第18話「市川家の雑煮」
コンテ
https://www.pixiv.net/artworks/87162440
(擬音・吹き出し外文字)
「セリフ」
{人物モノローグ}
<ナレーション・モノローグ・解説>
梨由子21歳、大学3年生、教育学科、バイトで銀座クラブホステス
まだ若さを売りにしているころ。下品でないていどにギャルい。ボチボチ一人前のホステスとして成長してきて、保育士か教師になるか、将来もしかしたら自分の店を持つかも、とどこかで考えながら貯金している。
純子19歳、大学1年生、教育学科、夏前くらいから梨由子に促されて銀座クラブホステスのバイト。
どこか寒そうなペラいコートを着ている。まだ垢抜けない田舎っぽさの中に光る原石的な。オジサンたちの父性をくすぐる。Gカップ。
沙織21歳、ブラブラしているところを梨由子に誘われて本業で銀座クラブホステス
店ではおっとり目なお嬢様系白ギャル風に見せているが、だらしない。 寝巻のスウェットで襟元ダルダルでノーブラだけど胸の谷間見えてるとか? Fカップ
京子12歳、忍6歳。登場せず。
●1
■
梨由子初登場から4年前の正月。
梨由子「大学っていつからだっけ?」
純子「7日からですよ」
梨由子のマンションの廊下を歩いている梨由子21歳と純子19歳。
純子、手に切り餅が入った大きなビニール袋を持っている。
■
梨由子「そろそろ後期試験の勉強しねえとな」「秋から暮れは店が稼ぎ時だったからちょっとサボりすぎた」
純子「教育実習の受け入れ先決まったんですか?」
■大
梨由子「一応な」「ところでお前、アタシのコートをやったのにまだその寒そうな上っ張り着てんのか」「見てるだけでコッチが寒いから捨てろよ」
きつい眼つきで指さす。
■大
純子「え、でもまだ着れるし」「梨由子先輩からもらったコート、ゴージャスだし」「お店の出勤用だから大事に着ないと」
と、指さされて「そんなに変かな」みたいに自分が着ているコートを見る。
タイトル大ゴマにまたがる感じ?
●2
■
しめ飾りが出ているマンションドアを開ける梨由子。
梨由子{健気なビンボーに触れると心がサムくなるわ……}
■
純子「梨由子先輩のマンション、あったかーい」
梨由子「純子の部屋が寒すぎるんだ」「室温がひとケタって冷蔵庫かよ」
と玄関を上がる二人。
2LDKの賃貸マンション。割とお高め。
■
リビング。広々とした12畳。続きがダイニングキッチン(8畳くらい?)になっている。
梨由子「純子連れてきたぞー」
沙織「おう」
沙織がコタツにもぐりこんでうつ伏せになって本を読んでいる。
■
純子「沙織さん、明けましておめでとうございます」
と沙織の前に正座して手をついて頭を下げる。
沙織「おめこ~」
みかんを食べながら本から目をそらさない。
■
沙織「ああ、ダメだ」
(ごろっ)
と悩ましげに寝返りをうつように仰向けになって本を読みながら。
梨由子「どうした?」
とコートを脱いで冷めた目で見下ろす。どうせまたくだらんことかと予想している。
●3
■
沙織「トイレ行きたいんだけど無理」「めんどい」「あんた代わりに行って」
とダルそうに苦悶する。
梨由子「モノグサの功夫を積みすぎるとここまでいくのか……」
呆れ。
■
沙織「いまさー、ここに置いてあった「激当たり! 恋の妖怪占い」っての読んでたんだけど」
と本を指示し。
梨由子「トイレはいいのかよ」
苛立って。
■
沙織「最初にやる、自分が何の妖怪なのかを調べる計算式が難しすぎて占えない」
沙織「妖怪は足し算とかできん」
と梨由子に背を向けて本を投げ出す。
梨由子「いいからトイレ行けや」
と背中を蹴って。
■
(ばたん)
とトイレのドアが閉じる音を聞きながら。
純子「梨由子先輩と沙織さんて仲良いですよね」「高校時代の同級生でしたっけ?」(たしかアバ女とかいう……)
といいなー仲良しで、みたいな感じを装い愛想笑い。コタツに入ってる。
■。
梨由子「同じ高校だけど同級生ってのとはちょっと違うかな」「アタシは保育科で沙織は家政科で……」
とコタツに入りながらテレビをつけながら思い出すように。
●4
■
梨由子「あの頃のアバ女は、保育科と家政科の派閥抗争が一番激しくて──」「──でもお互い手が出せない膠着状態が長く続いてたんだ」
ヤクザ映画風のイメージ。ギャル同士の権謀術数と抗争。
