第28話「野菜たっぷりドライカレーさっぱりレンジ茄子(練馬大根ドレッシングかけ)子どもピーマンのおひたし」

コンテ

https://www.pixiv.net/artworks/87178061


(擬音・吹き出し外文字)

「セリフ」

{人物モノローグ}

<ナレーション・モノローグ・解説>


●1

■トビラ

 午後、学校帰りの京子と待ち合わせた忍。

 JAの前で忍の後に隠れるように忍の両肩を持って、

京子「なんだアレは……?」

 とおこめちゃんの等身大(?)ポップを見ている。

 このときがおこめちゃんと初遭遇。


●2

 JAの入口に立つおこめちゃんの等身大ポップ。

 おこめちゃんのうつろな目。

■大

京子「かわいすぎんだろー!」

 と目をつぶって拳を握って力いっぱい。

忍「そうかな」

 と首をひねる忍。


●3

京子「おこめちゃんだって!」

 とポップの足もとらへんの表記を指さして。

忍「ごはん食推進のゆるキャラて……」

忍(とも食いだ)

 としゃがみこんで表記を見る。

京子「てか、ここってなに?」

 とキョロキョロして。

忍「JAって書いてあるけど」

 とキャッシュバンクの看板を見て。

京子「ジャ? ジャって?」

 くびをかしげる。

忍「銀行かな……?」

 とキャッシュバンクの入り口をのぞきこんで。

忍「こっちはなんかお店みたい」

 と、とれたて村のほうへ。

京子「「練馬大根ドレッシング入荷しました」って」

 と張り紙を見て。

京子「へえー」「この辺で作った野菜の直売所か」

 と入りながら。


●4

■大

忍「近所なのに知らなかったね」

忍「野菜買っていこう」

 店内の様子。すいている。

京子「ちっちゃいナス、かわいい」

 と手に取って。

忍「こどもバナナピーマン……?」

京子「しし唐みたい」

 と二人で手に取って。

京子「おっ、レシピ配ってる」「これ作ろう」

忍「練馬大根ドレッシングも買おうよ」

 会計をすませて出て行きかける二人に、

レジのおばさん「入荷が朝だからみんな午前中に買いに来るの」「早い時間に来たらもっとたくさん品物があるわよ」

 二人、振り返ってへえーというようにきいてる。

京子「お花も売ってる」

 と外の小さな鉢の棚を見て。

忍「金のなる木が値引きされてるよ」

京子「ウケる」


●5

 公園。

 エコバッグを提げて遊歩道をブラブラ歩く二人。

 京子がスマホで何か見ている。

京子「ググったらおこめちゃんグッズあるらしい!」

 急に眼を見開く京子。

 よかったねー、とフーっとした目で見ている忍。

忍「……あれボウヤじゃない?」

 と遠くを指さす。

 そちらを見る京子。

 公園の隅で学校帰りのボウヤ、矢部くんと何か立ち話をしている。

京子「んん?」

 と目を凝らす。


●6

京子「………」

 と忍を手を引いて隠れる。

忍「?」

 声は聞こえないが、矢部くんに告白されているボウヤ。

 おどおどしている矢部、堂々として言葉を聞いているボウヤ。

忍「声かけないの?」

京子「しっ」

 狼狽えて苦笑いしつつ、小さく手を振って逃げるように去る矢部君。

矢部「おう、そんだけ!」「はは」「またな!」

 あーあ、とため息をついているボウヤ。

 あ、と京子と忍に気が付くボウヤ。


●7

ボウヤ「ははは」「見てた?」

 と近くに来て、苦笑いしながら後ろ頭に手をやる。

京子「どうした?」「大丈夫?」

ボウヤ「……あー」

 と何か言いにくそうに。

京子「コクられた?」

 ズバリ切り込む。

ボウヤ「あっははは!」「いやまあ」「わたしのこと好きだってさ!」

 と困ったように照れて苦笑い。

京子「おー」

京子「……で?」

京子「なんて返事したの」

 と興味深げに上目遣いで追及。


●8

ボウヤ「「わかった」」「って」

京子「「わかった」って」「すげないなー」

京子「そりゃ狼狽えて逃げるわ」

 と呆れる。

ボウヤ「だってさー」

 苦い顔で言い訳するように。

京子「そもそも誰アレ?」

ボウヤ「サッカー部の矢部だったんだけど、中学んときの」

ボウヤ「部活やってたとき、けっこう仲良く話したりしてさー」「こっちは友達だと思ってたのに告ってきやがってさ」


●9

ボウヤ「こんなの通り魔にあったようなもんだよ?」

京子「いや、まあ、びっくりするけどさ」

ボウヤ「しかも「つきあって欲しい」とかじゃなくて「好きだ」って言われてもじゃあどうしろっつーんだよ」

ボウヤ「でも友達だと思ってたからムゲにもできないしさ」

京子「たしかにつきあって欲しいってならともかくハッキリ断りようがないなー」

ボウヤ「そもそも「好き」にも色々あるじゃん」

ボウヤ「友達として好きとか、彼氏にしたい好きとか、結婚したい好きとか、城が好きとか」

京子「城が好きぃ?」

ボウヤ「おーう!」「この公園、実は城なんだぜ!」

 と急に顔を輝かせて。

京子「あ、そういうえば聞いたことある」


●10

 場面変わって、城跡の石碑の前に立つ3人。

ボウヤ「ほらここが城の遺構が残ってるところ!」

忍「お城はどこにあったの?」

