第16話「サバサンド」
コンテ
https://www.pixiv.net/artworks/87161697
(擬音・吹き出し外文字)
「セリフ」
{人物モノローグ}
<ナレーション・モノローグ・解説>
・紀子
佐野紀子。佐野先生の奥さん。28歳。おっとりした背の高いスタイルのいいお姉さん。
●1
■
<さかのぼること夏休み……>
夏休み入ったばかり。夏フェス会場。野外ステージ。海外のロックバンド。
(うおー!)
■
ぶちぬき。踊っているクリ子。古い西武の帽子にナス型レイバン、カタカナでジョイディビジョンと書かれた偽物Tシャツにスパッツ、首にタオルを巻いて、野鳥の会の長靴を履いている。
クリ子「やー!」
Tシャツ
https://www.google.co.jp/search?q=%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%82%A4%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3+%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&num=50&lr=lang_ja&hl=ja&tbs=lr:lang_1ja&prmd=ivns&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0CAUQ_AVqFQoTCPaBjfqm-ccCFSQXpgodX9IBmQ
野鳥の会長靴
https://www.google.co.jp/search?q=%E9%87%8E%E9%B3%A5%E3%81%AE%E4%BC%9A+%E9%95%B7%E9%9D%B4&num=50&lr=lang_ja&hl=ja&tbs=lr:lang_1ja&prmd=ivns&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0CAUQ_AVqFQoTCP_EiZCn-ccCFWMepgod7MgNMQ
夏フェスファッション
https://www.google.co.jp/search?q=%E5%A4%8F%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3&num=50&lr=lang_ja&hl=ja&tbs=lr:lang_1ja&prmd=ivns&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0CAUQ_AVqFQoTCOLmx6Gn-ccCFeEZpgodhugDJA
■
野外会場。ステージを見ている観客。
■
小さなお尻をフリフリしてかわいく踊るクリ子の後ろ姿。
●2
■
クリ子「夏フェス来てよかった」「楽しーい」
笑顔。
■
クリ子「屋台いっぱいだ!」
屋台広場に来るクリ子。
クリ子「なに食べようかな」
とキョロキョロする。
夏フェス屋台
https://www.google.co.jp/search?q=%E5%A4%8F%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%B9+%E5%B1%8B%E5%8F%B0&num=50&lr=lang_ja&hl=ja&tbs=lr%3Alang_1ja&tbm=isch&oq=%E5%A4%8F%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%B9+%E5%B1%8B%E5%8F%B0&gs_l=img.3..0.23684.23884.0.24662.2.2.0.0.0.0.140.253.0j2.2.0....0...1ac..34.img..1.1.140.naeQOuJjfhU
■
屋台広場に陣取って折り畳みイスに座って休憩している佐野夫妻。
紀子「わたし、飲み物買ってくる」
佐野「うん」
と佐野からはなれていく紀子。
折り畳みイス
https://www.google.co.jp/search?q=%E3%83%98%E3%83%AA%E3%83%8E%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9&num=50&lr=lang_ja&hl=ja&tbs=lr:lang_1ja&prmd=ivns&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0CAUQ_AVqFQoTCL-B_vSn-ccCFUGtpgodCn8F_A
■
クリ子「お?」
と佐野に気がつく。
■
佐野「あっ」
目が合う佐野。
■
クリ子「佐野センセー!」
びっくりして指さすクリ子。
佐野「おまえ…、栗山か……」
とまどう佐野。
●3
■
クリ子「まじかー」「なぜ佐野センセーが若いオンナと一緒に夏フェスに!?」
にやにやしている口元を隠しながらウリウリと肘で突っつく。
佐野「ちょっ」
ギョッとする。
■
佐野「……お前な、俺の奥さんをオンナとか言うな」
困ったようにため息ついて。
■
クリ子「えっ、あの人奥さんなの?」(わかい!)(かわいい!)
