第2章 秋季大会開幕!
第230話 初勝利に向けて①
「うぅ……。緊張するね……」
ベンチ前で千早が華菜に声をかける。秋季岡山県大会初戦吉備団子高校戦がもうすぐ始まろうとしていた。
千早にとってはまだ公式戦は2試合目。ましてや前回は皐月女子高校にコールド負けしたのだから、まだまだ不安な気持ちは大きいに違いない。
「大丈夫よ、千早含めて、私たちみんな、きっとすごくレベルアップしてるから」
先週の大会前の最後の練習試合では、華菜もみんなの成長に驚いた。富瀬の考えてくれた夏合宿のメニューはそれぞれの弱点と必要な練習を怖いくらい正確に指示してくれていて、それに沿ってしっかりと練習した結果、思っていた以上の成果を得られたように華菜は思う。
「多分、千早が思っている以上に夏の大会のときとは見違えるくらいに進化していると思うから落ち着いていきましょう」
「う、うん……」
別に気休めではなく、本心で言ったのだけど、華菜の言葉を聞いてもまだ千早は不安そうな表情のままだった。どうやってリラックスさせようかと悩んでいると、横から美乃梨が話しかけてきた。
「ねえ、華菜ちゃん。円陣組もうか。ボクもそうだし、多分まだみんな緊張していると思うからさ」
美乃梨の提案に華菜は頷いた。こういうとき周りをちゃんと見ている美乃梨はとても頼もしいと華菜は思う。
「おーい、みんな一旦集まって!」
美乃梨の声に従ってメンバーが集まった。
「円陣ってなんだか久しぶりな気がするわ」
由里香が微笑む。
「でも、円陣組んで何すんの? まだ1回戦やし、そんな気張っていかんでもええんちゃう?」
「初戦だからって油断したらだめですよ。というかそもそも私たち前回は初戦で負けたのですから」
呑気な凄美恋のことを桜子が注意した。
「じゃあ、華菜キャプテン、何かお願い」
「ええっ、私に丸投げですか!?」
美乃梨から話をフラれて、華菜が頭を巡らせる。試合前の円陣だし、何か士気を上げられることを考えなければいけない。
そして、緊張してる千早の気持ちをほぐすにはどうすれば良いのだろうか。
必死に考えていると、華菜が野球部員を集め始めた時に、一番初めに千早が入部を決めてくれた時のことをふと思い出した。
千早が優しく華菜に手を差し伸べてくれたとき、華菜はとても温かい気持ちになったのを覚えている。
「そうだ、みなさん手を繋いでください」
「え?」
みんなから怪訝な顔を向けられたが、横にいた千早はすぐに納得してくれたみたいで、華菜と視線を交わして微笑んでから、華菜の手をとった。
華菜の手に千早の温もりが伝わる。やっぱり仲間の手に触れるのは温かくてとても落ち着く。
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