http://toyokeizai.net/mwimgs/d/6/-/img_d68b8ee3a08e0aa81315e1c1ad57e3f437314.jpg
梨由子「草刈り場になったのは普通科で、普通科の小グループは保育科か家政科どっちかの軍門に下っていて」「普通科同士で保育科と家政科の代理戦争させられてさ」「当の保育科と家政科は高見の見物」
■
梨由子「で、アタシは学外でギャルサーの代表やってたから」「アバ女の中じゃ抗争にはノータッチの一匹狼だったワケよ」
ギャルサー、というか特攻服を羽織って肩で風切っている梨由子。背後に暴走族のイメージ。
■
梨由子「結局家政科をシメてた沙織がアバ女のテッペンに王手をかけたんだけど」「他の家政科の連中が「傘下に入れ」ってアタシをほっといてくんなくてさー」
沙織が統率のとれたギャル軍団を率いてるイメージ。
●5
■
梨由子「ちょっかい出されてキレたアタシは」「沙織をつけ狙ってタイマンに持ち込んだんだ」
頭に包帯を巻き、眼帯して片手をギプスで固めた梨由子が、沙織の髪の毛を掴んで凄んでいる。リンチされた復讐。
梨由子「沙織のパンチが重いのなんの」
■
梨由子「あんな苦しんだタイマンは後にも先にもないけど」
梨由子「最後は馬乗りになって失神するまでビンタしてやったわ」
両者ビリビリに破れた制服で、沙織に馬乗りになっている梨由子がギプスしてない方の手で往復ビンタしながら狂気をはらんだ凄艶な表情。打たれている沙織も色っぽく苦悶している。
↑のイメージの手前で話をしている二人。
純子{五社英雄の映画みたい……}
梨由子「あいつ面白ェ泣き声出すんだぜー」
と邪まに笑っている。
■
梨由子「まあ最後はお互い認めあって」「アタシはギャルサーで忙しいから副番、沙織が番長、ってことで収まったわけ」
生徒会のメンバーの記念写真のイメージ。暴走族の集会写真のようにアバ女の校旗を広げて。
http://auctions.c.yimg.jp/images.auctions.yahoo.co.jp/image/ra219/users/4/9/7/2/korogasi4649-img600x450-1356199546kautx353977.jpg
http://yamanekenichi.web.fc2.com/0901_51.jpg
●6
■
(ジャー)(ばたん)
と廊下のトイレの扉を閉めつつ、リビングの扉を開けて入ってくる沙織。
沙織「ズッ敵だょ」
と話を聞いててかのようにニヤリとする。
■
沙織「なあー、男子トイレにある消音装置って『音王』だって知ってた?」
とコタツにもぐりながら純子に。
純子「えっ、知らなかった」
とびっくりする。
梨由子「いちいち騙されんなよ」
と純子に。
■
沙織「正月に独りは寂しかろうからオマエ招待したんだけど」
沙織「田舎帰らないの?」
純子「ええ、まあ……」
■
梨由子「オマエこそ自分の部屋帰れよ」
■
梨由子「こいつ、半年も帰ってないんだぞ」「店がハネたらアタシの部屋に帰ってきて寝てアタシの部屋から出勤してんの」
純子「え!?」
■
純子「沙織さんの部屋って、同じマンションですよね? たしかこの上の階の」
純子「なんで帰らないんですか?」
●7
■
沙織「地獄部屋だから」
ホラーのような雰囲気でポツリと。
■
梨由子「想像を絶する汚部屋だ」「陽は届かず、水も土も腐り、空気は瘴気に溢れ、風に吹かれれば蛇も死ぬ」「とても人間が住める土地じゃない」「あの部屋を目にした者は憲法25条「健康で文化的な最低限度の生活」という条文の意味を知るだろう」
吐き捨てるように語る梨由子。バックに得体のしれない生物が棲む沼地の惑星のイメージ。
震える純子。
■
梨由子「それはいいとしてアタシの部屋に居座るならまず風呂に入れ」
■
沙織「入ってますぅー」
梨由子「ガキみたいなウソつくんじゃねえよ!」
■
梨由子「こいつが風呂に入っているとこ見たことねーんだよ」
純子「え?」「え?」
■
沙織「ねえ、風呂入らないとバーベキューソースの匂いがしてこね?」「その匂いだけでご飯食えるから得じゃね?」
と純子に同意を求める。
驚異の目で沙織を見る純子。
梨由子「店に出ない日なんか一日中寝巻だし、美容室の予約すらアタシが取ってんだ」
■
梨由子「しかもトイレこもると長いしトイレットペーパーペーパーの切り方が汚い」
梨由子「なあ、アレ何度言っても直さねえのは何なの?」「誰かの遺言でも守ってんの?」
怒りはとっくに通り越して諦めの境地?
