第2話「サンマの塩焼きとエリンギのニセマツタケご飯風」

↓コンテ

https://www.pixiv.net/artworks/87157413


(擬音・吹き出し外文字)

「セリフ」

{人物モノローグ}

<ナレーション・モノローグ・解説>



●1

 タイトル。

(がっしっ)

 京子が卍固めを忍にかけている。京子嬉しそう。

京子「ふん!」

忍「わああっ!」

 京子、制服のスカートに新日本プロレスのクラッシックトレーナーを着てる。

<オクトパスホールド>

 プロレス技や京子がブリッジしてる姿など、多分にパロディ的なので極まったところの絵は有名な写真を参考にして似せたほうが可笑しいかもしれません。

 ネームは控えめですが、技はわかりつつも、もうちょっと迫力出したいとこです。

参考

http://image.search.yahoo.co.jp/search?p=%E5%8D%8D%E5%9B%BA%E3%82%81&aq=-1&oq=&ei=UTF-8

忍「もう、やめてよ~~」

 技を解かれて自分を抱きしめるようにして抗議する忍。

(ダーッ!)

 と、首にタオルをかけてこぶしを突き上げ勝利のポーズ。

忍{またパソコンの動画で昔のプロレス見てたな……}

 と卓上のノートパソコンのモニターを見て察する。

<京子はプロレスが好きだ>


●2

京子「食欲の秋で食べまくってるから、なんか最近太ったような気がしてきてさー」

 と腕を交差するように振ってブッチャーみたいに脇をカッポンカッポンするマネ。

京子「カロリー使わないと」

忍「じゃあ公園の鉄棒で逆上がりでもしてくればいいでしょ!」

んもー、みたいな。

京子「あたし逆上がりできないし」

 と言いながら、手を使わず床に鼻がつく綺麗なブリッジ。腕組みしながらぐいぐいとしてみせる。

(ぐっ ぐっ)

忍{うっ、ゴッチ仕込みを彷彿とさせる完璧なブリッジ……}

 とたじろぎながら驚嘆。

参考

http://image.search.yahoo.co.jp/search?ei=UTF-8&fr=top_ga1_sa&p=%E3%82%B4%E3%83%83%E3%83%81+%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%B8


京子「けど忍は……」

 とブリッジから反動つけて三点倒立して、

 よっ、スタっ、とハンドスプリングで立ち上がる。

京子「女の子みたいに身体が柔らかいね」

京子「ストレッチ技があんまり効かないっぽい」

忍{そして初代タイガーマスクばりの身のこなし……}

 姉の才能に驚嘆。

http://www.youtube.com/watch?v=uY8kBn0etOw

忍{ていうか、やたらとくっつかないで欲しいんだけどなあ……}

 と目をそらして恥じらう。

京子{チョップとか受けてほしいけど、無理か……}

 と手刀をクロスして構えながら忍をチラ見する。


●3

 朝。京子のクラス。

 わいわい騒がしい。

 窓際の最後列の席で、家にいるときとは一転、けだるげでクールに見える京子、ぼんやりと前を見ている。

 チラッと廊下側に視線を走らせる京子。

 教室廊下側からドア近くで遠巻きに京子のほうを覗っている男子3人。

宮脇「なあ、市川京子、いま俺のこと見たんじゃね?」

 と嬉しそうに小田に。

小田「気のせいだバカ」

京子{プロレス技、本当は頑丈そうな男子にかけてみたいんだけど}

 制服姿の京子が橋本真也を脳天チョップ袈裟斬りチョップ逆水平チョップ入り交えたチョップ乱打でメチャクチャ打ち据えているイメージが浮かんでる。少女漫画的に点描とか飛ばしてイメージしてるけど絵面はプロレスという。

京子{技をかけさせてくれるくらい仲が良い子っていないしなー……}

 と教室ドア近くのほうを何気なく見る。

イメージ参考

http://matomeyakata.cocolog-nifty.com/blog/fdd9d780.jpg


http://livedoor.blogimg.jp/verdigris28/imgs/5/b/5b2b8601.jpg


http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/01/Rikidozan_and_karate-chop.jpg


http://www.youtube.com/watch?v=q5TTGcFla2Y


http://www.youtube.com/watch?v=PjowYwtANrE


http://nviewer.mobi/player?video_id=sm20601563 ←1:00頃


http://www.youtube.com/watch?v=3Z6w0F-Rbe4 ←チョップ合戦


 野球部佐々木(純情丸刈り、小柄)、写真部小田(硬派を気どる鉄オタ、四角い顔がっちり体型、四角いメガネ。写真は電車のみ、と言ってるが本当は女の子を撮りたいが恥ずかしい)、帰宅部宮脇(ツンツンの短髪でひょろっとしてる、不良っぽいけど気のいいスケベ)。

佐々木「けど、やっぱ市川京子かわいいよな」

 とテレながら。

宮脇「同じクラスにいてくれてありがとう」

 大げさに感謝してる。

小田「貫井高校一年美少女四天王の一人……」

 うむ、みたいな解説キャラ風に。


●4

 椅子によりかかって座って脚組んでいる京子にフキダシが付随していく。

 ネーム余白多めになっちゃってますが、うまいこと一枚絵のグラビアっぽく。

宮脇「ツンとしてクールで、なんか近寄りがたいけど」

 京子のツンとした表情。

宮脇「あの胸!」

 京子の胸。

宮脇「ふくらはぎ!」

 京子の脚。

宮脇「たまらんな」

 鼻息荒く顔を赤らめる宮脇。うんうん、とうなずく佐々木と小田。

佐々木「俺がこのクラスの女子でつきあうとしたらやっぱ市川京子だよなー」

宮脇「心の底から冷え込むようなこと言うなよ」

 選べんのかよ、みたいな。

セクシー「どいて」

 と三人の背後に現れるセクシー。邪魔そうに。

 三人ギクッとする。

 セクシーの眼鏡越しに冷たく刺すようなまなざし。

宮脇「おっ、おうっ」

 三人よけて道を開ける。

 すっと一顧だにせず通るセクシー。三人の会話を聞いてしまったが無視する。


●5

小田「……高木陽子」

小田「美少女四天王とは別格扱い、普段はメガネをかけてるため、知る人ぞ知る隠れ美人……」

 伝説の番長を目撃して恐れるように目で追いつつ、語る。

宮脇「ちょうコワモテ美人でこちらも近寄りがたいが」

宮脇「制服で隠し切れないララ・クロフト並みのスタイル、たまらんな」

セクシー全身ぶち抜き? やや振り向き気味に上体をねじった後姿。横顔、胸のふくらみ、腰のくびれ、立派な尻!

セクシー「おはよ」

 と京子の席まで来てあいさつ。

京子「よっス、セクシー」

宮脇「高木陽子のあだ名、なんで「セクシー」なんだ?」

佐々木「あのコワモテが、よくそんなバカっぽいあだ名ゆるしてるよな……」

京子{……地に足ついた友達は希少だ}

 とセクシーの顔を見る。

セクシー「どした京子? ひとの顔じっと見て」

 ん? といぶかしむ。

京子「セクシー」

京子「プロレス技かけさせて」

セクシー「あっ? なに急に」

 と不敵な表情。

宮脇「かわいい女子同士ってどんな会話してんだろうな?」

小田「な?」


●6

 昼休み、体育館の隅。

 陸上用の高跳びマットを引っ張り出して遊んでる京子、セクシー、クリ子、ボウヤ。

京子「ふっ」

 とセクシー(メガネ外している)をフランケンシュタイナーで投げる。

<フランケンシュタイナー>

(ばすんっ)

 と決まる。

セクシー「~~~っっ」

参考

http://www.youtube.com/watch?v=P64-ZF_xyqY 


http://www.youtube.com/watch?v=zaqTJFfXGNY


http://www.google.com/images?q=%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B1%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%BC&hl=ja&lr=lang_ja&oe=UTF-8&num=50&oq=%E3%81%B5%E3%82%89%E3%82%93%E3%81%91%E3%82%93%E3%81%97%E3%82%85%E3%81%9F%E3%81%84&gs_l=img.1.1.0i4l10.184976.189515.0.191269.23.19.0.0.0.6.277.2460.3j10j3.16.0....0...1ac.1j4.34.img..13.10.1644.LejlOoF5M9E

●7

京子「はっ」

 とセクシーをジャーマンスプレックス。

(ぼすっ)

 とマットの上に綺麗なブリッジでホールドされる。京子の踵が浮いてピンとつま先が伸びてる。

<ジャーマンスープレックスホールド>

セクシー「~~~っっ」

クリ子、ボウヤ「おーっ!」

 と横で手を叩く。

参考

http://www.youtube.com/watch?v=C7D7xF3aP-c


http://www.youtube.com/watch?v=N4VDvYPQbCc


http://www.youtube.com/watch?v=afpxpRQtcjw


http://www.youtube.com/watch?v=pMkuBaC2N54 ←バックドロップ(ちょっと違う技)も混じってますが構図の参考に

 体育館の反対側のバスケコートで、遠巻きに、3オン3の手を止めて顔を赤らめて見ている男子たち。

 ごくりとつばを飲み込み、あるいは興奮を押し隠そうと口元に手を当てる。

セクシー「ちょっ、パンツパンツっ!」

 ホールドされたまま慌てて隠そうとジタバタしてるらしい声。

クリ子「あっはっはっは、丸見えとかウケる~~」

ボウヤ「すごいすごい、次あたしやりたい」

京子「セクシー、意外と身体硬いからストレッチ技とか効きそう」

 と立ち上がって。

セクシー「プロレス技っていうから、もっと簡単なのかと思ったのに!」

 恥ずかしそうに。

ボウヤ「うちらの小学校でフランケンとジャーマン完全にモノにしてたの京子だけだよ」

クリ子「レベル高かったよね」


●8

クリ子「ボウヤ、久しぶりにアレやろうよ」

ボウヤ「おっ、クリ子いける? やろうやろう!」

セクシー「?」

クリ子「あっはははは! あっはははは!」

ボウヤ「すごいっ? ねえ、すごいっ?」

 マットの上、クリ子をまっすぐ持ち上げたボウヤの超長滞空ブレンバスター。この形を維持しようと、バランスをとるため足もとが若干よろよろしている。両者が協力して成立している技。

 ボウヤの右手はクリ子のスカートのベルト部分をつかんで左手はクリ子の首を抱えている。クリ子の左右の手も相似形。

 ボウヤの右手でつかんだクリ子のスカートのベルト部分は上(クリ子の脚の方)にずり上がって、股間の前の部分だけ、重力でめくれたスカートを突きあげる形で隠しているが、サイドからお尻にかけては丸見え。

<超長滞空ブレンバスター>

セクシー「おおおおお~~~?」

セクシー「なんだ、すげえなお前ら」

京子「クリ子の軽さならどんな投げ技でもかかるよ」

参考

http://www.youtube.com/watch?v=g5fAdTe0bqE ←これをできるだけ長く止められるか、みたいな技です。


http://www.google.com/images?hl=ja&lr=lang_ja&oe=UTF-8&q=%E9%95%B7%E6%BB%9E%E7%A9%BA%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%90%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC&num=50&sa=X&oi=image_result_group&ei=ESYQVKywEYrU8gWmooCwCw&ved=0CDMQsAQ

クリ子「ど~お~? 垂直になってる~?」

セクシー「おいクリ子、パンツ丸見えだぞ!」

 恥じらえ、と真顔で警告。

京子「狼狽えるなセクシー」

京子「プロレスはパンツ一丁でやるもんだ」

(ばたーん!)

 とマットに倒れるクリ子とボウヤ。京子、腹抱えて指さして笑う。

クリ子京子ボウヤ「わはははは」

セクシー{こいつら興奮しすぎてなんかテンションおかしい……}

京子「セクシー、今度は弓矢固めかけさせて」

 とせがむように。

セクシー「もう十分つきあったでしょ」


●9

京子「たまにはカロリー使って遊ぼうよ」

 とセクシーに弓矢固めをきめている。

セクシー「カロリー使いたいならっ……その辺で…逆上がりでもしてろ…よっ」

 ぐぎぎとなってるセクシー。パンツ見えないように気にしてる。

<ボー・アンド・アロー>

http://www.youtube.com/watch?v=28Q7riAo14E かけかた


http://www.youtube.com/watch?v=NJ0T1VFgvfg


http://www.youtube.com/watch?v=uGbRQ9GVi-I なんかいかがわしい


http://www.google.com/images?q=%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%89%E3%82%A2%E3%83%AD%E3%83%BC&hl=ja&lr=lang_ja&oe=UTF-8&num=50&oq=%E3%81%BC%E3%83%BC%E3%81%82%E3%82%93%E3%81%A9&gs_l=img.1.0.0i4j0i4i24l8.22205.29290.0.32186.26.18.3.0.0.1.263.2040.4j3j6.13.0....0...1ac.1j4.34.img..15.11.1744.oArt13_gits

京子「弟と同じこと言うなよ~」

 と技をといて悲しそうに。

セクシー「……それよりそろそろ学食すいてきたんじゃないか」 

 ヤレヤレ、というようにメガネをかけかける。

 学食。

ボウヤ「お腹空いたー」

クリ子「いやー、順番逆でお昼食べてからアレやってたら全部吐いたね」

 カツ丼大盛りをトレイに乗せて運んでる。

セクシー、京子、ボウヤは定食。席を探している4人。

京子{そういや今日、晩御飯あたしの番だな。何にしよう}

 と3人の後について歩きながら考える京子。

京子{ニンジンあった、ゴボウあった…}

京子{白菜4分の1、そろそろ使い切らないとだし…}

宮脇「焼いたさんま一匹まるごと入った弁当とかすげーな、お前」

 と後ろから声が聞こえて軽く目を見開く京子。


●10

佐々木「うるせーな」

 京子がトレイを持ったまま振り返ると佐々木と宮脇と小田がいるテーブル。

 小田と宮脇は定食食べている。

宮脇「まじでおかずサンマとうめぼしだけ?」

京子「………!」

 ごくりと唾をのむ。

京子「サンマだ」

佐々木「え?」

 と振り返って京子を見る。

 京子、佐々木の弁当に釘づけ。そーか、そうだな、とうなずいている。

 午後の授業を教室で受けている京子、うわのそら。

京子{秋サンマ}

 放課後。

(キーンコーンカーンコーン……)

(だだだだだ)

 とセクシーの横を大股で飛ぶように駆けて出て行く京子。

ボウヤ「あれ、京子ミスド行かないのか」

セクシー「なんだあいつ」

 と見送る。



●11

忍「ただいまー」

 と帰ってくる。

京子「今日は炊き込みごはん」

京子「いまから炊くからちょっとまってね」

 とエプロン姿で台所で包丁を使ってる。

(とんとんとんとん)

忍「うん」

 とちょっと京子が何を作ってるのか見ながら京子の背後を通る。

 みじん切りする京子の手元。

(とんとんとんとんとん)

京子{ニンジン3分の1、ごぼう3分の1、全部みじん切りにしちゃえ}

京子{エリンギ1パック短冊切り}

(たん たん たん)

京子{しめじは株元をザクッと切ってそのままバラバラにするだけ)

京子{油揚げは油抜きしないでいいや。早く食べたいし」

京子{これは細切り}

京子{お腹空いたからごはんは4合にしちゃおう。水加減は普通で。ウチのめんつゆは甘くないタイプだからそのまま炊き込みごはんにもすき焼きにも使っちゃう。ちょっと濃いめに入れちゃおっと}

 と電子ジャーのお釜にめんつゆを入れる。

(とぽとぽ)


●12

京子{で、具材を米の上にのせて炊飯する}

 と、具材をざばっとお釜に入れる。

(ぴっ)

 と炊飯スイッチを押す。

京子{お味噌汁は白菜とわかめにしよう}

京子{塩わかめを水洗いして切ったら、水を入れたボールにドボンして塩抜き}

 と水を張ったボールにカットした塩わかめを投入。

 白菜を入れた鍋を火にかける。

京子{白菜はざく切り。水から白菜入れて柔らかくなるまで火にかける}


●13

京子{おっと。出汁はカツブシ1パックそのまんま入れちゃえ}

京子{めんどくさいからカツブシは濾さないで入れっぱでいいや}

 と鰹節パックを開けて中をパパッと鍋に投入。手抜き、ズルしちゃえ、という顔。

京子{塩が抜けたわかめをボールから出して水けを切っておく}

京子{そして秋のサンマ!}

 とサンマが二尾入った透明なビニール袋を手にして。

京子{ふふふ……}

 と目を伏せてニヒルに。

京子{お前を食いたくなってしまうのは、脂がのってプリプリ太っていておいしそうで安いのがいけないのだよ!}

 と悪役っぽくサンマに語りかける。

 おびえるサンマの目。

(ひ~~)


●14

京子{洗ったら水けを切って、軽く塩をふって}

京子{…焼く}

京子{ま}

京子{え}

京子{に…}

 とまな板の上でサンマに塩をふりながら足もとの炊飯器を振り返る。

京子{おっと、ごはんあと15分で炊ける}

 炊飯器の表示。

京子{先に大根おろし作ろう}

京子{先っちょの3分の1までピーラーで皮剥いたらおろす}

 大根一本のまま、容器つきの大根おろし器でおろす。

(ごりごりごりごり)

京子{大根の先っちょは辛めだから好きー}

京子{ザルにあけて、コブシをギュッと押し付けてしぼる}

京子{しぼりすぎるとパサついて美味しくなくなるから、気をつけて、と}

京子{つまんで大根の汁がちょっと落ちるくらいだね}

 金属のザルにおろした大根を開けて拳をおしつける。

京子{あと10分か}

 と炊飯器の表示を見る。

京子{サンマよ! 煉獄の業火に身を焦がせ!}

 とガスレンジグリルのスイッチを入れる。

 ファンタジーっぽいエフェクト。

(ちきちきちきちき)←点火の音。

京子{焦がしちゃダメか}

 とテヘペロ。


●15

京子{お、白菜もういいな}

京子{火をとめて味噌を溶き入れて}

 と鍋の中でオタマと菜箸でミソを溶く。

京子{再び着火}

京子{沸騰したらわかめを入れて火を止める}

 とわかめを入れて火を消す。

(かち)

京子「味噌汁できた!」

 グリルからサンマを引き出す。

(がらっ)

(じゅ~~~っ)

(ぱちぱちぱちぱち)

 脂が弾ける。

京子「サンマ焼けた!」

(ぴーっ ぴーっ)

 と鳴る炊飯器。

京子「ごはん炊けた!」

京子{炊き込みごはんはうっかり保温してると傷むから炊けたら保温を切っちゃう}

京子{味付きのごはんはたとえ冷たくなってもおいしいからね}

 とジャーを開けてご飯をつぐ。


●16

忍「あっ、秋っぽい」

京子「お好みでレモン汁どうぞ」

 サンマの塩焼き、大根おろし添え、醤油とレモン汁。

 エリンギのニセ松茸ご飯風。

 白菜とワカメの味噌汁。

忍「え、炊き込みごはん4合も炊いたの? 二人なのに」

京子「女子高生の食欲なめんなよ!」

忍{コスパ悪いんじゃないか、って話なんだけどなあ}

忍{京子は経済観念に欠けてる}

 とごはんを口に運ぶ。

京子「今回は松茸のお吸い物の素入れなかったから松茸の香りはナシですが…」

 と言いつつごはんをあーん、と口に運ぶ。ここではもうエプロン外している。

 ほおばって幸せそうなふたり。

 うーん(ハート)


●17

忍「香り、別にいらなくない? おいしいもん」

忍「秋の味覚っていう情緒的な要素だけどさ」

京子「「情緒」ねえ。また学校で覚えたての言葉使っちゃって」

 と見透かすように笑ってからかう。

忍「……」

 赤くなりながら目を伏せてサンマに箸を伸ばす。

忍「あー、サンマすごい太ってて脂のってる!」

 とほおばる。たまらんというように。

 あーんと大きなサンマの身を口に運ぶ京子。

 エッチっぽく。顔を前に出して細い喉元見せるとか。

京子「うーん、蕩けるぅー」

 ほおばりながら蕩け顔。


●18

忍「白いごはんでも十分なのに、焼き魚に炊き込みごはんって贅沢だよね」

京子「世の中にはワタを食べない家もあるそうです」

忍「もったいないね。ワタも小苦くて身の美味しさを引き立たせるのに」

京子「お?」

京子「「小苦い」なんてちょっと情緒的だね」

京子「それあんたが考えたオリジナル? わたしも使ってみよう」

忍「修辞で言葉の頭に「小」を付けると豊かな表現になるって担任の子安先生が言ってたよ。」

忍「「小ざっぱり」」

忍「「小洒落た」」

忍「「小粋な」」

京子「えーと…」

京子「「小難しい」」

京子「「小癪な」」

京子「「小生意気な」……」

 チラと忍を見る。

忍「ネガティブな例ばかりだね……」

 汗。

京子「おかわり~~♪」

 と鼻歌気分で立ち上がる。

忍「もう4杯目だよ。あんまり食べると「今の初代タイガーマスク」みたいになるよ」

 呆れて。


●19

忍「「小太りな」」

 と京子を指さす。ギクッとなる京子。

京子「「小憎らしい」!」

 と指さし返す。


 就寝時間。壁掛け時計、11時。

 布団が敷かれた居間。

忍「ほら、もう電気消すからパソコンやめて」

忍「寝るよ」

 パジャマの忍、電気のスイッチのヒモに手をかける。

京子「初代タイガーマスクって毎日カステラ一本食べるんだって! すごくない?」

 パジャマの京子、枕元の卓の上のノートパソコンを閉じながら振り返って。

京子「あ、てゆうか、あたし将来プロレスラーになろっかな」

京子「あたしきっと強いと思うんだよねー」

 と布団にもぐりこみながら。

忍{また思いつきで……}

 呆れる。


●20

 仰向けで寝てる忍。

 女子レスラーになった京子がアジャコング的な女子レスラーに髪を引っ張られたりふんずけられている想像イメージを浮かべながらちょっと嫌そう。

忍「でも、顔がきれいな女子レスラーって大っきな悪役レスラーに憎まれて、いつもめちゃくちゃにやられるよね」

忍「僕は京子が痛めつけられるところなんか見たくないなー」

忍「それになんかイメージできないんだけど、美人で強い女子レスラーっていなくない?」

 素朴な疑問にうーんと悩む。

忍{はっ}

忍{いま色んな方面にカドが立つようなことを言ってしまった気がする……!}

 ハッとして口をおさえる忍。

京子「し~の~ぶ~」

(ピキーン)

 暗闇で肘をついて起き上がりかけている京子のシルエット、光る京子の目。暴走モード的な。

京子「あんた、いまわたしのこときれいとか美人って言った~?」

忍「言ってません! 言ってない!」

京子「美貌の姉は罪だねっ」

 背を向ける忍。

 背後から四つん這いでにじりよる京子。

 夜が更ける。

忍「ちょっ」

忍「こっちの蒲団に入ってこないで! もう寝ました! 寝てます!」

京子「えへえへえへえへ~」

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