第6話「焼き白菜とベーコン煮パスタ」

↓コンテ

https://www.pixiv.net/artworks/87158279


(擬音・吹き出し外文字)

「セリフ」

{人物モノローグ}

<ナレーション・モノローグ・解説>



●+1

カラートビラ


●1

 日曜日。

 いつまでも起きてこない京子を見て呆れている忍。

忍「もう起きなよ」

京子「やだ、さむい」

 と布団をかぶって寒そうな京子。

忍「朝ごはん食べないの? 片づけちゃうよ」

京子「日曜なんだからお昼までダラダラ寝てたい」「というか一生フトンから出たくない」

 と忍に背を向けて、

京子「このままフトンちの子になる」

 ともぞもぞする。

京子「あたしはもうフトンの虜」「むしろフトン奴隷」「フトンから出ないで済むのなら何だってする」

 と、なんかエロい雰囲気。


●2

京子「ああぁん、おフトンさぁん(はーと)おフトンさぁん(はーと)」

 と布団の中で身悶えてのたうつ京子。

忍「カーテンあけるよ」

 とスルーして窓に近寄る。

京子「うわーっ、灰になる! やめろーっ」

 と布団の中からドラキュラのように恐れる。

忍「情け無用」

(しゃっ)

 とカーテンを引いて日光を入れる。

京子「ぎゃーっ!」

 と手をフトンから天に伸ばして断末魔。

忍「あ、どうりで寒いと思ったら」

 と窓の外を見る。

忍「雪積もってる」

京子「うそっ?」

(がばっ)

 と上半身を起こして伸びて外を見ようとする。

 外の景色。かなり積もってる。

忍「夜中、大雪だったんだ」


●3

■大

京子「うおおおおーっ」

(ばっ、ばっ、ばばっ)

 と急に起きて寝間着を脱ぎ捨てる。

(ぐいっ)(ばばっ!)

 と黒パンストに足を通しながらセーターにそでを通す。

■小

 お風呂場の洗面台で顔を洗う京子。

(じゃーっ ばしゃばしゃばしゃ)

■小

 同、歯磨きする京子。

(がしがしがし)

■小

(じーっ)

 ダウンジャケットのジッパーを上げる。

■小

(ずぼっずぼっ)

