第20話「クイッククッパ」

コンテ

https://www.pixiv.net/artworks/87162761


(擬音・吹き出し外文字)

「セリフ」

{人物モノローグ}

<ナレーション・モノローグ・解説>



●2

■大

 朝。アパート近くの道。橋の上とか。

 登校中の京子と忍が手を振ってわかれてる。

忍「いってきまーす」

京子「気をつけてねー」

 眠そうな京子。

 去る京子を振り返りながら、

忍{昨日夜更かししてたみたいだなー}

 ギョッとする忍。



●3

■大

 京子の後ろ姿。スカートの裾がカバンに挟まってパンツ丸見えになっている。

忍「京子!」

忍「スカートめくれてる!」

 ささやき声で叫んで追いかけてくる。

京子「?」

 眠そうに振り返る京子。

 苦笑いしながら忍を見送る京子。

忍{学校でもあんな調子なのかなあ……}

 心配そうにため息。


●4

 貫井高校、始業前の教室。少し早目の時間。人まばら。

 朝練あがりで眠そうな佐々木が左向きに机に突っ伏している。

佐々木{朝練が辛い季節だ……}

 佐々木の目の前を通る京子の太もも。

佐々木「!」

■大

 さっそうと歩く京子全身。ひるがえる短いスカートの裾。

佐々木{……おお」

 制服の上からでもわかる上向きおっぱい。

佐々木{完璧なスタイル}

佐々木{目が覚めるぜ!}

 赤面しつつ憧れの目で見る。


●5

佐々木{市川京子}

佐々木{いっつも物憂げで、ツンとしてキツそうだけど}{やっぱいいなー}

 澄ました京子の顔。朝の陽ざしがハレーションを起こして輝いている。

佐々木{つきあってるヤツとかいんのかな}{あんなに美人なんだし、いんだろうなあ}

 窓際の席に座ってカバンの中を出している京子。うって変わってしっかりして見える。

佐々木{……オレなんか眼中にねーよな}

 シルエットになっている佐々木。キラキラした女子に対して野球部でも補欠の自分に凹んでいる。


●6

 授業中。

 頬杖ついて俯き気味にペンをもったまま寝ている京子。

セクシー{こいつ、巧みな居眠りを……}

 と見ている。

 昼休み、廊下。京子クリ子セクシーボウヤが連れだって歩いている。

セクシー「京子って、授業中見つからないように寝るの上手いよな」

京子「うー」

 なんか具合悪そう。


●7

クリ子「今日学食はうどんの日だよ」

 張り切っている。

京子「なんか食欲ない」

ボウヤ「めずらしい」

京子「いま夢でさ」

ボウヤ「は?」

京子「夢でガム噛んでて」

ボウヤ「お、おう」

 夢の話を振られてとまどう。

京子「すごい口いっぱいにガム噛んでたんだ」「ガブガブ噛んで」

セクシー{ガムをガブガブて……}

 メガネ不透過。


●8

京子「んで、ガムを飲みこんだらなんかお腹いっぱいになったみたい」

 おなかをさすりながらうんざりしてる。

■大

ボウヤ「飲むなよ」「夢とはいえ」

セクシー「なんで飲んだの」「夢だからってそれはゆるされないだろ」

 意外な方向から二人の厳しい詰問で袋叩きにあう京子、びっくり。

 他の3人と学食のテーブルに座って食事してるが京子だけ紙パックの牛乳をストローで飲んでいる。

京子「胸がいっぱいだ」「昼ごはん、牛乳だけでいいや」


●9

 午後。体育の時間。グラウンド。トラックを走っている男子。体育着

宮脇「女子はバレーボールなのに男子は持久走かよ」

佐々木「不公平だなー」

 と走っている。

 ストップウォッチを持った体育教師がハッパをかけている。

(あと2周ー!)

 同、体育館。バレーのゲーム中。コート外でだべっている京子たち。体育着。

ボウヤ「こいつ小学校の卒業文集で「大きくなったらウサギの赤ちゃんになりたい」って書いてたんだぜ」

 とセクシーにクリ子を指して苦笑い。

クリ子「そんなん京子なんかもっとひどいよ」

 意に介さずニヤニヤ笑いながら。


●10

京子「は?」「あたしが?」

 と自分を指さす。

クリ子「「大きくなったら犬の赤ちゃん産みたい」って」

京子「あーっ!?」

 と暴露されて驚く。

ボウヤ「あっはっは」」

セクシー「ぶふふ!」

 笑うボウヤとセクシー。

京子「それ言うなってクリ子おまえーっ」

(がっ)

 とクリ子の両手首をつかむ。

(ぐるんっ)

 と両手を掴んで高く頭上に上げて背中合わせになり、お尻をはね上げて背中に持ち上げる。

クリ子「うあーっ」

セクシー「おっ」


●11

 ゆさゆさと揺さぶる京子。

セクシー「なんだなんだその技」

 と目を丸くする。

ボウヤ「アレはっ……!?」

 ハッとするボウヤ。

 シリアスな顔。

ボウヤ「幻の禁断技っ」「オギノ式バックブリーカー!」

セクシー「え」

 とボウヤを見る。メガネ不透過。


●12

<オギノ式バックブリーカーとは──>

<──かつて鷹野台小学校の同級生・オギノちゃんこと荻野麻友が得意としたオリジナルフィニッシュホールドである>

 オギノちゃんのイメージ。強豪レスラーっぽいポーズをとるぽっちゃり女子小学生。

<当時の担任教師が顔を真っ赤にして「危険だ」という理由で特に禁止したといういわくつきの必殺技だが>

 クリ子にばっちり技を決めている京子。

<京子たちのあいだでも「オギノ式は危険か安全か」と激しく議論となったという……! (ボウヤ談)>

 ナレ囲みの最後ボウヤの似顔絵がプロレススーパースター列伝のアントニオ猪木風に入る。

京子「おらおらおらー」

クリ子「うをー、伸びるー」

 気持ちよさそうなクリ子。

セクシー(いや痛くないだろソレ)

