第11話「ネバネバぶっかけ蕎麦」

コンテ

https://www.pixiv.net/artworks/87160161




(擬音・吹き出し外文字)

「セリフ」

{人物モノローグ}

<ナレーション・モノローグ・解説>


●1

■扉


●2

 駅前。黒いセーラーのギャルがケータイ片手にワラワラいる。

スッポン「ほら、駅前にアバ女の黒セーラがウヨウヨ」「検問張ってる」

スッポン「家政科のメスゴリラ軍団ってすぐLINEで仲間に集合かけっから鬱陶しいよ」

 路地の角から覗いているスッポン。後にみんないる。京子セクシークリ子ボウヤモリモンクボチーまゆたん。

 モリモンクボチーまゆたんは怯えている。

京子「スッポンの言うとおり、ボーリングあきらめて移動して正解だったね」

 残念そうに。

スッポン「あいつらとは私が明日ガッコでキッチリ話つけとくから、まあコジれないと思うけど」

スッポン「あっちから行こう」

まゆたん「ウチら隣の駅まで歩くね」

モリモン「気をつけてよ~」

クボチー「森っちもね~」

 とまゆたんとクボチー離脱。



●3

 スッポンとボウヤがちょっと前を歩いていて、少し遅れて京子とモリモンとセクシー、クリ子。

 モリモン、元気なくトボトボ歩いている。少し気にしているセクシーとクリ子。

京子「偶然スッポンが来てくれてよかったよ」

スッポン「あそこのUFOキャッチャーにおこめちゃんの手ぬぐいがあるって聞いてさ」

京子「え!」「スッポンもおこめちゃん好きなの!?」

 と驚きの喜び。

京子「やっぱスッポンてあたしと好み似てるねー!」「ダブリあるからあげるよー」

 後にいるセクシーたち、えー? アレが好きな奴京子以外にもいたのー? みたいな顔。

スッポン「おー、赤フンの奴ある?」

京子「あるある!」

モリモン{………}

 京子とスッポンの盛り上がりを見て面白くなさそうに。

 歩みを緩めてセクシーに近づきながら振り返って。

スッポン「ねえー?」

 ん? と気がつくセクシー。ちょっと緊張する。

セクシー「うん?」


●4

スッポン「私、杉本美樹ってんだ」「仲良くしてねー」

 セクシーにニーっと笑いながら。なーにそんな顔してんの、みたいな。

 その笑顔に拍子抜けしたように目を丸くしながら慌てて名乗るセクシー。

セクシー「あ、うん」「私は高木陽子」「こちらこそよろしく」

スッポン{なんでセクシーってあだ名なんだろ?}

セクシー{どうしてスッポンなんてあだ名なんだ?}

 と笑顔で見つめあう。

京子「あ、ごめん、二人とも紹介してなかったね」

 と後から2人に笑う。

スッポン&セクシー{きっと京子がつけたあだ名だな……}

 と京子を振り返る。

京子「?」


●5

ボウヤ「スッポンが一年でアバ女シメたって噂になってたけど」

スッポン「誰だよ、そんなこと言ってんの」「全然ウソだよ」

 と笑って。

スッポン「シメたのは保育科だけな」

セクシー「……」

 苦笑い。

スッポン「とーにかく家政科の連中は一人叩くと次から次にわいて出てくるから厄介でさ」

スッポン「ケンカばっかしてハラへるよ、まったく」

京子「仲良くしててもおなかはへるよ」

 と笑う。

京子「スッポンはいつもハラペコだね」

スッポン「ケンカのエネルギーは忍の料理で補充したい」「今日は何かなー」

 モリモン、下を向く。

 ずっと仲良くしてたかったのになんでこうなっちゃったのかな。

 泣きそうな顔。


●6

京子「モリモン、元気ないけど」「どっか痛い?」

 とモリモンの様子に気がつく。

モリモン「……京子もクリ子もごめん」

 立ち止まるモリモン。

京子「え」

 と立ち止まってモリモンを見る。

モリモン「あたしあんなキツくあたってたのに」「みんなで助けてくれて……」

 また泣きそうな顔。

 顔を見合わせる京子とクリ子。


●7

京子「もういじわるしないでね」

クリ子「今度、みんなでまたパアーッとメダル使いに行こ!」

 とモリモンの両側からそれぞれモリモンをギュッとする。

 微笑むセクシー。

 振り向いて微笑んでるボウヤとスッポン。

 よかったね、みたいな。


●8

 歩いているうちにすっかり暗くなって。

モリモン「あたしファミレス行くから」

 とファミレスを指さしてバイバイしようとする。

セクシー「だれかと待ち合わせ?」

 と全員モリモンを見てる。

京子「え? 親が遅いから一人で夕飯?」「だったらスッポンと一緒にウチで食べようよ」

 と横でスッポンもうなずいている。

京子「え、セクシーんちも今日一人なの?」

 とセクシーが自分を指さしているのを見て。

京子「あ、忍、晩御飯の買い物なんだけどさ……」

 とケータイで忍に電話。


●9

 京子の家。

みんなの声「おじゃましまーす」

 6畳間で。