●8
■
沙織「へへへ」
沙織「純子はなんで帰省しないの?」
照れ笑い。
■
沙織「村一番のヤリマンって噂されて石もて追われて上京したから?」
純子「いやー、ただただ帰省の交通費がなくって」
恥ずかしそうに。
梨由子(そこは流さずまず否定しろよ)
■
沙織「えー? 夏からウチのクラブでバイト始めてだいぶ稼いだだろ」「大学通いながらマメに出勤して指名も同伴も取ってたじゃん」
とそんなわけないだろ、と。
■
純子「仕送りしてるんですよ」
■
沙織「え、大学の学費払って仕送りまでしてんのっ?」
と驚く。
純子「奨学金ももらってますけどね」
照れて。
梨由子「こいつ偉いよな。それで授業もきっちり出て単位落とす気配ないし」
感心するようにうなずく。
■
沙織「梨由子だって貯金してんじゃん」
梨由子「沙織がだらしなさすぎるんだよ」
●9
■
梨由子「ほんとお前ら見てると心配になるよ」
ため息。
■
梨由子「純子ももうちょっとマシな部屋に住めよ」「アレは19の女が一人暮らしするとこじゃないぞ」
純子「はあ」
申し訳ないような顔で梨由子の顔をうかがう純子。
■
梨由子「車も通れない路地裏で建蔽率ゼロ」「取り壊しが決まっている古い木造アパートで、隙間風の音が絶えねーの」「あそこの地形、貧民窟と工場が連なってるからわかりにくいけど谷の底だぞ」「アパート前の路地は暗渠になってる川だから洪水になったらヤバい」
モクモク煙を吐く工場の隙間にバラックが立ち並ぶ今どき見ない貧民街のイメージ。
■
純子「あっ、去年の梅雨、一階が床上浸水してました!」
なんでわかるんですか、すごい! みたいに。
沙織「その時点で引っ越せよ」
バカを憐れむように苦笑いでツッコむ。
■
梨由子「おまけに今日迎えに行ったときこいつの部屋上がったら」「暖房なしでフトンにくるまって震えているし」「なんかズタズタの布きれが部屋干しされてんの」
4畳半でせんべい布団にくるまって震えているいる純子を見ている梨由子の回想イメージ。。
■
梨由子「雑巾かと思ったら、それが純子のブラでさ!」
つりさげられたボロボロのブラジャーを手にとって見てゲッみたいな顔の梨由子の回想イメージ。
●10
■
純子「あはは、私の部屋、二階なのに全然陽が当たらないし」「さすがに女の子の一人暮らしで外に下着干すのは不用心かなーって」
と苦笑いする純子。
■
梨由子「お前のブラがボロすぎるってハナシなんだよ!」
梨由子「いざってときあのブラ見たらアレキサンダー大王でも下向きだわ!」
■
沙織「不憫な」
沙織「ブラくらいウチが買ってやるよ」「サイズいくつ?」
くすん、と涙をふく。
■
沙織「いいからそのデカチチの大きさ教えろ」
意地悪っぽい顔で詰問する。
純子「えーと……」
困ったようにモジモジして。
■
純子「……」
と俯いて何かつぶやく。
梨由子「………」
沙織「………」
耳に手を当てて純子に向けて聞き取ろうとする。
■
沙織「ドイツ語で「ゲーカップ」って言うとナチスの秘密兵器みたいじゃね?」
思わず笑う。
梨由子「ケッ」
面白くなさそうに。
恥ずかしそうに小さくなる純子。
●11
■
純子「梨由子先輩たちだってお正月なのに実家に帰らないじゃないですか」
■
梨由子「んー」「ここ5年くらいアタシらいっつも家に帰んないで二人で正月すごしてたよなー」
と二人顔を見合わせてうなずく。
沙織「あー、家に帰りたくないからね」
とつまんなそうに。
■
純子「毎年いつも二人で?」
純子「え、高校時代は家出でもしてたんですか?」
純子{いまさら驚かないけど……}
■
黙っている梨由子と沙織。
■
梨由子「沙織んちは……」「ま」「ちょっとアタシからは口憚るな」
珍しく口ごもる。
■
