第26話「運動会のお弁当」
コンテ
https://www.pixiv.net/artworks/87177435
(擬音・吹き出し外文字)
「セリフ」
{人物モノローグ}
<ナレーション・モノローグ・解説>
●1
■
(パーン)
とスターターの音。
小学生たちの駆ける脚。
(ダダダッ)
■
(ワー)
障害物競争。網くぐり。
■大
(バッ)
他が網くぐりでモタつく中から華麗にトップで抜け出すロングキスグッドナイト。
■
そのまま平均台を駆け抜ける。
■
それを見て手を叩いている京子。
京子「うわー、速い速い!」
●2
■
タイトル。
跳び箱を危なげなくクリアしているロングキスグッドナイト。
<笑顔いっぱい>
<今日は鷹野台小学校の運動会>
<しかしその前夜、京子の顔はちょっと曇っていた──>
●3
■
忍「本当に大丈夫?」「手伝うよ?」
寝巻の忍、心配そうに今の扉のところで振り返って。
京子「いいからもう寝た寝た」「まかせときなってー」
と苦笑いしながらシッシと追い払う。
■
京子「──とは言ったものの」
京子「お弁当って苦手なんだよな~」
と渋い顔。
■
京子「でも、こういうときこそ姉としてカッコつけねば」
気を取り直して腕まくり。
■
京子「ピーマン4個、ヘタと種を取って細切り」
(とんとんとんとん)
■
京子「こいつはフライパンでゴマ油大さじ1熱してサッと炒めつつナンプラー小さじ1入れて」
フライパンで木ベラを使って炒められるピーマンに小さじでナンプラーが振られる。
■
京子「ほい」「まず1品」
とフライパンから器に移される。
●4
■
京子「ん、薄味でピーマンの甘味出てる」「ちょっと量多かったけど日持ちするからいっか……」「作り置きおかずということで」
と味見でモグモグしながらフライパンを洗う。
■
京子「次はレンコンの皮を剥いて半分に割って薄切り」「水にさらす」
とレンコンを切る。
■
京子「酒、醤油、みりん、酢、全部大さじ1まぜておいて」
とお椀に入れて。
■
京子「これもピーマンと同じようにフライパンにゴマ油で軽く炒める」「焼き色ついたらまぜた調味料を入れて水けがなくなるまでさらに炒める」
フライパンで木ベラを使って炒められるレンコンにお椀から調味料が投入される。
■
京子「白ごまをひとつまみ振ってできあがり」「これで2品」
とフライパンから器に移される。
■
京子「……酢が入るとサッパリするな」「というかまた作りすぎてしまった……」「まいっか、作り置きおかずだ」
と味見でモグモグしながらフライパンを洗う。
●5
■
京子「メインは肉巻きを二種類だ」「今夜は下ごしらえだけで火を入れるのは朝にしよう」
■
京子「5センチくらいに揃えて太めの拍子木切りにしたニンジンと」「端っこをちぎったインゲンを茹でる」
拍子木切りのニンジンとちぎったインゲンの図をバックに鍋に火をつける京子。
■
京子「インゲンは茹であがってからニンジンと同じくらいの長さに切る」
インゲンを切る手元。
■
京子「豚バラ肉を広げて半分に切って」「ニンジンとインゲン2本づつ巻く」
広げた肉にニンジンインゲンを置いたものと、巻き終わって並べたもの。
■大
京子「拍子木切りの茹でニンジンが余った……」「こういう1個づつの料理って材料の適量が作り慣れないとわかんないよなー」