忍「スッポン姉ちゃん!」

スッポン「しのぶー」


●10

 パン、と手をあわせる。

 握手。

 変化する握手。

 さらに変化する握手。

 複雑に指を絡める握手。

 拳をお互い上下から打ちつけあう。

 複雑に両手を打ちつけあう。

 さらに複雑にリズムよく打ちつけあう。

https://www.youtube.com/watch?v=u-d0m8W1XEk


●11

https://www.youtube.com/watch?v=xztwQeZoBKs

二番目のやりとり、22秒くらいから。お互い両手伸ばしてピロピロ~ってやるやつ。

https://www.youtube.com/watch?v=4yStP5KaEWU

脚でチョンチョンってやるのと腰をぶつけあうのと最後に背中合わせでクルってまわるやつ

(参考)

https://www.youtube.com/watch?v=KeDaFaDKloM

https://www.youtube.com/watch?v=VYRwDZjDqh8


●12

セクシー「長っ!」「なんだそれ!」

 びっくり。

スッポン「アメリカ人の挨拶」

 ニッと笑う。

京子「スッポンがいつのまにか忍に仕込んでんだよねー」

 とちょっと嫉妬。

京子「あたし憶えられなくてついて行けない」

 悔しそうに。

スッポン「こんなんかんたんだよ」

忍「ねー?」

 とスッポンに。

モリモン「スッポンて、こういう手遊びみたいなの昔から得意だったよね」

 思い出して。

忍「あ、こんばんわ」「姉がお世話になってます、弟の忍です」

 モリモンを初対面だと思って礼儀正しく挨拶。

モリモン「忍、ひさしぶり。あたしのこと忘れちゃった?」「トレカゲーム(ルビ・スリキン)遊んだじゃん」

 ちょっと哀しそうに。

忍「えっと…?」

 とまどう忍。


●13

忍「あっ」「……モリモン?」

 もしかして? みたいな。

スッポン「黒くなったからわかんないよなあ?」

 と忍に。

モリモン「うっせーな」

 と口をとんがらかしてスッポンに。

忍「でも、顔はあんまり変わってないかも」

 とモリモンの顔をまじまじと見て。

スッポン「あれっ?」

 とモリモンの顔を見て気がつく。

スッポン「モリモン、ベソかいたからつけま取れて、昔の顔に戻ってる」

 と顔を指さす。

モリモン「え、まじ!?」

 パッと両手で顔をおさえる。

モリモン「くそ、カラコンも取って顔洗っちゃおう」「洗面所貸して」

 バタバタと洗面所へ。

 台所。

スッポン「忍、晩御飯なに作るの?」

忍「今日は暑いから冷たいおそばだよ」

スッポン「おそば好き!」

 と目を輝かせて。

忍「スッポン姉ちゃんの好物だもんね」

モリモン「そういや「スッポンにソバ」って夏の代名詞みたいだったな」

 と顔をタオルで拭きながら。

セクシー「?」

 なにそれ? と反応する。

スッポン「お、顔が完全に戻った」

 とモリモンを指さす。

モリモン「っせーな」


●14

忍「ちょっと手伝って」「スッポン姉ちゃんに僕のすごい武器を貸してあげるから」

 と流しの下を開けてなにか取り出そうとする。

忍「鬼おろし!」

 手に持って掲げる。

スッポン「うお、凶悪そう」

 受け取って鬼おろしの表面を見て。

セクシー「まじでモンハンに出てきそう」

 おお、みたいな。

京子「あたしの武器も見て見て! シュバルツシュメルツ!」

 と中華鍋を掲げる。

セクシー「中華鍋じゃん」

 苦笑い。

京子「ここに銘が入ってる」

 と柄のシールを示す。

モリモン「シール? 自分で作ったの?」

 と、のぞきこむ。

忍「それで大根をおろしてね」「洗ったら皮ごとでいいよ」

 と大根をスッポンに渡す。


●15

スッポン「お、けっこう力仕事だな」「一本全部すりおろしていいの?」

(ごりごりごりごり)

 とテーブルのうえで大根をおろす。

忍「それ終わったら山芋もすりおろして」

 と山芋をピーラーでむいている。

忍「そのあいだにお湯をたっぷり沸かして……」

 寸胴鍋に火をつけて蕎麦の乾麺を取り出す。

忍「スッポン姉ちゃんがいるからたくさんお蕎麦茹でなきゃ」

忍「薬味はお好みにしていっぱい作ります」

忍「梅干しのタネを取ってつぶしたのと」

忍「納豆」

忍「ジャコ」

忍「洗った水菜」

 とテーブルの上に薬味の器を並べる。

京子「あ、温泉卵買ってきたよ」

 と忍に温玉のパックを差し出す。

忍「ありがとう」

スッポン「大根と山芋すり終わったよ」

 と忍を振り返る。

スッポン「これなに? この緑色のネバネバしたの」

忍「ギバサ」「海藻なんだけどおいしいよ」

 器に入ったギバサ。

「あとはカツブシと千切り海苔」

 焼き海苔を手にした忍。


●16

(ぴぴぴぴ)