 とスノーブーツを履く。

■大

京子「雪だあーっ」

 と雪かきシャベルを手にして外に駆け出す。

忍「雪が積もるとはりきるんだよなあ」

 呆れて見送る忍。


●4

 公園。まだ足あとがついてない広場に立つ京子。

京子「一番乗りだ!」

京子「あはははっ」

京子「よーし、雪ダルマ作ろうっと」

 と雪玉を転がし始める。

京子「おこめちゃん!」

 雪だるまというより見事な雪像。

京子「うーん、我ながらいいデキ」

 と誇らしげに眺める。

中津「なんだこれ?」

 と、いつのまにか横からおこめちゃんの雪像を見て不審げに。ゆみみとロングキスグッドナイトも。


●5

京子「む?」

 と中津を見る。

中津「変なのー」「キモーい!」

ゆみみ「ちょっと中津君……」

 とたしなめる。

京子「おこめちゃんを知らないのか」

 ちょっとムッとして小ばかにするように鼻で笑う。

 こっちもふんっ、と言う感じで

中津「ゆみみ、あっちで雪合戦しようぜ」

 と5、6人の小学生(忍の同級生)を誘って離れていく。

 ちょっと「すいません」みたいな感じで会釈するゆみみとロングキスグッドナイト。

 遠くで中津たちが雪合戦を始める。

京子「雪合戦か……」

 うずうずし始める京子。

 自室のコタツでゴロゴロしているクリ子。

 スマホがブブーっとラインの着信を告げる。

 ベッドで着替え中だったボウヤ。

 スマホがブブーっとラインの着信を告げる。

 セクシーの家。広いリビングのソファーでテレビを見ていたセクシー。

 スマホがブブーっとラインの着信を告げる。

セクシー「ん?」


●6

 セクシーのライン画面。

京子のライン「雪合戦するから出てきなよ」

セクシー「京子か……」

セクシー「んー、寒いしなー」

 ちょっと考える。

セクシー「……でも久しぶりに面白いかも」「雪合戦って言っても、どうせちょこっと……」

 と行こうかと思いかけたところで再びラインがブブーと着信。

 セクシーのライン画面。

クリ子のライン「やっぱり誘いくると思った。また去年みたいに本格的な縦深陣地作らされるのヤダ」

ボウヤのライン「不参加」

ボウヤのライン「京子に無理強いされて塹壕を掘らされるのはもう懲りた」

クリ子のライン「バストーニュ包囲かっつーの」

ボウヤのライン「モスクワ前面の督戦隊もかくや」


セクシー「……」

 無表情で画面を見つめる。

 背後に雪の戦場の塹壕で凍える兵隊のイメージ。小林源文とか。

http://footage.framepool.com/ja/shot/730362222-counteroffensive-battle-of-moscow-battlefield-russian-campaign


 京子のライン画面。

セクシーのライン「いかない」


●7

京子「NUTS!」「どいつもこいつも徴兵拒否か」

 とスマホを見て舌打ち。

京子「相手がいないとしょうがないな」

 と雪合戦している小学生のほうを見る。

京子「陣地やめて城にするか」

 と、よいしょ、と雪かきシャベルを使い始める。


 中津、遠藤らにまじってきゃあきゃあ雪合戦しているロングキスグッドナイトとゆみみ。

 京子「できた!」

 京子「よーし、宣戦布告だ」

 とシャベルを手放して雪玉を弄んでいたずらっぽくにししと笑う。


●8

 中津の後から雪玉が飛んできて当たる。

中津「うわっ」

遠藤「おい、見ろよあれ!」

 と指さし。

 え、と振り返る中津。

■のせゴマ

中津「うわっ」

中津「ま、魔王城だ……っ!」

ロングキスグッドナイト「いつのまにこんな要塞が……!」

ゆみみ「雪まつりみたい」

■大

 雪で作った魔王城風。おこめちゃんの雪像がシンボルになっている。

http://blog.goo.ne.jp/perversity-/e/09ede0c9af651f53aa8dea9114dfd7c8


(おどろろーん)

 そこから雪玉を投げている京子。

■のせゴマ

京子「さあ小学生ども! かかってこい!」

 ノリノリの京子がボンボン雪玉を投げている。


●9

京子「あ、女の子はこっちの仲間になればお城に入れてあげるよ~」

 とおいでおいでして優しく笑う。

ゆみみ「わー、おもしろそー」

ロングキスグッドナイト「行こうぜゆみみ!」

 と走り出す。

遠藤「じょ、女子が魔王の軍門に下った!」

中津「え、援軍を集めろ! 鷹野台小男子軍の総力を上げて魔王城を攻略するぞ!」


 しばらくして商店街。

忍「雪合戦で非常招集って?」

 と中津の後を走ってくる忍。道端で雪かきをしている大人。

中津「高校生の魔王が公園に要塞作って立て籠もってるんだ」

 勇者を呼びに来た村人みたいなノリ。

忍「小学生相手にー?」

 と半信半疑。

中津「忍、こっちだ!」

 と公園から手招き。

 10人くらいの男子がわーわー遊んでいる。


●10

中津「うわっ!」

 (ばしっばしっ)

 と雪玉の集中砲火をくらう。

 それを見て、ひっとなる忍。

京子「うはははは! やらせはせんぞー!」

ロングキスグッドナイト{このお姉さんきれいな人なのに、小学生相手に本気だ……}

 と苦笑い。

 雪玉をせっせと握るゆみみ。

忍「京子……」

 脱力。

京子「あれ? 忍だ」「キミら忍の友達なの?」

ロングキスグッドナイト「あ、うん」「え?」

京子「そっかー」「……なら」

 とニヤリ。

京子「おお、我が王弟! 援軍に来たか!?」

京子「早く入城しろ!」

 と悪そうな顔で手を広げて魔王風に。


●11

中津「なにっ? 忍、お前っ!?」

 と振り返る。

遠藤「忍は魔王の弟だったのか?」

忍「あ、うん」

 恥じるように苦笑い。

中津「こいつは敵だーっ」

遠藤「逃がすなー!」

 と逃げる忍に雪玉を投げながら追う。

忍「わーっ」

 城の方へ逃げる忍。

京子「よく来た忍! これで我が城は盤石だ!」

忍「裏切り者になっちゃったよ~」

 涙ぐむ忍

京子「みんなの前でああ言えばあんたはこちらにつかざるをえまい」

忍「ハメられた~」

ロングキスグッドナイト「ほら、忍、守らないと!」

 と雪玉を投げるよううながす。

 ふとロングキスグッドナイトを見る京子。忍と仲良さそうだな、と気が付く。


●12

 お昼近くになって。

京子「じゃあ、お昼ごはん休戦ね! 午後は攻守入れ替えだよー」

 遠藤や中津たちと笑いながら手を振って一旦解散。

ロングキスグッドナイト{忍のお姉さんだったのか……}

 帰り道。

京子「二人ともウチでお昼一緒に食べながら午後の作戦会議しよう!」

 とロングキスグッドナイトとゆみみの背に手をまわす。

ロングキスグッドナイト「い、いいんですか?」

 と二人ともちょっと途惑い。

忍「僕が作るから、ゆみみちゃんもロングキスグッドナイトも遠慮しないで」

京子「えっ、この子が例のロングキちゃん?」

 と忍を見る。

京子{うわ、よく見たらすっごい美少女だ}

 とロングキスグッドナイトを見つめる。

ロングキスグッドナイト{……??}

 と京子と目があってどぎまぎパチクリ。


●13

 京子と忍の家。居間。

京子「手袋とか靴下乾かすからこっちに吊って」

 とハンガーを手渡しながら靴下とかの洗濯物を吊る洗濯ばさみ式ハンガーを手に。

 上着を脱いでいるロングキスグッドナイトとゆみみ。

京子「ロングキちゃんもゆみみちゃんも髪濡れちゃってる」「ドライヤーで乾かそう」

 ゆみみにドライヤーをかけてあげる京子。

ゆみみ「あったかーい」

 先にかけてもらったロングキスグッドナイト。

ロングキスグッドナイト{こんなお姉さん欲しいな……}

 台所。冷蔵庫を開けて何を作ろうか考えている忍。

忍「すぐできて暖まるもの……」

忍「焼き白菜とベーコン煮パスタにしよう」

 と白菜を取り出す。

忍{4人分だから白菜は半分かな}

 と白菜を半分に切る。

(ざくっ)

