
■
(ピキーン)
ハッとする京子。
●12
■
京子「今日、晩ご飯カレーライス食べたいかも」
シリアスな顔で。歩きながら。以下校舎の廊下。
セクシー「唐突だな」
シリアスに受ける。
■
セクシー「つか京子ってよくお昼ご飯食べてるときに晩ご飯のこと考えるよね」
同意してうなずくクリ子、ボウヤ。
■
京子「あ、でも明日の夜、叔母さんと食事だから作りすぎるとまずいな」「作りすぎないようにするか」
悩むように口元に手を当てる。
■
京子「でもそんなの無理だ」「どうしよう」
と頭を抱える。
セクシー「なにが無理なのか」
と意味わからない。
●13
■
京子「あんたわかんないのかセクシー! カレーはどうしたって大量に作ってしまうだろ」
と絶望するようにセクシーにすがる。ひっ、と若干ひくセクシー。
ボウヤ「わかるー!」「だってカレーだし」
と同調して京子と似たような絶望感出す。
■
京子「ボウヤ!」
ボウヤ「京子!」
ひしっと抱き合う。
なんなのこいつら、と呆れるセクシー。
■
クリ子「じゃあ食べ切り分だけハヤシライスでも作れば?」
■
京子ボウヤ「ハヤシライスぅ~?」
クリ子に食って掛かるように顔を近づける二人。ムカつくかんじの挑発。
イってなるクリ子。
●14
■
京子「正気かクリ子」
京子「そんな眠たいものワザワザ作ろうと思ったことないし、つかハヤシライス作ろうって人の気持ちがわからない」
ボウヤ「そうだそうだ」
見下して責める二人。仁王像?
■
クリ子「ハヤシライスって言っただけでこんなに責められると思わんかった」
とセクシーと二人で苦笑い。
京子「……ハッ」
とひらめく。
■
京子「もしかして人はこういうときにハヤシライスを作ろうと思うのかっ?」
と天啓を得たように。口を半開き。
セクシー「なんだそれ」
半笑い。
●15
■
京子「カレーを作りたくても作れない事情があって、それでもカレー的なものが食べたい時」
「そんな人のために代替物としてのハヤシライスがあるのでは?」
と何か一筋の光明を探り当てて手繰ろうと独白するように。ガンダムOPの君よつかめっぽいポーズ。
ボウヤ「そうかも……」
恐ろしいことに気がついたかのように目を見開いて茫然と。
セクシー「おまえらハヤシライスをとことんバカにしてないか?」
呆れる。
■
クリ子「あれ? ハヤシライスってビーフシチューがかかってるライスって事でいいんだっけ?」
急に気がつく。
■
セクシー「かかっているのはハッシュドビーフじゃね?」
クリ子「それ何が違うんだ?」
●16
■
京子「具がゴロゴロしているのがビーフシチューで、具が刻んであるのがハッシュドビーフ」
「でも同じデミグラスソースだからなあ」
クリ子「フランス料理?」
ボウヤ「ビーフストロガノフは? あれはロシア料理じゃないの?」
口々に勝手な事を言う。
■
京子「ストロガノフってすんごい強いレスラーっぽくね?」「オリンピック金メダリストで本職は警察官みたいな」
面白いこと思いついた! みたいな。背後にカレリンみたいなロシアンレスラーのイメージ。
■
クリ子「ストロガノフってストロングの最上級のさらに上って感じするな」
クリ子と京子うなずく。
■
京子「ストロング」「ストロンガー」「ストロンゲスト」
全員声をそろえて「ストロガノフ!」
●17
■
夕方。家。台所。
京子{牛肉薄切り300gはひと口大}
牛肉を薄切りをバラすように切る。
■
京子{玉ねぎ1個とマッシュルーム6個は薄切り}
ボウルに入れてある薄切り玉ねぎ。マッシュルームを切っている。
■
京子{フライパンにバターを入れて溶かして牛肉と玉ねぎを入れて炒める}
フライパンで炒めている。
■
京子{肉の色が変わったらマッシュルームを入れて塩コショウ適当に振って}
塩コショウしながら混ぜ炒めている。
京子{さらに炒めながらまぜる}
■
京子{火を弱めて具をフライパンの端に寄せてスペースを空ける}
フライパンの端に具を寄せている。
●18
■
京子{デミグラスソースを一缶}
缶詰を開ける。
京子{ぱかっとな}
■
京子{缶のデミソはプリンみたいに固まっているから……}
缶詰にスプーンを入れて。
■
京子{ががががががー!}
京子{とスプーンで掻き入れて}
とガツガツ掻き出してフライパンに入れる。
●19
■
京子{赤ワインなんてものはないので}
京子{水をちょっと足して暖めながらソースをゆるめる}
と小皿から水を入れて混ぜる。
■
京子{全体を炒め合わせてひと煮立ちしたら、えーと……}
冷蔵庫を漁る。
■
京子{生クリームもないので牛乳をちょっととバターをひとかけ}
と投入。
■
京子{あっ!}
と気が付く。
●20
■
京子{ご飯炊くの忘れてた……}
床に置いてある無言の炊飯器を見て青ざめる。
■
京子{お、お、お……}{なんてマヌケを}
炊飯器にヨヨヨと倒れ込む。
■
京子{いやまてよ}
とひらめく。
■
京子{コメが無いならパスタを茹でればいいじゃない}
寸胴鍋に湯を沸かしている前でパスタの束をつかんで、マリーアントワネットの格好でてへぺろ。
●21
■
京子{今日はカレーライス食べたかったのに全然違うものになったな……}
<ストロガノフ流ブフパスタ>
忍「あれ、今日、ビーフストロガノフって言ってなかった?」
大皿で出された料理。
■
京子「こ、これは元々こういう料理なの」
挙動不審な京子。目が泳いでいる。
■
京子「あの」「フランスとロシアとイタリアの」「三カ国で共同開発したおいしいもの?」「かな?」
と取り皿にとりわけながら。
忍「「かな?」って訊かれても……」
●22
■
京子「お、バッチリいける!」
食べてにっこり。
■
忍「うん、ミートソース風でもあるね」
おいしそうに。
■
京子「いや、まあおいしくないわけないけどさ」
ご機嫌なふたり。
忍「ソースと肉と刻み野菜の具ならなんでもパスタになるなー」
●23
■
京子「うーん、やっぱりコメにかけて食べらるものはみんなパスタにできるんじゃないかな」
もぐもぐ味わいながら考察。
京子「もうこれはコメとパスタの交換法則と名づけていいだろう」
忍「さっき「これはこういう料理だ」って言ってけど……」
呆れて。
■
京子「カツ丼だってパスタになるかもしれない」
と得意げに。
忍「カツ丼はどうかなあ……?」
首をかしげる。
■
忍「ビーフストロガノフってハッシュドビーフと何が違うの?」
ふと疑問。
●24
■
京子「サワークリームが入ってるのが正しいビーフストロガノフ」「生クリームとかね」
京子「そんなものはウチになかったので牛乳とバターで代用しました」
口に運びながら。
■
京子「でもさー」「デミグラスソースって味が強いからサワークリームなんか入っててもわかんなくない?」
忍「うんデミグラが強い」
うなずく。
■
京子、昼の事を思い出して。
■
京子「デミグラがめちゃストロングだからストロガノフっていうんだよ」
京子「原級ストロング」「比較級スロンガー」「最上級ストロガノフ」
■
忍「へえ、そうなのかー!」
感心して笑顔。
<この冗談を真に受けたせいで3年後に大恥をかいた>
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