 とキョロキョロする。

ボウヤ「?」

 はあ? みたいな顔。

ボウヤ「お城はこの辺全部だよ!」

ボウヤ「あっちのJAの向こうの川からこの公園の池までの間の高くなっている地形全部がお城!」

 と手を広げる。

忍「うんと、ほら」「よくお城っていうと、石垣の上の建物の」

 ジェスチャー交じりで。

ボウヤ「中世の城は天守閣なんかないよ!」

 わかってねーなー、みたいな顔。


●11

■大

 遺構のフェンスの前。説明の看板など。

ボウヤ「ここが空堀であっちの盛り上がりが土塁で──」

 わーわーと興奮気味に語る。

京子「ちょっと盛り上がってちょっとへこんでいるだけじゃん」

京子「昔はこのフェンスなかったんでしょ?」「こんなの駆けあがったら一跨ぎで入っていけるよ」

 とフェンスに手をかけてあんまり興味なさそうに。

ボウヤ「あっちで武器持って殺す気満々な人が待ち構えていたらそう簡単にはいかないよ!」

 と拾った木の枝をふりあげて。

京子「ボウヤ城のほうが難攻不落だな」「告ってもすげなく追い返される」

 とヒヒっと笑う。忍も。





●12

 家の台所。

京子「ふんふん……」

 とレシピを眺めて。

京子「ナスを半分に切ってから5mm厚に斜め切り」

京子「お皿に並べてラップをかかて電子レンジで4分」

京子「重なってる部分が生っぽくなければOK、と」

京子「ネギを刻んてかけて、お好みでポン酢でもドレッシングでもよし、か」

京子「こどもピーマンはおひたしにするか」

京子「ヘタ取って縦に切ってタネ抜いて、せん切り」


●13

京子「サッとゆでてザルにあげる」

京子「3倍濃縮の麺つゆ大さじ半分と水大さじ半分をまぜて」

京子「ボウルの中でピーマンと和える」

京子「カツオ節をまぶして完成」

京子「さて、ドライカレー」

京子「タマネギ1個、ニンニク1かけ、ピーマン1個、みじん切り」

京子「トマト1個は角切り」

 材料を切っている。切ったイメージ。

京子「ニンジン大1本はすりおろし」「生姜1かけもすりおろす」

 おろし金ですりおろす。


●14

京子「フライパンに油を大さじ1、ニンニクと生姜を入れて炒める」

京子「香りが出たらひき肉150gを入れて炒める」「今日は鶏肉」

京子「色が変わったら玉ねぎ、ピーマン、ニンジンを入れてさらに炒める」

京子「お、カラフルになってきた」

京子「しんなりしてきたらトマトを入れて」

京子「カレー粉大さじ3」「塩小さじ1と2分の1」「コショウ少々」

京子「全体なじませながら2分くらい炒める」

京子「ごはんにのっけて……」「おし!」


●15

<野菜たっぷりドライカレー>

<こどもピーマンのおひたし>

<さっぱりレンジ茄子(練馬大根ドレッシングがけ)>

忍「いただきまーす!」

京子「はいどうぞ」


●16

忍「ドライカレー、ほとんど野菜だね」

忍「でも満足感高い」

京子「うん、こどもピーマン、苦味がない」「おひたしにして正解だ」

忍「本当だ、おいしい」

京子「かわいいナスにかかってるのは練馬大根ドレッシングです」

忍「このドレッシング、大根おろし入ってるんだね」

京子「ナスのレシピ、本当はゴマ油大さじ1にポン酢大さじ3をよく混ぜてかけろって書いてあった」

京子「ごまポンがけだって」「あとお好みで七味」

忍「それもおいしそう」

京子「でも今日のボウヤさー」

忍「?」



●17

京子「告られて「わかった」とか、あいつヒデーな!」

 わははと笑う。

京子「まあ、確かに急に「好きだ」って言われたからって」「こっちが相手を好きにならなきゃならない道理はないし」

 聴いている忍。

京子「あと確かに「好き」にも色々あるな」

京子「人によって意味とか重さが違うし」

忍「よくわかんない」

京子「まー、たとえば」

 と例を挙げようと考える。

京子「誰かを好きになるとか」

京子「あたしがおこめちゃんを好きになったり、ボウヤが城を好きだったりさ」

京子「そういうのってちょっと違うでしょ?」

忍「んーと」

 と上を見て考える。


●18

■大

京子「忍は好きな子とかいるの?」

 無造作に、でも忍にぎくりとさせる射るような視線。

■大

忍「えっ」

 ぎくりと驚く。


●19

 忍の口元。思わず下唇をきゅっと噛む。

忍「……そんなこと」

忍「……言いたくない」

 視線をそらして、やっと振り絞って誤魔化そうとする。

京子「なにそれ~~?」

京子「生意気だな~~」

 と笑っていじわるっぽくからかう。

忍{あれ?}

 目をぱちくりさせて、何かに気が付く。


●20

忍{……でも}{じゃあ……}

 洗物をしながら考えつめる。

忍{……僕のこの「好き」は}{どういう意味の「好き」?}

 お風呂に入っている忍。同じ表情。のぼせぎみ。

 消灯して布団に入って寝ている。

 後ろで寝相悪くグーと寝息を立てている京子。目がさえてしまって眠れない忍。

忍{……逆に京子は?}

<忍はその夜><まんじりともせず><寝返りばかりうっていたという>



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