第8話「忍特製 いなりずし」

コンテ

https://www.pixiv.net/artworks/87159169


(擬音・吹き出し外文字)

「セリフ」

{人物モノローグ}

<ナレーション・モノローグ・解説>


◎セクシー

 高木陽子。京子のクラスメート。

 サバサバして姉御肌。背が高くて胸が大きい。髪長い。ポニテにもする。

 頼りがいがあって女子には人気者。ケンカ強い。小学校まで剣道やってたけどスポーツ下手。

 一見して威圧的だけどバカっぽいあだ名で呼ばれるのを甘んじて許すくらいの気のいい人物。

 京子とは「あんた」よばわりしあって絶妙な対等感ある。

 ジーパン穿いてる。大きいお尻強調。


◎クリ子

 栗山和子。京子のクラスメート。小学校からの京子の友達。

 美少女。目ぱっちりのかわいい系。肩までの髪。

 自分では勉強得意だと思っている。自分では犬好きだと思っている。ゲーム好き。

 口が悪くて方向音痴。

 フレアスカートで女子っぽく。


◎ボウヤ

 前田あおい。京子のクラスメート。小学校からの京子の友達。

 ボーイッシュ。陽に焼けて脱色したショートヘア。男の子みたいに手足細い。

 スポーツ万能だけど帰宅部。中学までソフトボール部。

 戦国武将に詳しい。細木数子を信じてる。警察官になりたい。耳年増。

 ママチャリで来たけどなぜかサイクリングウェア。もしくはデニムのタイトスカート。



●1

タイトル

京子「久しぶりにお風呂一緒に入ろっか?」

 とお風呂に入ろうと服を脱ぎかけている忍に。

忍「ヤだよ!」

 怒ったように。

京子「なんで?」

 と不思議そうに。

忍「ヤなものはヤなの!」

 顔を赤くして京子の表情から真意を読み取ろうとする。

京子「んんー?」

 何も考えてなかったので忍の拒否を不思議そうにいぶかしむ。


●2

忍「入ってこないでよっ!」

 と女の子のようにタオルで身体を隠しながら風呂のドアの間から念を押す。

京子「はいはい」

 とゴミ袋を持ってその前を通り過ぎる。

京子「ゴミ出してくる」

 と玄関ドアを開けながら靴を履く。

 夜のゴミ捨て場。

 ゴミを置く京子。


●3

 どこからか飛んできて地面に散っている花びらをひろう京子。

京子「桜の花びら…」

 と眺める。

京子「お」

 とケータイに着信。

京子「セクシーからだ」

 メールを見る。

メール<明日ボウヤとクリ子とお花見行こうゼー>

京子「ねー、ねー」

 とニコニコしながら。


●4

京子「お弁当作って花見に行こうよ」

 と無造作に風呂場のドアを開けてる。

忍「ぎゃーっ!」

 前となぜか胸も隠す忍。びっくり。

忍「入ってくんなバカー!」

 風呂場からポイっと追い出される。京子、へっ? みたいな顔。

忍「京子のエッチ!」

京子「なんだよ忍、見られて減るもんじゃなし」

 と不満げに。


●5

 風呂からあがって京子に背を向けて髪を拭きながら、

忍「お弁当? 急に言ってもダメだよ」

 まだちょっと怒ってる。

 ポイポイと無頓着に服を脱ぎながら、

京子「なんでもいいよ」

 京子がひょいっと風呂場に入っていく後ろで冷蔵庫を開けながら、

忍「「なんでもいいよ」が困るんだよなー」

忍「パンないからサンドイッチはダメだし」

 と冷凍庫を開ける。


●6

京子「最近、忍ちゃんは可愛げがないね」

 ざばーっと身体を流す。

京子「昔は何しても京子京子ってくっついてきたクセに」

 身体を洗う京子。

京子「お風呂入れてやって身体洗ってやったらきゃっきゃ喜んでたのにさ」

 よっ、と足の裏を洗う。


●7

京子「……んふ」

 湯船に浸かって何か思い出して微笑んでる。

京子「あ」

 同構図。ふとひらめく。

京子「忍ちゃーん」

 パソコンで検索してた忍、その声に顔を上げる。

 風呂場のドアの隙間から顔を出している京子。

京子「お弁当のリクエストいーい?」


●8

 公園。桜満開。花見客。

京子「いたいた」

 公園の待ち合わせ場所。

 セクシーら京子のクラスメイト3人。

 セクシーが手を挙げてる。

京子「おす」

(ぱんっ)