おおっ、と驚く。
買い物して戻ってきた紀子、どなた? みたいに愛想よく佐野とクリ子を見る。
■
佐野「担任クラスの生徒」「栗山和子」
とシブシブ紹介する。
紀子「こんにちは」「佐野の妻の紀子です」
とクリ子に挨拶。
クリ子も「あ、どうも」みたいに頭を下げる。恐縮気味。
■
クリ子「佐野センセーが夏フェス来る人だと思わなかった」
いやー、意外だ、と言うように。
佐野「このフェスはどっちかっていうとオジサン向けのラインナップなの」
やりにくそうに苦笑い。
紀子「毎年来てるのよ」
と、微笑んで、ねっ、というように佐野を見る。
■
紀子「この人、こう見えてギタリストなの」「昔バンドもやってて……」
クリ子「まじかー!」
佐野「こら、よけいなことを…!」
●4
■
佐野「俺が高校生の時代はクラスの3人に1人はギター弾いてたもんだったんだよ」
クリ子「え、どんなん? どんなん好きなの?」
急に親しみを覚えて興味津々。
■
佐野「いや、俺は最初はザ・ニッティー・グリッティー・ダート・バンドとかニュー・ライダース・オブ・ザ・パープル・セイジとか」
ちょっと照れながら、
クリ子「???」
は? みたいな。聴いたこともない。
■
佐野「ギタリストだとジョアン・ジルベルトとかかな」
ひとりうなずく。
クリ子「……知りません」
ドン引きと申し訳なさそうなの半々で。
■
佐野「えっ? マジで? ボサノヴァの神って言われてんだけど」
驚いて。
クリ子「ごめんなさい」
聞くんじゃなかったと後悔して。
■
紀子「ほらー、よしなさいよ」
とたしなめる。
紀子「高校生の子が知ってるわけないじゃない」
ねー? とクリ子を気遣う。
■
佐野「俺は高校生の時から聴いてたぞ」
佐野「じゃあニール・ヤングは?」
クリ子「うっすら」
佐野「レッド・ツエッペリンくらいはわかるだろ?」
クリ子「ま、それはもちろん」
やっとうなずく。
紀子「いいかげんにしておきなさいよ」「ちょっと、食べる物買ってくるから」
■
佐野「最近のだとスリップノットとか聞くけど、知ってる?」
クリ子「え、スリップノット!」
今度は今一番キているメタルの名前が出て意外なクリ子。
スリップノットのイメージ。
http://wmg.jp/slipknot/
http://image.search.yahoo.co.jp/search?ei=UTF-8&fr=top_ga1_sa&p=Slipknot
https://www.youtube.com/watch?v=PfwVthe07CU
●5
■
屋台広場。しばらく時間経過していてまだ佐野の話が続いている。
アウトドア用の折り畳み椅子に座っている。
佐野「つまり『ロック』って言う言葉の中に人間か人間でないかというようなことが含まれていて」
佐野「だから……『ロック』とは、自分なんだよ、うん」
と難しい顔で熱く語っている。
クリ子{こんな熱い先生だと思わなかった……}
ちょっと見直したように感心して。
■
なにか思いついたクリ子。
■
クリ子「じゃあさじゃあさ!」「佐野センセーってまだ今でも『ロック』なんでしょ?」
と二人で文化祭で何かやろうと持ち掛けようとしたとき後ろから。
紀子「サバサンド買ってきたよ」
■
振り返ったクリ子にサバサンドが手渡される。
紀子「食べて食べて」「わたしのおすすめ屋台フードなの」
■
文化祭当日。
飾り付けられた正門。貫井高校文化祭と書かれている。
忍とロングキスグッドナイトと中津、ゆみみが楽しそうにアーチをくぐろうとしている。
クリ子「──てなことが」「実は夏休み入ってからすぐにあってさ──」
●6
■
調理実習室。他のクラスもカレーを作ったりドーナッツを揚げたりして調理台を使って忙しそうにしている。
京子、クリ子、ボウヤ、大場、吉木、西崎、セクシー。クリ子以外ワイシャツにスラックス、蝶ネクタイのボーイスタイル。
クリ子「──初めて食べたそのサバサンドが」「すごくおいしかったのよ」
大場「ほー、佐野センてロックとか好きなんだ」
吉木「佐野センの奥さんて何歳くらいなの?」
■
京子「はいはい、いーから、作り方教えるからメモとって」
諦め気味な感じ。
ボウヤ「つか、当日まで調理ダンドリ打ち合わせできてないとかさー」
苦笑い。
京子「ま、かんたんだから、すぐ憶えられるでしょ」
■
京子「まず玉ねぎを水につけておく」