ザルの中のニンジンを見て不満そうな顔。
京子「豚バラ200gに対してインゲン半パック、ニンジン2分の1ってとこか……?」
●6
■
京子「これで半分」
と長芋の皮をピーラーで剥く。
■
京子「もう半分はニンジンと同じように長芋を太めの拍子木切りにしたのと」「一緒に半分に切ったシソを豚バラ肉で巻く」
切った長芋、シソ。広げた肉に長芋とシソを置いたものと、巻き終わって並べたもの。
■
京子「長芋200gでちょっと余るな」「シソも一束でちょい余り」
と余った材料をボウルに入れながら。
京子「これで肉巻きの下ごしらえ終わり」
■
京子「あとは卵焼きかー」「憂鬱だ」
と憂鬱そうに。
■
京子「インゲンまだ半パックあるから使おう」
京子「3本くらい塩茹でして小口切り」
とインゲンを茹でる。
■
京子「基本の溶き卵」「卵2個に塩一つまみ、みりん大さじ1、水大さじ1」
とボウルで卵を溶く。
(かっかっか)
■
京子「この基本の溶き卵に具を入れて混ぜる」「インゲン小口切りと千切ったスライスチーズ1枚」
と具を入れる。
●7
■大
京子「油を中火で熱して温まったら一気にボウルの中身を入れる!」
とフライパンにボウルの中身を入れる。
(じゃあー)
京子「ここがあたしのクライマックスなんだよなー」
■
京子「底からすくうようにヘラで返しながらまとめて……」
と四苦八苦しつつヘラで返そうとするが。
(じゅー)
京子「よ」「は」「と」
■
「まとまらない……」
疲れてあきらめる。
■
京子「両面焼いて……」
しょうがない、というように強引にひっくり返して。
(じゃー)
■
京子「……なんじゃこりゃ」「スペイン風オムレツということにしておく」
と皿の上に載った不恰好に折りたたまれた薄い卵焼き。
●8
■
京子「くやしいのでもうひとネタだ」
と冷蔵庫をあさる。
■
京子「ジャコと長ネギがあった」「長ネギ2センチくらいみじん切りとジャコ適量を基本の溶き卵に投入」
と長ネギをみじん切り。
(トトトト)
■
京子「今度こそ!」
とボウルの中身をフライパンに投入。
(じゃあ~)
■
京子「……絡まった」
とフライパンの上でもつれた卵焼き。
(じゅう~)
■
京子「ええい、もう一丁!」
とボウルの中身をかき混ぜる。
(かっかっか)
京子「さっきの余ったニンジンと長芋とシソを細かく切って基本の溶き卵に投入」
■
京子「……どうもオムレツ風から脱却できないな」
皿の上に載った不恰好なオムレツ。
●9
■
京子「自信喪失」
京子「まずい」「これは弁当箱に詰めても見栄えしないぞ……」
■
京子「自分で食べる弁当はごはん中心に詰めておかず3品もあれば十分なんだけど」「行楽用の弁当は品数多く見栄えも良くしないとって思うから、世の中のお母さんは大変だよなー」
疲れた京子の横顔。
■
京子「毎日お弁当なんてあたしには無理だな~」「作り置きおかずを用意しておかないとすぐネタ切れになるし時間が足りない」
腕組みしてうーむというようにグッと目をつぶって苦しそうに身体をよじるように傾ける。
■
京子「でも忍のためだ」「もう一つなんか……」
卵のパックにあと4つ残っているのを見る。
■
ひらめく。
京子「そうだ!」
●10
■
翌朝。居間。
(ジリリリリ!)