セクシー「メス!」

 とセクシーが挙げた手を叩く。


●9

クリ子「キッス!」

 と京子に投げキス。

ボウヤ「パンツっ!」

 と忍のズボンを指さす。

4人「脱げっ!」

 と忍のズボンに手をかけて脱がそうとする。

忍「ぎゃー!」


●10

忍「なになになにいーっ!?」

 と離れて怯えながらうずくまる。

京子「学校で流行ってんの」

セクシー「忍も連れてきたか」

ボウヤ「ワイ談できないじゃんよ」

クリ子「ワイ談言うなよ」

セクシー「エロトーク?」

京子「やめろやめろお前ら」

忍{京子の友達ヤダ……}

 公園の景色。

 

●11

ボウヤ「桜すごいね」

クリ子「見て見て、セクシー、あれ変な顔の犬」

 とセクシーに。

クリ子「ブルテリア」

セクシー「クリ子の犬好きって疑わしいな」

 他の花見客の連れているブルテリア。あくびしている。

クリ子「なんでよ?」

セクシー「犬好きは犬の悪口言わないんじゃないか?」

クリ子「変な顔の犬って別に悪口じゃないよ」

セクシー「悪口だろ」

京子「ボウヤ、そっちもって」

 とボウヤと忍とでビニールシートを敷きだす。


●12

セクシー「でもこの公園で散歩してるの高級犬が多いかも」

クリ子「そうだね。みんな金で買った犬だね」

 と周りを見回す。

セクシー{……金で買った犬て}

 呆れてクリ子を見る。

クリ子「あ、フレンチブル」「ぶさいくな顔だなー」

 ニコニコ犬を見てる。

京子「場所取り完了」

ボウヤ「あっちでキャッチボールしようぜ」

 と自分のカバンからグローブ2つとボールを取り出す。

クリ子「やだよ、ボウヤのタマ怖いもん」

ボウヤ「じゃあ忍やろうよ」

クリ子「忍、気をつけてよ」「ボウヤは中学までソフト部のエースだったんだから」

 と遠くから。

ボウヤ「わたし16分割投げわけられるから」「かまえたとこからグローブ動かさなきゃ大丈夫だよ」

 ボウヤについていきながら、えっ? えっ? とあたふたする忍。


●13

 セットから腕を振り始めるボウヤ。

 ぐりんっ、と回転する腕。踏み出す脚。

ボウヤ「ふっ!」

(びゅっ)

 リリース、下手投げ剛速球。ライズボール。

https://www.youtube.com/watch?v=jlNS-xc_UDI。

 しゃがんだ忍のかまえたグローブに叩き込まれるようにホップしたボールが入って、グローブが上に持っていかれそうになる。

(ずばん!!)


●14

ボウヤ「いまのがライズボールな」

 と手首をぶらぶらさせて得意顔で笑う。桜が舞う。

 おおう、といつのまにか野球好きおじさんのギャラリーができてボウヤの投球に唸る。

 投げ返す忍。涙目。

忍「もうヤダよ~」

ボウヤの声「男だろ! 次スライダーいくよ!」

 忍の後に立っているサングラスに野球帽のスカウト風おじさん(水島新二?)が腕組みして首を振って唸ってる。

クリ子「ああいうのキャッチボールじゃなくて投球練習って言わない?」

京子「セクシーが受ければいいじゃん」「剣道2段でスポーツ得意でしょ?」 

セクシー「私、球技は全然ダメなんだ」

(ばしんっ!)

(おおーっ)

ボウヤ(次は金属バットをへし折ったカミソリシュート!)