忍「おそばが茹であがった」

 タイマーの音に振り返る。

(じゃー)

 と蕎麦をザルにあけて流水で洗う。大量の蕎麦。1キロ茹でた。

セクシー「え、こんなに茹でたの?」

忍「うん」「乾麺で1㎏くらいは茹でないと……」

 六畳間の座卓の上で食事。

忍「はいどうぞ」

 蕎麦を盛った大きな器と薬味の器たくさん。

スッポン「わーい」

 嬉しそうなスッポン。


●17

■大

忍「こんな感じでお好みで薬味のせて」

 一人分の盛り付け。

<ネバネバぶっかけそば>

モリモン「彩り綺麗だねー」

モリモン「梅干しの赤」「水菜とギバサの緑」「卵の黄色」「みぞれとトロロとジャコの白」「カツブシと納豆の茶色」「海苔の黒」

京子「ワサビと柚子胡椒もあるよ」

忍「お奨めは全部のせ」「のせてから薄めた麺つゆをぶっかけで」「そば猪口一杯分くらいね」

 と蕎麦猪口の麺つゆをかける。

忍「ぐちゃぐちゃにかき混ぜて食べてね」

スッポン「♪~」

 ウキウキしながら蕎麦を自分の器に取る。大盛り。盛りすぎくらい。

セクシー「ネバネバぶっかけそばとはよく言ったもんだなー」「すごいネバネバしている」

 と箸でかきまぜて持ち上げる。

京子「セクシー、そんなちょっとでいいの?」

 と食べながら横目で。

(ずっ)

セクシー「いや、ちょっとづつ食べて何回かおかわりしようかと思って」「こんなにあるんだし」

(ずるっ)

 とすする。


●18

モリモン「早く食べないと無くなるよ」

セクシー「は?」

 なに言ってんの? みたいな。

(ずぞぞぞぞお!)

 と、スッポンのほうから大きなすする音。

(ずるずるずる)

 その音に振り返る。

スッポン「おかわり~」

 と空の器に蕎麦をたぐる。

セクシー「えっ?」

{いま山盛りだったのに……}

 と目を疑う。

(ずろろろ)

 一気に啜るスッポン。

セクシー「!?」

(ずぞっずぞっ)

 と蕎麦がなくなるのを見て唖然。


●19

スッポン「おかわり~」

 とまた蕎麦をたぐろうとして、

セクシー「ま、待て待て!」「わんこそばじゃないぞ!」

 あわててそれを制す。

スッポン「おそばは飲み物だから」

 だってそうでしょ? と早食いを咎められたのを不思議そうに。

忍「たしかにおそばは噛まないでのど越しで味わうって言うけど、スッポン姉ちゃんは本当に飲むからなあ」

 苦笑い。

京子「だから自分の分を最初に確保しないと無くなるって言ったじゃん」

 と、ほら見た事か、みたいな顔で。

セクシー「言ってない言ってない」

 慌てて抗議する。

モリモン「子ども会の夏祭りでも、流し素麺はスッポンだけ別盛りにしてたよねー」

 と思い出して笑う。

京子「そーだったそーだった」「大人のあいだでも有名だったし」

 苦笑い。

京子「フードファイト出ろってみんなに言われてたっけ」

 とスッポンに。

スッポン「ああいう食べ物を味あわないのってどうかと思うんだよね~」

 困ったような顔で。

セクシー「……」

 なに言ってんだこいつ、みたいな。


●20

 六畳間。

 食事が終わってくつろいでいる。

スッポン「セクシーって空手かなんかやってんの?」

 京子からもらったおこめちゃんの赤フン手ぬぐいを弄びながら思い出したように。

セクシー「剣道、弓、馬、礼法とお茶」

 澄ました顔で。メガネ透過しない。

モリモン「戦国武将かよ」

 驚いて笑う。

スッポン「あん時、さりげなーくメダル掴んで握り込んだの見てタダ者じゃねーなー、って思ったよ」

 とニヤっと笑いながら。

 スッポンの脳裏に前回の回想イメージ。

京子「メダル握るとどうなんの?」

 目を丸くして。

スッポン「それで殴るとパンチの威力あがるんだよ」

 と拳を突き出す。

セクシー「……いや」

 メガネ透過しない。

セクシー「間近から相手の顔に思いっきり投げつけるつもりだったんだ」

 とメガネ透過しないまま笑う。

スッポン「えげつねー」

モリモン「こわっ」

 一同笑う。

忍{えっ……なに、え? なんの話?}

 台所からお茶を持ってきて立ちすくむ忍。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る