ボウヤ(オギノ式は安全説)


●13

 体育終わり、更衣室で着替えている京子たち。

京子「縦に動いてたらおなかへってきた」

 ぐー、とおなかがなる。

 ボウヤとセクシーが呆れてる。

 教室。着替え終わってボンヤリしていた佐々木、京子が戻ってきたことに気が付く。

京子{晩御飯なにつくろうかな}{肉}{魚}{煮物}{炒め物}{お腹はすごく空いているのに自分が何腹なのかわからない}

 考え事している京子の顔。キツい雰囲気。

佐々木{くっそー}{ツンツンしてんなあ}

 と京子を盗み見ながら被虐心を煽られちょっと興奮している。

 シャツがはだけた京子の胸もと。

佐々木{……いい}

 顔を赤らめる佐々木。


●14

 通り過ぎようとしたとき、ふと京子が佐々木を見る。なにか匂いをかぎ取る。

佐々木{う}

 と目をそらす佐々木。

京子「ねえちょっと」

 キッと見て。

佐々木{やっべ}{胸見てたのバレたか?}

 視線を落として焦る。

佐々木「なっ、なんだよ」

佐々木{こえー}{目ェあわせらんねえ}

 たじたじ。

■大

京子「なんかいい匂いするけど」

京子「佐々木君、昨日晩御飯なに食べた?」

 と佐々木に顔を近づけて匂いをかぐ。

佐々木「え」「焼肉だけど」「駅前の牛蔵行った」

 赤面して。京子と顔が近くてうれしそうにうろたえる。

佐々木(制服に匂いついてる?)


●15

京子「おー、いいねー」「あそこいつも並んでる!」

 目を丸くして笑う。

京子「焼肉には白いごはんがあうよね」

京子「佐々木君ていつもお弁当箱大きいけど、やっぱごはん何杯もおかわりするの?」

 ニコニコして親しげに。

佐々木「そ、そうだなー」

佐々木「大盛りで3杯と、昨日は最後にクッパ食べた」

 と得意げに。

京子「あー、クッパ」

 クッパの存在を思い出したように。

■大

京子{……クッパか!}

 晩御飯の献立決定!

 鼻歌混じりに去る京子。

佐々木{???}

佐々木{市川京子に匂いかがれた……!}

 困惑しながらも嬉しそうに。


●16

 家の台所。

 冷蔵庫を開けている京子。

京子{冷凍したごはんがたくさんあるからちょうどいい}{あともう一品なんか作れないかな……}

京子{ピーマンが4個残ってた}

 電子レンジでご飯を解凍しながらピーマンを持って見ている。

 エプロンの文字「裸」

京子{きんぴらにしよう}

京子{ヘタと種を取って縦に細切り}

 切ってる手元。

京子{ゴマ油で炒めて}

 フライパンで炒められているピーマン。

京子{醤油とみりんそれぞれ大さじ1くらい足して仕上げる}

 大さじを振りながら木ベラで炒める。

京子{きんぴらは簡単だな}



●17

京子{次はクッパ}

京子{牛の薄切り肉200gをひと口大に切る}

 ボウルに切られた薄切り肉。

 まな板の上で切られているニラ。

京子{ニラは2分の1束、3㎝の長さに切る}

京子{鍋にごま油大さじ1を入れて弱火にかけて牛の薄切り肉を炒める}

京子{肉の色が変わったら水5カップを入れて}

 鍋に水が入る。

京子{豆板醤小さじ1、砂糖小さじ2分の1、塩小さじ2分の1、醤油大さじ2、酒大さじ2を入れる}

 グツグツしている鍋に次々さじで調味料を入れる。

京子{煮立ったらアクを取りのぞいて}{大豆モヤシ100gとニラを加えてひと煮立ち}

 オタマで味見する。

京子{んー、豆板醤もうちょっと入れるか}

京子{ご飯を盛ったどんぶりにかける}


●18

忍「あー、汁かけごはんだ!」「おいしそー!」

<ピーマンのきんぴら>

<クイッククッパ>


●19

京子「自分でも驚くくらいちょっパヤで作れてしまった」

(いただきます)

忍「クッパなんか作れるんだね」

(いただきまーす)

忍「ふー」「ふー」

 と大さじに一生懸命息を吹きかけ。

忍(はふっはふっ)

 おいしそうに破顔しながら熱そうに口に入れる。

京子(ふー)

 静かに息を吹きかけ。

京子(むぐむぐ)

 おいしそうに笑いながらうなずくように味わう。

忍「このピーマンのきんぴら、甘さ控えめでおいしいね」

京子「あたし昔ピーマン嫌いだったけど」「忍は好き嫌いないよね」

 ふたりともニコニコ。


●20

■大

忍「嫌いはないかもだけど、好きはあるよ」

■大

 微笑む京子。

京子「今日、同じクラスの佐々木くんて子が昨日食べた焼肉の匂いさせててさー」

忍「え?」

京子「思わずこうやってかいじゃった」

 やってみせる。

 ドキッとする忍。

忍「やめなよそういうの!」

 目をつぶってかわいく叱る。

京子「え?」

 きょとんとする。

忍「ぼくにするのはいいけど……」

 もじもじして。

京子「ふーん?」

 首をかしげる。



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