セクシー「ボールと相性悪いんだよね」

クリ子「チャンバラしか能がないデクノボーかー」

 とさらりと。

京子「チャンバラて」

 腹抱えて笑う京子。

セクシー「江戸時代なら斬り捨ててるぞ」

 とイーっと憎らしげにクリ子の頭をおさえてガクガクと揺さぶる。

 笑っているクリ子。


●15

ボウヤ「じゃあみんな弁当だしてー」

セクシー「つまみっこしようぜ」

ボウヤ「から揚げを山ほど作ってきたよ」

クリ子「うちはサンドイッチ」

セクシー「肉巻き野菜とコロッケと春巻き」

 と広げられる弁当。

セクシー「市川家は何を持ってきたのかな?」

 とタッパを取り出している忍に。

忍「いなりずしだよ」

 いなりずしアップ。

<忍特製 おいなりさん>


●16

クリ子「なにこれ!?」

クリ子「いなりずし、おいしい!」

 いなりずしを頬張っている。

セクシー「忍の手作り?」

 と手を出す。

セクシー「おっ?」

セクシー「あまじょっぱくて味がパキっとしてる!」

クリ子「わたしこれ好き~」

ボウヤ・セクシー「すきー」

 ボウヤも食べながら声をそろえる。

忍「ありがたきしあわせ」

セクシー「忍は出来た奴よの」

クリ子「いなりずし、ウチのお母さんもよく作るけど、なんかいつもボンヤリしてんだよね」


●17

ボウヤ「売ってるのだと甘すぎのもあるし」

クリ子「意外と難しいんだよこれ」

セクシー「なんか作り方にコツあるの?」

忍「油揚げはすっごく甘くして、酢飯はしょっぱくするのがコツだよ」

忍「油揚げと酢飯を別々に食べてみて」

セクシー「おー、まじだー」

セクシー「油揚げ甘い! 酢飯しょっぱい!」

 食べて驚くセクシー。

セクシー「でも一緒に食べるとウマい……」

セクシー「ほっぺ落ちそう」

 うまさに震えるセクシー。

忍「でしょ?」

 かわいらしく得意げ。

忍「下ごしらえは油揚げに味をしみやすくするために、油抜き」

忍「熱湯に入れて3分ゆでて、水けをよくきって半分に切って袋状にする」

 油揚げを半分に切る。

忍「おいなりさん12個分だと油揚げは6枚」


●18

忍「鍋に、水300ml、砂糖大さじ5、しょうゆ大さじ3を煮立たせて油揚げを入れて味付け」

忍「落しぶたをして水分がなくなるまで焦げないように中火で煮る」

 油揚げを鍋で煮る。

忍「ご飯は2合。炊けたらすぐにボウルに入れて、米酢75mlと塩4gの合わせ酢を入れて混ぜる」

 ボウルで混ぜられたご飯、油揚げに詰めている。

忍「あとは油揚げにご飯をつめる」

ボウヤ「料理得意なオトコってよくね?」

 とセクシーに。

セクシー「忍、あたしの彼氏になれよ」

 と忍に寄って自分を指す。

クリ子「あ、抜け駆け」

クリ子「忍はあたしとつきあうんだよね?」

 と忍を抱き寄せる。

ボウヤ「忍、彼女にするならウチらの中で誰がいい?

 とセクシーと一緒に迫る。

忍「えっ!?」「えっ!?」

 もみくちゃにされて赤くなってとまどう忍。


●19

京子「だーめっ!」

 と忍をさらって3人から庇うように抱き寄せる。

京子「あんた、あたしと結婚するって言ったよね?」

 といたずらっぱく忍に顔を近づける。

忍「そっ…」

忍「そんなの、ちっ、小さいときの話だろっ!」

 と京子の腕から逃れようと真っ赤になって顔をそむける。

セクシーたち3人「お姉ちゃん子だねえ」

 とニヤニヤ。

京子「最後の一個もらいっ」

 おいなりさんのタッパから京子が取る。

●20

京子「作ってくれてありがとうね」

 と囁く。

忍「え?」

京子「無性に食べたくてさ」

京子「きのう思い出したの」

京子「前はよくお風呂一緒に入って、あんたの身体洗ってさ」

京子「こうやったじゃない?」

 なにかオセンチな話なのかと思って京子の顔を見る忍。

京子「おいなりさーん、こーろころー」

 玉を掌で転がす手つき。

忍「!?」

 両手を内腿の間に挟んでヒッとなる。恥ずかしさで真っ赤。

京子「あんた喜んでたじゃん」

 顔を覆って伏せる忍。泣きそう。

 馬鹿笑いしている京子。

 何がおかしいの? みたいに京子を見ているセクシーら3人。

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