沙織「地獄ってのは遍在してんのよ」
ポツリと。いつもの笑ったような顔ながらシリアスな雰囲気。
●12
■
沙織「正月からつまんない話してもつまんねーだろ?」
表情、微笑を絶やさず。
純子「はい」
純子{触れてはいけない話題だろうか……}
■
沙織「別に家出してたわけじゃなくてさ」「梨由子もアタシもアバ女の寮生だったんだわ」
■
沙織「全寮制じゃないんだけど、一応アバ女は良妻賢母のための伝統ある女子校ってことになってて」「けどホラ、めんどくさいメスガキを放り込んでおきたい親もいるわけよ」
■
沙織「全部の窓に鉄格子ついてんだぜ」
梨由子「初めて寮の建物を見たとき「●●病院か」って思ったわ」
ウケる、みたいに笑う二人。
■
梨由子「つか、こいつ、入学式前に寮で顔合わせたとき、もういきなり牢名主みたいで」「ヤクザの情婦10年もやってるみたいな貫禄あったし」
沙織「オマエこそサソリ気どってただろが」
聞いて聞いて、と笑いながら純子に。
■
沙織「梨由子の第一印象は、メキシコにもこんなならず者いねーだろって感じでおっかなかったよ」「「好きな食べ物は泣きすがるジジイから強奪した種籾です」とか言ってんの」
●13
■
梨由子「寮監のババアどもなんか武装親衛隊みたいでよ」
梨由子「アタシら毎朝廊下に時間ピッタリに整列させられて点呼食堂まで行進で朝飯だぞ」
収容所か刑務所のイメージ。武装親衛隊の黒い制服を着て乗馬鞭を手にした女看守たち。
■
沙織「毎週金曜が必ずカレーでな」
と苦々しそうに思い出す。
梨由子「おまえカンカン踊りって知ってっか?」
と純子に。
首を振る純子。
■
梨由子「みんな番号で呼ばれててよ」
梨由子「「願います」って手を挙げないと声を発しちゃいけないんだぞ」
沙織「願います!」
と手を挙げて当時の物まね?
■
梨由子「41番、なんだ?」
と寮監のマネ?
沙織「41番、用便願います!」
■
梨由子「41番は用便の回数が多いな。少し減らすよう努力しろ!」
純子{どこまでが本当なんだろう……}
●14
■
純子「あ、そうだ」「田舎から大量に切りモチを送ってこられて」
と急に思い出してガサガサとビニール袋を取り出す。
純子「一人で食べきれないから持ってきたんですよ」
■
梨由子「そんじゃそろそろ雑煮つくるか」
純子「手伝います」
と立ち上がる。
■
沙織「雑煮食ったら車で正月恒例のキモだめし行こうぜ」
純子「え、怖い」
梨由子「稲川淳二の亡霊が出るトンネルがあんだよ」
純子「生きてますけど……」
■
台所に立つ梨由子と純子二人。
梨由子「まず鍋にお湯を沸騰させて、里芋を10分くらい下茹でする」
■
梨由子「そのあいだに他の材料を切る」「鶏肉は一口大」「ニンジンは1cm厚でイチョウ切り」「大根も1㎝厚でイチョウ切り」
■
梨由子「そうこうするうちに里芋が茹であがったらザルに上げる」
■
梨由子「下茹でするとツルっと剥けるだろ?」「これも適当に一口大に切る」
感心する純子。
■
梨由子「小松菜も下茹で」「一ツマミ塩入れて、さっと湯がく」
●15
■
梨由子「水にさらしてからギュッと絞って3㎝位に切る」
■
梨由子「で、8カップの水に鶏肉と大根、ニンジン、里芋を入れて火にかける」「沸騰して5分くらい、材料に火が通ったらアクを取って、と」
■
梨由子「そろそろモチを焼いてくれ」
純子「どんくらいですか?」
■
梨由子「自分が食べたいだけ焼けよ」
沙織「ウチ3つー」
■
梨由子「酒をオタマ一杯、みりんはオタマ半分、あとは味を見ながら醤油を足して……」
と味見しながら。
梨由子「ん、いいな」
■
梨由子「柚子の皮を千切りにして、と」
■
梨由子「あとは椀に盛って、焼いた餅と小松菜と柚子の皮の千切りを少し乗せて──」
●16
■
梨由子「できあがり」
雑煮。
<市川家の雑煮>
純子「ウチの田舎のとだいぶ違いますね」
梨由子「地域によって全然別の食べ物だからな」
■
梨由子「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
ダイニングキッチンの卓上に雑煮を並べて囲み、椅子に座ったままみんなで頭を下げあって挨拶。
■
(ずずっ)
とすする純子。
■
ハッとしたように。
純子「さっぱりしておいしー!」
■
梨由子「鶏出汁はガラから取りたかったけど、手抜きでもいいよな」
と伸びる餅をひっぱりながら食べている。
●17
■
沙織「3年のとき寮の食堂で、梨由子が雑煮作ったじゃん?」
■
沙織「あんとき、正月なのに寮に残ってくれてた寮監の塩練ババアと3人で食ってさ」
沙織「塩練ババアが「美味い」「意外だ」「オマエ見直した」って感心してたよなー?」
■
梨由子「あー」「塩練ババア元気かなー」
と懐かしそうに。
■
二人の話を聞きながら、伸びる餅を噛み千切ろうとしつつ、二人が言うほどひどい寮生活ではなかったことを察し、安堵し暖かい気持ちになる純子。
■
沙織「梨由子って家政科じゃなかったのによく料理できるよな」
梨由子「テメーは家政科だったくせになんで米すらまともに炊けねーんだよ」
●18
■
梨由子「アタシが4歳のときに両親死んでっから」「ウチはお兄ちゃ……アニキが親代わりでさ」
■
沙織・純子{いまお兄ちゃんって言った……}
梨由子「そのアニキが料理好きで一緒に作ったりして憶えたんだよ」
■
沙織「アンタのアニキってけっこう好みなんだよねー」
■
沙織「店に来ないかなー」
梨由子「来させねえよ」
■
純子「梨由子先輩のお兄さんていくつなんですか?」
梨由子「アタシと16コ違いだから」「いま37かな」
■
梨由子「アタシが小学校あがったときにアニキが最初に結婚した相手がクソ女でなー」
梨由子「中学卒業するまではアニキ夫婦と一緒に住んでたんだけど」
食べる箸をとめて黙って真顔で聞いてる純子。
●19
■
梨由子「まー、言ってみれば、相手からすりゃアタシなんかアニキの連れ子みたいなもんじゃん?」
梨由子「折り合い悪くてさー」
聞き流しているように目を伏せて雑煮を食べている沙織。
■
梨由子「好きで姪っ子の面倒見てたのが裏目に出たり……」
梨由子「アニキは庇ってくれたんだけど家に居場所が無い感じでさ」
■
梨由子「それで寮のあるアバ女に入ったんだわ」
自嘲気味に苦笑いする梨由子。
■
純子「じゃあ今もお正月に実家に帰らないのって、それで……」
と気の毒そうに。
梨由子「いや、そのクソ女の浮気がバレて、もう離婚して」「アニキは新しい奥さんと再婚してんだ」
■
梨由子「新しい奥さんはすごくいい人でさ」「けど、アニキの前の結婚が上手くいかなかったのって、アタシがいたからかなーって思うフシもあるから」「遠慮して、ちょっと距離置いてんだ」
●20
■
梨由子「新しい奥さんも再婚で連れ子がいてさ」「そっちの男の子がまたかわいーの」
子ども好きな梨由子の笑顔を見てつられて微笑む純子。
■
沙織「あんたほんと子ども好きだよね」「そういや教師と保育士どっちになるつもりなん?」
■
梨由子「どうすっかな」「水商売も合っている気がするしなー」
沙織「今年は色々変わる年かね?」
■
梨由子「つか、変えるんならまずお前の地獄部屋をなんとかしたい」
■
沙織「地獄っつーのは遍在してんだよ」
梨由子「遍在はいいから風呂入れよ」
純子{あ、本当にバーベキューソースの匂いがする……}
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