ボウルに玉ねぎを入れてる。
京子「これで涙出ないから」
■
京子「で、切る」
京子「スライサーでガーッとね」
スライサーでサクサク切っていく。
■
京子「この玉ねぎスライスは、大きいボウル一杯に入れておいて」「塩ひとつまみとレモン汁少々を入れた水に5分から10分さらす」「こうすると辛みが抜ける」
ボウルに放り込む。
■
京子「で、パンの準備」「バターとマスタードをパンに塗っておく」「これで下ごしらえ終わり」
切れ目を入れたバケットにバターナイフで塗る。
●7
■
京子「塩サバ半身を半分くらいに切って」「軽く小麦粉をまぶす」
小麦粉を入れたパッドの上で菜箸で塩サバをひっくり返す。塩サバは長いので頭としっぽ方向で二つに。
■
京子「これを多めの油で両面焼く」「油ケチんないで」「焼くというか揚げる感じね」「いっぺんに作るからいっぺんに焼こう」
フライパンの上で7枚塩サバを焼いている。
■
京子「で、水気をよく切った玉ねぎスライスと焼きたてのサバをパンにはさむ」
京子「レモン汁をかける」
■
<サバサンド>
女子「いただきまーす」
●8
■
(がぶっ)
とかぶりつくボウヤ。
■
ボウヤ「はふはふっ」
と熱いサバにあわてつつ笑う。
大場「なにこれヤバ!」
吉木「揚げサバって脂オン油だね」
■
京子「お好みでマヨネーズとコショウ」
クリ子「おお、これこれ!」
と頬張ってる。
西崎「熱い脂の塊を玉ねぎとレモンでサッパリ食べられる……」
■
セクシー「ジャンケンでクリ子が推したサバサンドに決まったときはなんのゲテモノかと思ったけど」
京子「トルコとかギリシャとかあの辺の料理らしい」
むしゃついている京子とセクシー。
■
クリ子「む、監修OK!」
もぐもぐしながらえらそうにうなずいて親指を立てる。
セクシー「えらそう」
笑う。
●9
■
クリ子「そんじゃあたしマラソンライブだからー」
と調理室を出て行く。
セクシー京子ボウヤ「おう、がんばれ」
■
クリ子「3時ごろ絶対見に来たほうがいいよ!」
と指さしていたずらっぽく笑う。
■
京子、セクシー、ボウヤ「?」
と顔を見合わせる。
■
大場と吉木と西崎がサバをフライパンで焼いているのを指導している京子。
セクシー「開店したからもう注文きてもおかしくないよな」「持っていきがてら教室の様子見てくるか」
とボウヤといっしょに調理室を出て行く。二人の手にできたてのサバサンドを入れた箱。サバサンドそのものはパックに詰められている。
■
(ズン ズン ズン)
廊下、1-A教室のドア。「カフェクラブ バニーの館」と看板が出て飾り付けてある。キャバクラっぽい。重低音のリズムが教室からもれてくる。
そこにセクシーとボウヤが連れだってくる。
■
教室。
(からから)
セクシー「どれ」「店に客は入ってるかね?」
とドアを開けてカーテンをくぐって模擬店になっている薄暗い教室に入ってくるセクシーとボウヤ。
(ズンッ ズンッ ズンッ ズンッ ズンッ)
●10
■
暗幕で覆いつつ、薄暗い間接照明の教室。ソファが配置され、キャバクラっぽい。
バニーガールの衣装を身に着けた男子一同がまばらにいる。お盆を持ったり、それで前を隠したりして。
誰も客がいない。
宮脇「この地獄を見てわからないかね」
(ズンッ ズンッ ズンッ ズンッ ズンッ)
宮脇「入った瞬間みんな黙って出て行く」「見事に閑古鳥だ」
■
セクシー「お、おう」
とひるむ。
ボウヤ「直視できないな」
目をそらして苦笑い。
佐々木「直視できないくらいエグいもの着せたのはお前らだろ」
と半泣き。
■
セクシー「そのエグい衣装をあたしら女子に着せようとしていたわけだ?」
と笑顔ですごむ。
佐々木「うっ」
とひるむ。
■
セクシー「メインメニューのサバサンドは自信の商品だから」
ボウヤ「ほい、これ第一陣」「男子みんなで試食してみて」
と宮脇にサバサンドの箱を持たせる。
宮脇「おう」
■
セクシー「ま、せいぜいそのかっこうで客引きしてきてよ」「ウケると思うよ」
と苦笑。
●11
■
忍とロングキスグッドナイトと中津とゆみみがあちこち見ながら廊下を歩いている。
ロングキスグッドナイト「文化祭って面白いな」
忍「うん!」
仮装した生徒とすれちがう。バニーの館のプラカードを掲げて開き直ったバニー姿の佐々木もいる。
佐々木(写真撮り放題! 無制限!)