忍{パスタが絡みやすいように小さく切って葉に塩を振る}

忍{塩の量は小さじ1杯くらい}


●14

忍{葉に軽くすり込むくらい}

忍{この下味の段階で塩をきっちり強めに効かせるのがコツなんだ}

忍{鍋にバター40gを入れて}{みじん切りにしたニンニク1片と、拍子木切りにしたベーコン1塊を中火で炒める}

忍{香りが出てきたら白菜を入れて}

忍{ちょっとフタをする}{こうすると香りが移るんだ}

忍{根本のほうは火が通りにくいから鍋底に押さえつけるようにして、全面にしっかり焼き目をつける}

忍{白菜がしんなりしてきたら水を500ml入れて、フタをして20分くたくたになるまで煮込む}

忍{パスタを茹でる準備もしておこう……}

 とパスタを茹でる鍋に火をつける。

忍{こういうのはやっぱり絡みやすいフェットゥチーネがいいかな}


●15

 居間

ロングキスグッドナイト「あ、これあの変な雪だるまの奴だ」

 と傍らにあるおこめちゃんのぬいぐるみを見つける。

京子「おこめちゃんだよ」

 と手に取って見せる。

ロングキスグッドナイト{雪だるまが下手なのかと思ったけど、こういうデザインなんだ……}

 と不気味なものを見る目。

京子「知らない?」

ゆみみ「初めて見た」「魔王城の魔物かと思ってた」

ロングキスグッドナイト{うん、魔物だ}

京子「ごはん食推進のゆるキャラなんだよ」

 とおこめちゃんに話しかけるように両手で正面を向けて持って見る。

ゆみみとロングキスグッドナイト{とも食いしている……}

京子「かわいいでしょ?」

 とかわいがって胸に抱く。

ゆみみ「キモい」

 と表情を変えずにこにこしたまま。

ロングキスグッドナイト「というか怖い」

 と冷たい目。

 えっ、となる京子。


●16

忍{先に塩をしてるから白菜から水分が出て甘味と旨味が凝縮されていく……}

 とふたを開けて煮ている鍋を覗き込んでいる。

忍{もう煮るのはいいかな}

忍{仕上げにバジル振ってバター30g入れて混ぜる}

忍{このままスープとして食べてもいいけど}

忍{フライパンで暖めながら牛乳を足して黒コショウふって}

忍{パスタがゆで上がったらよく湯切りして}

忍{フライパンで和える}

忍{完成!}

 居間のコタツの上。

忍「どうぞー」

<焼き白菜とベーコン煮パスタ>

■のせゴマ

ゆみみ「うわー、レストランの料理みたいだね!」

ロングキスグッドナイト「あ、ああ……」


●17

ロングキスグッドナイト{忍って、こんなにちゃんとした料理作れるのか……}

ロングキスグッドナイト{やっぱりすごい奴だ……}

京子「ん、ベーコンと焼き目をつけた白菜の香ばしさ、甘味も濃く出てる」

京子「あったまるねえ」

ゆみみ「バターが入ってるの? こんなの初めて食べた」

ロングキスグッドナイト{頭良くてかわいい上に作る料理もおいしくて……}

京子「どう?」

ロングキスグッドナイト「お、おいしい……」

京子「忍に言ってやって」

忍「スープだけならまだおかわりあるよ」

ロングキスグッドナイト「う、うん、おかわりする」


●18

 片づけ終わって居間に戻ってきた忍。

忍「洗い物、みんな手伝ってくれてありがとうね」

京子「忍おつかれ」

忍「うん」

 とコタツに入ってくる。

ロングキスグッドナイト{姉弟で仲がいいな}

ロングキスグッドナイト{あっ}

ロングキスグッドナイト{忍の足……}

忍「あ、ごめん、これ誰の足?」

ロングキスグッドナイト「う、わたし」

京子「んふ」

 とイタズラっぽく笑う。

忍「!」

忍「京子やめて」

 と顔を赤らめてもぞもぞする。

京子「えっへへへ」

 スケベそうな顔で笑う。


●19

ロングキスグッドナイト「なにしたの?」

 不審そうに。

ゆみみ「?」

京子「こうしたの」

 と足の指で器用にロングキスグッドナイトのつま先をつまんで、もう一方で足の裏をくすぐる。

ロングキスグッドナイト「きゃっ!」

 ロングキスグッドナイトがコタツの外に足を抜く。

ロングキスグッドナイト「えっ、なにっ?」

京子「ほらっ」

 と、京子の足がそれを捕まえて持ち上げてひっくり返し、みんなに見えるようにくすぐり続ける。

ロングキスグッドナイト「わっ」

京子「あたしの自慢の足技はどうだ、おらおら」

 足コキが上手そうな。

ロングキスグッドナイト「あっはははは!」「ひーっ、やめてーっ」

 と涙流して笑って苦しそう。

ゆみみ「すごーい、手みたいに器用!」

 感心する。

 もう、というように困り顔の忍。



●20

ゆみみ「わたし、忍くんのお姉さん、大好き!」

ロングキスグッドナイトと忍「えっ?」

京子「あれま」

ゆみみ「だって面白いんだもん」

 屈託のない笑顔を京子に向ける。

 とまどうロングキスグッドナイト。

京子「ありがとう」

 とすました顔でゆみみと握手。

ロングキスグッドナイト「……わ、わたしも!」

 と慌てて遅れじとワタワタする。

ロングキスグッドナイト「わたしも好き……」

京子「わお」「あたしモテモテだよ忍」

 と忍の方と交互に見て。

京子「仲良くしてねー」

 とテレるロングキスグッドナイトと握手。

ゆみみ「忍くんがうらやましいなー。忍くんちの子になりたい」

忍「もう京子はウチの子じゃなくて、フトンちの子なんだけどね……」

 公園。

 天気が良くてドロドロに溶けてしまった魔王城とさらにキモくなったおこめちゃんの雪像。

ナレ<そのころ、京子の城は午後の陽光で溶けて自壊し陥落していた>

中津、遠藤ら男子「うわー城がー!」

 と今度は自分たちが城を守る側だと張り切っていたのにドン引き。



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