目覚ましの音にフトンから飛び起きる京子と忍。
(ガバっ)
■
台所。ごはんに味噌汁と納豆で食べている忍と京子。
忍「お弁当ずいぶんおそくまで頑張ってたね」「卵使い切っちゃったの?」
■
京子「うん」「まだ下ごしらえだけのがあるけど、ちゃんと持っていくからだいじょぶ」
ちょっと寝不足気味で力なく笑う。
京子「楽しみにしてて」
■
忍「いってきまーす」
と体操服姿で出て行く。
京子「あーい」
とボウルを手にして準備しながら。
●11
■
京子「あとは肉巻きの仕上げ……」「巻いた肉に片栗粉を薄くまぶす」
とボウルの中で片栗粉をつける。
■
京子「フライパンに油をひいて、巻いた肉を並べて転がしながら」
フライパンの上で菜箸を使って肉巻きを転がす。
■
京子「焼き色をつけたらフタをして弱火で2分くらい蒸し焼き」
と蓋をする。
■
京子「酒、醤油、みりん、それぞれ大さじ2をまぜて」「ふたを取ったら肉巻きにかけて、全体にからめつつ水分がなくなるまで煮て」
とお椀から調味料をかけて菜箸で絡める。
■
京子「よし!」「できた!」「あとは詰めるだけ!」
とホッとする。
●12
■
<──という京子の苦労が詰められたお弁当の出来は>
用意された保護者用の応援席で声援を送っている京子。
■
<さて──?>
玉入れしている忍とゆみみ。
■
お昼休み。
京子「忍おつかれー」
と手を振ってレジャーシートを広げて待っている。
■
忍「ロングキスグッドナイトも一緒にお弁当いい?」
とロングキスグッドナイトを連れてくる。
京子「おー」「いいよいいよー」
■
京子「ロングキスグッドナイトの家の人は来てないの?」
ロングキスグッドナイト「それがー」
●13
■
ロングキスグッドナイトの家、両親の寝室のドア前。
ロングキスグッドナイト「二人とも風邪だいじょうぶ?」
ロングキスグッドナイト母「感染しちゃうから入っちゃダメよ」
■
ロングキスグッドナイト父「すまないな」「父さん、お前の運動会を撮り逃すのが残念でならないよ」
(シクシク)
と泣き声。
ロングキスグッドナイト「それはいいよもう!」
■
ロングキスグッドナイト「いっつもいつもみんながヒクくらい機材持ち込んでさ」
去年の運動会の回想イメージ。
機材を持ち込んで三脚に載せたビデオキャメラを覗き込んでいるロングキスグッドナイト父。顔は見えない。
■
ロングキスグッドナイト「それでわたしを撮ったビデオ、編集して音楽とナレーションまでつけて、飽きもせずに何度も見てさー」「もうやめてよ!」
恥ずかしそうに嫌がるロングキスグッドナイト。
居間の大型テレビで繰り返しビデオを見ているロングキスグッドナイト父の後姿。
■
ロングキスグッドナイト父「なにを言うんだ」「父さんがお前の成長を全部撮るのはいずれ記録映画としてだな」
思わず暗い寝室でベッドの上から身体を起こすロングキスグッドナイト父。顔は見えない。
●14
■
ロングキスグッドナイト「やだよー」「だって去年の運動会のなんか急にモノクロにしたり唐突なスローモーションとかストロボアクションとか」
父の編集映像。ストロボアクションで走るロングキスグッドナイト。
■
ロングキスグッドナイト「ウルトラ望遠でずーっと顔のアップとかさー」「なにあれ? レオーネの真似?」
父の編集映像。鉢巻き姿で走っている顔のアップ。
ロングキスグッドナイト父「……市川崑の東京オリンピックだよ」
■
ロングキスグッドナイト父「父さんはレニ・リーフェンシュタールのような……」
ロングキスグッドナイト母「ちょっと、もういいからお父さん」
■
ロングキスグッドナイト母「お弁当作ってあげられなくてごめんね」「お金あげるからコンビニで何か買ってね?」
とドアの下の隙間から千円札を出す。手を出すロングキスグッドナイト。
■
京子「へー、残念だね」
ロングキスグッドナイト「でも初めてコンビニのおにぎり自分で好きなの買えてうれしいんだ」
心底嬉しそうにはしゃいで。
