幕間6 実力テストの結果①

新学期が明けて、9人で部室の中央の机の周りを取り囲んで神妙そうな顔で集まっていた。張りつめた空気の中、まず桜子が口を開いた。


「みなさん、当然問題はないとは信じておりますが、一応お尋ねしますよ。実力テストの結果は、全員赤点は3教科以内で収まっていますね?」


桜風学園高校の校則に、赤点を取った科目数が3を超えてしまうと、毎週土曜日の授業終わりに追試験を受けて、すべて合格するまで部活ができなくなってしまうというルールがある。


9月半ばから秋季大会が始まってしまうので、それまで2度ある土曜日の追試験に受からないと試合のできる人数を下回ってしまい、その瞬間に棄権負けになってしまう。それだけは避けなければならない。


「私は当然、赤点は無いですので」


まず学年トップの桜子が毅然とした口調で言う。


「わたくしもとくに問題はありませんわ」


「わたしも赤点科目は無いわね」


桜子に続き、怜と由里香も赤点の科目が無かったことを報告する。2年生組が残り美乃梨だけになり、みんなの視線が美乃梨へと向かった。


「えーっと……。ボクは数学Ⅱと生物が赤点だったけど、一応2科目だからセーフだよね……?」


美乃梨が機嫌を伺いながら桜子の顔をチラチラと確認していると、桜子がため息をついた。


「赤点があること自体は褒められたことではありませんが、一応部活に支障がないのでセーフということにしておきましょう」


とりあえず2年生組は赤点を3つ以上取った人はいなかったことに安堵する。


「千早は問題なかったよ!」


「わたしも大丈夫だったー」


千早と咲希も成績は悪くないようでスムーズに報告する。


残ったのは華菜と真希と凄美恋の3人。それぞれ不安そうに顔を見合わせて、なかなか言い出そうとしないので、他のみんなの視線が3人に集まった。


「あなたたちも早く結果を教えてください」


そんな3人を桜子が急かしたので、気まずそうに華菜が口を開いた。


「わたしは2科目ですけど、一応セーフですよね……?」


「同じく2科目よ……」


華菜に続いて、真希も言いにくそうに小声で早口で言ったのを聞いて桜子はため息をついた。


「まったく、あなたたちは……。一応生徒会長と理事長の娘がいる部活なのですから、そんなことでは困りますよ。とりあえず全員部活に支障がないようなのでよかったですけど」


桜子が呆れた口調で話を締めようとしているけど、まだ8人しか成績の報告はしていない。


「ねえ、まだ凄美恋ちゃんが残ってるよね……」


千早が言ってもいいのか躊躇いながら、ポツリと呟いた。

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