中津「お化け屋敷とかあるみたいだよ」
ゆみみ「怖いからやだよ~」
■
中津「ゆみみはビビリだなー」
と笑う中津の肩を後ろから叩く手。
(ちょいちょい)
■
ふりむく中津。
すぐそこにお化けのマスクをかぶったお化け屋敷の客引き。
こんなの
http://matome.naver.jp/odai/2138681349374431601
■
中津ゆみみロングキスグッドナイト「ぎゃあああ!」
飛び上がる。
■
中津ゆみみロングキスグッドナイト「うわあああーっ」
全力で逃げる中津ゆみみロングキスグッドナイト
お化け「ま~て~」
ゆみみ「おおおおおっかけてきたあ~~」
■
逃げ去っていく中津ゆみみロングキスグッドナイト。
お化け「……」
立ち止まって見送るお化け。
忍「まってー」
その横を逃げ遅れて抜いていく忍。
■
お化け「お化け屋敷すぐそこなのに……」
とマスクを取る。
●12
■
観客A「こんな校舎の端でライブやってんのか……」
廊下に「クリ子マラソンワンマンライブ」の立て看板。
■
廊下。
音楽通っぽい観客AとB。
フレディ・マーキュリーとジョン・レノンみたいな人?
観客B「しかし……」
観客B「この客の多さはなんだ……?」
メタルっぽい人、パンクっぽい人、ドルオタっぽい人たちが教室の会場に入って行こうとしている。
観客A「マラソンワンマンライブって」「ジャンルはフォークか?」
と、周りを見回す観客ABの脇を駆け抜けて教室のライブ会場に入っていく中津ゆみみロングキスグッドナイト。
■
中津「ここならもうおっかけてこないだろうし、人がいっぱいで怖くないよ」
と言いながら見回して、
■
メイクしたメタルっぽい人と目が合ってちょっとビクッとなる中津。
ゆみみ「クリ子マラソンワンマンライブ……ってなんだろう?」
とステージ前の横断幕に書いてある字を見て。
折り紙の鎖、ちりめん紙で作ったバラとか小学校のお楽しみ会の飾りつけみたいな素朴な手作り感。ハードな出し物とのギャップ。
ロングキスグッドナイト「忍は?」
と気が付く。
■
(ぼっ♪)(ぼぼ♪ぼびーん)(きゅっ)
ゆみみ「あ、なんか始まるみたい」
中津「前に行ってみようぜ」
と人をかき分けて前に。
■
ロングキスグッドナイト「あっ、中津……」
と追おうとするが、
●13
■
ロングキスグッドナイト「うわ、すごい人がいっぱいで前に行けない……」
とパンクっぽい人と目が合って後ずさる。
ゆみみ「ここで見ようか?」
と一番後のロッカーにのぼっている。
■
中津「うわっ」
ともみくちゃになりながらロッカー風の人とドルオタ風の人の間をかきわけて前に出ようとする。
ロッカー風の人とドルオタ風の人、中津を見る。
■
左右に張った暗幕、上手からクリ子がエレキギターを構えて登場。いつもの制服。
机で作ったステージにアンプ2つとマイクスタンド一つ。ギターボーカル用の突き出たタイプ。
机は4×4で、観客の最前列は机におなかをおしつけられるように後ろから押される。
照明は教室最後方窓側からピンスポット一つ。
この後の照明や音響はあくまで会場の一体感の中でのイメージで大会場の音響照明設備っぽく描かれる。
ロングキスグッドナイト「あの人かわいいね」
ゆみみ「ライブって? アイドルみたいなの?」
(おおおおおおお)(クリ子~!)(ピーっ)(ひゅーっ)
盛り上がるオーディエンス。
■
中津「うーん……」「っしょっと」
中津、押し合いへし合いの中で最前列にたどり着き、
■
足もとからクリ子を見上げてハッとする。
■
(ぎゃいぃぃぃーん)
ピックでギターを弾き下ろす手。爆音で鳴るギター。
■のせゴマ
通っぽい観客AとB、腕組みして一発目の響く音にビリビリしてのけぞる。
●14
■
クリ子「ここがお前らの墓場だよ!」
クールな表情のクリ子。
■
(ぬおおおおー!)