笑っている忍。
●15
■
京子「おかずいっぱい作っちゃったから食べてね」
とタッパのふたをあける。
■
タッパーに詰まったお弁当。
<ピーマンナンプラー炒め>
<さっぱりレンコンきんぴら>
<ニンジンとインゲンの肉巻き>
<シソと長芋の肉巻き>
<インゲンとチーズ卵焼き(失敗)>
<ネギとじゃこ卵焼き(失敗)>
<ニンジンとシソと長芋卵焼き(失敗)>
<鶴の巣ごもり>
<バター醤油焼きおにぎり>
●16
■
ロングキスグッドナイト「卵焼きおいしい!」
■
京子「見た目がよくないのでお恥ずかしいのですが」
ロングキスグッドナイト「わたしの家も甘くない卵焼きなんだー」
とニコニコ。
忍「焼きおにぎりはバターも使ったの?」
とお箸で食べながら。
■
京子「そう」「フライパンで表面焼いてから醤油とみりん3:1をあわせてハケで塗って」「もう一回フライパンにバター溶かして焼いた」
■
ロングキスグッドナイト「京子ちゃんこれなに?」
忍「あ、鶴の巣ごもりだ!」「僕これ好き!」
■
忍「この味のしみた油揚げの巾着の中は卵なんだよ」
ロングキスグッドナイト「こんなのどうやって作るの?」
●17
■
京子「かんたんだよ」「まず、油揚げを半分に切って口を開いて」
回想。
■
京子「小さめのお椀に卵を割って、そっと油揚げに入れる」
回想。
■
京子「こぼれないように油揚げの口を折り曲げて爪楊枝で止めて」
回想。
■
京子「小鍋でひたひたの麺つゆを沸かす」「油揚げを入れたらぶくぶく泡立つくらいの火加減に調整して裏表ひっくり返しながら8分くらい煮て完成」
回想。
■
ロングキスグッドナイト「半熟に茹でられた卵が甘じょっぱい揚げに包まれていて、おいしーね!」
■
京子「午前中はロングキスグッドナイト大活躍だったねー」
ロングキスグッドナイト「このあと応援合戦」「それから騎馬戦と」
忍「僕と組んで二人三脚リレー出るんだよ」
●18~19
■大
応援合戦。チアリーダーの格好をして踊っているロングキスグッドナイトとゆみみ。
■
騎馬戦で中津ロングキスグッドナイト忍の馬にゆみみの騎手、鉢巻きを取られそうで苦戦してる。
■
コヤジュン「5年生の学年種目二人三脚リレーです!」
放送席でアナウンスしている。
(パーン!)
コヤジュン「スタートしました!」
■
応援席。
(わーっ!)
■
中津とゆみみのコンビが走る。危なげ。
■
コヤジュンのアナウンス「さあ、次々とアンカーにバトンがわたります!」
ロングキスグッドナイト「ここー!」
忍とロングキスグッドナイト、先行組にバトンがわたってスタートする横で、手を挙げて走ってくる中津とゆみみにアピール。
■
京子「しのぶー!」
■
中津とゆみみから忍とロングキスグッドナイトにバトンがわたる。
■
忍・ロングキスグッドナイト「タン・メン」「タン・メン」「タン・メン」「タン・メン」
二人の掛け声。何コマかで揃ってる脚、息の合った表情、体格差があるものの組んだ肩、先行組を追い抜く、先行組が転ぶカット、など。
■大
ゴールしてテープを切る二人。笑顔。
●20
■
一等の旗の立ってる竿を持って肩を組んだまま飛び跳ねる二人に中津とゆみみが駆け寄る。
忍・ロングキスグッドナイト「やったー!」
■
中津「お前らいつまで脚結んでんだよ」
と笑う。
アッと顔を見合わせて身体を離そうとする二人。
■
ロングキスグッドナイト{あ}{忍と一等になったところお父さんに撮ってもらえれば良かったな……}
と顔を赤くして嬉し笑いをかみ殺しながら忍に脚の結びをほどいてもらっている。
■
家。晩御飯。
忍「え、お弁当のおかずまだ残ってたの?」
と食卓の料理を見て。
京子「ふだんお弁当なんか作らないから分量わかんなくて」
京子「しばらく余った弁当おかずで食べて行こう」
とすまし顔。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます