第5話「ジャコとしそとガーリック赤唐辛子チャーハン」

↓コンテ

https://www.pixiv.net/artworks/87158121


(擬音・吹き出し外文字)

「セリフ」

{人物モノローグ}

<ナレーション・モノローグ・解説>



●1

 扉。


●2

■大

 学校の教室。京子セクシークリ子ボウヤの4人。このコマだけ切り取ってスクールライフを象徴している感じで、次のコマからは時間が少し飛んでいる。

京子「セクシー、あんたウチの村荒らしたろ?」

セクシー「ちげえよ、クリ子が」

 とニヤニヤして。

クリ子「あたしのせいにすんなよ!」

 校門出たとこ。

ボウヤ「なー、ハンティングしようぜー、ミスドで」

クリ子「ボウヤってミスド好きな」

セクシー「京子行くだろ?」

京子「んんー…」

京子「ごめん、今日は行くとこあるからパス」

 と片手をちょっと上げて別方向に帰りかける。

セクシー「そかー、あけとくから夜また村に来てよ」

京子「セクシー村荒らしてやるかんな!」

 と去りつつ振り返って指さし。

セクシー「おうよ!」

 手を振る3人。




●3

 ラーメン屋のマスターがチャーハンを作っている。

 カウンターからその背中をジッと見ている京子。

マスター{……またあの子だ}

 とチラっと背後の京子を気にする。

マスター{独りで来てかならずチャーハンを注文……}

マスター{そしてなぜか俺のことをジッと見ている……}

 とテレてる。

●4

(ジャッ)

 中華ダシを玉杓子で掬って中華鍋に入れてチャーハンをかき混ぜて炒める。

 立ち上がって覗き込もうとする京子。

マスター「お、おまちっ」

 とカウンターにチャーハンが出る。

京子「いただきます」

 と髪を耳にかけながらレンゲを手に取る。

マスター{かわいいうえに}

マスター{店で独りでもちゃんと「いただきます」が言えるいい子だ……!}

 と、京子をチラ見しながら中華鍋をササラで掃除してる。

 チャーハンモグモグ喰いながら見ている京子。

●5

 翌朝。家の台所。

(じゃあっ)

 中華鍋を振る京子。

忍「!?」

 と、着替えて出てきてそれを見てギョッとする。

忍「また朝からチャーハン?」

忍「これで一週間連続じゃないか」

京子「忍はパンにすればいいでしょ」

 と忍の方も見ずにクールにチャーハンを炒めている。

忍「そうするけどさー」

忍「朝チャーハンのために晩御飯よけいに1合多く炊いてるでしょっ?」

京子「毎日チャーハンを練習することでチャーハン力が上がるのよ」

(じゃんじゃんじゃっ)

京子「なんかもう少しで極意をつかめる気がするんだよね」

忍「チャーハン力って何だよ…」

●6-8

忍「毎日チャーハン食べてよく飽きないね」

京子{放課後もラーメン屋でチャーハン食べてるけどね…}

京子{練習だから具は卵とネギだけ}

 と刻みネギを入れながらバジルのビンをパッパと振って入れる。

京子{ニンニク抜きでパンチがないから仕上げにバジル入れてごまかすか……}

(じゃー)

 と皿に盛る。

京子{中華鍋の手入れは使い終わったらすぐ}

京子{熱い鍋が温度差で変形するから水洗い厳禁}

京子{熱湯でササラを使って手早く掃除}

 と流しでお湯で洗う。

京子{火にかけて水分を飛ばしながらキッチンペーパーでさっと拭き取る}

京子{火を止めたらすぐに油を入れて全体になじませるようにキッチンペーパーで塗る}

忍「あ、中華鍋にオリーブオイル塗らないでよ! それいいオイルなんだから」

 と後ろから抗議。

京子「料理でもないのにゴマ油使ったらもったいないじゃない」

 後ろも見ずに。

忍{油価値観の相違だ……}

 と不満そう。

 そんなことは気にもせず名刀を眺めるように中華鍋をかざして悦に入る京子。

京子{ふふふ}

京子{だんだんこのマイ中華鍋も使い込んだ味が出てきたな}

京子{丹念に焼きを入れ油を浸み込ませてきた業物だ}

京子{銘を…}

京子{そう銘を入れねば…}

(とん)

 とテーブルに皿を出して。

京子「いただきます」

忍「どうかしている」

京子「チャーハンは修行だから」

忍「…でもそれ失敗してない?」

京子「……うん」

京子「炒める前に卵を御飯に混ぜてみたんだけど、ぐっちゃりしてジャンバラヤみたいになった」

京子「まあ、この失敗も原因さえわかれば次は同じ轍を踏まないので確実にチャーハン力を上げる一歩になるわけで」

忍「たしかにチャーハンてむずかしいよね」

忍「僕も上手くできるときとそうじゃないときにムラがあるな…」

●9

 放課後のラーメン屋。

マスター{チャーハンの君がまた来た…!}

 カウンターに座った京子に嬉しそうな顔を隠すように背を向ける。

マスター{チャーハンの君…!}

 チラっと見る。

マスター{また熱い眼差しで俺を…!}

京子{今日こそ盗んでやる}

京子{チャーハンの技!}

 ジッとマスターを見ている。

●10

 その後、スーパー。

京子{あの玉杓子の使い方はマネしてみよう}

京子{チャーハンはいろんな作り方があって、それぞれ上手く作るコツを主張しているけど百家争鳴}

 シソをカゴに入れる。一束50円。

京子{ごはんは温かいほうがいい、いや水分が飛んでる冷たいほうがいい。卵は先に炒めろ、いや最後に入れろ、などなど……}

 ジャコのパック。199円。

京子{作る人の数だけチャーハンの作り方はある……}

京子{そういやパスタオイルソースが中途半端に残ってたな……}

 とパスタ売り場のエンドに積み上がっているパスタオイルソースを見て。

京子{そうだ、試してみよう}

 とひらめく。

●11-16

忍「え、チャーハン!?」

 呆れる忍。

忍「僕はいいけど、京子は朝晩チャーハンじゃない…」

京子{三食目だけどね……}

 とクールに買い物袋から材料を出してる。

京子「朝のは練習。これは本番だから気合ちがうよ」

 とニヤリ。

忍「……」

京子{ウチはいつも残ったご飯は保温しないですぐラップに一人前ずつ包んで冷凍してあるので、緊急時はこれを解凍するだけなのだ}

 と冷凍ラップしたご飯を取り出す。

京子{この解凍した温かいご飯がチャーハンにはちょうどいい}

 とレンジで解凍しているのをながめる。

京子{あった、パスタオイルソース・ガーリック赤唐辛子}

 と冷蔵庫からビンを取り出す。

京子{シソを一束全部刻んでおいて…}

京子{うん、いい香り}

 とシソをまな板で短冊に刻む。

京子{二人前だから卵は二個といて、塩コショウとかきまぜる}

 ボールに卵を菜箸でとく。

京子{材料揃えたら中華鍋を熱する}

 と中華鍋をレンジに置いて、オイルパスタソースをあける。

京子{…の前に、オイルパスタソースをたっぷりと}

京子{いつもなら中華鍋から煙が出てからゴマ油を入れるけど、オイルパスタソースは熱してから入れるとはねるからね}

京子{火は徹頭徹尾強火!}

(ごおっ!!)

 京子も燃えてくる。

京子{油が熱くなったところに卵を投入}

 とボールから中華鍋へ。

(じゃあっ)

京子{すかさずご飯を投入!}

(ぼんぼん)

京子{卵が固まる前に手早く、ご飯と混ぜる}

京子{今日見たラーメン屋のマスターの技!}

(じゃんじゃんじゃんじゃー)

京子{玉杓子でご飯を中華鍋に広げて押し付けるようにしながら、時々切るようにして混ぜる}

京子{あっ、この時点でご飯がパラパラになる手ごたえを感じる!}

京子{油が適量ならこうなるんだ}

京子{おお、いいぞ、パラっとなれ!}

京子{意念だ}

京子{パラッとなれ! という意念の強さがチャーハンをパラっとさせる}

京子{チャーハン力とは意念なり!}

 と盛り上がる京子。

京子{よーしよし}

京子{卵が混ざったら丸鶏ガラスープの素を小さじ一杯くらい}

京子{ジャコ1パックドバっと}

京子{うん、いいぞ、パラパラだ!}

京子「うははは、チャーハン力がみなぎる!」

 と思わず口に出して笑い出す。悪者っぽい?

忍「……?」

 と怪訝な顔。

京子{仕上げにシソを入れて軽く炒める、と}

京子{この間わずか3分!}

京子{速い! 炒め物はスピードが命! ゴッド・スピード・ミー!}

(かんかんかん)

 と得意げに玉杓子でさらうように中華鍋からテーブルの大皿によそう。

京子{マイ中華鍋よ、見事な仕事だ}

 と中華鍋を掃除しながらフッと笑う。

京子{そうだ、炒める黒き者……。そなたをシュバルツ・シュメルツと名づけよう…}

 と名刀を眺めるようにかざす。

●17

忍「いただきまーす」

京子「どう?」

忍「…あっ、すごく上手にできたね」

 おどろく忍。

忍「おいしいよ。シソの香りがいいし、唐辛子とニンニク?」

 と顔をほころばせる。

京子「今日思いついたんだけどパスタソース使うとかんたんだね」

 と自分でもうなずきながら満足げに味わう京子。


●18

忍「僕も作ってみようかな」

京子「お主はまだ修行が足りんし道具もないであろう」

 と気取って。

忍「なに言ってんの? 中華鍋使えば僕だって……」

京子「我のシュバルツ・シュメルツはお主にはまだ扱えん!」

京子「中華鍋手入れ見習いから始めよ」

忍「……京子、そのうちチャーハン力の暗黒面に堕ちるよ」






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る