野太い声を上げるファンたち。
中津{か、かっこいい……}
顔を赤らめて興奮する中津。
■
(ぎゃんぎゃぎゃんぎゃぎゃん ぎゃんぎゃぎゃんぎゃぎゃん ぎゃんぎゃぎゃぎゃんぎゃぎゃぎゃんぎゃぎゃんぎゃぎゃん)
ギターを弾き始めるクリ子。
https://www.youtube.com/watch?v=02D2T3wGCYg
■
ロングキスグッドナイト「……アイドルとはちょっと違うみたい」
とまどう。
■
全員メロイックサインを出しながらヘッドバンキングしている。
ゆみみ「でもオタ芸やってるよ?」
とロングキスグッドナイトに。
●15
■
歌うクリ子。パンクロックっぽく。
<●ロングトールウーマン
作詞・作曲:栗山和子
ああ 背が欲しい もう少しだけ背が欲しい
もしも少し背が高ければ
あの服がもっと似合うのに
おお 背が欲しい もう少しだけ背が欲しい
もしも少し背が高ければ
いきなりキスが奪えるのに
はあ 背が欲しい もう少しだけ背が欲しい
もしも少し背が高ければ
あいつぶん殴ってやんのに
おら 背が欲しい もう少しだけ背が欲しい
もしも少し背が高ければ
パンチが空を切らないのに
ジャイアント馬場とまではいわないが
岸部シローくらいの背が欲しい ああ>
■
いつのまにか最前列でメロイックサインを出してヘッドバンキングしている中津。
目がハート。
中津{すっ、好きだ……!}
■
観客A「おい、もう12曲目だぞ……?」(高校生ばなれしとる……!)
観客B「パンクっぽいガールズポップからワンコードで押し切るブギーまで、芸風どんだけ広いんだ……」(ジョン・リー・フッカーみたいなシブさまで……)
■
<●姫バチ
作詞・作曲:栗山和子
あたしは姫バチ キミの巣を飛び回る
あたしは姫バチ ブンブン飛び回る
甘い蜜をごちそうするわ ドロドロにね
あたしは若くて元気いっぱい 一晩中飛ぶの
あたしは若くてちょっと過激 一晩中ブンブン
羽音が聞こえたら ウズウズするはず
ほら飛ぶわよ
(ソロ)
あたしは姫バチ 一晩中でも飛ぶ
あたしは姫バチ 一晩中ブンブン
もっと飛べるよ あのコにないしょでね>
■
全員で肩を組んで合唱している。
(一晩中ブンブーン!)
