第14話「おいしい桃の食べかた」
コンテ
https://www.pixiv.net/artworks/87161063
(擬音・吹き出し外文字)
「セリフ」
{人物モノローグ}
<ナレーション・モノローグ・解説>
・信綱
高木信綱。
ドスケベな老人で武術の達人。引退した医者。62歳。
セクシーの祖父、真子の実父。
セクシーからはお爺様と呼ばれる。真子からはお父さん。
作務衣を着ている。痩せて、枯れた感じの武術家。セクシーに武術を教えている。姿勢がよくて白髪。身長も175くらいある。セイバーキャッツの努麻先生みたいな?
・真子
高木真子。
信綱の長女でセクシーの母。セクシーより強くて上品なご婦人。40歳。
夏なので浴衣に割烹着とか。礼法とお茶の先生。男兄弟がなく、娘時代から信綱に武術を仕込まれている。
背が高くセクシーと同じくらい。姿勢がよくてスタイルがいい。伏し目がちで物静かだけど凛とした雰囲気。まつ毛長くて白目が見えない感じの?
・セクシーの家。町医者? お屋敷っぽい日本家屋?
●1
■
セクシーの家。
■
姿見のある和室。12畳くらいありそう。床の間に刀の大小。掛け軸(天地無用)などある。このコマで見せなくてもよい。
ビキニを着て鏡の前でポーズをとるセクシー。ぶち抜き。割れた腹筋。発達したヒラメ筋とか。
セクシー{うーん}{買ったはいいけど海で着る勇気がなかった……}
タイトル。
■
セクシー{せめてこれで水風呂でも入るか}
と三戦のかまえで息吹。
(ガーッ ガッ)
■
信綱に背後脇から腕を差し込んでまわして胸を鷲掴みにされるセクシー。
信綱「隙だらけだ」
驚いて目を見開くセクシー。
●2
■
<敵に背後から抱きつかれた場合>
<1 敵が劣情を催して抱きついてきても慌てない>
護身術分解写真っぽく。矢印で動きを示す。
<2 脇を締めて相手の片腕を下から抱え込み>
<3 テコの原理を使って手首関節を極めつつ>
<4 踵に全体重をのせて相手の足の甲を踏みつける>
https://www.youtube.com/watch?v=FhI_DNkgCO0
■
が、セクシーの踏む足を避けて逆に脚を払う信綱。
■
信綱「甘いわ」
関節技からもあっさり逃れて、逆にセクシーの腕を極めようねじり上げる信綱。
セクシー「!」
●3
■小
密着してのしかかる信綱。 腕を取られ、脚を絡められて極められかけるセクシー。
水着姿のセクシーの胸、尻、脚、股間など。だらだら流れる汗。セクシーの苦しそうな吐息。
信綱「こんなかっこうでうろつきおって」
■小
信綱「けしからん」
■小
信綱「敵に襲ってくれと言わんばかりだ」
■小
信綱「さあ、こうなったらどうするのだ?」
■
セクシー「はなせっ!」
と後頭部で頭突きをしようとする。
(ぐんッ)
■
信綱「おっと……」
と、パッと離れて猿のように這う。
■
同時にくるっと身を躱して体勢を立て直すセクシー。
●4
■
セクシー「……確かにお爺様がおっしゃるとおり──」
油断なく睨む。
■
セクシー「──敵に襲われてから対処するのは下」
ジリジリと近づく信綱。
■
セクシー「襲われることが無いように敵を予め徹底的に排除するのが上」
と床の間の脇差を手に取る。
■
腰を落として構えるセクシー。
信綱「まてまて」
と少し慌てて半歩下がる。
信綱「その敵と融和するのが極上だ」
■
信綱「身体は立派になったが、……ふふふ、青い青い」
と涼しい顔で取り繕うと邪悪に笑う。
セクシー「青くてけっこう」
とかぶせるように。
■
セクシー「私まだ極上の域には達しておりませんので」「おあいにくさま……」
と右手を柄に手をかける。
●5
■
信綱「陽子」「得物に気安く手をかけるな……!」
とシリアスに目をギラつかせる。流れる汗。
■
セクシー「私も高木の家に生まれた娘」
と、こいくちを切りながら
セクシー「……覚悟はできてます」
とシリアスにギリリっと睨み返す。
■
二人のあいだに高まる緊張感。歪む空間?
●6
■
信綱「そうか」「ではこのシワ首くれてやる」
(コロッ)
と、コロっと穏やかな表情に。
■
信綱「さあ陽子。俺を斬れ」
セクシー「うっ」
ナレ<豹変した祖父の仏のような表情に> <幼いころ遊んでもらった記憶が蘇るセクシー> <柄にかけた右手がわずかに鈍る──>
■小
ナレ<──その刹那>
(ツツーーっ)
と信綱がいつのまにか踏み込んで、
知覚できないセクシー。急に近くなり焦点があわない。
■
ニヤリと笑う信綱。
信綱「抜きつけられまい」「修行が足りんな」
と、鍔にかけたセクシーの左親指を上からかぶせるように握っている。右手の小指を取られる。
セクシー「!?」
■小
(ぐいっ)
と押し倒され、
●7
■小
(どすん、ばたん)
組み伏せられるセクシー。脇差が畳を滑って襖にぶつかる。
■
信綱「ぐふふ」「さあどうしてくれようかなお姫さま?」
うす暗い座敷の天井。汗が流れる。はあ~はあ~とやらしい息遣い。
■
セクシー「くっ……!」
キッと睨むセクシー。
信綱「おおぅ、陽子姫の険しい顔……、婆さんの娘のころによう似てきた」
■大
信綱「ひっひっひ……」
とセクシーの頬に吸いつこうとする。好色そう。
セクシー「……ジっ」「ジ~~ジィーっ!」
マジで嫌がるセクシー。
■大
真子「暑苦しいからそういう遊びやめてください」
と突然現れて強烈な投げ技。飛ばされる信綱。
●8
■
真子「危うく刃傷沙汰です」
脇差を前に置いて正座している。
■
真子「お父さん」「陽子さんはもう年頃なんですから」「変なかまいかたをしないで」
正座させられている信綱とセクシー。
■
信綱「だって最近、陽子が遊んでくれないから……」
すねたように。
真子「こういうことばかりするから嫌われるんです」
■
真子「祖父らしく少しは落ち着いて孫に接してください」
信綱「これも日々の稽古の一環だ」
開き直るように。
■大
真子「こう見えて私怒っているんですけど」
光のない目を細める。
真子「私を本気で怒らせるとお父さん困りませんか?」
■小
信綱「はい! 困ります!」
●9
■
真子「陽子さん」
背筋を伸ばすセクシー。
セクシー「はいお母さん」
■
真子「色ボケ老人の一人くらい」「ひと睨みであしらえるようになりなさい」
静かにしかし厳しく。
信綱(色ボケ老人て…)
真子「あなたを怒らせたくないと相手に思わせるには品格が必要です」
■
真子「「鞘の内で勝つ」というのは相手を脅すことじゃないって、わかるわね?」
真子「抜いたときはすべておしまいです」
真子の膝の前に置いた脇差。
■
セクシー{あーもー、お爺様が悪い}
着替えて廊下を歩いている。
真子「ねえ陽子さん」「パパの田舎からまた桃が箱で送られてきたの」
後ろの台所から顔を出して声をかける。
■
台所。
真子「もう食べごろで、日持ちしないんだけど」
真子「誰かお友達でもらってくれる人いないかしら?」
桃の段ボールを囲んでる二人。考え込むセクシー。
●10
■
照りつける太陽。
(カッ)
■
セクシー「あちい~」「残暑酷暑だわ」
ガラガラとカートに括り付けた桃の段ボール箱をひいている。まいってる。
■
忍「セクシー姉ちゃん!」
川沿いの遊歩道にあるベンチの近くに木陰を作る木のそばで手を振る忍。
セクシー「お、忍」
■
セクシー「なにやってんの」
忍「カナブン獲ってたんだ」
とカナブンを掲げる。
セクシー「クワガタとかカブトムシじゃないのかよ」
■
忍「あげようか」
と差し出す。
セクシー「いらない」
苦笑い。
■
セクシー「今から忍んち行くとこだったんだ」
忍「ウチに?」
セクシー「ほらコレ」
とカートを示す。
●11
■
忍「桃さまだっ!」
と桃の箱を見てうれしそうに目を輝かす。
セクシー{桃さま?}
と怪訝な顔。
■
忍「この桃さま全部くれるの?」
パッとセクシーの顔を見て。
セクシー「うん」
■
忍「ありがとう! はやくウチ行こう!」
■
セクシー「ああ、ちょっと休憩な」「桃が重いし」
セクシー「ここ風が通って涼しい」
と木陰のベンチに座る。
■
忍「ウチのほうが涼しいよ」「早く桃さま、ね? ね?」
とベンチに座るセクシーのまわりをピョンピョンする。
セクシー「もう重いし暑いし動きたくな~い」
とだらんとして。
忍「そんなこと言わないで早く~」
■
セクシー「んじゃあ忍おぶってよ~」
汗をたらしながらふざけてニヤニヤする。
●12
■
忍「うん!」「乗って」
としゃがんでおんぶの体勢。
■
セクシー「え?」「まじ?」
ちょっとびっくりする。
忍「早く!」「ぼく最近京子をおんぶできるようになったんだ」
と得意げにうながす。
■
セクシー「大丈夫?」「私、京子より重いし桃もけっこう重いよ?」
おそるおそる忍におぶさる。
忍「うーん!」
と持ち上げようとする。
■
忍「うんしょうんしょ」
セクシーを背負って歩く忍。
セクシー{こいつかわいい}
密着しながら、忍の上でカートをひきつつ。ちょっとニヤーっとする。
●13
■
忍「うーんうーん」
セクシー「ほれ、がんばれ」「がんばれ」
胸が忍に密着する。
■
セクシー「いいぞー、その調子」
汗ばんだセクシーの太ももと尻を支える忍の手。
(はあ はあ)
■
セクシー「もう無理か?」
忍「……うーん」
ついにへたり込む忍。まだ忍から下りないセクシー。ちょっとやらしく忍の顔をのぞきこむように。
■
セクシー「のどかわいたな」「がんばった忍に麦茶を買ってやろう」
(がこん)
とすぐそばの自販機でペットボトルを買う。
■
忍「早くおおきくなりたいな」
セクシー「きっと忍は大きくなるよ」
セクシー「大きくなったらまたおぶってよ」
忍「うん」
麦茶を飲んで休憩する二人。
●14
■
京子と忍の家のダイニング。
京子「桃さま!」
と桃の箱を開けて。
■
セクシー「なあ、桃さまってなに?」
とちょっと不審げに。
■
京子「あたしは桃に「さま」付けするくらい桃が好きなんだよ!」
そんなこともわかんないのか、と。
セクシー「あっそっ……」
呆れて。
■
忍「ぼくのほうが桃さまが好き」
京子「あたしのほうが桃さまを好きだ!」
と張りあう二人。
セクシー{バカ姉弟が張りあってる……}
■
セクシー「もう食べごろだからすぐに食べないとだけど」
京子「せっかくだから全部そのまんま食べたいけど、この量は無理かな」
とそれぞれ桃を手にして。
●15
■
京子「当面食べる分は冷やしておいて、もったいないけど食べきれない分は桃ジャムにしよう」
京子(遺憾ながら……)
忍「……うん」
二人残念そうに。
セクシー「桃ってどうやって切ったり剥いたりしてる?」
■
京子「ぐるっと一周、種まで包丁を入れる」
■
京子「ねじって半分と半分を逆方向に回転させ、パカっと割る」
■
京子「種をとって、手で皮をむく」
■
京子「食べやすい大きさに切る」
■
セクシー「……ふーん、上品だな」
ちょっと引け目がある感じ。
京子「……う、うん」
上品と言われてもにょもにょする。
忍「……」
なんとなく目が泳ぐ。
●16
■
京子「んー」「甘い」
とおいしそうに食べる。
■
セクシー「うちの田舎から」「毎年夏になると毎週のように送られてくるんだよね」
と食べながら。
■
忍「うらやましい」
ニコニコして食べる。
■
セクシー「で?」「ジャムってどうやんの?」
京子「うん」「ま、こうやって桃を小さく切っておいてだ」
と切った桃を示し。
■
京子「桃が1㎏なら砂糖400gを鍋に一緒に入れて、弱火」
■
京子「1時間くらいアクを取りながら煮詰める」
■
京子「最後にレモン汁大さじ2くらい入れてちょっと煮て」
■
京子「煮沸したビンに入れてできあがり、と」
セクシー「こんなんでいいんだ」「ウチでもやろっと」
●17
■
セクシー「じゃーね」
京子・忍「桃ありがとう」
■
(ばたん)
京子「……」
忍「……」
愛想よく見送る二人。
■
京子「……さて、セクシーも帰ったことだし」
忍「これでやっと」「ちゃんと桃さまを食べられるね……」
悪そうな顔になる二人。。
■
<おいしい桃の食べかた>
京子「桃は台所の流しに立ってかぶりつくのが一番いいよね」
<まず桃の皮を剥いたら流しの前に立つ>
■
忍「吸いつき食い」「これ以上においしい食べかたはないよ」
<そして流しの上に顔を突き出し──>
●18
■
<──横からかぶりつく> <というか吸いつく>
(がぶっ)(じゅるるるっ)
■
<一口で甘い果肉と果汁の香りが鼻を抜け> <甘い幸せを口の中で噛みしめる>
(ぐじゃぐじゃ)(ごっくん)
淫蕩な表情。だんだん乱れてくる感じ。
■
<桃の水分は無限であるかのように絶えまなく汁があふれてくる>
(じゅるっ)(じゅるるるっ)(ちゅうぅぅ~~っ)(ボタボタ)
<これをバキュームし続ける>
<それでもなお桃汁は溢れ、零れ落ちる>
■
<汁はあごを伝い> <手から肘にたれ>
(ツツーー)(ボトボトボト)
●19
■
<それを落ちるのを防がんと、あごをさらに突き出して肘の角度を上げ>
(がぶがぶっ)(ぐじゅるるっ)(ぶちゅぅう~)
<吸いこぼれた汁を逃さんと首をひねり>
■
(ちゅうちゅうちゅぅ~)(ぐびぐび)
<一滴も逃さないとばかりに唇を動かして> <ゴクゴクとノドを鳴らす>
■
京子「ぷはあ! まるで食べる桃だ!」
忍「うん!」
<多幸感につつまれた混乱の極み>
■
京子「……でもやっぱり、この食べかたはちょっと人には見せられないよね」
忍「そうだねー……」
●20
■
(じゅるじゅるじゅるるる)(はあはあ)(だらだら)
真子の口元。丸かじりの桃を持つ手から肘を伝う桃汁。
■
(ぐじゅ~)(がぶがぶっ)
桃にかじりつくセクシーの唇。
■
真子「ふう」
満足げに小さくため息をつく。
■
台所の流しに立つ真子とセクシー。
真子「どんなに取り繕っても桃を食べるときに品格なんてないのよね……」
と言いながら腕につたった桃汁を舐める。
セクシー「人は桃を食べるときこんなにも下品になれるんですね」
■
セクシー{……京子んちの桃の食べかたはずいぶん上品だったな}
セクシー{けどやっぱり桃はこうやって食べたい……}
と指を舐めるセクシー。
■
真子「陽子さん、よそ様でこんな食べかたしてはダメよ?」
セクシー「はい」
信綱{一見隙だらけに見えるが今の二人はまさに野獣}
信綱{手におえぬな……}
と台所を覗き込んでいる。
(おわり)
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