幕間6 実力テストの結果②

まだ凄美恋が試験の結果を発表していないことには当然気づいてはいたが、触れるのが怖くてみんな聞くに聞けなかった。


そして、凄美恋はギュッと目をつぶって俯きながら、小さく手を開いて挙手している。


「雲ヶ丘さん、いきなり手をパーに広げてどうしたのですか? 結果を――」


「5……」


「5?」


部室内に変な沈黙した空気が流れた。気まずい空気が充満する中、凄美恋が申し訳なさそうな声を出した。


「ごめん、うち赤点5個やねん……」


「赤点、5個……」


復唱した桜子がそのままふらりと眩暈をおこして倒れてしまいそうになったので、横にいた由里香が桜子の体を支えた。


「つまり追試に合格するまで、凄美恋さんは部活に参加できないというわけですわね……」


由里香に支えられている桜子に代わって、怜が言った。


「ちょっと、凄美恋。あんた何やってんのよ!」


「いや、ほんまごめんって! うちもめっちゃ頑張ってんけど、無理なもんは無理やん!」


詰め寄る華菜に凄美恋が言い訳する。凄美恋は、本当はまったく勉強せずにテストに臨んだのだが、とてもじゃないけど、そんなことを口にできる空気ではない。


「凄美恋、あんたぜっっっっったいに1回目の追試で合格しなさいよ! その次の日曜日に大会前の最後の練習試合が入ってるんだから!」


「うぅ、わかってるって……」


そう言って凄美恋が荷物をまとめだした。


「一刻も早く部に戻れるようにするのよ? わかった?」


華菜が去りゆく凄美恋に声をかけた。


「わかってるって。……けど、華菜、あんたも赤点2個やからあんまり人のこと言われへんで?」


それだけ言って凄美恋は足早に去っていく。華菜は無駄に捨て台詞を吐かれて、なんともいえない気持ちになっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る