●16
■
廊下。
忍「みんなどこ行ったんだろう?」
キョロキョロと中津たちをさがしている。
■
忍「まあいいか」
ため息。パンフレットを見ながら歩く。
忍「京子のクラスに行ってみようっと」
■
バニーの館の前。客引きしている宮脇と小田。
宮脇小田「へいらっしゃえいっ!」
忍「うわ!」
■
店の中。
京子「お、忍」
■
京子「あれ、友達と来なかったの?」
忍「はぐれちゃったんだ」
忍「ていうか、このお店なに?」
キョロキョロ。バニーのかっこうの男子がウロウロして客がいない。
■
京子「まー、色々あってこうなったんだよねー」
説明に困ったように苦笑い。
ボウヤ「京子ー」「もう3時だから抜けてクリ子のライブ行くけど……」
とセクシーと二人で来る。
京子「え、もうか」
●17
■
クリ子ライブ会場。
満員の観客の最後列から頭をのぞかせる京子セクシーボウヤ
京子「おお、すごい客入りだね」
セクシー「ワンマンライブでこんだけ盛り上がるのかよ」
ボウヤ「熱烈なクリ子信者いるからな」
■
クリ子「スペシャルサプライズゲスト!」「カモン!」
(デデデデデデデデ ジャージャッジャ)
とギターを弾きながら上手を振り向いて注目させる。
■
(デデデデデデデデ ジャージャッジャ デデデデデデデデ ジャージャッジャ)
観客A「お、コミュニケーション・ブレイク・ダウン」
https://www.youtube.com/watch?v=p5BpSwVhsmI
■
(ぎゅいいぃぃぃーーーーん)
とギターを弾きながらうつむき気味に現れる佐野。
■のせゴマ
ボウヤセクシー京子「あっ!?」
ギョッとする3人。
忍「?」
ぽかんとしてる忍。
●18
■
生徒A「え?」
生徒B「だれ?」
生徒C「佐野センだよ」
生徒D「佐野ってあの社会科の!?」
(ざわざわ)
(おおおおーっ!)
ざわめきとどよめき。
(きゅいぃーん)
高い音で唸るギターの音。
■
陶酔気味にギターを掲げるようにネックを立てて弾く。
(てれりろてろりろてれりろてろりろてれりろてろりろてれりろてろりろてろりろりろり~ぃ)
(うわーっ)
https://www.youtube.com/watch?v=pEmatTKuPMw
https://www.youtube.com/watch?v=hvHOXA3Sj08
■
観客A「うまっ……」
観客B「泣きのギター……」
(きゅうぅうぅ~~~ん)(ぶぃーん)
その隣にいつのまにか紀子がいて小さく拍手している。
■
佐野「ここがお前らの墓場だよ!」
と汗を飛ばす勢いでマイクを掴んで観客に。
(うおーっ!)
クリ子{あっ}{あたしの決めゼリフを!}
●19
■
<●ライクアゴロツキ
作詞・作曲:栗山和子
あたしがナマズだったらいいのにな
広くて真っ青な海を泳いでさ
かっこいい男たちはぜんぶあたしのもの
男たちはあたしめがけて必死に釣竿をふる
ほらほら 思ったとおり
みんなあたしのことしか頭にない
思ったとおりよ
ゴロゴロゴロゴロゴロツキよ
ゴロゴロゴロゴロゴロツキ女(※)
ママはパパに言ったらしい
あたしが生まれる前の話
「今度生まれて来るのは女の子ね
その子の将来はもう決まってるの
転がる石になるのよ
転がる石
つまり根無し草ってこと」
ああ 確かにその子はそのとおり
チンチンピラピラチンピラよ
チンチンピラピラチンピラ女
そろそろひと休みしたいわ
だけど そんなに時間はないね
最初に煙を上げた汽車に飛び乗ろう
あたしは旅に出る
あたしは旅に出る
あたしはさらに転がっていく
(※・繰り返し)>
飛んでギターを弾いてるクリ子と佐野。ギターバトルっぽい。
●20
■
<──かくして> <同時刻に体育館で演奏していた軽音部の観客を> <ゼロにしたといわれる伝説のライブは終わりぬ>
がらんとした体育館で演奏している軽音部のバンド。
■
中津{クリ子ちゃん……}
ぽーっとしている中津。
忍「はい、冷めちゃったけどサバサンド」
露店を片づけ始めている中庭を歩く、忍ロングキゆみみ中津。
サバサンドを配る忍。
宮脇、小田、佐々木ら他男子がバニー姿でサバサンドの余りを売り歩いている。
忍「京子のクラスのカフェ、全然人が入らなくて余っちゃったんだって」
■
ゆみみ「高校生って楽しそうだね」
もぐもぐしながら。
■
ロングキスグッドナイト「……中学まではみんないっしょだけどさ、忍は高校どこ行くの?」
とさりげなさを装って聞きだそうとする。もぐもぐ。
■
忍「うーん、考えてないけど、この高校だと楽しそうだね」
■
ロングキスグッドナイト「そ、そうだな! ここがいいよ!」「ここにしようぜ!」
ゆみみ「みんな同じ高校行けたらいいね」
中津{クリ子ちゃん……}
上の空の中津。ぽーっとしている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます